離婚調停が不成立、その後どうなる?手続きや弁護士費用を解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


離婚調停が不成立になった場合、離婚の問題が解決されないまま調停が終わってしまうことになります。

その後、問題を解決していくにはどうすればいいのか、不安を抱いている方もいらっしゃると思います。

そこで、ここでは離婚調停が不成立になった後の手続きや弁護士費用について解説していきます。

離婚調停の不成立とは

離婚調停とは、離婚やその条件について裁判所で話し合いをし、合意による解決を目指す手続きです。

話し合いの結果合意ができた場合を「成立」、合意できなかった場合を「不成立」といいます。

離婚調停の不成立とは、当事者間に合意が成立しなかった場合のことをいいます。

わかりやすく言えば、「離婚調停をしたけれども離婚できなかった場合」です。

調停が不成立になった場合、調停の手続きは終了します。

令和3年度の司法統計によると、家事調停事件(離婚調停以外の調停事件も含みます。)の既済事件のうち19.7%は不成立となって終了しています。

不成立の割合円グラフ

引用元:司法統計(令和3年度)第14表|最高裁判所

 

「取下げ」との違い

「不成立」を決めるのは裁判所(調停委員会)です。

当事者は不成立を希望することはできますが、決定することはできません。

同じく調停が終了になる事由として「取下げ」というものがあります。

これは、調停を申し立てた人が自ら申立てを取りやめることです。

相手方の同意や裁判所の判断に関係なく、申し立てた人が自由にできる点が不成立と異なります。

不成立 取下げ
調停は終了する
  • 合意が成立する見込みがない場合に終わりにすること
  • 調停委員会が決める
  • 申立てを取りやめること
  • 申立人が自由にできる

 

不成立となる理由

調停が不成立になるのは、合意できる見込みがないときです。

その理由としては、以下のようなものが考えられます。

  • 離婚すること自体について合意ができなかった場合
    (一方が離婚を希望しているが他方が離婚を拒否している場合)
  • 離婚すること自体は合意しているが離婚の条件(離婚後の子どもの親権を誰にするか、親権者とならない親と子どもの面会交流をどうするか、養育費、離婚に際しての財産分与、慰謝料などについてどうするか)について合意ができなかった場合
  • 当事者の一方(通常は申し立てられた側)が調停に出席せず、話し合い自体ができなかった場合

合意できる見込みがない場合は、調停で長々と話を続けていても時間が無駄になることが多いです。

そのため、離婚や親権などで対立している場合や、養育費・財産分与などお金の面で意見の相違が大きく調整が困難な場合は、早い段階で不成立を希望するとよいでしょう。

 

 

離婚調停が不成立になったらどうなるの?

審判に移行するケース

「審判」とは、裁判官が一切の事情を考慮して結論を決める手続きです。

婚姻費用や面会交流の調停は、不成立になると自動的に審判に移行します

他方、離婚調停の場合は、不成立になっても自動的に審判に移行することはありません

離婚調停が不成立になった場合、離婚について決着をつけるためには、改めて離婚裁判(訴訟)を起こす必要があります

離婚調停と一緒に婚姻費用や面会交流の調停を申し立てる場合も多く、この場合は一緒に(同時に)調停が開催されますが、あくまでもそれぞれ別の事件として扱われます。

そのため、たとえば離婚調停と婚姻費用の調停を一緒に申し立てており、いずれも合意ができず調停が不成立となった場合、いずれも調停手続きは終了しますが婚姻費用の調停だけが自動的に「審判」に移行することになります。

調停から審判に移行するケースの図

調停に代わる審判

離婚調停で合意が成立しなかった場合、自動的に審判に移行することはありませんが、「調停に代わる審判」という制度が利用される場合があります

「調停に代わる審判」とは、調停が成立しない場合において裁判官が必要と判断したときに、諸事情を考慮して解決案を審判(裁判官の判断)という形で提示するものです。

当事者が裁判官の提示した解決案に納得できない場合、異議を出すことができる点が通常の審判と異なります。

どちらかの当事者から異議が出た場合は、「調停に代わる審判」はなかったことになり、通常の裁判で解決されることになります。

どのような場合に利用されるかというと、当事者双方が離婚や親権については合意しているものの、その他の条件面(財産分与、養育費など)について微妙に意見が異なり合意できない場合などです。

このような場合、わざわざ時間とお金をかけて裁判を起こすのは非効率といえますし、裁判官の判断が示されれば当事者も納得して受け入れる可能性が高いと考えられるため、活用されることが多いです。

令和3年度の司法統計によれば、家事調停事件(離婚調停以外も含む)の既済事件のうち9.1%が調停に代わる審判により終了しています。

通常の審判 調停に代わる審判
  • 婚姻費用や面会交流の調停は不成立になると自動的に審判移行するが、離婚調停はしない
  • 離婚調停でも利用できる
  • 2週間以内に異議が申し立てられた場合、効力を失う

 

離婚裁判となるケース

先に説明したように、離婚調停が不成立にとなり終了した場合、当事者が改めて裁判(訴訟)を起こして決着をつける必要があります。

そのため、通常は離婚を希望する側の当事者が裁判を改めて起こすことになります。

そして、裁判の中で裁判官に離婚の可否や離婚条件について判断をもらうことになります。

 

そのままとなるケース

離婚調停が不成立となり終了した場合、通常はあまり時間を空けることなくいずれかの当事者が裁判を起こします。

しかし、離婚調停が不成立になり終了した後、裁判がされずに当面の間そのままの状態になる場合があります。

たとえば、離婚を希望する方が有責配偶者である場合などです。

有責配偶者とは、不倫などにより自ら夫婦としての関係(婚姻関係)を破綻させた側の配偶者のことをいいます。

そのような配偶者から離婚を求めることは信義に反するとして、別居期間が相当長くなっているなどの事情がない限り離婚を認めないというのが裁判所の考え方です。

そのため、有責配偶者から裁判を起こしても離婚が認められないと予想できる場合は、すぐに裁判が起こされず、当面は離婚調停が不成立で終わった状態のままとなることが多いです。

その後は、そのまま別居状態が継続するケース、ある程度時間が経った段階で改めて裁判となり離婚に至るケース、時間の経過により当時離婚を拒否していた側の気持ちが変わり協議離婚(裁判所を通さず離婚届を提出して離婚する方法)するケースなど、夫婦により様々です。

 

 

離婚調停の不成立証明書とは

離婚調停が不成立で終了した場合、裁判で決着をつけることになりますが、離婚調停を経ずにいきなり裁判をすることは基本的にできません(このルールを専門用語では「調停前置主義」といいます。)。

そのため、離婚裁判を起こす際には、いったん調停を経ていることを証明する書類が必要になります(ただし、調停と裁判で担当裁判官が同一の場合は不要になる場合もあります)。

このいったん調停を経ていることを示す書類が不成立証明書であり、「不成立調書」(調停が終了するときに裁判所が作成する書類)や「事件終了証明書」(離婚調停が終わったことを証明する書類)がこれに当たります。

これらは、裁判所に交付申請することにより手に入れることができます

なお、交付手数料として1枚あたり150円が必要です(交付申請書に収入印紙を貼って出します。)。

不成立調書の見本▼

 

 

 

離婚調停が不成立となった場合の弁護士費用

弁護士費用は着手金と報酬金に大きく分けられます。

着手金は、依頼時、弁護士に動いてもらうために支払うお金で、結果に関係なく一定の金額である場合が多いです。

報酬金は、事件終了時に得られた結果に応じて支払われる成功報酬です。

ここでは、離婚調停を弁護士に依頼し、その調停が不成立となった場合の弁護士費用について、次の3点について解説いたします。

  1. ① 離婚調停の報酬金はどうなるのか
  2. ② 審判移行した場合、審判について引き続き依頼する場合の着手金はどうなるのか
  3. ③ 離婚裁判を起こす場合、裁判(訴訟)について引き続き依頼する場合の着手金はどうなるのか

なお、以前は弁護士の報酬に関して、弁護士会としての基準がありました(旧報酬規程)が、現在、弁護士報酬は自由化されており、各法律事務所で独自の料金体系を設定することができます。

そのため、料金体系は法律事務所により異なります。

具体的な事案において実際にどのような処理になるかについては、各法律事務所のホームページや法律相談でご確認ください。

参考:(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準

 

① 離婚調停の報酬

離婚調停が不成立になった場合、離婚調停によって得られた結果はありませんので、基本的には調停について報酬金は発生しません

ただし、離婚調停と一緒に申し立てていた婚姻費用や面会交流の調停の方で何らかの結果が得られた場合は、それについては成功報酬が発生することになります

また、事務所によっては、「基本報酬」という形で結果に関係なく事件終了時に報酬が発生する設定になっていることもあります(成功報酬ではなく、着手金の後払い的なものと考えられます。)。

その場合、調停が不成立となっても基本報酬がかかることになりますが、引き続いて審判や離婚裁判を依頼する場合は不要になる(審判や離婚裁判の際の基本報酬に吸収される)ことがほとんどです。

具体例
料金体系(報酬金について) 調停不成立で終了した場合の報酬金
離婚が達成できたら40万円 0円
  • 基本報酬10万円
  • 離婚が達成できたら30万円
10万円(ただし、引き続いて審判・訴訟を依頼する場合は0円)

 

② 審判移行に伴う追加費用は必要?

離婚調停と一緒に婚姻費用や面会交流の調停も申し立てていた場合、婚姻費用や面会交流の調停が審判に移行したとき、それに伴う追加費用(審判を依頼するための着手金)が必要になるかどうかは、事務所の料金体系によります。

調停と審判を同じ料金内で対応しているという事務所の場合、審判に移行した場合も追加費用はかかりません。

他方、審判に移行した場合は改めて着手金が必要になる事務所の場合は、追加費用がかかることになります。

具体例
料金体系(着手金について) 調停依頼時 審判移行時
調停・審判合わせて30万円 30万円 0円
  • 調停20万円
  • 審判移行した場合プラス10万円
20万円 10万円

 

③ 離婚裁判の場合の追加費用

離婚調停が不成立となり、その後に離婚裁判を起こす場合、通常は離婚裁判を依頼するにあたって改めて着手金が必要になります。

ただ、改めて離婚裁判の着手金全額が必要になるわけではなく、追加で必要となるのは調停の着手金と離婚裁判の着手金の差額のみである場合も多いです。

具体例
料金体系(着手金について) 調停の着手金 離婚裁判の着手金(追加費用)
  • 離婚調停 30万円
  • 離婚裁判 50万円
30万円 調停に引き続いて依頼する場合は20万円
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まとめ

以上、離婚調停が不成立になった後の手続きや弁護士費用について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

不成立になった後も、きちんと手続きを取れば解決に向かっていくことができます。

ただ、調停は話し合いの手続きであるのに対し、その次の審判や離婚裁判は厳格な決まりに従って主張や証拠を出していかなければならない難しい手続きとなります。

この先の手続きに少しでも不安を感じる方は、離婚問題を専門的に扱っている弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

 

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