60歳で離婚するときのポイントと注意点|事例で解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

長年連れ添ったパートナーとの別れは、経済的・感情的に大きな影響を及ぼすことが多く、この年齢での離婚には特有の課題が出てくることがあります。

本記事では、実際の事例をもとに、60歳の方の離婚に関わる様々な問題について対処法などを詳しく解説します。

60歳男性からのご相談内容

弁護士相談冠省

ネットで貴弁護士事務所を知り、メールでご相談申しあげます。

私は31年間の結婚歴を有する60歳の勤務医師です.妻は専業主婦の67歳です(公務員年金受給中)。

年収は税込○○円、現在の職場に勤務して10年になり、退職はいつになるのか分かりません。

また現在の財産は預金〇〇円、3年前に購入したマンション、中古オーディオ装置、未婚で無職の29歳の娘が一人いる状況です。

また52歳の時、水商売の女性と食事を数回して、それが浮気として発覚した経緯があります。

今の妻と離婚して、好きな60歳の女性(現在結婚中、この女性は夫からDVを受けており、かつ浮気された経験が1回あります)と結婚したいのですが、まだ私の妻には何も告げておりません。

協議離婚が成立するかどうかは分かりませんが、事前にご教示下さい。

質問内容は以下ですので宜しくお願い致します。

①財産分与について

マンションやオーディオ装置の財産分与は、購入価格をもとに計算するのでしょうか、
あるいは時価で計算するのでしょうか?ご教示下さい。

②慰謝料

離婚の原因は私の浮気になると思われますので、慰謝料はどの程度の金額が予想されるでしょうか。
また再婚したい現在の女性にも慰謝料が妻から請求されるのでしょうか。
もし請求されるとしたらどの程度の金額が予想されるでしょうか?

③養育費

29歳の無職の娘は、もし離婚が成立したら、現在の妻につくと思われますが、この場合養育費を支払う義務は生じるでしょうか。
もしそうなら、どの程度の費用を要するでしょうか?

④予想される退職金の財産分与

これも支払う義務が生じるでしょうか?
退職時期は不明ですが、恐らくあと5年程度で退職かと思われます。

⑤年金分割

厚生年金加入歴22年です。これも支払う義務が生じるでしょうか?

以上宜しくご教示下さい。

 

弁護士からのご回答

弁護士

①財産分与について

まず、マンションについては、一括払いで購入をされたものと思われますので、財産分与時点における不動産の時価によることになります。

オーディオ装置についても同様に、現在の時価によることになります。

②慰謝料

いただいたメールからは、お相手の女性と相談者様がどの程度の関係性にあるか等の事情が明らかではありませんし、慰謝料額は行為の悪質性や、交際期間等の具体的な事情ごとに異なるものですので、予想される金額を断定することはできません。

あくまで一般的な話にはなりますが、夫婦の一方の不貞が原因で離婚に至った場合、妻(夫)が不貞を行った配偶者に対して請求できる慰謝料額の相場としては、200万円から300万円といわれています。

また、お相手の女性と相談者様が不貞関係にある場合には、お2人は奥様に対して共同不法行為を行なっているものとみなされますので、奥様は当然お相手の女性に対しても慰謝料請求をすることが可能です。

額については、大体100万円から300万円が一般的であるといわれています。

③養育費

養育費とは、未成熟子が社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用ですので、相談者様のお嬢様が学生であるとか、もしくは病気等で働けない等のご事情がおありの場合にのみ発生することとなります。

詳細なご事情がわかりませんので予想額をお伝えすることはできませんが、お嬢様が生活するために必要な額が養育費額ということになります。

④退職金の財産分与

あと5年ほどで退職見込みとのことであれば、退職金が財産分与の対象となるかについては、お勤めの病院の退職金規程の定め方等もう少し詳しい事情をお聞かせいただかない限り、お答えするのは難しいです。

仮に対象財産となった場合の清算方法としては、財産分与の時点で将来の退職金または現時点で退職した場合に受け取ることになる退職金額を分割する、もしくは退職金が支給された時点で清算するといった方法が考えられます。

金額は、退職金総額 ×(婚姻期間/退職金基準期間)÷ 2 が原則とされています。

⑤年金分割

分割割合を2分の1として、年金分割が行われるとお考えになった方がいいと思います。

加入歴が長期に渡っているので、奥様は分割を希望されると思いますし、相談者様が拒否なさっても、奥様が裁判所に申し立てた場合、裁判所は2分の1の割合で年金分割を認める可能性が高いです。

相談者様が、お相手の女性と不貞関係にある場合には有責配偶者となりますので、奥様が相談者様の不貞関係をご存知であれば、裁判で離婚が認められる可能性は著しく低くなります。

しかしながら、協議や調停で離婚できる可能性もありますので、離婚手続きの進め方等については、一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。

また、お相手の女性がDV被害者であるとのことですが、一刻も早くDV環境下から脱することができるよう周囲の手助けが必要になると思います。

法律上、保護命令等の手続きもございますので、お相手の女性の離婚問題についても専門化である弁護士にご相談された方がよいでしょう。

 

 

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