離婚時にやってはいけないこと!弁護士が事例で解説
離婚時にやってはいけないこととは?
離婚を考える理由、それは人様々です。
配偶者の浮気、暴力、モラハラ、性格の不一致など、それぞれがおかれた状況は、千差万別です。
最もすべきではない事は、感情的になって行動することです。
当事務所には、離婚問題に悩む多くの方がご相談に訪れます。
ご相談者の中には、専門家のアドバイスを受けずに行動したことで失敗し、取り返しがつかない状況に陥っている方もいます。
次の3つの事例は、そのような典型的なケースです。
ケース①不貞行為の慰謝料請求で失敗したケース
事例
夫Aさんは、5年前、妻と結婚し、3年前に子どもが生まれました。
Aさんは会社員で年収700万円、妻は専業主婦です。
Aさんは、最近、妻が携帯電話をよくいじるようになって、怪しいと感じていました。
そこで、ある日、妻がお風呂に入っている間に、携帯電話を盗み見したところ、他の男性との肉体関係を示すメールのやり取りを見つけました。
具体的には、その男性とキスをしている写真や不倫旅行についてのメールなどです。
Aさんは、怒り心頭のあまり、お風呂から上がった妻に対して、携帯電話を突きつけ、問い詰めたところ、妻は不倫を認めました。
妻からその男性は会社の上司ということを打ち明けさせました。
そこで、Aさんは、相手方男性に電話をかけ、二人きりで面談しました。男性は、いろいろと弁明はしたものの、最終的には不貞関係を認めました。
Aさんは、男性に「今後、○○さん(妻)と浮気はしません。」という内容の誓約書を書いてもらいました。
Aさんは、妻との離婚を決意し、離婚を求めるとともに、相手方の男性には慰謝料500万円を請求しました。
ところが、妻と相手方の男性は、不貞行為を否定し、慰謝料を支払わないと回答してきました。
また、携帯電話のメールについても知らぬ存ぜぬの一点張りです。それどころか、妻は、子どもを連れて実家へ帰り、弁護士を立てて生活費(婚姻費用)として月額13万円の請求を行ってきました。
Aさんは、妻と相手方男性に対して、裁判まで起こしましたが、結局Aさんの不貞行為の主張は認定されず、離婚も慰謝料請求も認められませんでした。
逆にAさんは、妻に対し、毎月13万円の婚姻費用を支払い続けることとなりました。
また、それだけではなく、裁判に要した弁護士費用などの負担も発生してしまいました。
不貞行為の立証責任については前述しましたが、上の事案のように、いったん相手方が認めても、後日、否認に転じる場合が多くあります。
したがって、失敗しないためには、客観的証拠を集めておく必要があります。
この事例では、妻が別居し、生活費を請求しています。
この生活費は「婚姻費用」と呼ばれるものです。
Aさんは妻と子どもに対して、生活保持義務を負っているので、別居中であっても、離婚が成立するまでの間は婚姻費用を支払わなければなりません。
婚姻費用の相当額については、夫婦の年収で決まりますが、この事例の場合、月額13万円は相当額といえます。
Aさんとしては、離婚を求めているのに、妻に婚姻費用を支払っていかなければならないのは納得いかないでしょう。
また、妻の不貞行為が立証できれば、裁判で離婚が認められますが、立証できなければ、別居後すぐに訴訟を提起しても敗訴となります。
Aさんからすると、まさに踏んだり蹴ったりの状況です。
ケース②財産分与を請求して失敗したケース
事例
妻Bさんは、夫と20年前に結婚し、子ども二人がいました。Bさんは、現在、会社員として働いており年収は約300万円、夫は会社員であり年収は1000万円を超えていました。
夫は自ら財産を管理しており、給与が振り込まれる口座も自分で管理していました。
そして、生活費として毎月10万円をBさんに渡していました。
Bさんは、日頃から夫のDVに悩んでいました。
また、些細なことで喧嘩となることが度々ありました。
Bさんは、子どもたちがある程度の年齢になったとことから、夫との離婚を決意しました。
そして、子どもたちを連れて別居するとともに、夫に離婚を求めました。
夫も離婚に応じたため、Bさんは夫に財産分与を求め、夫が管理している財産の開示を求めました。
ところが、夫が開示した預貯金の残高はわずか数万円しかありませんでした。
Bさんは、夫の給与からすれば、少なくとも数百万円の財産があるはずだと主張しましたが、夫は他に財産など存在しないと言い張り、逆にBさんの預貯金や生命保険等の財産分与を求めてきました。
そこで、Bさんは弁護士を通じて離婚調停を申し立てました。
そして、裁判所を通じて、再度、財産開示を求めましたが、夫からはめぼしい財産は開示されませんでした。
結局、Bさんは、夫から財産分与を受けることはできず、逆に自分が夫に財産を分与することとなりました。
解説
財産分与とは、婚姻している期間に築いてきた夫婦の財産を分割する制度です。夫婦の預貯金や生命保険などが対象となります。
例えば、Bさんの財産が総額200万円、夫の財産が総額800万円の場合、対象財産は1000万円となります。
200万円(B名義財産)+800万円(夫名義財産)=1000万円
この場合、Bさんは基本的には2分の1である500万円を取得できますので、夫から300万円の財産分与を受けることができます。
500万円(取得し得る財産)—200万円(B名義財産)=300万円。
しかし、夫が財産はないと言い張った場合、Bさんは夫に財産があることを立証しなければなりません。
すなわち、財産分与においても、財産があることの立証責任は、請求するBさん側にあります。
裁判では、相手方に財産の開示を求めることはできますが、強制力はありませんし、相手方が財産を隠して嘘をついた場合、立証ができません。
また、銀行等の金融機関に対して、裁判所を通じて取引履歴を開示させる方法もありますが、これは銀行名と支店名が判明していなければできません。
そして、この立証ができない場合、裁判所は夫に財産があることを認定してくれません。上記の例では、Bさんは逆に夫に100万円を支払うことになります。
200万円(B名義財産)+0円(夫名義財産)=200万円
200万円÷2=100万円
このようなことから、財産分与においては、同居中に、よく観察して財産内容を把握し、その裏付けとなる資料を収集しておく必要があるのです。
ケース③親権を請求したケース
事例
妻Cさんは、5年前に夫と婚姻し、現在3歳になる子どもと3人で生活していました。
現在、Cさんはパートタイマーとして働いており、年収は約90万円、夫は自営業者であり確定申告上の年間所得は約100万円でした。
Cさんは、普段から夫のモラハラに頭を悩ませていました。
すなわち、夫は日常的に、Cさんに対して馬鹿呼ばわりしたり、無能と罵るなど、人格を否定するような暴言を吐いていたのです。
Cさんは、このような暴言に対しても、子どものために我慢していましたが、とうとう夫のモラハラに耐えられなくなり、離婚を決意しました。
そして、実家に独りで帰り、夫に対して離婚と親権及び養育費を請求しました。
これに対して、夫は離婚には応じるが、親権は絶対に渡さないと主張してきました。
Cさんは、離婚まで時間が掛かると考え、子どもの引渡しを夫へ求めました。
しかし、夫は子どもを渡さないと主張しました。
夫はCさんが実家へ帰ってすぐ、自分の母親を自宅に呼び寄せ、子どもの面倒を見てもらっていたのです。
そこで、Cさんは弁護士に依頼し、離婚調停を申し立てました。
しかし、調停でも親権についての話し合いがまとまらず、別居から約1年後に不成立となりました。
そこで、今度は離婚訴訟を提起し、親権を争いましたが、訴訟提起から1年2か月後(別居から約2年半後)、夫を親権者とする判決が言い渡されました。
解説
この事例は、親権の争いが起こっていますが、Cさんが敗訴した決定的な要因は、Cさんが子どもを残して独りで実家へ帰ったことです。
すなわち、親権の判断において、裁判実務では、現在の監護状況をできるだけ尊重する方向にあります。
これを継続性の原則といいます。
訴訟で親権を争うと、判決までに長期間を要します。
訴訟の平均審理期間は1年2ヶ月ほどです。
その前に調停も行なっていますから、別居から判決まで2年以上経過していることがほとんどです。
つまり、判決の時点で、長期間、夫が子どもを単独で監護しているという既成事実ができるのです。
そのため、裁判では夫に親権が認められたのです。
この点、Cさんは、別居したのは夫のモラハラから逃れるためであり、あくまで一時的に避難するつもりだったとの反論がされました。
しかし、夫はモラハラの存在について、否認しました。
モラハラの立証責任は、それを主張するCさん側にあります。モラハラは目に見えない暴力と言われており、立証することがとても難しいものです。
また、モラハラ加害者は、自分自身に非がないと思っていることが多く、裁判等ではモラハラについて認めることはほとんどありません。
3つの事例で失敗した理由
上記の3つの事例は実際に当事務所で扱ったケースを題材としたものです。
このような事例は特異なケースではなく、よく見受けられる典型的なパターンのものです。
ここで、注意しなければならないのは、Aさん、Bさん、Cさんは皆、やりようによっては、請求が認められたということです。
感情的にならず、正しい知識をもって冷静に対応していれば、決して負けることはなかったのです。
このような失敗をしないために、このサイトでは、離婚に関する法律知識、ノウハウをわかりやすく公開しています。
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