アスペルガーの相手と離婚したい【弁護士が解説】
当事務所の離婚事件チームは、離婚事件に注力する弁護士で構成されるチームであり、離婚に関する様々な悩みをお聞きします。
ご相談の中で、パートナーがアスペルガーであったため、夫婦関係が破綻してしまったというケースが増えてきています。
ここでは、アスペルガーの相手との離婚問題について、専門の弁護が解説しますので、ご参考にされてください。
アスペルガーとは
アスペルガーとは、発達障害のひとつで、コミュニケーション能力などに偏りが見られるといった症状があります。
アスペルガー症候群の相手との離婚
アスペルガー症候群の人は、成長する過程で、失敗したりいじめられたりした経験により、後天的に人と上手に付き合う術を身に着けた人もいます。
したがって、交際中は、相手に対し、優しく正直な人というイメージをもつことはあっても、アスペルガー症候群であると気づかないことは珍しくないのです。
結婚して初めて、相手がアスペルガー症候群なのではないかと考え始めた人も多いと思います。
ですから、あなたが相手に対して抱えている悩みを、相手のことをよく知らない人に相談しても、なかなか共感してもらえないかもしれません。
あなたが女性である場合、友人に相談すると、「男なんてそんなものだよ」と返され、自分だけが相手に不信感を抱いているのかと悩まれているかもしれません。
あなたが男性の場合であっても、周囲の人から「もう少し我慢しろ」などと言われて、悩まれているかもしれません。
また、周囲の人が、結婚相手がアスペルガー症候群であることを知っていたとしても、わざとやっているわけではないのだからあなたが受け入れるべきだと言われてしまうこともあるかもしれません。
もちろん、一度は将来をともに歩みたいと思った相手なのですから、お互いが歩み寄ることにより、穏やかな夫婦生活を取り戻すことができればそれが一番でしょう。
しかし、それがやはり難しいとお考えの場合、精神的に追い詰められてしまう前に、できるだけ早く、離婚の専門家にご相談ください。
弁護士などの第三者を入れることで、相手との離婚の話が進む可能性は十分にあります。
また、もし離婚の話し合いがまとまらず、最終的に訴訟になったとしても、アスペルガー症候群であることのみをもって離婚の原因とすることは難しいかもしれませんが、一つ一つのエピソードや他の事情も考慮することにより、法律上の離婚原因である「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)の要件をみたす可能性もあります。
なお、当事務所の弁護士は、アスペルガーの知識に精通しておりますので、安心してご相談ください。
アスペルガーの相手の場合の問題と対策
相手方がアスペルガーの場合、離婚において、以下の問題点が見受けられる傾向です。
①深刻さに気づかない
相手方がアスペルガーであるか否かの判断は難しく、長年月に渡って単に「性格の問題」として捉えてしまう傾向があります。
アスペルガーの特徴について、くわしくはこちらをごらんください。
そのため、状況の深刻さに気づかず、アスペルガーの相手との生活をずっと我慢して続けていることがあります。
このような生活が長年月に渡って続くと、疲弊し、精神的にまいってしまう可能性も否定できません。
そのため、「変だな」と感じる場合は、なるべく早く精神科医などにご相談されることをお勧めします。
②協議が難しい傾向
離婚を決意して相手方に伝えても、相手方がアスペルガーの場合、気持ちをまったく理解してくれない可能性があります。
また、コミュニケーションが通常の場合よりも難しいため、離婚条件についての交渉が難航する可能性があります。
相手方が離婚に応じてくれない場合、協議で時間をかけるよりも、離婚調停を申立てる方が場合によっては早く解決できるかもしれません。
離婚成立までの期間が相当期間に及ぶ場合は、早めに別居して、婚姻費用の請求を行うことも検討して良いでしょう。
なお、別居について、相手方の同意は不要です。
別居について、くわしくはこちらをごらんください。
親権はどうなる?
一方配偶者がアスペルガーの場合、これを理由に親権を取得できないかというご相談が多く寄せられています。
そのため、親権の取得について、裁判所の判断基準について、解説します。
親権者の指定について、民法は「子の利益のために必要がある」と規定するのみであり、判断基準は解釈に委ねられていますが、考慮すべき具体的事情として、次の要素をあげている裁判官の文献が参考となります(松原正明「家庭における子の親権者・監護権者を定める基準」夫婦親子二一五題・判例タイムズ747号・305頁)。
このように、親権は様々な諸事情を総合考慮して判断されます。
親権について、詳しくはこちらのページで解説しています。
アスペルガーについては、それだけを理由として、親権者として不適格とはいえません。
ただ、アスペルガーの症状が重く、子育てに悪影響が生じていれば、親権者として不利な事情の一つとなりえるでしょう。
個別具体的な状況をもとに判断することになりますので、親権についてご不安な方は、専門家にご相談されることをお勧めいたします。
調停はどうなる?
離婚調停において、一方がアスペルガーであっても、それだけで有利不利に影響はしません。
そもそも、離婚調停は話し合いの場であり、事実を確定したり、どちらが正しいなどの判断をする場はないからです。
もっとも、アスペルガーの場合、上記のとおり、コミュニケーションが取りにくいなどの問題が生じることがあります。
その場合、調停が通常よりも長期化するなどの可能性はあるでしょう。
離婚後の問題
通常の場合、離婚が成立すると、面会交流を行う場合を除いて相手と会うことはありません。
アスペルガーの事案の場合、離婚が成立しても、相手が気持ちの面で離婚を受け入れてくれずに、連絡をしてくることがあります。
相手と復縁する気持ちがない場合、きっぱりと断ることがポイントとなるでしょう。
しかし、あまりにひどい場合、ストーカー行為となるため法的対応が必要となる場合もあります。
もし、相手への恐怖感があるようであれば、警察等への相談も検討すべきです。
まとめ
以上、アスペルガーの離婚問題について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
アスペルガーの事案の場合、まず、状況の深刻さを理解することが重要です。
そして、離婚を決意される場合は、相手との協議による解決を検討します。
しかし、コミュニケーションが難しい場合は、離婚調停の申し立てを選択肢として持つべきです。
いずれにせよ、一人で抱え込まずに専門家に相談することが大切です。
ご相談の流れはこちらをご覧ください。
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