不倫して妊娠。どうすれば?弁護士がケース別に対応法を解説
不倫して妊娠した場合、不倫をした本人たちも、不倫をされた被害者も動揺してしまうものですが、状況を踏まえて冷静に対処をしていく必要があります。
ここでは、夫が不倫をして相手女性が妊娠したケースを念頭に、不倫をした男性(夫)、その妻、不倫相手の立場別に知っておくべきポイント、リスク、対処法などについて解説していきます。
不倫して妊娠する場合の状況
不倫して妊娠する場合の状況としては、具体的に次のようなものが考えられます。
具体例① 不倫相手が妊娠したケース
X子とY男が夫婦で、Y男がA子と性的関係を持ち、その結果A子が妊娠した
※この記事では、このケースにおける対処法などについて解説していきます。
具体例② 妻が妊娠したケース
X子とY男が夫婦で、X子がB男と性的関係を持ち、その結果X子が妊娠した
このように妻Xが妊娠した場合、子どもは夫Y男の子どもと推定されることになります。
そのため、このようなケースでは、夫はこの推定を覆す手続きをする必要があります。
不倫した夫が知っておくべきポイント
妻から慰謝料や離婚を請求されるリスク
不倫や不倫相手の妊娠が妻に知られた場合、妻からは慰謝料や離婚を請求される可能性があります。
不倫をして相手の女性が妊娠した場合は、妻が受ける被害が大きいため、妊娠がない場合に比べ、これらの請求がされる可能性は高いといえます。
妻から慰謝料を請求されるリスク
慰謝料とは、加害行為によって精神的な苦痛を被った場合に、加害者に対して請求するお金のことをいいます。
配偶者に不倫をされた場合、通常は精神的な苦痛を被るため、一定の条件を満たす場合、不倫の被害者(不倫をされた配偶者)は不倫の加害者(不倫をした配偶者とその相手)に対し、慰謝料を請求することができます。
不倫をしたら絶対に慰謝料を請求されるというわけではありませんが、不倫をして相手の女性が妊娠した場合は、そうでない場合に比べ、妻が受ける精神的な打撃が大きいため、請求される可能性は高いです。
そして、慰謝料が請求された場合は、慰謝料を支払わなければならなくなる可能性はとても高いです。
法律上、慰謝料が認められるのは、基本的には不倫が「不貞行為」に当たる場合とされています。
「不貞行為」とは、基本的には「配偶者以外の人と自由な意思に基づいて性的関係を結ぶこと」と解釈されており、不倫の結果、相手の女性が妊娠したというのは、まさにこれに該当するためです。
また、不倫の結果、相手の女性が妊娠した場合は、そうでない場合に比べ、妻(被害者)が受ける精神的な苦痛が大きくなるため、慰謝料の金額も高額になる可能性が高いです。
慰謝料の請求を受けた場合、まずは専門の弁護士に相談されることをおすすめいたします。
請求内容をよく検討せずに慌てて全面的に応じてしまったり、やみくもに反論したりすると、事態を悪化させることにもなりかねませんので、まずは法律的に状況を整理することが重要です。
また、慰謝料は離婚と一緒に求められることも多いです。
離婚専門の弁護士であれば、離婚の問題についても全面的にサポートすることができます。
妻から離婚を求められるリスク
不倫相手が妊娠した場合は、そうでない場合と比べ、夫婦関係の修復はより一層困難となります。
そのため、妻から離婚を求められるリスクは相応に高いものと考えられます。
離婚を求められても、離婚に合意をしない限り、すぐには離婚が成立してしまうことはありませんが、妻が離婚を望む場合、最終的には裁判で離婚を請求されることになるでしょう。
裁判で離婚を請求された場合は、離婚が認められる可能性は高いです。
不貞行為は、離婚が認められる条件(「離婚原因」といいます。)の1つとして、法律(民法)に定められています(民法770条1項1号)。
参考:民法|e−GOV法令検索
不倫して相手が妊娠したというのはまさに離婚原因の1つである不貞行為があったということになりますので、ご自身が離婚を望まない場合であっても、裁判によって離婚が成立する可能性は高いです。
離婚をする場合は、不倫の慰謝料の他にも、財産に関すること(財産分与)や、子どもに関すること(親権、養育費、面会交流)について、取り決めをする必要があります。
財産分与とは、結婚生活で築いた夫婦の財産を離婚の際に分け合うものです。
結婚後に夫婦の生活のために取得した財産(「共有財産」といいます。)は、どちらの収入で取得したか、どちらの名義になっているかにかかわらず、基本的に半分ずつの割合で分け合うことになります。
夫婦の財産状況にもよりますが、共有財産のほとんどを夫名義にしているような場合は、妻から財産分与を請求され、夫から妻に財産を渡すことになる可能性は高いです。
また、財産分与と慰謝料は本来別物ですが、慰謝料も財産分与に含めて請求することができるとされています。
慰謝料も含めて財産分与を請求される場合は、財産を半分ずつ分けるのではなく、、半分以上妻に渡すことになる可能性もありますし、本来は財産分与の対象とはならない夫独自の財産(「特有財産」といいます。)も、妻に渡すことになる可能性があります。
離婚する場合は、夫婦のいずれかを親権者と定めなければなりません。
親権者を定める際には子どもの利益が最優先されますので、「不倫をしたから親権者にはなれない」というわけではありません。
しかし、実際上、これまで主として子どもの世話をしてきたのが母親というケースは多いため、父親が親権者となるのが難しい場合は多いです。
母親が親権者となる場合は、離婚後、父親は子どもと離れて暮らすことになります。
子どもと離れて暮らすことになっても、定期的に面会交流(子どもと会うなどして交流すること)をすることにより、子どもとの関わりは持ち続けることができます。
しかし、実際上、母親が父親に対して悪感情を抱いているなどの理由から、面会交流が円滑に実施できないケースも少なくありません。
また、母親が親権者となる場合は、父親は母親に対して養育費を支払うことになります。
養育費は子どもの生活のためのお金であるため、基本的には定期的に、子どもが独立・自立するまで支払い続けていく必要があります。
離婚を望まない場合は、関係修復に向けた努力が必要です。
まずは妻に対して誠心誠意の謝罪をし、不倫関係を断ち切るべきでしょう。
もっとも、不倫関係を断ち切るとしても、妊娠した相手女性に対しては相応の責任(出産費用の負担、認知、養育費の支払い、又は中絶費用の負担など)を果たす必要はあります。
その点についても、妻の理解が得られるように努力することが重要といえるでしょう。
他方、離婚せざるを得ない場合は、離婚条件の取り決めをきちんとするようにしましょう。
夫側は、離婚にあたり子どもと離れることになったり、金銭を支払う側となったりすることが多い傾向にあります。
慰謝料以外の条件については、基本的には不倫とは関係なく取り決められるべきと考えられているため、不当に不利にならないように対処する必要があるでしょう。
いずれの条件についても、個別的な事情に即した検討が必要になりますので、詳しくは離婚専門の弁護士に相談されることをおすすめいたします。
不倫相手への対処について
トラブルになるリスク
妊娠は2人の責任ですので、妊娠に伴う肉体的・精神的・経済的な負担を一方的に女性に押しつけるようなことをしてはいけません。
妊娠が発覚した途端に一方的に連絡を断絶する等してしまうと、相手女性が自宅や職場に直接来てしまい周囲を巻き込むトラブルになる可能性もあります。
また、話し合いをせずに中絶を強要したり、その他配慮に欠ける言動をすると、場合によっては精神的な苦痛を被ったとして相手女性から慰謝料を請求される可能性もあります。
相手女性から妊娠の知らせを受けたら、まずは自分で妊娠の事実を確認するようにしましょう。
月経が遅れている、妊娠検査薬で陽性となったなど、未だ可能性の段階であれば、産婦人科を受診してもらうようにしましょう。
そして、実際に妊娠の事実が確認された場合は、次のようなことについて話し合う必要があります。
妊娠した子どもを出産するかどうかについては、すぐに話し合う必要があります。
中絶できる期間は限られていますし、時間が経つほどに相手女性の負担は大きくなるため、曖昧な態度を取るなどして決断を先送りしてはいけません。
話し合いの結果、出産を決める場合は、認知や養育費の支払いはすることになると心得るべきでしょう。
仮に、相手女性がその場では認知や養育費は求めないと述べていても、後に法的に請求される可能性はあります。
他方、話し合いの結果、中絶することになった場合は、手術にかかる費用の負担についても話し合う必要があります。
なお、ご自身が出産を望まない場合であっても、中絶を強要することはできません。
望まない理由がある場合は、相手に配慮を示しながら、納得してもらえるように説明する必要があるでしょう。
認知とは、結婚していない男女の間に生まれた子どもとの親子関係を発生させる法律行為です。
結婚していない男女の間に生まれた子どもは、当然に父親と法律上の親子関係を持つわけではありません。
認知がされることにより、初めて、出生の時にさかのぼって法律上の親子関係が生じることになります。
子ども側(母親側)は、認知されることにより以下のようなメリットを得ることができるため、通常は認知を求めます。
①養育費を請求することができる
②父親の相続権を得ることができる
③父親(自分のルーツ)を知ることができる
他方、父親には、認知により次のようなリスクが生じます。
①養育費の支払い義務を負う
②妻に不倫したことがバレる
このようなことを踏まえ、子どもを認知する意思の有無を伝えて話し合っておくべきでしょう。
出産を決める際の考慮要素となりますし、子どもが生まれた場合に認知をめぐって相手女性とトラブルになることを回避することにもつながります。
もっとも、認知するつもりがない場合であっても、子どもが生まれた後、相手女性から裁判所の手続きによって認知請求がされ、DNA鑑定等により客観的に親子関係が認められた場合は、裁判所の決定により、強制的に認知の効力が生じることになります。
したがって、子どもが生まれる以上は、ご自身の意思にかかわらず、認知の効力が生じる可能性は常にあるということには留意しておく必要があります。
- 認知の方法
認知の方法には、任意認知と強制認知の2つの方法があります。
任意認知とは、父親が自分の意思で自分の子どもであることを認めるものです。
認知届を役所に提出する方式と、遺言によって行う方式があります。
また、母親の承諾があれば、胎児の段階でも認知することができます(胎児認知)。
強制認知とは、父子関係の存在が客観的に認められる場合に、子どもの側(多くの場合、子どもの法定代理人である母)から認知を求めるものです。
裁判所の手続きによって合意が成立し、又は決定が出された場合に、認知の効力が強制的に生じることになります。 - 認知の事実は戸籍に記載される
認知した場合は、ご自身の戸籍に認知の事実が記載されることになります。
そのため、妻が戸籍を確認すれば、不倫やそれにより子どもが生まれたことや、不倫相手の名前がわかってしまいます。
ただし、本籍地を移したときなど、新しく戸籍が作られた場合は、新しい戸籍には認知の事実は記載されないため、現在の戸籍を見るだけでは認知した子がいるかどうかわからない状態になります。
もっとも、ご自身の死後は、相続人を特定するために古い戸籍も参照されることになりますので、その段階では相続人(妻や子ども)に認知した子どもがいることが知れることにはなります。 - 自分の子どもであることに確信が持てない場合は?
相手女性が自分以外の男性とも関係を持っていた場合など、自分の子どもであることに確信が持てないときは、安易に認知をするべきではありません。
そのような場合は、認知に応じる前に、DNA鑑定等により血縁関係を確認するべきです。
もっとも、鑑定等をする以前に、相手女性から強く認知を求められてトラブルに発展する恐れなどもありますので、お困りの場合は専門の弁護士に相談されるようにして下さい。
妊娠発覚後は、相手女性とこれまでのような不倫関係を続けるのは困難になるでしょう。
そのため、今後の2人の関係をどうするかについても話し合う必要があるでしょう。
選択肢としては、次の3つが考えられます。
①妻と離婚して相手女性と再婚する
②妻とは離婚せずに不倫関係を解消する
③妻とは離婚して不倫関係も解消する
上記のうち、①を実現するのは簡単ではありません。
裁判実務では、不倫をした側(離婚原因を作った側。「有責配偶者」といいます。)からの離婚請求は、原則として認められないとされています。
そのため、妻が離婚に応じない場合は、離婚をすることが難しくなります。
妻とは別居し、相手女性と暮らすことにしても、法律上の夫婦関係は継続する以上、妻や子どもには生活費(「婚姻費用」といいます。)を支払い続ける必要はあります。
また、仮に離婚に向けて進めることができたとしても、離婚にあたって相応の慰謝料の支払いや財産分与をする可能性は高いです。
夫婦の間に子どもがいる場合は、その子どもの養育費も支払っていく必要があります。
そのため、経済的に厳しい状況の中での再婚となる可能性もあります。
不倫された妻が知っておくべきポイント
夫が不倫をして相手女性が妊娠したという事実は、受け入れ難いものです。
しかし、感情に任せて行動をしてしまうと、ご自身の不利益になりかねませんので注意が必要です。
以下のポイントを押さえつつ、専門家に相談するなどして冷静に対処するようにしましょう。
夫と相手女性に対しては慰謝料を請求することができる
夫に不倫されたときは、夫と相手女性に対して慰謝料を請求することができます。
先に説明したように、不倫して妊娠したということは、「不貞行為」に該当する行為があったといえますので、慰謝料が認められる可能性は高いです。
また、不倫の結果女性が妊娠したという事情は、ほとんどのケースでは慰謝料を増額させる事情として考慮されることになります。
妥当な請求額や請求方法などは、事案により異なりますので、詳しくは不倫問題に詳しい弁護士に相談されるようにして下さい。
夫に対しては離婚を請求することができる
「不貞行為」は法律で定められている離婚原因の1つであるため、夫が不貞行為をしたことを理由に離婚を請求することができます。
離婚をするときには、離婚後の生活を見通した上で、離婚条件の吟味も含め準備をすることが重要なポイントとなります。
不倫した夫とは一刻も早く離婚したいと思う場合もあるかもしれませんが、準備を整えずに離婚するとご自身の不利益につながりかねません。
そのため、まずは離婚専門の弁護士に相談し、離婚の準備や条件等について、アドバイスをもらうことをおすすめいたします。
夫が相手女性へ養育費を支払うリスク
夫が不倫相手との間に生まれた子どもを認知した場合、夫とその子どもの間に法律的な親子関係が生じるため、夫がその子どもの養育費を支払うことになる可能性があります。
妻が夫と離婚しない場合は、夫と家計を一にしている(財布を共通にしている)のが通常ですので、家計から不倫相手の子どものための養育費が出ていくということになります。
他方、妻が夫と離婚する場合は、夫婦間の子どもの養育費の金額に影響が及ぶ可能性があります。
養育費の金額は、大雑把に言うと、支払い義務者(夫)の収入から生活に充てられる金額を割り出し、それを子どもたちに割り当てるという方式で計算されるのが一般的(裁判所の考え方)です。
そのため、夫が扶養義務を負う人数が増えると、その分一人あたりに割り当てられる金額が少なくなるので、夫婦間の子どもの養育費の金額が(認知した子どもがいない場合に比べて)低くなる可能性があります。
まず、不倫相手の子どもが夫の子どもでない可能性がある場合は、夫に対し、認知の前にDNA鑑定等をして血縁関係を確認することを勧めるべきです。
既に夫が認知をしてしまっている場合であっても、夫との生物学上の血縁関係がないことが判明すれば、妻からでも認知の「無効」(なかったことになること)を主張することは可能です。
ただ、認知無効の主張は裁判手続きによる必要がありますので、詳しくは専門の弁護士に相談されるようにして下さい。
養育費の金額は、必ずしも裁判所の考え方どおりに決めなければならないわけではなく、父母の合意によって自由に決めることができます。
そのため、夫婦間の子どもの養育費を裁判所の考え方にしたがって算出した金額以上のものにするよう交渉することは可能です。
また、他の離婚条件とも併せて納得できる条件を引き出すことができる可能性もありますので、詳しくは専門の弁護士にご相談下さい。
相続権が発生するリスク
夫が不倫相手との間に生まれた子どもを認知すると、法律上の親子関係が生じるため、その子どもは第一順位の相続権を取得することになります。
すなわち、不倫相手との間の子どもは、夫婦間の子どもと同じように夫の財産(現預金、不動産、株式など)を引き継ぐ権利を持つことになります。
そのため、夫が亡くなった際、ご自身や子どもの相続分に影響が及ぶ(取り分が少なくなる)可能性があります。
具体例 夫が1200万円(現預金)の遺産を残して亡くなった場合
このケースにおいて、法律で定められている割合(法定相続割合)どおりに分けるとすると、認知した子(X)の有無により、各人の取り分は次のように異なります。
X以外の相続人 | 認知した子Xがいる場合 | 認知した子Xがいない場合 |
---|---|---|
①妻のみ(夫婦の間に子どもがいない場合) | 妻:600万円 子X:600万円 |
妻:1200万円 |
②妻+子(夫婦の間の子AとB) | 妻:600万円 子A:200万円 子B:200万円 子X:200万円 |
妻:600万円 子A:300万円 子B:300万円 |
③子のみ(妻が夫よりも先に亡くなったor離婚した場合) | 子A:400万円 子B:400万円 子X:400万円 |
子A:600万円 子B:600万円 |
※法定相続割合:相続人が配偶者と子どもの場合は、2分の1ずつとなります。子どもが複数人いる場合は、それぞれの割合は頭数で割ったものとなります。
また、認知した子どもがいる場合は、遺産分割協議で揉める可能性が高くなります。
遺産分割協議とは、相続人全員で、誰がどのような遺産を引き継ぐかを話し合い、確定させていくものです。
実際の事案では、自宅不動産などの遺産が含まれていることも多く、特にそのような遺産の分け方については相続人間で揉めることが多いです。
その協議に、これまで他の相続人(妻や子ども)と関わり合いのなかった認知した子どもも加わるとなると、問題がより複雑化して争いが激化しやすくなるでしょう。
遺産の分け方は、「遺言」によって指定することができます。
夫に遺言書を作成してもらっておけば、相続人間での揉め事を回避できる可能性がありますので、夫に作成を勧めるとよいでしょう。
遺言書の作成や内容は夫の意思に委ねられるものではありますが、相続人間で争いが生じることは夫としても避けたいと思うのが通常です。
もっとも、具体的にどのように作成すればよいかわからず、行動に移せない場合も多いです。
そのため、まずは夫に対し、相続に詳しい専門家に相談してみることを勧めるのでもよいでしょう。
妊娠した女性が知っておくべきポイント
相手男性の妻から慰謝料を請求されるリスク
相手男性の妻に不倫が発覚した場合は、慰謝料を請求される可能性があります。
先に述べたとおり、慰謝料を請求された場合は、相応の慰謝料を支払わなければならなくなる可能性が高いです。
相手男性の妻から慰謝料を請求された場合は、不倫問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめいたします。
請求内容をよく検討せずに慌てて全てを認めてしまったり、やみくもに反論したりすると、事態を悪化させることにもなりかねません。
まずは専門の弁護士に状況を整理してもらい、方針についてアドバイスをもらうとよいでしょう。
また、相手(妻)とのやり取りも、弁護士に代理人として対応してもらうことをおすすめいたします。
夫が不倫をして相手を妊娠させたという事実は、妻にとっては受け入れ難いものであるため、相手と直接接触すると感情的な対立からトラブルに発展する恐れもあります。
弁護士が代理人として対応することにより、このようなトラブルを回避しながら、適切に解決に向けて進めることができるようになります。
相手の男性との関係におけるポイント
まずは今後について話し合う
妊娠がわかった場合、まずは相手の男性と、次のようなことについて話し合うようにしましょう。
①子どもを出産するかどうか
②相手の男性と結婚するかどうか
③相手の男性が認知や養育費の支払いをしてくれるかどうか
特に出産については、中絶できる期間も限られているので、できるだけ早く決断をする必要があります。
決断するに当たっては、相手の男性と結婚できるかどうか、あるいは、相手の男性が経済的に支えてくれるかどうかは、重要なポイントとなるでしょう。
相手の男性との結婚は、難しい場合が多いです。
相手の男性は「有責配偶者」となるため、男性の妻が離婚に応じない限り離婚は難しく、再婚も難しくなります。
仮に離婚できたとしても、相応の慰謝料、財産分与、養育費を支払うことになりますので、経済的に厳しい状況での再婚となる可能性もあります。
他方で、相手の男性と結婚せずに出産する場合は、通常はご自身がシングルマザーとして子どもを育てていくことになります。
その場合は、相手の男性に子どもを認知してもらい、養育費を受け取るようにするべきですが、相手の男性がこれを拒否する場合は、出産後に経済的に厳しい状況になる可能性もあります。
後に説明するように、認知や養育費の支払いは、相手が拒否したとしても最終的には裁判所の手続きで強制的にさせることが可能ではありますが、解決には時間や労力がかかるので注意が必要です。
相手の男性が責任逃れをするリスク
妊娠を相手の男性に伝えた際、男性が誠意ある対応をしてくれるとは限りません。
不倫が妻にバレることを恐れたり、父親としての責任を取ることができない(取りたくない)といった理由から、次のような対応をされるケースもあるので注意が必要です。
- 一方的に連絡を断絶される
- 中絶を強要される
- 認知・養育費の支払いを拒まれる
このような状態を見過ごすと、出産・子育て、あるいは中絶手術を受けることによる負担が全てご自身にかかることになってしまいます。
妊娠したことに関しては、合意の上で性交渉に至った以上、相手に責任追及をすることはできません。
しかし、相手の男性が次のようなことをした場合は、慰謝料を請求できる可能性もあります。
・妊娠発覚後、連絡を一方的に断絶するなどして話し合い応じなかった
・暴行や脅迫などを用いて中絶手術を受けることを強要した
・中絶手術を受けることにかかわる精神的・肉体的苦痛や経済的負担を女性のみに押しつけ、自らの責任について全く顧みない
もっとも、請求の可否や請求方法などを適切に判断するのは難しいため、詳しくは専門の弁護士に相談されるようにして下さい。
先にも説明しましたが、認知をしてもらうと次のようなメリットを得ることができます。
①養育費を請求することができる
②父親の相続権を得ることができる
③父親(自分のルーツ)を知ることができる
相手の男性と関わりたくないなどといった思いから、認知してもらわなくてもよいと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、子どもの人生にとっては重要なものとなりますので、母親としては認知を求め、養育費も受け取るようにするべきといえるでしょう。
- 認知請求をする
相手の男性が認知をしてくれない場合は、最終的には裁判所に「認知調停」という手続きを申立てることになります。
認知調停の手続きにおいては、通常はDNA鑑定が行われることになります。
それにより血縁関係が認められれば、相手が認知に応じなくても裁判所の決定によって認知の効力が生じることになります。
ただ、裁判所の手続きには時間や労力がかかるので、調停を申立てる前にDNA鑑定を提案するなど、裁判外での解決を試みるとよいでしょう。
また、裁判外での交渉は、本人同士では冷静に進められない場合も多いため、専門の弁護士に代理人として対応してもらうことをおすすめいたします。 - 養育費の請求をする
認知がされると、相手の男性に養育費を請求することができるようになります。
相手が任意に養育費の支払いに応じない場合は、裁判所に「養育費請求調停」という手続きを申し立て、請求をすることになります。
もっとも、先にも述べたように、裁判所の手続きには時間や労力がかかるため、まずは弁護士に裁判外で交渉をしてもらうことをおすすめいたします。
養育費の請求は、そのタイミングも重要なポイントとなります。
認知の効力は、出生時にさかのぼって生じますが、裁判実務では、養育費をもらえるのは、原則として「養育費を請求する意思が明確になったとき」からと考えられています。
そのため、認知されるのを待ってから養育費を請求するのでは、出生時から請求時までの分の養育費をもらえなくなってしまう可能性があります。
専門の弁護士であれば、認知と養育費の問題を並行してすすめ、全般的にサポートすることができますので、お早めに相談されるようにして下さい。
まとめ
以上、不倫して妊娠した場合に知っておくべきポイントについて、立場別に解説しましたが、いかがだったでしょうか。
不倫で妊娠した場合は、不倫の当事者・被害者ともに動揺するものですが、問題を先送りにしたり、感情的な行動に出てしまうと、事態を悪化させてしまいかねません。
まずは冷静になり、早めに専門家に相談するなどして適切に対処することが大切です。
当事務所では、離婚問題を専門に扱うチームがあり、不倫問題について強力にサポートしています。
LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており全国対応が可能です。
不倫問題については、当事務所の離婚事件チームまで、お気軽にご相談ください。
この記事が、不倫問題にお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。
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