財産分与に必要な書類とは?弁護士が解説
財産分与には次のような書類が必要になります。
- 財産目録
- 各種財産の証明資料
- 特有財産の証明資料
- 離婚調停申立書
- 離婚協議書
- 不動産の登記申請書
ここでは、財産分与の取り決めをするときや、実際に財産を分与する際に必要になる書類について解説していきます。
財産分与とは?
財産分与とは、夫婦で築いた財産を離婚に伴い分け合うことをいいます。
財産分与の内容には、夫婦が協力して築いた財産の清算(清算的財産分与)、離婚後の生活保障(扶養的財産分与)、離婚に伴う慰謝料(慰謝料的財産分与)があるとされています。
中心は清算的財産分与であり、状況に応じて扶養的・慰謝料的要素も考慮されます。
清算的財産分与は、夫婦が結婚生活を送る中で取得した財産を基本的に2分の1の割合で分け合うという方法で行われます。
財産分与で必要な書類とは?
財産分与の取り決めをするために必要な書類
財産目録
財産分与の取り決めをする際には、まずは分け合う対象となる夫婦の財産の全体像を把握する必要があります。
そこで、夫婦の財産を一覧にした財産目録を作成します。
財産目録がないと財産分与ができないというわけではありませんが、対象財産が複数ある場合は作成した方がよいでしょう。
婚姻期間が長く夫婦の財産状況が複雑になっている場合や、対象となる財産について夫婦間に争いがある場合は、財産目録の作成はほとんど必須といえるでしょう。
裁判所の手続(調停・審判、訴訟)で財産分与を決める場合も、財産分与の内容等を検討する前提として、財産目録(婚姻関係財産一覧表)の作成を裁判所から指示されるのが通常です。
夫婦がお互いに自分が把握している財産(自己名義の財産や自分が管理している財産)の項目をリストアップして1通の財産目録を作成します。
このとき、夫婦で築いた財産のみでなく、夫婦の一方が名実ともに独自に持っている財産(このような財産を「特有財産」といいます。)も含め、夫名義・妻名義・夫婦の共同名義の財産を全て洗い出すのが一般的です。
特有財産は、夫婦の協力によって取得したものではないため、原則として財産分与の対象になりませんが、ひとまずリストアップをして、後から特有財産として除外します。
また、住宅ローンなどのマイナスの財産もリストアップします。
財産をリストアップしたら、各財産の基準時における金額(評価額・時価)も記載していきます。
基準時とは、財産分与の対象財産を確定させる時点のことで、通常は「別居時」となります。
財産目録の見本はこちらをご覧ください
各種財産の証明資料
財産目録にリストアップした各財産の内容や基準時における金額(評価額・時価)を把握するために、各財産の証明資料を準備する必要があります。
例えば、次のような資料が必要となります。
- 財産の種類
- 証明資料
- 預貯金
- 通帳、取引履歴
- 項証明書、査定書
- 株式等
- 金融機関からの通知書
- 保険
- 保険証券や保険会社からの通知書
- 自動車
- 車検証
- 退職金
- 退職金規程
- 住宅ローン
- 金融機関からの通知書
上記は一例です。
具体的にどのような資料を集める必要があるかは、状況により異なりますので、詳しくは離婚専門の弁護士にご相談ください。
特有財産の証明資料
先に説明したとおり、特有財産は財産分与の対象から除外されます。
そこで、特有財産であることを確認するための資料を準備する必要があります。
特有財産に該当する財産としては、結婚前に取得した財産や、贈与や相続によって取得した財産などがあります。
したがって、結婚前に取得したことや、贈与や相続によって取得したことを裏付ける資料を準備します。
例えば、次のような資料です。
- 対象財産
- 立証すべき内容
- 証明資料の例
- 預貯金
- 独身時代の預貯金
- 婚姻時の取引履歴や残高証明
- 第三者からの贈与
- 贈与契約書、贈与時の口座の取引履歴等
- 遺産として取得
- 遺産分割協議書、遺言書等
- 不動産
- 独身時代に取得
- 登記事項証明書
- 遺産として取得
- 登記事項証明書、遺産分割協議書、遺言書
- 株式等
- 独身時代に取得
- 証券、契約書等
- 保険
- 独身時代からかけていた部分
- 保険証券(加入年月日が記載)
- 自動車
- 独身時代に取得
- 車検証
- 退職金
- 結婚前の就労期間に対応する金額
- 入社年月日がわかる資料(雇用契約書等)
上記は一例です。
具体的にどのような資料を集めるべきかについては、離婚専門の弁護士にご相談ください。
離婚調停申立書
財産分与は、当事者間の話し合い(協議)によって決めることができます。
しかし、当事者間で話し合いができない場合や、意見が対立して合意ができない場合は、「調停」という手続を申立て、その手続の中で財産分与の取り決めをすることになります。
調停の申立ては、所定の事項を記載した申立書を家庭裁判所に提出してする必要があります。
そこで、離婚とともに財産分与をする場合は、離婚調停(夫婦関係調整調停)の申立書が必要になります。
なお、離婚を先に成立させ、その後に財産分与の取り決めをすることもできます。
この場合は、財産分与請求調停を申し立てることになるため、財産分与請求調停の申立書が必要となります。
財産分与の取り決めをしたら作成するべき書類
離婚協議書(財産分与の合意書面)
財産分与の合意ができた場合は、必ず合意内容を書面にするようにしましょう。
財産分与の合意は、離婚とともに行う場合と、離婚を先に成立させて、その後に行う場合が考えられます。
離婚とともに財産分与の合意をする場合は、離婚協議書を作成します。
離婚後に財産分与の合意をする場合は、財産分与に関する取り決め内容を記載した合意書等を作成します。
このような離婚協議書等を作成しておくことで、後々、言った言わないのトラブルを防止することができます。
また、相手が合意に反して財産を渡さないような場合、法的に有効な離婚協議書等があれば、法的措置が容易になります。
さらに、財産分与は「贈与」ではないので税金は基本的にはかかりませんが、税務署に贈与ではなく財産分与として財産をもらったことを説明する際には離婚協議書等が必要となります。
そのため、適切な離婚協議書等を作成しておくことは非常に重要なポイントとなります。
当事務所では、離婚協議書のサンプルをホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。
もっとも、法的に有効な離婚協議書等を作成するには、専門的な法律知識が不可欠です。
また、どのような文言を記載するべきかは事案により異なります。
そのため、書式はあくまで参考程度にとどめ、具体的にどのような内容の書面にするべきかは離婚専門の弁護士にご相談ください。
不動産の名義変更に必要な書類
財産分与で不動産を渡した場合・もらった場合は、不動産の名義変更をするための登記手続をする必要があります。
その際に必要となる書類は以下のとおりです。
- 登記申請書
- 登記原因証明情報(財産分与協議書、調停調書、審判書、判決書など)
- 離婚の記載のある戸籍謄本(協議離婚の場合)
- 住所証明書(住民票)
- 登記識別情報又は登記済証
- 印鑑証明書(3か月以内に発行されたもの)
- 代理権証明書(委任状)
- 固定資産評価証明書
財産分与の登記についての詳しい解説は、こちらのページをご覧ください
財産分与の注意点
財産は漏れなく洗い出す
財産分与の際には、まずは、特有財産も含め、夫名義・妻名義・夫婦の共同名義の財産全てをリストアップすることが重要です。
この財産の洗い出しが不十分だと、もらえるはずの財産をもらえずに損をしてしまう可能性もあるので注意が必要です。
財産目録を利用し、財産を漏れなく洗い出すようにしましょう。
評価額や特有財産は資料で確認する
財産を漏れなくリストアップしたとしても、評価額の算定が不正確だと適切に財産分与をすることはできません。
そのため、各財産の証拠資料を準備し、資料に基づいて評価額を確認・算定することが重要になります。
特に相手名義の財産については、相手から金額を聞く(相手に財産目録に評価額を記載してもらう)だけでなく、自分で資料を直接確認したり、弁護士に資料を見てもらったりするとよいでしょう。
相手名義の特有財産がある場合も、資料を直接見て特有財産性を確認するようにしましょう。
正しく計算する
財産分与の対象財産を洗い出して評価したら、それをもとに財産分与がいくらになるかを計算しなければなりません。
財産分与がいくらになるかを適切に計算するのは専門家でなければ難しいです。
当事務所では、財産分与の目安を素早く確認したいという方のために、オンラインで、かつ、無料で自動計算できるサービスをご提供しています。
財産分与のシミュレーターについてはこちらをご覧ください。
別居前に準備をする
離婚前に別居をする夫婦は多いですが、財産のリストアップや必要な資料の収集は、できる限り別居前(相手と同居している間)に行っておくようにするとよいでしょう。
相手と同居している間であれば、自宅に保管してある相手名義の財産や、相手宛に届く郵送物などから、相手名義の財産を把握する手がかりを得ることができます。
一方、相手と別居をしてしまうと、このようにして手がかりを得ることは難しくなり、相手に財産を隠匿されるリスクも高まるので注意が必要です。
もっとも、DV被害を受けている場合など、早期に安全に別居をすることが最優先となる事案もあります。
あくまでも状況に応じて対処する必要がありますので、まずは、別居前に離婚専門の弁護士に相談されることをおすすめします。
請求期限に注意する
財産分与には請求期限(※)があります。
そのため、財産分与の取り決めをせずに離婚し、その後に財産分与を請求するという場合は、期限切れに注意する必要があります。
なお、財産分与は離婚後に行うものですが、離婚前に、離婚とともに請求をして内容を確定させることはできます。
離婚前に請求をする場合は、期限切れになる心配はありません。
そのため、できるだけ離婚前に離婚とともに請求し、確定させておくことをおすすめします。
(※)2024年の法改正により、財産分与の請求期限は離婚後5年となりました。改正後の法律は2026年6月までに施行されます(施行前の離婚については離婚後2年が請求期限です。)。
まとめ
以上、財産分与に必要な書類について解説しましたが、いかがだったでしょうか。
財産目録や各財産の証明資料は、財産分与の決め方にかかわらず重要な書類です。
また、協議で財産分与の取り決めをした場合は、必ず離婚協議書や財産分与の合意書を作成するようにしましょう。
もっとも、実際に必要となる書類は、財産分与の方法や内容により大きく異なります。
そのため、詳しくは離婚専門の弁護士に相談されることをおすすめいたします。
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