離婚調停の期間はどれくらい?平均期間・早期解決のポイントを解説
離婚調停などの家事調停の平均審理期間は7か月程度です。
解決までに時間がかかるという印象を持たれた方も多いと思います。
離婚が成立するまでの間は、心身ともに消耗することも多いので、なるべく早く解決したいものです。
そこで、ここでは離婚調停にかかる期間や、早期解決のポイントについて解説していきます。
離婚調停の期間はどれくらい?
離婚調停の期間の平均
令和3年度の司法統計によれば、家事調停の既済事件の平均審理期間は7.4か月と発表されています。
家事調停には離婚調停以外も含まれますが、離婚調停にかかる期間の平均としても7.4か月くらいと考えて問題ないと思います。
分布としては、全家事調停の既済事件約13万9000件のうち、1年以内のものが11万7000件、2年以内のものが約1万9000件、2年を超えるものが約3000件となっています。
筆者の個人的な感覚でも、6か月から1年の間になることが多いように思います。
離婚調停の期間で最長はどれくらい?
最長は2年程度といえるでしょう。
司法統計上、全家事調停の既済事件のうち2年を超えるものが約2%あると分かります。
また、司法統計の婚姻関係事件(調停のみならず審判も含みます)の実施期日回数(何回実施したか。第16表)を見ると、総数約6万5000件のうち、21回以上のものが23件(約0.04%)あることが分かります。
調停は1か月に1回程度の頻度で実施されることからすれば、21回となると大体2年くらいです。
筆者の経験では離婚調停だけで2年を超えたことはありませんが、もともと争点が多い事案で、日程調整が困難だったり、社会情勢(新型コロナウイルスの流行など)による延期などが重なると、2年を超える可能性もあると考えられます。
また、面会交流で揉めている事案も長くなる傾向です。
監護者(子供の面倒を見ている親で多くは母親側)が面会交流を拒む事案では、その正当性の有無を判断するための調査などが行われることが多いため、長期化するという印象です。
離婚調停の期間の最短はどれくらい?
初回の調停で終わることもあるので、最短は1か月程度といえます。
ただ、初回で終了するのは、調停になった途端に相手方が翻意して合意に応じるようになった場合、一度裁判などで争っており合意が成立しないことが明らかである場合など、特別な事情がある場合と考えた方がよいでしょう。
離婚問題を早く解決させる方法
弁護士には協議離婚での解決をお願いする
離婚問題を早く解決させるには、弁護士に協議離婚での解決をお願いするのがよいでしょう。
協議離婚とは、裁判所を利用せず、話し合いで離婚条件を決めて離婚届を提出して離婚するものです。
弁護士に協議離婚での解決をお願いした場合、弁護士が代理人として相手方と直接交渉し(代理交渉)、条件を取り決め、離婚協議書を作成し、離婚届を提出するところまでサポートしてくれます。
離婚調停の場合、申立てから約1か月後に初回が開催され、その後話がまとまるまで(または、まとまらないとして終了になるまで)約1か月間隔で開催されていきます。
1回の調停の所要時間は約2時間なので、この時間内に終わらなければ約1か月先まで話し合いがストップしてしまうというイメージです。
さらに、東京家庭裁判所など、調停の取り扱い件数が多い裁判所の場合、裁判所の部屋や担当する調停委員・裁判官の調整がつきにくく、調停の間隔が1か月半~2か月程度になることもあります。
他方、協議離婚の場合は、随時交渉を進めることができるので、解決までのペースが早くなります。
ただし、相手方が話し合いを拒否する場合や、譲り合う気が全くない場合など、話し合うことが難しいときは調停に移行せざるを得ないことになります。
離婚調停を早く解決するポイント
協議離婚が難しく調停を申し立てた場合でも、なるべく早く解決に至るポイントがありますので、ご紹介していきます。
何に時間がかかる?
お互いに譲り合ってすぐに合意ができる場合や、調停で話し合っても解決する余地がないことが明らかな場合は、調停で話し合いを重ねる必要はないため、早く終わります。
他方、話し合えば解決できそうではあるものの、お互いに言い分を整理したり、判断材料を集めたり、対案を出し合ったりして調整していく必要がある場合は、その分時間がかかります。
離婚調停では、離婚する・しないという話だけでなく、離婚の条件(離婚後の子どもの親権者を誰にするか、親権者とならない親と子との面会交流をどうするか、養育費、離婚に際しての財産分与や年金分割の割合、慰謝料についてどうするかなど)についても一緒に話し合うことができます。
そのため、離婚条件について調整するべき問題が多ければ多いほど時間がかかることになります。
このことを踏まえ、次のことを心がけるとよいでしょう。
最終的に自分がどのような条件で離婚したいのかを明確にしておくとよいでしょう。
そうすることにより、相手方との対立点、話し合いの余地の有無・調整するポイントが分かり、効率的に話し合いを進めるのに役立ちます。
調停で話し合いをするうえで必要になるであろう資料は、早い段階から準備しておくとよいでしょう。
たとえば、財産分与の取り決めをする場合、あらかじめ次のような準備をしておくとよいでしょう。
- ① 自分名義の財産について預金口座の残高証明を取り寄せる、不動産の簡易査定をとっておく、保険の解約返戻金の有無・金額を問い合わせておくなど、資料を揃えておく
- ② 相手方名義の財産についても大体の見当をつけ、夫婦の財産の項目と価額をリストにしたもの(財産一覧表)をわかる範囲で作成しておく
このような準備を先取りしてやっておけば、相手方も資料の収集や反論の検討がしやすくなり、早期解決に役立ちます。
調停で全てを話そうとすると、自分が調停委員に話す時間、調停委員が相手方に伝える時間、相手方がそれについての回答を考える時間がかかってしまいます。
調停委員がニュアンスも含めて相手方に正確に伝達してくれるとも限らないので、誤解が生じた場合はその誤解を正す時間も必要になってきます。
そこで、調停の前に、自分の言い分を記載した書面(「主張書面」といいます。)を提出し、相手方と調停委員に共有しておくとよいでしょう。
これにより、自分の言い分を事前に正確に伝えておくことができるので、調停の場で調整すべきポイントがはっきりし、話し合いを効率的に進めることができます。
離婚調停は話し合いなので、お互いに譲歩しなければ解決に至りません。
早期解決とのバランスになりますが、譲っていいところは譲るという心がけも必要になります。
よくあるご相談Q&A
離婚調停の期間に恋愛はできる?
離婚調停の期間に他の方と交際することは控えた方がよいでしょう。
不貞行為をしたと判断され、有責配偶者として離婚請求が認められなくなったり、慰謝料を払うことになったりする可能性があるので注意が必要です。
「離婚調停中ならば既に夫婦関係は破綻しているといえるから、不貞にならないのでは?」と思うかもしれません。
確かに、夫婦関係が破綻した後に他の方と関係を持った場合は不貞の責任を免れるとされていますが、調停中であっても別居期間が短かい場合などは夫婦関係の破綻が認められない可能性もあります。
また、調停期間中の交際が発覚した場合、相手方が気分を害し過大な財産分与や慰謝料の支払いを離婚条件として提示してくる可能性もあります。
その場合、裁判で有責配偶者と認定されるリスクがある以上、不利益な条件でも承諾せざるを得ない状況に陥ることも考えられます。
別居後の不倫の問題点などについて、詳しくはこちらをご覧ください
離婚調停の期間の生活費はどうすればいい?
離婚が成立するまでは、婚姻費用をもらうことができます。
離婚調停中であっても、まだ法律上夫婦である以上は生活費の分担義務があり、相手の方が収入が多い場合は相手に生活費を払ってもらうことができます。
この生活費を「婚姻費用」といい、適正額の支払いがない場合は支払請求をすることができます。
婚姻費用について、詳しくはこちらをご覧ください
離婚調停の期間、子どもとの面会交流はどうなるの?
離婚調停中であっても面会交流を求めることができます。
子どもと別居している場合、離婚調停中であっても面会交流をすることは認められますので、子どもと同居している親に面会交流の実施を求めることができます。
面会交流について、詳しくはこちらをご覧ください
あえて長期化させるメリットは?
別居期間が長引くことにより離婚が認められやすくなる、お互いに冷静になってよりよい条件で折り合えることなどが考えられます。
時の経過により状況も変化し、お互いに冷静になり、膠着状態が解消することもあるので、性急に離婚を成立させるよりも将来に禍根を残さないよりよい解決ができる場合もあります。
また、親権について争いがある事案において、監護者が親権の取得をより確実にしたいときに調停を長引かせることも考えられます。
裁判所が親権を判断する際、監護の継続性を重視します。そのため、親権の取得が微妙な事案では、少しでも監護状況を長くした方が監護者に有利となります。
まとめ
以上、離婚調停にかかる期間と早期解決のポイントについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
離婚調停の期間は平均7か月程度であり、解決までに時間がかかります。
そのため、まずは弁護士に代理交渉をお願いして協議離婚を試み、それで解決ができない場合の次善の策として離婚調停を申し立てることをおすすめします。
離婚調停になった場合も、工夫次第で早期解決できることもあります。
ただし、効果的に早期解決のポイントを実践していくためには専門知識も必要になるので、できる限り離婚問題に詳しい弁護士に依頼して進めることをおすすめします。
この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。
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