慰謝料に税金がかかる?【弁護士が解説】
慰謝料の場合、基本的に税金はかかりません。
ただし、例外的に課税されることがありますので注意が必要です。
目次
慰謝料とは
慰謝料とは、相手方の不法行為によって生じた精神的苦痛に対する賠償金のことをいいます。
例えば、不貞行為や交通事故の場合、その被害者の方は精神的にも深く傷つきます。
このような場合、加害者に対し、慰謝料を請求できることとなります。
慰謝料をもらったら税金がかかる?
慰謝料の支払いを受けた場合、その慰謝料には、所得税、贈与税その他の税金がかかるのでしょうか?
所得税について
慰謝料は、損失(精神的苦痛)を受けた部分に対しての補填であって、新たな利益が生じることではありません。
したがって、所得税がかかることはありません。
例えば、10万円で購入したばかりのパソコンを友人に貸していて、友人が壊したとしましょう。
そして、友人から10万円を弁償してもらった場合、この10万円は、自分の損失を埋めたものに過ぎず、新たに得た所得ではありません。
よって、所得税がかかることはない、ということです。
贈与税について
また、慰謝料は、加害者が被害者に対して負っている損害賠償義務の履行であり、義務がないのに財産をあげる贈与とは異なります。
したがって、贈与税もかかってきません。
以上から、慰謝料については、原則として課税されることはないと考えられます。
慰謝料に税金がかかる例外的な場合
慰謝料については、上記のとおり、原則として非課税ですが、「社会通念上相当の金額」を超えた場合、所得税がかかってきます。
そこで、「社会通念上相当の金額」が問題となってきますが、明確な基準はなく、裁判の相場、相手の資力、事案の内容等が総合的に考慮されることとなります。
いくらから税金がかかる?
離婚慰謝料の場合
例えば、離婚慰謝料の場合を例にあげてみます。
通常の離婚慰謝料の相場は200万円から300万円程度です。
したがって、例えば、数千万円を相手から慰謝料としてもらった場合は、社会通念上相当の金額を超えており、税金がかかってくる可能性もあると考えられます。
交通事故の場合
交通事故の場合の慰謝料は、入通院の期間に応じて、算定基準があります。
例えば、30万円程度の慰謝料が相場の場合に、数千万円を加害者からもらった場合、課税されるリスクがあると考えられます。
これは、お見舞金のような名目であっても同様です。
参考:国税庁|No.1700加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき
慰謝料として不動産をもらった場合は?
金銭による慰謝料の支払いには上記の通りですが、慰謝料として、不動産を渡したり、土地や建物の資産を売却して慰謝料の金銭を用意する場合などは土地建物の売却について譲渡所得による所得税が課せられる場合があります。
なお、譲渡所得については、こちらをご覧ください。
裁判で得たお金と税金
裁判の結果、相手から金銭を受領する場合、税金がかかるか否かは、その金銭債権の性質によって判断されます。
上記のような慰謝料の場合、基本的には課税はされません。
しかし、売掛金債権のような場合は、当然、課税の対象となるでしょう。
課税トラブルを避けるポイント
課税リスクと避けるために、以下の点に気をつけましょう。
①債権の性質を明確にする
例えば、離婚の場合、相手に対する債権としては、慰謝料の他に、財産分与、養育費、婚姻費用の未払い分、などがあります。
慰謝料は300万円、財産分与は5000万円が相当な事案において、すべてを慰謝料として受け取ると、社会通念上の相当な金額を超えていると判断される可能性があります。
また、「解決金として」受け取る例も見受けられますが、課税リスクという点では望ましい表現とは言えません。
そのため、可能であれば、それぞれの費目ごとに受け取るようにするとよいでしょう。
その他、交通事故や労働事件の場合も同様に、それぞれの債権の性質を明示することで課税リスクを避けることができます。
②示談書等の合意書書面を作成する
万一、税務調査があった際に、きちんと説明できるようにしておくと安心です。
そのため、示談が成立した場合は、その費目を明示した合意書面を作成するようにしましょう。
また、合意書面については、課税リスクの問題以上に、後から、言った言わないのトラブルを避けるために、作成されることをお勧めいたします。
まとめ
以上、慰謝料と課税の問題について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
慰謝料は基本的には課税はされませんが、相場と比べてあまり高額だと課税されるリスクがあります。
また、不動産の場合は、譲渡所得にも注意が必要です。
課税リスクを避けるために、その実質にあった費目を明示した合意書面を作成するようにしましょう。
各費目については、どの程度の額が適切かは、専門家でなければ判断が難しいと思われます。
また、法的に有効な合意書面を作成しておかないと、後々トラブルとなる可能性も懸念されます。
そのため、慰謝料については、専門家に相談されることをお勧めします。
この記事が慰謝料の問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。
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