経営者・社長の離婚時の財産分与はどうなる?注意点やポイント
経営者・社長は一般の方よりも資産が高額になる傾向です。
しかし、離婚時の財産分与においては、原則として配偶者と2分の1の割合で分けることとなります。
ここでは、経営者・社長の離婚時の財産分与について、注意点や損をしないためのポイントを離婚問題に注力する弁護士が解説しています。
財産分与でお困りの方は参考になさってください。
経営者・社長の離婚時の財産分与はどうなる?
経営者は収入が多いため、一般の方よりも結婚期間中の資産合計額が高額になる傾向です。
しかし、経営者であっても、離婚時の財産分与においては、原則として配偶者と2分の1の割合で分けることとなります。
これを2分の1ルールと言います。
もっとも、後述するような場合、この割合が修正されることもあります。
財産分与とは?
財産分与とは、離婚する際に、夫婦が結婚生活の中で協力して築き上げた財産を公平に分配することをいいます。
基本的には、離婚する前に取り決めることになります。
離婚後でも請求することは可能ですが、期間制限(原則として2年間)がありますので注意が必要です。
経営者・社長の財産分与の注意点
経営者の財産分与の注意点について解説します。
対象財産の調査・評価が難しい
まず、会社社長等の場合、保有する財産の範囲が広く、かつ、高額化するため、財産分与の対象となる財産を正確に確定し、かつ、適切に評価する必要があります。
通常、財産分与では、以下のような財産が対象と考えられます。
会社社長等の場合、一般世帯以上に資産を有していることが多いため、まずは上記の財産を正確に把握することが重要となってきます。
特に、会社社長等の場合、②動産(家財道具等)、⑤有価証券(株式等)、⑦退職金(将来受け取るもの)について、注意が必要ですので、ここではこの点に絞ってご説明します。
動産(家財道具等)
動産は、通常は時価評価額は乏しく、財産分与について、あまり問題となりません。
一般世帯では、問題となったとしても、夫婦のどちらが希望の家財道具(例えば、テレビ、タンスなど)を手に入れるか、というレベルです。
しかし、会社社長等の場合、夫婦の一方が、高価な時計、宝石等の貴金属を保有している場合が見られます。
したがって、これらを忘れることなく、対象財産に含めることが必要です。
そして、これらを適切に時価算定しなければなりません。
出資持分
有価証券については、当事者が保有する株式等が対象となってきますが、会社社長の場合、自らが経営する会社の株式も、財産分与の対象となり得ます。
さらに、例えば、夫が会社の代表者で、妻を役員としている会社の場合、夫だけではなく、妻も株式を保有しているケースが多くあります。
このような場合は、夫の株式だけではなく、妻の株式も財産分与の対象となり得ます。
しかも、同族会社等の非上場株式等は、1株あたりの評価額が高額になることもあります。
また、経営者は過半数の株式を保有していることがほとんどであるため、株式だけでも莫大な財産となります。
したがって、経営者の自社の株式については、必ず対象財産に含める必要があります。
また、経営者の場合、ゴルフを趣味とされている方が多くいらっしゃいますが、ゴルフ会員権等も対象となるので注意が必要です。
退職金
会社社長は、あくまで役員であり、従業員ではないことから、退職金がないと誤解されている方もいらっしゃいます。
しかし、経営が順調な会社の多くは、将来、役員が退任するときに退職金を支給するために会社を契約者、社長を被保険者として保険(長期平準定期保険や逓増定期保険等)を掛けていることが多く見られます。
経営が順調な会社がこのような形で保険を掛けているのは、節税目的が大きな理由です。
すなわち、経営状況がよいときに役員報酬として支給するよりも、保険とすれば、その保険料の2分の1から4分の1程度を損金として処理できます。
そして、経営者にとっても、現時点で役員報酬として受け取るよりも、将来、退任するときに退職金として受け取ったほうが税制上有利になります。
したがって、経営状況がよい会社では、経営者に退職金が支給される可能性が高いのです。
しかも、経営者の退職金の額は、かなり高額になります。
そのため、退職金も財産分与の対象とすることを忘れないようにしなければなりません。
上記のような財産について、その存在を調査したり、評価するには、高度な専門的知識が必要となります。
したがって、離婚問題を専門とし、かつ、財産分与を得意とする弁護士にご相談されることをおすすめします。
その他、財産分与の対象財産の調査方法や評価方法については以下ページをご覧ください。
財産分与の割合が2分の1とは限らない
共働き夫婦の場合に限らず、妻が専業主婦の場合であっても、財産分与の割合は原則として2分の1です。
実務上、これを2分の1ルールといいます。
では、会社の経営者で、個人の特殊な能力や努力によって高額の資産形成がなされたような場合にも、相手の要求に応じ、財産の半分を渡さなければならないのでしょうか?
答えは否です。
そもそも、財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持してきた共同財産を、離婚を機に精算・分配するものです(精算的財産分与)。
したがって、共同財産に対する夫婦の寄与の程度、婚姻中の協力及び扶助の状況、職業、収入その他一切の事情を考慮して定めるべきです。
実際の事例においても、2分の1ルールを適用しなかった事例があります。
経営者・社長の財産分与のポイント
配偶者が保有する株式の問題を解決する
一方が会社経営者の場合、他方が会社の株式を保有しているケースが多く見られます。
例えば、夫が会社社長で、自社株の70パーセント、妻は30パーセントを保有しているようなケースです。
このような場合、株式をどうするか、財産分与で取り決めておかないと大変なことになります。
すなわち、株式について、取り決めをせずに、協議離婚を成立させた場合、妻は30パーセントの株式を保有したままであり、会社に対して、議決権や配当請求権等を有することになります。
夫としては、離婚したから妻は株主ではないと考えることが多々あります。
しかし、離婚と会社に対する関係は、まったく別なのです。
妻にしても、夫の会社の経営など望んではいないでしょう。
そこで、このような場合は、株式を財産分与の対象として、離婚協議の中で、妻が夫に適切な時価で買い取ってもらうなどを取り決めておくべきです。
離婚に強い弁護士に相談する
上で解説したように、経営者の財産分与はとても複雑です。
適切に財産分与を行うためには、離婚問題に精通した弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
離婚に強い弁護士であれば、どのような財産が財産分与の対象となるのか、どのように評価すべきか、といった問題をサポートしてくれるでしょう。
経営者・社長の財産分与についてのQ&A
ここでは、経営者の財産分与についてのよくある質問をご紹介します。
会社のお金は財産分与の対象になりますか?
例外的に、その会社が経営者個人と同視できるような場合(会社のお金と個人のお金が区別されていないなど)、法人格を否認して、会社のお金を財産分与の対象とできる場合があります。
また、会社のお金が財産分与の対象とならなかったとしても、経営者が会社の株式を結婚後に保有したのであれば、その株式を財産分与の対象とすることが可能です。
旦那に財産分与を拒否されたら諦めないとダメですか?
しかし、妻は離婚時に財産分与を受ける権利があります。
したがって、諦める必要はありません。
今後の対応については、離婚に強い弁護士に相談なさるとよいでしょう。
まとめ
以上、会社経営者の離婚問題について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
会社経営者の場合、保有資産や役員報酬が高額であることから、財産分与等の問題が複雑化する傾向にあります。
そのため、離婚問題の中でも、特に難易度が高く、適切な解決のためには専門知識が必要となります。
当事務所の離婚事件チームは、会社経営者の離婚事案について、専門知識とノウハウを共有しております。
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