面会交流をしない方がいいケースとは?弁護士が解説
面会交流をしない方がいいケースとは、次のようなケースです。
- DVが予想されるケース
- 父親が面会交流を拒否しているケース
- 子どもの体調が優れないケース
- 子どもが拒否しているケース
- 父母の対立が激しいケース
- 子どもを連れ去られる可能性があるケース
- 面会交流のルールが守られていないケース
面会交流は、子どもの健全な成長のために重要なものであり、基本的には実施するべきと考えられています。
しかし、面会交流をすることで子どもの安全が脅かされるケースや、子どもの健全な成長を妨げる恐れがあるようなケースでは、面会交流の実施は制限されます。
ここでは、面会交流をしない方がいいケースについて、面会交流をしないメリット・デメリットや面会交流をスムーズに行う方法なども紹介しながら解説していきます。
なお、面会交流は、子どもと離れて暮らしている親(別居親)が子どもと会うなどして交流をすることをいいます。
子どもと離れて暮らしている親が父親であることもあれば、母親であることもありますが、父親であるケースの方が圧倒的に多いのが実情です。
このような実情を踏まえ、この記事では、わかりやすさのため、「別居親=父親、同居親=母親」である場合を前提に解説しています。
面会交流をしない方がいいケース
面会交流をしない方がいいケースとは、次のようなケースです。
面会交流は、子どもの利益のために行われるべきものであるため、子どもの利益に反する事情がある場合は、面会交流をするべきではありません。
上記のようなケースでは、一般的には面会交流をすることによって子どもの利益に反すると考えられます。
もっとも、その程度や他の事情によっては、面会交流を全面禁止する必要まではない場合もあります。
また、上記のような事情がない場合であっても、子どもの利益のためには面会交流をするべきでないといえるケースもあります。
このように、面会交流の実施の適否の判断は、あくまでも具体的な事情が総合的に考慮されたうえで判断されることになります。
以上を踏まえたうえで、上記のようなケースにおいて、面会交流の実施の適否が一般的にどのように考えられるかについて、解説していきます。
DVが予想されるケース
父親によるDVが予想されるケースでは、面会交流をするべきではありません。
父親が現に子どもに暴力を振るう(虐待をする)恐れがあるケースでは、子どもの安全を守るために面会交流は認められません。
暴力が過去のものであっても、子どもが身体的・精神的な被害から回復できておらず、父親に対して恐怖や嫌悪感を抱いているような場合は、面会交流はするべきではありません。
父親が母親に対して暴力(モラハラなども含まれます)を振るっていた場合も、面会交流の実施については慎重な検討が必要です。
子どもの受け渡しの際などに父親が母親に対して暴力を振るう可能性があるなど、母親の安全が脅かされる危険があるケースでは面会交流は認められません。
暴力が過去のものであっても、暴力が原因で母親が父親に対して強い恐怖心や不安を抱いているような場合は、面会交流に向けて父母が対等に協力することは困難です。
その結果、適切に面会交流を実施することができず、子どもの利益に反する場合もあります。
そのため、親の恐怖心や不安を軽減・解消するための対応(父親が暴力を自覚し反省を示す、第三者に協力してもらうなど)が必要であり、対応ができない場合は面会交流をしない方がいいでしょう。
父親が面会交流を拒否しているケース
父親が面会交流を拒否している場合は、基本的には面会交流をしない方がいいと考えられます。
このような状態で面会交流を強行しても、子どもが父親の拒絶的な態度に触れ、かえって傷つく結果となる可能性があります。
子どもの体調が優れないケース
面会交流は子どものために行われるものですから、子どもの体調が優れない場合は面会交流を無理にするべきではありません。
面会交流の当日に子どもが体調を崩したような場合は、その日の面会交流は中止し、代替日を設けるなどの対処をするべきです。
また、子どもが体調を崩す原因が面会交流にある場合は、今後の実施の可否や方法について再検討する必要があります。
原因を取り除くのが難しく、面会交流の日が来る度に子どもが体調を崩すようであれば、状況によっては今後の面会交流はしない方がいいという結論になることもあるでしょう。
面会交流後に、帰宅してから子どもがいつも体調を崩すという場合も同様です。
子どもが拒否しているケース
子どもの意思は、面会交流をする・しないの絶対的な基準とはなるわけではありませんが、基本的には尊重することが子どもの利益になると考えられます。
したがって、子どもの年齢等にもよりますが、子どもが面会交流を拒否している場合は、一般的には面会交流をしない方がいいと考えられます。
子どもの年齢が低く、明確に意思表示をすることができない場合でも、DVなどがあり、子どもが父親に恐怖心等を抱いて嫌がっている場合は、面会交流をするべきではありません。
また、子どもが概ね10歳くらいに達していれば、拒否の理由が父親に対する恐怖や嫌悪でない場合であっても、基本的には子どもの意思を尊重して面会交流をしない方がいいでしょう。
子どもが明確に拒否をしているにもかかわらず面会交流を強要すると、子どもが自分の意思や希望は尊重されないと感じ、無力感や大人への不信感を抱くことにもつながります。
ただし、拒否の原因が父母の言動にある場合、例えば、母親が日頃から子どもの前で父親の悪口を言うため、子どもが母親に気を遣って面会交流を拒否するようになったような場合は、その原因の除去が望まれます。
子どもが15歳以上の場合は、子どもの意思を尊重する必要性は高くなりますから、子どもが拒否をしていれば、面会交流をすることはできないでしょう。
父母の対立が激しいケース
面会交流は、父母の信頼関係や協力関係がなければ、安定的・継続的に実施することは実際上困難です。
また、父母の対立が激しい状態で面会交流を行うと、子どもが父母の対立に巻き込まれ、精神的安定を害する場合もあります。
そのため、父母の対立が激しいケースでは、実施の可否や方法について慎重に検討することが必要になります。
面会交流のルールを明確に取り決めたり、第三者の援助を得て父母が接触しない方法での実施を検討したりすることで、子どもに負担をかけない形で実施できるケースもあります。
他方で、子どもの年齢が低く、母親の付き添いが必須で父母が接触しない方法での実施が難しく、かつ、父母が接触すると紛争の再燃が予想されるようなケースでは、面会交流をしない方がいい場合が多いでしょう。
子どもを連れ去られる可能性があるケース
面会交流は、面会交流後は子どもを実際の監護者である母親のもとに返すということを前提に行われるものです。
したがって、面会交流を機会に父親が子どもを連れ去る(母親のもとに返さない)可能性がある場合は、面会交流の前提を欠くため面会交流をすることはできません。
父親が過去に実際に子どもを連れ去ったことがあるケースや、日頃から連れ去りを示唆する言動をしているようなケースでは、一般的には連れ去りの恐れが大きいといえますから、面会交流をしない方がいいでしょう。
他方で、客観的には連れ去りの可能性が低くても、母親としては不安が大きく、面会交流に応じられないというケースも少なくありません。
このようなケースで面会交流を強行すると、母親の心理的負担が大きくなり、子どもの精神的安定にも影響が及ぶ可能性があります。
そのため、母親の不安を軽減・払しょくするための対処(父親が母親による監護を容認する、ルール遵守を約束する、第三者の立ち合いを面会の条件とするなど)がされない限りは面会交流をしない方がいい場合もあります。
面会交流のルールが守られていないケース
面会交流のルールには、一般社会人としてのルールから、面会交流を実施するうえで当然に遵守されるべきルール(時間を守るなど)、父母間で明示的に取り決めたルールなど、様々なものがあります。
面会交流のルールを守ることは、面会交流を行う前提となります。
ルールが守られないと父母間の信頼関係は築かれず円滑に面会交流を行うことは困難になります。
また、ルールを守らないことによって子どもの安全が脅かされたり、子どもの心情に悪影響が及んだりすることもあります。
したがって、面会交流のルールが守られていない場合は、ルール違反の程度や頻度によっては、面会交流を制限するべきです。
面会交流は基本的に実施すべき
面会交流は一般的には子どもにとって必要なものであり、基本的には実施すべきものと考えられています。
面会交流により、子どもはどちらの親からも愛されていると感じることができ、両親の離別による喪失感や不安感を和らげ、自己のアイデンティティの確立を図ることができるとされています。
そのため、適切な面会交流は、基本的には子どもの健全な成長にとって有益なものと考えられています。
したがって、現在の裁判実務では、面会交流をすることでかえって子どもの利益が害される恐れがあるといえる特段の事情がある場合を除き、面会交流を認めるという考え方のもとに手続きが進められることが多いです。
面会交流をしないことのメリットとデメリット
メリット | デメリット | |
---|---|---|
母親にとって | 父親との接触を断つことができる →安全の確保、精神的負担の軽減 |
|
父親にとって | 母子の生活・心理状態の安定 →将来的に子どもと良好な関係を築くことに役立つこともある |
|
面会交流をしないメリット
母親にとってのメリット
面会交流をしなければ、父親との接触を断つことができます。
面会交流をするとなれば、父親との接触を断つことは通常困難です。
子どもの年齢が高かったり、第三者の協力が得られる場合は、父母の直接接触を避けることも可能ですが、父親が子どもを通じて母親の居住場所を知ろうとしたり、母子の生活状況を探ったりする心配は残ります。
面会交流をしなければ、このような心配もなく、母子の安全確保や精神的負担の軽減をすることができます。
父親にとってのメリット
面会交流をしないことで、将来的には子どもと良い関係を築いていけるケースもあります。
面会交流を実施するのが難しい事情がある場合は、面会交流の実現を急ぐと、母親との紛争がかえって長期化・複雑化してしまったり、子どもの精神的安定に害を及ぼしてしまったりすることもあります。
このようなリスクがある場合は、面会交流をすぐには実施せず、母子の生活や心理状態が落ち着くまで様子を見ることにもメリットがあります。
面会交流をしないデメリット
母親にとってのデメリット
面会交流をしないことによって、子どもが父親に見捨てられたと思い込むなど、子どもの健全な成長にとってマイナスになる場合はあります。
また、子どもが面会交流を望んでいる場合は、子どもの意思に反して面会交流を実施しないとなると、子どもが自分の意見は尊重されないと感じ、大人への不信感や無力感を抱くようになることにもつながる可能性があります。
面会交流をしないことによって、父親が養育費を支払わなくなるケースもあります。
養育費は、面会交流をする・しないにかかわらず、合意や裁判所の命令がある以上はその通りに支払われなければいけないものです。
しかし、実際上は、子どもに会えないことにより養育費支払いのモチベーションを失い、支払いを滞らせる父親も少なくはありません。
また、面会交流をさせないのは親権者としてふさわしくないとして、父親から親権者の変更を申し立てられる可能性もあります。
さらに、父親から親子の交流ができず精神的な損害が発生したとして慰謝料を請求される可能性もゼロではありません。
養育費の不払いに対しては、養育費と面会交流は交換条件にできるものではないことを父親に理解してもらうことが一番良いですが、難しい場合は養育費請求調停や強制執行(合意や判決・審判がある場合)の申立てをすることになります。
親権者変更や慰謝料の請求については、母親が正当な理由なく面会交流を拒否したり妨げたりしているようなケースでない限りは、母親に不利益な結果となることはほとんどありません。
ただし、請求を無視したり、不適切な対応をすると不利益を受ける可能性がありますので、適切に対処する必要はあります。
いずれの場合も、法的対応が必要になりますので、お困りの場合は離婚問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
父親にとってのデメリット
子どもに会えないことや、子どもとの交流が途絶えることが最大のデメリットです。
また、子どもが「自分は父親から見捨てられた」などと思い込み、将来的にも子どもとの関係を再構築することが難しくなってしまう可能性があります。
直接の面会交流が難しい場合は、間接交流を検討するようにしましょう。
間接交流とは、電話やメール、手紙など間接的な方法によって子どもと交流をすることです。
最近では、LINEのビデオ通話やZoom等を活用して、リアルに近い形での間接交流を行うケースも多いです。
間接交流であっても、子どもとの接点を保つ重要な手段となりますし、子どもにとっては、父親の存在や人となりを知る重要な機会となり得ます。
面会交流をスムーズに行う方法
面会交流のルールを決める
面会交流をスムーズに行うためには、子どもの目線に立ってルールを決めることが重要です。
先ほども述べたように、面会交流のルールには様々なものがあります。
「時間を守る」「最低限の挨拶はする」など、特に明示的にルールを決めていなくても当然遵守されるべきものもありますが、父母の対立が激しい場合や、母親の不安感が強い場合は、このような基本事項も含めて明確にルールを定めておくとよいでしょう。
決められたルールは必ず守るようにしましょう。
明確にルールを決めたにもかかわらず、それに反するようなことがあれば、面会交流の継続は困難になるため十分に注意する必要があります。
もっとも、詳細で厳し過ぎるルールを設定すると、それがトラブルの原因となり、円滑な面会交流の妨げになってしまうこともあります。
そのため、父母の関係性や子どもの状況に応じた必要十分なものにすることも重要なポイントとなります。
具体的にどのような内容のルールが必要であるかは、事案により異なりますので、詳しくは離婚問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
子どもの心情に配慮する
面会交流を行うに当たっては、父母双方が子どもの心情に配慮し、子どもを不安にさせたり、悩ませたりすることをしないように注意することが大切です。
特に父母の間に対立がある場合は、子どもがそれを察して板挟みとなり、面会交流をすることに罪悪感を持つようになったり、母親に気を遣って面会交流を拒否するようになったりすることもあります。
そのようなことがないよう、例えば、次のようなことを心がけるとよいでしょう。
- 子どもの前で母親の悪口を言わない
- 子どもの受け渡し時には母親に感謝の意を示すようにする
- 子どもに「あんまり会えなくて寂しい」などと伝えることは控える
- 母親の了承を得ずに子どもと約束をする(遠方の遊園地に連れていく約束など)ことは控える
- 子どもの前で父親の悪口を言わない
- 子どもの前で面会交流に否定的な態度を示さないようにする
- 子どもを気持ちよく送り出してあげる
- 子どもに面会交流の様子を根掘り葉掘り聞かない
まとめ
以上、面会交流をしない方がいいケースについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
面会交流をすることでかえって子どもの利益が害される事情があるケースでは、面会交流をしない方がいいといえます。
もっとも、そのような事情がある場合でも、子どもの年齢、心情、意向、生活状況やその他の事情によっては、面会交流を全面禁止する必要まではないケースもあります。
また、現時点では面会交流をしない方がいい場合でも、子どもの成長等とともに状況が変わり、将来的には子どもの利益になる面会交流を実施することができるようになることもあります。
このように、面会交流をしない方がいいかどうかの判断は、相対的・流動的なものとなります。
そのため、面会交流をするべきかどうか迷われている場合は、離婚問題に詳しい弁護士に相談し、具体的なアドバイスをもらうことをお勧めします。
当事務所には、離婚問題を専門的に扱う弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、面会交流の問題にお困りの方を強力にサポートしています。
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面会交流の問題にお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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