離婚と税金の関係【弁護士・税理士が解説】
離婚を考えたときに、忘れてはならいないのが税金の問題です。
例えば、相手から多額の財産分与をもらっても、そのほとんどを税金で持って行かれてしまっては意味がありません。
また、財産を渡す側にしても、税金を課されてしまうと、想定外の支出となります。
したがって、もらう側も渡す側も、税金がかかってくるのか、また、かかってくるとした場合どれくらいの額になるのかを抑えておく必要があります。
当事務所には税理士の資格を持つ弁護士が在籍しており、専門的立場から、離婚を考えている相談者の方に対して、課税リスクを踏まえた助言を行っております。
以下、離婚した場合の税金の問題について、解説いたします。
この記事でわかること
- 離婚したときに増える可能性がある税金
- 離婚したことで減る可能性がある税金
- 慰謝料、養育費、財産分与などの課税リスク
目次
離婚すると扶養から外れるため税金が増える?
妻や子供が夫の社会保険に加入しているという世帯の場合、離婚すると夫の税金は増える可能性があります。
離婚すると、妻は夫の扶養から外れます。
母が親権をもつ場合、子供も夫の扶養から外すことが多いです。
扶養から外れると、夫は「配偶者控除」や「扶養控除」の特典を受けることができません。
配偶者控除とは
配偶者控除とは、年収103万円以下の配偶者を扶養している場合に、最大で年間38万円、所得から控除できる制度です。
年収が1120万円を超えると控除額は減っていき、1220万円を超えると控除がありません。
なお、配偶者特別控除は、配偶者の年収が103万円を超えても、201万円までは最大で年間38万円の控除を受けることができる制度です。
扶養控除とは
扶養控除とは、16歳以上の子供や親、親族を扶養している場合に、所得から一定額(16歳以上19歳未満は38万円、19歳以上23歳未満は63万円)の控除を受けることができる制度です。
所得税は、次の計算式で算出されます。
(所得 − 所得控除)× 税率 = 所得税
離婚して、配偶者や子供が扶養から外れると、控除できる金額が減るため、税金が増えます。
どの程度税金が増えるかは状況しだいなので一概には言えませんが、下記の例では、20万円近く増えることになります。
離婚して妻と子供が扶養から外れる前後の比較
具体例 妻が年間38万円、子供(19歳)が年間63万円の控除を受けていた場合
離婚前の夫の課税される所得金額:700万円
(700万円 − 38万円 − 63万円)= 599万円
599万円 × 0.20 − 42万7500円 = 77万0500円
700万円 × 0.23 − 63万6000円 = 97万4000円
国税庁:所得税の税率
なお、子供については、離婚すると当然扶養控除を受けることができないと誤解されている方が多いです。
しかし、養育費を払う場合、状況しだいでは扶養控除を受けることも可能です。
シングルマザー・ファザーの控除
ひとり親家庭の場合、寡婦・ひとり親控除という制度があり、一定の要件を満たせば、税金(所得税・住民税)が少なくなるというメリットがあります。
所得税と住民税の控除額
区分 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
---|---|---|
寡婦控除 | 27万円 | 30万円 |
ひとり親控除 | 35万円 | 26万円 |
【要件】寡婦控除
【要件】ひとり親控除
【結婚】事実婚を含む
参考:国税庁HP
寡婦控除とひとり親控除の併用はできない
女性の場合、寡婦控除とひとり親控除の両方の適用の可能性がありますが、ひとり親控除に該当する場合、寡婦控除は受けれことができないため、併用はできません。
離婚すると住民税は免除される?
離婚しても、住民税が直ちに免除されるわけではありません。
結論としては、年収204万4000円未満のシングルマザー(ファザー)の場合、住民税が非課税となる可能性があります。
住民税の免除の要件
住民税等の免除の要件は下記のとおりです。
住民税が免除される方
住民税も均等割も免除される方
-
- ○ 障がい者
- ○ 未成年者
- ○ 寡婦
- ○ ひとり親
前年中の合計所得金額が次の算式で求めた額以下の方 同一生計配偶者および扶養親族がいない方:45万円 同一生計配偶者または扶養親族がある方:35万円 ×(同一生計配偶者 + 扶養親族数 + 本人)+ 21万円 + 10万円
参考:福岡市HP
離婚したときの住民税の手続について
年の途中で離婚しても、住民税には影響がないため手続きは不要となります。
会社員の方の場合、年末調整の書類を会社に提出すれば翌年度から反映されます。
個人事業主の方の場合は確定申告の際に手続きをすることになります。
離婚することによる税金のメリットはある?
離婚による税金の直接の影響は上記のとおりです。
離婚によって、世帯所得が減少した場合、一定の要件を満たせば所得控除や住民税が非課税となることがあります。
しかし、これまで妻や子供を扶養していた場合、扶養から外れることで所得控除がなくなる場合があります。
離婚の財産分与と税金の関係について
離婚したとき、離婚条件の中で、財産分与という制度があります。
これは、結婚してから夫婦で築いてきた財産を分けるというものです。
資産の移転を伴うため、状況によっては課税される場合があります。
養育費と税金の関係について
離婚するときに子供がいると、養育費の問題が発生します。
養育費は、所得税の課税対象とはなりません。
贈与税についても、極端な事情がなければ通常は課税対象とはならないと考えて良いでしょう。
慰謝料と税金の関係について
結婚しているとき、不貞行為などがあると慰謝料の支払い義務が発生することがあります。
慰謝料の場合、基本的に税金はかかりません。
ただし、例外的に課税されることがありますので注意が必要です。
まとめ
以上、離婚と税金の問題について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
離婚するとこれまでの家計が大きく代わってしまうため、税金の影響も心配です。
しかし、税金の計算は複雑ですので、一般の方が影響の度合いを把握するのは難しい面があります。
また、税務の問題だけではなく、離婚の諸条件についても見通しを立てる必要があります。
そのため、離婚と税金の問題については、専門家に相談されることをお勧めします。
この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。
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