離婚の手続きの進め方|弁護士が解説【チェックリスト付】
離婚は、夫婦関係の消滅という重大な効果を生じさせるため、法律にしたがって進めていかなければなりません。
また、離婚にともなって生活環境が変わるなど、社会生活にも大きな影響が生じます。
離婚に直面したとき、検討すべきことが多く、「何から手をつけたら良いかわからない。」というご状況かと思います。
ここでは、離婚問題に強い弁護士が手続きの進め方、必要な書類、離婚前に検討すべきこと、離婚後の様々な手続き、離婚を早く解決するためのポイント等について、わかりやすく解説しています。
離婚に直面されている方はぜひ参考になさってください。
目次
離婚手続きの種類と進め方
離婚手続きには3つの種類がある
離婚の手続きには、大きく分けて、①離婚協議、②離婚調停、③離婚裁判の3つがあります。
下表はそれぞれの特徴をまとめたものです。
離婚の手続きの種類 | 特徴 |
---|---|
離婚協議 | 当事者(又はその弁護士)が離婚やその条件について話し合いで離婚をする
裁判所を利用しない |
離婚調停 | 裁判所において話し合いによって離婚する 調停委員会が間に入る 時間がかかる |
離婚裁判 | 話し合いではなく最終的には裁判官が判断する
途中で和解が成立することもある 時間がかかる 基本的に裁判の前に調停が必要(調停前置) |
※特徴については一般的な傾向を示しています。
※法律上、離婚調停とは別に審判という手続きもあります。
しかし、家裁の運用上、審判離婚が認められることは稀ですので、基本的には上の3つの種類を検討すれば十分です。
以下、それぞれの手続きの流れを解説します。
離婚協議の手続きの流れ
離婚の話し合い
離婚の話し合いには、特に法律上のルールはありません。
ポイントとしては、離婚の条件(親権、養育費、面会交流、財産分与、慰謝料、年金分割)について、適正な条件となるように話し合っていくということです。
なお、離婚協議で損をしないために、事前に離婚に強い弁護士に相談し、適正な条件や注意点について助言をもらうことがとても重要です。
離婚協議書の作成
離婚条件について、話し合いがまとまったら「離婚協議書」の作成をおすすめします。
離婚協議書とは、離婚やその条件についての取り決めが記載された書面です。
このような書面を作成することで、後々言った言わないのトラブルを防止できます。
離婚の公正証書とは、離婚協議における合意内容について、公証役場で作成した書面のことをいいます。
公正証書にすると、万一相手が金銭債務(養育費など)を支払ってくれないときに、訴訟を提起することなく、強制執行の手続きをとれるというメリットがあります。
養育費や慰謝料の長期分割払いがあるような事案において、債権者(もらう側)の立場であれば、公正証書の方が安心できるでしょう。
離婚届の提出
協議離婚の場合、離婚届を役場に提出することで、法律上離婚が成立します。
話し合いがまとまらない場合
協議離婚が成立しない場合、家裁における「離婚調停」の手続きを検討します。
離婚調停の手続きの流れ
調停での話し合い
離婚調停を申し立てると、家裁において話し合うこととなります。
調停手続きは、夫婦のいずれの主張が正しいかということを決める場ではありません。
あくまで話し合いによって解決するという手続きです。
調停の期間は状況にもよりますが、半年から1年ほどはかかるとみておいたほうが良いでしょう。
実際に裁判所に行くのは1〜2ヶ月毎に1回程度です。
話し合いがまとまった場合
離婚調停が成立すると、法律上、離婚が成立します。
離婚調停が成立する際に、離婚に関する様々な条件について合意した内容は「調停調書」という書類に記載されます。
なお、後日、役場に離婚届を提出しますが、これは戸籍に反映させるための「報告的届出」にすぎません。
離婚裁判の手続きの流れ
離婚調停が成立しない場合、離婚裁判を検討することとなります。
第1回口頭弁論
原告から離婚裁判が提起されると、最初に口頭弁論という手続きが開かれます。
ここでは、通常、訴状の陳述と答弁書の陳述が行われます。
争点整理
第1回口頭弁論の後、ほとんどの場合、次回(第2回)期日が指定され、被告の答弁書に対する原告の反論が行われます。
そして、原告の反論を受け、第3回期日において、被告が再反論を行なう等によって、争点を明確にしていきます。
証拠調べ
証拠調べとは、争点について、立証するために、証拠資料を提出したり、証人尋問等を行う手続です。
証拠資料の提出は、通常争点整理手続中に行いますが、証人尋問等は、争点整理手続により、争点が明確となってから一括して行われます。
したがって、証人尋問等は裁判の終盤に行われるのが通常です。
和解勧試
離婚裁判では、通常は尋問の後、裁判官から和解の可能性についての意見聴取があります。そして、和解の可能性があればその条件などを話し合います。
これを和解勧試(わかいかんし)といいます。
和解が成立しなければ、裁判所から最終的な判断が「判決」という形で示されます。
判決文には、離婚できるか否かの結論のほか、離婚条件についての判断も示されています。
この判断に納得がいかなければ、高等裁判所へ控訴することが可能です。
控訴しなければ判決が確定します。
離婚前にやるべき4つの手続き
ここでは、離婚に踏み切る前に検討しておくべき4つの手続きについて解説します。
①離婚したときの見通しを立てる
最も重要なことは、離婚した後の生活がどのように変化するのかイメージできるようになることです。
そのためには、離婚したときの様々な条件(親権、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割など)のほか、離婚後の家計の収支はどうなるのか(どのくらいのお金が入ってきて、どのくらいの支出が見込まれるのか)、どこで生活するのか、仕事をどうするのか、などの内容を検討する必要があります。
これらを適切に判断するためには、離婚問題についての専門知識と豊富な経験が必要となります。
そのため、離婚問題に強い弁護士に相談なさることをお勧めします。
②別居を検討する
離婚前に別居すべきかを検討します。
状況にもよりますが、多くのケースでは、離婚を決意した段階で別居を勧めています。
相手との離婚を決意しているのであれば、一緒に生活するメリットよりもデメリットのほうが大きくなるためです。
もっとも、夫婦のどちらが別居するのか、別居のタイミングなどは専門家の助言のもと慎重に判断すべきです。
離婚前に別居した場合、婚姻費用についても検討すべきです。
婚姻費用とは、収入が多いほうが収入が少ない方に対して支払う生活費のことです。
例えば、収入が少ない妻が夫の反対を振り切って一方的に別居しても、基本的には婚姻費用を請求できる権利があります。
③持ち出すものを決める
離婚前に別居する場合、引越し先に何を持っていくかを考えましょう。
引越し先が実家ではなく、新居となる場合、家財道具も必要となります。
現在、DV・モラハラなどの被害に遭われている方は、できるだけ早く加害者から離れることが重要となります。
そのような場合は、特に重要なものだけを持ち出すようにしましょう。
なお、当事務所では、DV・モラハラ被害者向けに、別居時に持ち出しを検討すべき私物等のリストをご案内しています。
④家族に説明する
家族の理解を得られるようであれば、離婚の考えについて、事前にご家族に伝えることを検討しましょう。
子供に話すべきかについては、ある程度の年齢(小学校高学年くらいが一応の目安)であり、冷静に受け止めることができるようであれば、離婚の考えについて伝えてよいかと思われます。
離婚届の提出方法
協議離婚の場合
協議離婚の場合、離婚届を役場へ提出することで離婚が法的に成立します。
提出先は、どの市町村役場でもかまいません。
※以前は、届出先が本籍地以外の場合、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が追加で必要となりましたが、戸籍法改正に伴い、2024年3月1日以降の届け出より、戸籍謄本は不要となりました。
調停離婚、裁判離婚の場合
調停離婚、裁判離婚の場合には、調停成立時ないし判決言渡時に法的に離婚が成立します。
しかし、戸籍を変更するために、調停調書謄本もしくは判決書謄本を市町村役場に提出する必要があります。
これを報告的届出といいます。
離婚届の書き方・入手方法・必要書類については、こちらのページで詳しく解説しています。
離婚後に必要な手続き
- 住所や戸籍の手続き → 現在の②住所や戸籍の手続き
- 運転免許書等の名字や住所の変更手続き → 現在の⑥その他の手続き
- 子どもがいる方の手続き → 現在の③離婚後のシングルマザーとなる方の手続き
- 社会保険や年金等の手続き → 現在の②社会保険や年金等の手続き
- 財産分与がある場合の手続き → 現在の⑤財産分与がある場合の手続き
離婚後の手続きチェックリスト
上記でご紹介した離婚後の手続きをまとめた一覧表をぜひご活用ください。
この一覧表はダウンロードが可能です。
離婚の手続きを最短で終わらせるためには
離婚の手続きを最短で終わらせるためには、基本的には「弁護士による代理交渉」をお勧めしています。
これは、裁判所を利用せずに、弁護士があなたの代わりに相手と直接協議を行うという手法です。
弁護士というと、裁判をイメージされる方が多く、事実、多くの弁護士は「すぐに離婚調停を申し立てる」傾向です。
しかし、デイライトの離婚事件チームは、まずは弁護士が相手と交渉します。
なぜならば、その方法が最も依頼者の負担を軽減できると確信しているからです。
離婚調停は、一般的に解決まで長期間を要します。
状況にもよりますが、早くても半年、長くなると1〜2年程度はかかると思われます。
また、時間や労力がかかる分、必要となる弁護士費用も増加します。
そのため、離婚問題をできるだけ早く、かつ、適切に解決するために、当事務所では「弁護士による代理交渉」をお勧めしています。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?
離婚に直面したときは、様々な法律の問題を検討しなければなりません。
また、今後の生活設計に対する助言も必要となるでしょう。
これらに対する最善の助言ができるのは離婚問題に精通した弁護士です。
そして、離婚の手続きを最短で終わらせるために「離婚に強い弁護士に相談する」ことをお勧めします。
離婚を考えている方の状況は多種多様です。
子供の有無や年齢、仕事や生活の状況、有責性(例えば不倫)の有無、離婚条件についてのこだわりなどによって、課題やその対応法がまったく異なります。
離婚に強い弁護士であれば、相談者の具体的な状況を踏まえて、GOAL(目標)やそのための戦略を提案できるでしょう。
まとめ
以上、離婚前、離婚後に検討すべき手続きをご紹介いたしましたがいかがだったでしょうか。
離婚前の場合、離婚とその条件についての見通しを立てることが重要となります。
また、離婚後の場合、引っ越しや名字が変わることから、役場等への様々な届出が必要となります。
さらに、身分関係の変動により、戸籍の手続きも必要です。
多くの手続きがあるため大変とは思いますが、ここでご紹介したチェックリストを使って、漏れがないように進めてください。
この記事が離婚の問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。
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