社内不倫とは?きっかけ・リスク・対処法を弁護士が解説
社内不倫とは、一般に、同じ会社(職場)で働く人と不倫をすることをいいます。
会社員の場合、不倫相手との出会いの場が会社となるケースが多く、社内不倫は珍しいものとはいえません。
しかし、社内不倫には様々なリスクが伴います。
社内不倫が発覚すれば、慰謝料や離婚の問題が生じるばかりでなく、会社内での信頼の喪失などを招き、最悪の場合は解雇されるなどの深刻な問題に発展する可能性もあります。
夫や妻が会社員であるという方の中には、相手が社内不倫をしているのではないかと不安に思っていたり、実際に社内不倫の被害を受けて苦しんでいる方もおられると思います。
また、現に社内不倫をしている方の中にも、悩みやリスクを感じている方もおられると思います。
そこで、ここでは社内不倫のきっかけや兆候、リスク、対処のポイントなどについて解説していきます。
ぜひ参考になさってください。
社内不倫とは
社内不倫とは、同じ会社(職場)で働く人と不倫をすることをいいます。
具体的には、上司と部下が不倫関係になることや、同僚同士が不倫関係になることを指します。
上司と部下との不倫
上司とは、自分よりも地位や役職が上の人のことを指します。
特に、自分よりも役職が1つ上の上司を一般に「直属の上司」といいます。
直属の上司と直属の部下は接点が多いため、この組み合わせで不倫関係になるケースが特に多いと思われます。
同僚との不倫
同僚とは、一般的に地位や役職が同じ人のことを指しますが、広く「同じ会社で働いている人」を指す場合もあります。
同期入社の者同士や、役職が同じ先輩と後輩が不倫関係になるケースが特に多いと思われます。
また、同じ会社だけれども違う部署などに所属している者同士で不倫関係になるケースもあり、これも広い意味で社内不倫といえるでしょう。
「不倫」は、実は法律に直接記載されている言葉ではなく、法律では「不貞」という用語が使われています。
「不貞行為」とは、基本的には既婚者が夫又は妻以外の人と肉体関係を持つことと解釈されています。
不貞行為と不倫は概ね一致しますが、人によっては肉体関係を伴わない交際関係も「不倫」と考える一方、「不貞行為」は基本的には肉体関係を持った場合に成立するという点で、該当する範囲が異なる場合があります。
例えば、キスやハグはしたけれども性交渉等はしていないという場合、人によっては「不倫」と考えますが、不貞行為には当たりません。
裁判所が慰謝料などの法的請求を認めるのは、基本的には不貞行為に該当する場合です。
この記事では、基本的には「不倫」のことを「不貞行為」と同じ意味として解説いたします。
ただし、肉体関係がない(不貞行為に当たらない)のであればリスクがないとはいえないことには留意する必要があります。
社内不倫のリスクについては後に詳しく解説しますが、たとえ肉体関係がなくても、会社や社内の人に「不倫(不適切な交際)をしている」と評価された場合は、懲戒や信頼低下などの不利益を受ける可能性があります。
不倫が始まるきっかけ
出会いのきっかけ
ある資料によると、出会いのきっかけで最も多いのは、多くの年代で「同じ会社」となっています。
参考:相模ゴム工業株式会社
会社員などの場合は、通常は一日の多くを会社で過ごすことになりますので、会社での出会いのきっかけが多い一方、会社以外での出会いのきっかけは少ないといえます。
そのため、不倫相手が同じ会社の人となるのは自然なことなのかもしれません。
不倫関係になる理由
中には性的関心のみを理由に不倫をする人もいるかもしれませんが、多くの場合は次のようなことから不倫関係になると推察されます。
- そもそも相性がいい
職場(職業)が同じということは、似た価値観や共通の話題を持っているともいえるため、話が弾んだり、相手に関心を持てる場合が多いです。
その上で一緒に仕事をしていくうちにお互いに好意を抱くようになり、不倫関係になる場合があると考えられます。 - 仕事をする姿に好感を持つ
一緒に仕事をしていると、仕事ができる姿をかっこいいと思ったり、頑張っている姿に好感を抱いたりするものです。
そのような好感が性的な好意に投影され、不倫関係になる場合もあるでしょう。 - 仕事の相談からプライベートな話に発展する
仕事の相談をしているうちに、プライベートなことまで相談するというケースがあります。
その中で、特に一方又は双方が配偶者との関係に満足していないことがわかった場合などは、不満を埋め合わせるために不倫関係になってしまうということもあるでしょう。
社内不倫の兆候
不倫の兆候
不倫をしている場合、次のような兆候が現れることがあります。
社内不倫をしている場合、仕事が終わった後に不倫相手とレストランやホテルに行き、帰宅時間が遅くなることが多くなります。
そのような場合、残業や飲み会で帰宅時間が遅くなったと説明されることが多いです。
日頃から残業等が多い場合は見分けるのが難しいですが、頻度や帰宅する時間帯(残業が終わる時間帯)、帰宅時の様子がこれまでとは異なるような場合は、疑わしいといえるでしょう。
不倫をしている場合、配偶者には休日出勤と告げて実は不倫相手とデートに出かけていたり、出張と告げて実は休暇を取って不倫相手と旅行したり、外泊したりすることもあります。
そのため、休日出勤や出張などが不自然に増えた場合は、疑わしいといえるでしょう。
不倫をしている場合、不倫相手とLINEなどでやり取りをしている可能性が高いです。
そのため、相手がスマホをのぞかれることを警戒しているような行動をとるようになった場合は要注意といえます。
具体的には、家の中でもスマホを肌身離さず持つようになった、スマホをやたらと気にするようになった、スマホにロックをかけるようになった、LINEのパスコードロックをかけるようになったなどの変化があれば、疑わしいといえるでしょう。
不倫をしていると、デート代を負担したり、不倫相手へのプレゼントを購入したりして、出費が増えることがあります。
相手がクレジットカードで決済をしている場合は、利用明細から利用店舗を割り出せることもあるので、チェックしてみるとよいでしょう。
相手が普段利用しないような店舗で決済がされている場合は、疑わしいといえるでしょう。
終業時間が過ぎていても電話にでない、メッセージ等の返信がないということが多い場合、仕事が終わった後に不倫相手とホテルなどに行っている可能性があります。
不倫をしていると、配偶者に不倫現場を目撃されるリスクを恐れ、配偶者の予定を気にするようになります。
急に平日の夜や休日の予定を確認してくるようになったような場合は、疑わしいといえるでしょう。
不倫をしていると不倫相手とのセックスに満足し、配偶者とのセックスには消極的になる場合が多いです。
社内不倫をしている場合は、平日(会社に行った日)に不倫相手とセックスをしてから帰宅している可能性があります。
そのため、これまでは平日(会社に行った日)も普通に応じたり、誘ったりしていたのに、急に平日は拒むようになったとか、誘わなくなったという場合は特に疑わしいといえるでしょう。
不倫をしていると、配偶者への罪悪感やバレないようにしたい心理、心の余裕が生まれることなどから、配偶者に対して優しくなることがあります。
反対に、配偶者にかまってもらわなくても心が満たされるため、素っ気なくなる場合もあります。
いずれにしても、夫婦間で何らのきっかけもなかったのに態度が変わったような場合は、不倫が原因となっている可能性があるといえます。
不倫をすると不倫相手に好印象を与えたいとの思いから、外見や服装に気を遣うようになります。
これまであまり気を遣っていなかったのに、急にスキンケアやダイエットを始めたり、服装に気を遣うようになったような場合は、疑わしいといえるでしょう。
特に通勤時の服装にこだわるようになったり、おしゃれな下着を新調して出勤する日に着用するようになったような場合は、社内不倫をしている可能性があります。
相手が通勤で自家用車を使っている場合は、自家用車に不倫相手を乗せている可能性があります。
車内に見覚えのない物(膝掛けなど)が置いてあったり、以前は乱雑だったのに整頓されているなどの変化があれば、疑わしいといえます。
また、カーナビの履歴に相手が普段行きそうもない場所が入っていた場合も、不倫相手を乗せてそこに行った可能性があります。
上記に挙げたような変化について、理由を尋ねた際に、曖昧な答えしか返ってこない場合も要注意といえるでしょう。
「不倫をしているから」とストレートには答えられないので、返答も曖昧、不自然、不合理なものになる可能性が高いといえます。
兆候がある場合はどうするか
上記のような不倫の兆候があるときは、さらに次のような手段で探ってみるようにしましょう。
配偶者の周囲に接触して情報を得る
配偶者の同僚などで、ご自身とも面識のある人がいる場合は、その人に接触して情報を集めてみるとよいでしょう。
最近の残業や休日出勤・出張などの状況がわかれば、配偶者の言動と照らし合わせることで、怪しいかどうか検証することができます。
また、既に社内で不倫のうわさが広まっているような場合は、ストレートにそのことを教えてくれるかもしれません。
ただし、接触した相手が配偶者に「奥さんが(旦那さんが)あなたの浮気を疑っていたよ」などと言ってしまうと、配偶者が警戒して不倫の証拠の隠滅に動き出す可能性もあるので、注意が必要です。
また、接触した相手が配偶者の味方である場合は、何も教えてくれなかったり、ウソの情報を教えられたりする場合もあります。
そのため、相手との関係性にもよりますが、まずは浮気を疑っていることを悟られないよう、それとなく最近の様子を聞いてみるようにするとよいでしょう。
直接聞く前に、SNSなどでできる限りの情報を収集してみるのもよいでしょう。
調査会社に調査を依頼する
配偶者が不倫をしている様子はあるものの、証拠をつかめないという場合は、調査会社(興信所・探偵等)に素行調査を依頼することも考えられます。
調査をしてもらうことにより、例えば配偶者が不倫相手と2人でラブホテルに出入りする場面の写真など、有力な証拠を押さえることができる場合があります。
このような写真は、裁判になった場合も重要視される証拠となります。
ただし、調査を依頼するには相応の費用がかかります。
また、調査を依頼しても、結果的に有力な証拠を押さえることができずに終わってしまう可能性もあります。
そのため、依頼の要否、タイミング、内容などは、慎重に検討する必要があります。
調査を依頼する前に、不倫問題に詳しい弁護士に相談し、具体的なアドバイスをもらった上で、依頼するかどうかを判断することをおすすめいたします。
社内不倫の7つのリスク
社内不倫のリスクとしては、主に次のようなものが考えられます。
- ① 慰謝料を支払う可能性がある
- ② 離婚問題に発展する可能性がある
- ③ 解雇される可能性がある
- ④ 懲戒処分を受ける可能性がある
- ⑤ 出世(昇進)や昇給にひびく可能性がある
- ⑥ 同じ職場の場合転勤の可能性がある
- ⑦ 会社内(上司・同僚・部下)の信頼を失う
慰謝料や離婚の問題は不倫全般に生じうるリスクといえますが、社内不倫の場合はこれに加えて仕事に影響するリスクがあるというのが特徴といえます。
以下、それぞれについて解説していきます。
① 慰謝料を支払う可能性がある
不倫がバレた場合は、被害者(不倫をされた配偶者)から慰謝料を請求される可能性があります。
不倫の慰謝料は、裁判で認められる場合は100万円〜300万円程度となることが多く、示談交渉で解決する場合も同程度の金額を支払わなければならないケースが多いです。
請求を無視した場合や、話し合いで解決できない場合は、裁判を起こされる可能性もあります(話し合いを挟まず、いきなり裁判を起こされる場合もあります。)。
裁判を起こされた場合は、裁判対応に時間、労力、費用(弁護士費用も含む)がかかることに加え、公開の手続きで審理されるというデメリットも生じることになります。
すなわち、誰でも裁判を傍聴しようと思えば傍聴できる状態に置かれるということです。
法廷が開かれるのは平日の日中であるため、会社関係の人が傍聴しに来るという心配はほとんどないかもしれませんが、無視できないリスクと感じる方も多いと思われます。
② 離婚問題に発展する可能性がある
ご自身が既婚者である場合は、配偶者から不倫を理由に離婚を求められる可能性があります。
「不貞行為」は離婚できる条件(離婚原因)の1つとして法律に定められているため、ご自身が離婚を望まない場合であっても、最終的には裁判で離婚が認められてしまう可能性が高いです(民法770条1項1号)。
参考:民法|e−GOV法令検索
なお、不倫をした側からの離婚請求は、原則として認められないとするのが裁判所の考え方です。
そのため、仮に不倫をした側が不倫相手と再婚したいなどの理由から離婚を求めたとしても、相手が離婚に応じない場合は、離婚をするのが困難となります。
③ 解雇される可能性がある
不倫は私生活上の行為であり、本来は職務や会社とは関係がないため、社内不倫は解雇の理由とはならないのが原則です。
しかし、社内不倫によって会社の風紀・秩序を乱し、会社の運営に影響を与えたような場合は、不倫を理由に解雇される可能性があります。
不倫と解雇に関する裁判例をご紹介いたします。
判例① 解雇が認められた事案(東京高裁昭和41年7月30日判決)
妻子あるバス運転手が未成年のバスガイド女性と長期にわたり情交関係を持ち、妊娠させ、女性が中術手術を受けた後に退職したという事情のもと、バス運転手の男性が解雇された事案です。
裁判所は、バス事業にとって風紀・秩序を維持することは重要事項であるところ、不倫によってこれを乱したことや、女性の退職、女子従業員の不安動揺、求人についての悪影響等の実害も指摘した上で、解雇処分を有効と判断しました。
判例② 解雇が認められなかった事案(旭川地裁平成元年12月27日判決)
水道配管会社の女性事務員が妻子のある同僚男性社員と不倫関係にあることを理由に懲戒解雇された事案です。
この事案では、当該女性事務員や男性社員の地位、職務内容、交際の態様、会社の規模、事業等に照らしても、不倫が職場の風紀・秩序を乱し、その企業運営に具体的な影響を与えたとは認められないとして、解雇は無効と判断されました。
④ 懲戒処分を受ける可能性がある
社内不倫が発覚し、会社の秩序や運営に影響を与えたと判断された場合、解雇される事態にまではならなくとも、降格などの懲戒処分に処せられる可能性はあります。
懲戒処分とは、会社の服務規律や企業秩序に違反した社員に対する制裁の処分のことです。
一般に、重い順に懲戒解雇、論旨解雇、降格、出勤停止、減給、戒告などとして就業規則等に定められています。
降格、出勤停止、減給はいずれも給料の減額、一定期間の不支給、役職手当等の不支給などを伴いますので、経済的な不利益を受けることになります。
戒告は厳重注意を受けるものであり、経済的な不利益は生じませんが、会社に不倫を重く受け止められた結果といえますので、昇進に影響するなど間接的な不利益が生じる可能性はあるでしょう。
⑤ 出世(昇進)や昇給にひびく可能性がある
社内不倫が発覚した場合、懲戒処分をされない場合であっても、出世(昇進)や昇給にひびく可能性はあります。
昇進や昇給に関しては、基本的には仕事の能力・成果を重視している会社が多いと思われますので、不倫が直接的な障害になるとは言い切れません。
しかし、同じ能力・成果の人と比較された場合にマイナス要素となるなど、何らかの形で影響する可能性はあるでしょう。
また、社内不倫の発覚により社内での信頼を失い、仕事がやりづらくなった結果、成果が下がり昇進や昇給の障害となるという場合もあるでしょう。
⑥ 同じ職場の場合転勤の可能性がある
社内不倫の相手が同じ職場(同じ勤務地)である場合、複数の営業所等を置いている会社であれば、転勤(勤務地の変更)を命じられる可能性があります。
事業所が一つの場所にしかないような会社では、転勤はなくとも、部署異動など(職種、職務内容の変更)を命じられる可能性があるでしょう。
転勤になれば引っ越さなければならないなど、生活上の不利益を受けるばかりでなく、キャリアアップにも影響が及ぶ場合も多いでしょう。
また、会社の給与体系によっては、上記のような配置転換による職務内容の変更等に伴い、給料が下がる場合もあります。
⑦ 会社内(上司・同僚・部下)の信頼を失う
不倫は、世間一般に「悪いこと」「やってはいけないこと」と認識されていますので、社内不倫が露呈した場合、上司や同僚、部下の信頼を失う可能性は非常に高いです。
「会社は仕事をするところ」という意識の強い人であれば、社内不倫に対してはより一層強い嫌悪感を覚える可能性もあります。
社内での信頼の喪失や評判の低下は、居心地が悪くなるということだけではなく、同僚の協力が得られない、部下が相談しなくなりミスをするなど、業務に支障を及ぼす場合もあります。
その結果、会社に居づらくなり、退職せざるを得なくなるような事態になる可能性もゼロではないでしょう。
なお、これは周囲がどう思うかという問題ですので、懲戒事由に該当するかどうか、法的責任を負うかどうかにかかわらず生じ得るリスクといえます。
例えば、部下と手を繋いで社外の路上を歩いているところを同僚に目撃され、不倫しているとのうわさが社内に広まってしまったとします。
この場合、会社の秩序や企業運営に具体的な影響を及ぼしていなければ懲戒される可能性は低いですし、仮にその部下とは手を繋いだだけで肉体関係まではなかったとすれば法的責任を負う可能性も低いといえるでしょう。
しかし、社内の人に「不倫をしている人」と認識されてしまった時点で、社内での信頼の喪失や評判の低下は免れないと考えられます。
社内不倫の対処法
ここでは、社内不倫の対処法に関して知っておきたいポイントを立場別に解説いたします。
被害者が知っておきたいポイント
会社への通報は慎重にすべき?
夫や妻が社内不倫をしていることが発覚した場合、不倫の事実を会社に知らせて不倫をやめさせたり、相手に報復したりすることを考えることもあるでしょう。
しかし、配偶者の社内不倫が会社に知られた場合は、ご自身にも不利益が生じる可能性があるので注意が必要です。
例えば、夫の社内不倫が会社に知られた場合、夫が懲戒処分を受けたり、会社に居づらくなり退職せざるを得なくなくなったりする可能性があります。
そうすると、家計に入るお金が減少することになりかねません。
また、夫と離婚する場合であっても、財産分与(離婚に際して夫婦の財産を分け合うこと)の対象となる財産がさしたる金額にならないなどの不利益が生じる可能性もあります。
特に、懲戒解雇をされた場合は、退職金の全部又は一部が支給されない場合が多いです。
退職金も財産分与の対象となりますので、これが有るのと無いのとでは、離婚に際してもらえるお金に大きな差が出る場合もあります。
このような不利益が生じる他にも、会社に不倫の事実を通告したり、会社に乗り込んでいったりすると、不倫相手から名誉を毀損されたとして慰謝料を請求されるなどのトラブルに発展する可能性もあります。
そのため、社内不倫が発覚した場合は、まずは会社の外で配偶者や不倫相手と話し合いをするようにしましょう。
冷静に対応することが難しいという場合は、専門の弁護士に代理人として対応してもらうことも検討するとよいでしょう。
慰謝料を請求する
不倫をされた場合は不倫をした配偶者や不倫相手に対し、慰謝料を請求することができます。
裁判所が慰謝料を認めるのは、基本的には不貞行為(肉体関係)がある場合となります。
また、不貞行為の事実を認定してもらうためには、それを裏付ける証拠が必要となります。
したがって、慰謝料を請求する場合は、配偶者と不倫相手が肉体関係を持ったことを裏付ける証拠(2人でラブホテルに出入りする場面の写真など)を押さえることが重要なポイントとなります。
慰謝料の金額は事案により幅がありますが、裁判で決めるときは、離婚に至った場合は200万〜300万円程度、離婚せず夫婦関係を継続する場合は100万円〜200万円程度になることが多いです。
被害の大きさや不倫の悪質性など、様々な事情が考慮された上で決められることになりますので、具体的な見通しについては専門の弁護士に相談するとよいでしょう。
不倫相手に対しては、内容証明郵便を送付して請求し、示談交渉による解決を目指すのが一般的です。
示談が成立しなかった場合には、裁判を起こして請求していくことになります。
不倫をした配偶者に対しては、離婚と一緒に請求し、離婚条件の1つとして取り決めるのが一般的です。
なお、配偶者と離婚をしない場合は、配偶者に請求をしても、夫婦の財布(通常は共通)からお金が出入りするだけの結果となることが多いです。
そのため、配偶者には慰謝料を請求せず、不倫相手にのみ請求するケースが多いです。
いずれの場合も、話し合いで解決できた場合は合意内容をきちんと書面(示談書、離婚協議書等)に残しておく必要があります。
転勤させることを検討
不倫発覚後、不倫の当事者の一方又は双方が退職や転勤をすれば、2人が接触する機会はほとんどなくなるため、不倫が再発する可能性や、その後に会社に不倫がバレるリスクを軽減することができます。
他方、そうでない場合は、職場で接触するという状況が変わることはありません。
そうすると、たとえ不倫関係が解消されたとしても、不倫が再発する不安や、過去の社内不倫が会社にバレるというリスクが残ることになります。
そこで、不倫をした配偶者に対し、転勤(勤務地の変更)を希望することや、転職をすることを促すことが考えられます。
なお、不倫相手に対しては、話し合いの中で退職等をして欲しいと希望を伝えるぶんには問題ありませんが、退職等を強要することはできません。
不倫を職場や家族にバラすなどと脅して退職を迫ったような場合は、罪に問われる可能性や、相手から慰謝料を請求される可能性もあるため、注意する必要があります。
社内不倫の問題に詳しい弁護士へ相談
配偶者が社内不倫をしている、又はその疑いがあるという場合は、社内不倫の問題に詳しい弁護士へ相談されることをおすすめいたします。
不倫に対処するためには、不倫(特に肉体関係)の証拠を押さえることが重要なポイントとなります。
専門の弁護士に相談し、必要な証拠、適切な収集方法、注意点等について具体的なアドバイスをもらうことにより、証拠を効率的に集めていくことができるようになります。
弁護士に依頼した場合、不倫相手との交渉を弁護士に任せることができます。
ご自身で不倫相手と直接やり取りをしなくて済むため、精神的・肉体的な負担を軽減することができます。
また、法律のプロである弁護士が交渉をすることにより、裁判に至ることなく、早期に、適切な解決ができる可能性も高くなります。
不倫をした配偶者とやり直すことが難しい場合、最終的には離婚を考えることになります。
離婚を考える場合は、離婚後の生活を見通した上で、離婚するかどうかや、どのような条件で離婚するかについて、慎重に検討する必要があります。
弁護士に相談することにより、これらについて的確なアドバイスをもらうことができます。
また、弁護士に依頼した場合は、別居や離婚条件の検討といった準備段階から、離婚協議、離婚協議書の作成、あるいは裁判手続の対応に至るまで、全般的なサポートを受けることができます。
不倫している本人のポイント
不倫関係を終わらせる
不倫は犯罪ではないものの、民事上は慰謝料という形で責任追及され、離婚の理由にもなり得る危険な行為といえます。
社内不倫の場合は、それらに加え、職を失ったり、キャリアアップの障害となったりするというリスクも伴いますので、リスクが顕在化したときのダメージはより深刻なものとなります。
そのようなリスクを避けるためには、不倫関係を解消する必要があるでしょう。
不倫関係を解消しても、過去の不倫が発覚して同様のリスクが顕在化する可能性はありますが、不倫関係を続けるよりもリスクを減らすことができます。
なお、関係を解消する際には、お互いにリスクを理解した上で、円満に別れられるように努めるべきでしょう。
お互いに軽い気持ちで関係を持っていたのであれば、関係解消も簡単で、その後の仕事に支障が生じる可能性も低いですが、そうでない場合は慎重さが求められます。
特に不倫相手が本気の場合や、独身・若年などで不倫がバレたときのダメージが少ないような場合は、関係を解消された報復として、不倫をしていたことをバラされる可能性もあります。
そこまでいかなくとも、相手が関係を解消されたことに不満を抱いているような場合、相手との関係が険悪になり仕事に支障が出る可能性もあります。
このようなリスクが心配という場合は、不倫相手との関係を解消するだけでなく、転勤や部署異動を希望したり、転職活動をしたりして、不倫相手と距離を置くように対処する必要もあるでしょう。
解雇されそうな場合は労働問題に詳しい弁護士へ相談
社内不倫を理由に解雇やその他の懲戒処分をされた場合や、その可能性がある場合は、労働問題に詳しい弁護士へご相談ください。
解雇などの不利益な処分は、一定の条件に当てはまる場合にのみ有効にできるのであり、濫用できるものではありません。
特に、不倫は本来は私生活上の行為であるため、それを理由に解雇などが許される場合は限定されています。
しかし、解雇などの有効性を判断するのは専門家でなければ難しいものです。
また、ご自身では不安や罪悪感などにより冷静に対処していくことも難しい場合が多いです。
そのため、労働問題に詳しい弁護士へ相談し、具体的なアドバイスをもらうことをおすすめいたします。
慰謝料を請求されたら専門弁護士へ相談する
不倫の慰謝料を請求された場合は、まずは不倫問題に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。
弁護士に相談するメリットとしては、次のようなものがあります。
仮に裁判になった場合はどの程度の慰謝料を支払う必要があるのか、それを踏まえてどのように対応していくべきかについて、アドバイスをもらうことができます。
そうすることで、慌てることなく、適切な解決に向けて対処していくことができるようになります。
弁護士に依頼した場合、弁護士が相手方との窓口となります。
すなわち、依頼を受けた弁護士は、速やかに相手方に対し、連絡は全て弁護士宛にすること、依頼者本人等には直接接触しないことをお願いします。
それにより、相手方が会社に直接連絡したり、会社に乗り込んでくるリスクを大幅に減らすことができ、会社に不倫がバレることを回避できる可能性が高くなります。
弁護士に依頼した場合、弁護士が代理人として相手方と交渉をしてくれます。
ご自身で直接相手方とやり取りをしなくても済むため、精神的・肉体的な負担を軽減することができます。
法律の専門家である弁護士が交渉をすることで、裁判に至ることなく、早期に適切な条件で解決できる可能性が高くなります。
また、示談が成立した場合、最適な示談書の作成もサポートしてくれることもメリットといえます。
示談の内容を法的に有効な書面に残しておくことにより、将来に被害者とのトラブルが再発することを防止することができます。
また、口外禁止条項(当該事件のことを第三者に口外しない約束を定めた条項)を入れるなど、会社にバレるリスクを軽減する措置も講じてくれます。
まとめ
以上、社内不倫のきっかけや兆候、リスク、対処のポイントなどについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
社内不倫には様々なリスクが伴い、発覚した場合に失うものは大きいといえます。
夫や妻が社内不倫をしている、又はその疑いがあるという場合は、まずは落ち着いて対処法を検討するようにしましょう。
夫や妻の社内不倫が会社に知られ、解雇や減給された場合は、ご自身の生活にも影響が及びかねませんので慎重に対処する必要があります。
具体的な対処法は事案により異なりますので、不倫問題に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。
現に社内不倫をしているという場合は、このようなリスクを理解し、不倫関係の解消などリスクを軽減するための対処をするべきでしょう。
もしリスクが顕在化してしまった場合は、お早めに離婚問題や労働問題に詳しい弁護士に相談するようにしてください。
当事務所では、離婚問題を専門に扱うチームがあり、不倫問題について強力にサポートしています。
LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており全国対応が可能です。
社内不倫の問題については、当事務所の離婚事件チームまで、お気軽にご相談ください。
この記事が、社内不倫の問題にお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。
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