離婚の弁護士費用が払えないときどうすればいい?【弁護士が解説】
弁護士に依頼する費用は決して安くはありません。
もし離婚にかかる弁護士費用が支払えない場合、法テラスの利用や、親族への相談、または依頼を検討している弁護士に直接相談することを考えると良いでしょう。
ただし、法テラスにはメリットとデメリットがあるため、利用する際は慎重な判断が必要です。場合によっては、弁護士を立てずに進める選択肢も考えられます。
この記事では、離婚にかかる弁護士費用の内訳や、費用を捻出する方法について詳しく解説します。
目次
離婚の弁護士費用とは?
離婚の交渉や調停、裁判を弁護士に依頼する場合、通常、下表にあげている費用が発生します。
項目 | 内容 | 支払時期 |
---|---|---|
法律相談料 | 離婚に関する法律相談の費用 | 相談時:正式な依頼前 |
着手金 | 弁護士に依頼する際に発生する費用 | 依頼時 |
報酬金 | 出来高に応じて発生する成功報酬 | 終了時 |
実費 | 事件を処理する上で発生する費用:例えば交通費、切手代、印紙代、コピー代等 | 終了時又は都度 |
具体的な金額は、その法律事務所の報酬基準、依頼する内容、具体的な状況等によって異なるため、一概には言えませんが、数十万円から数百万円に上ることがあります。
弁護士費用は誰が払う?
では、このような弁護士費用を相手に支払ってもらうことはできるでしょうか?
結論としては、原則としてできません。
例えば、相手が離婚を切り出していて、こちら側は離婚を望んでいない状況だとします。
そして、離婚を拒否したら、相手が離婚調停を申し立てたので、仕方なく弁護士に依頼することになったとします。
このような状況でも、自分の弁護士にかかった費用を相手に支払ってもらうことはできません。
当事者としては、納得できないと思いますが、まずはこのような現実を受け止める必要があります。
なお、例外的に弁護士費用を相手に支払ってもらうことができる場合もありますが、ケースとしてはそれほど多くありません。
離婚の弁護士費用を支払えない状況
離婚の弁護士費用を支払えない場面としては、①依頼時と②解決後の状況が考えられます。
依頼時:依頼したくてもお金がない状況
まず、弁護士に頼みたいと考えていても、その費用を捻出できないという状況が想定されます。
この場合、離婚に苦しむ人が法的支援(リーガルサービス)を享受できない状況であるため、事態は深刻です。
無事に解決するために、後述する対処法を検討する必要があります。
解決時:報酬が払えない状況
弁護士に依頼した後、事件が無事に解決したときに報酬が支払えないという状況も想定されます。
ただ、このようなケースは稀でしょう。
このような状況に陥る理由としては、「弁護士報酬が想定していたよりも高額だった」ということが考えられますが、後述する対応をとっておけば、避けられるでしょう。
依頼時に弁護士費用を支払えないときの対処法
お金がない人が頼める弁護士とは?
弁護士は公務員ではないため、離婚を依頼する場合、その対価として上記の着手金等を支払う必要があります。
しかし、離婚に苦しむ方の中には、生活保護を受けているなど、金銭的に困窮されている方もいらっしゃいます。
このような資力が乏しい方のための制度として、「法テラス」というものがあります。
法テラスとは、簡単に言うと、経済的な理由で弁護士に依頼できない方などのために、法律に基づき設立された公的な機関をいいます。
法テラスでは、無料で法律相談を行うことができ、資力要件など一定の要件を満たせば、弁護士の費用等を法テラスが建て替えてくれます。
そして、利用者は分割払いで法テラスに返還していくこととなります。
参考:弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ|法テラス
法テラスを利用する場合の手続きの流れ
窓口、もしくは電話で利用可能かを確認する
利用可能な場合は法律相談の予約をする
法テラス登録弁護士が相談対応
依頼を決めたら、資力要件などの審査を実施する
法テラスを利用するメリットとデメリット
法テラスは、上記のように、お金がない方が無料で法律相談ができ、分割払いで弁護士に依頼できるという点でメリットがあります。
しかし、反面、「弁護士を選ぶことができない」ということが最大のデメリットであると思われます。
すなわち、法律と一口に言っても、様々な分野があります。
離婚問題に苦しむ方としては、離婚に強い弁護士に相談し、依頼したいはずです。
法テラスの法律相談は、法テラスの相談担当に登録している弁護士などが対応しています。
運良く、離婚専門の弁護士に当たる確率はとても少ないと考えられます。
なぜならば、弁護士の中で、離婚問題を専門とする弁護士は決して多くないからです。
また、離婚を専門とする弁護士を探して、依頼をしようとしても、その弁護士が法テラスに登録していない可能性もあります。
すなわち、弁護士は、法テラスに登録するか否かは自由であり、登録していない弁護士は一部に過ぎません。
そのため、法テラスでは、ご自身が依頼したい、離婚問題に強い弁護士を選ぶことができない可能性があります。
-
メリット
- 無料で法律相談ができる
- 弁護士費用を分割払いで返済できる
- 離婚に強い弁護士がいない地域に法テラスがある場合、弁護士と面談できる
-
デメリット
- 離婚に強い弁護士を選ぶことができない可能性がある
- 利用するためには資力要件などが必要
- すぐに利用できない可能性がある
なお、弁護士が法テラスに登録しない背景には様々な事情があるかと思われますが、例えば、下記のような理由が考えられます。
- 業務(仕事)に困っていない
- 法テラスの報酬(算定方法や金額)に不満がある
- 法テラスでの手続きが面倒である
親族等に相談する
ご自身だけで弁護士費用を全額支払うことが難しい場合、ご両親やご兄弟などのご親族に相談して、弁護士費用を捻出される方は多いです。
弁護士費用の支払いが難しい場合、まずは身内に相談してみられるとよいでしょう。
依頼したい弁護士に相談する
弁護士費用は法律事務所ごとに報酬基準があり、具体的な状況に応じて弁護士が決定し、法律相談時に相談者に見積額が提示されます。
弁護士が提示した見積額は、その弁護士が適正額と判断した金額であるため、依頼者から減額の要望があったとしても、基本的に減額されることはないでしょう。
しかし、状況によっては柔軟に対応してくれる可能性もあります。
例えば、下記のような状況が考えられます。
離婚成立時の財産分与、慰謝料や養育費の額が高額になるようなケースです。
権利者側(多くは女性側)が別居後に受け取る生活費(婚姻費用といいます。)の金額が高額になるケースです。
現在預貯金がなくても、高額な所得がある方から依頼を受ける場合です。
上記のようなケースでは、着手金の分割払いや、着手金を減額して成功報酬を増額するなどの柔軟な対応も想定されます。
もっとも、基本的には着手金や報酬金は一括払いであるため、特殊な状況のみの場合と考えたほうがよいでしょう。
訴訟救助について
訴訟を提起するときに、裁判所に納める費用が払えないときには、訴訟救助(そしょうきゅうじょ)という制度を利用する方法もあります。
ただし、訴訟救助の対象は、現実的には裁判を起こすときに訴状に貼る印紙代です。
印紙代の正確な金額についてはこちらをご覧ください。
引用元:手数料:裁判所
また、この制度は、裁判費用の免除ではなく、裁判費用の一時猶予にすぎません。
そのため、この制度を利用するのは、生活に困窮している方で、訴訟提起する場合に限定されます。
参考:訴訟費用について:裁判所
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_01_03/index.html
弁護士を立てないという選択肢
弁護士費用の捻出が難しい場合、弁護士に依頼をしないという選択肢もあります。
協議離婚の場合
協議離婚の事案で、話し合いがスムーズに行くのであれば、弁護士が間に入らなくても当事者だけで解決できる可能性があります。
ただし、当事者だけでの話し合いの場合、適切な条件(例えば、養育費や慰謝料の金額など)がわからないため、損をしてしまうことが懸念されます。
そのため、弁護士に依頼されない場合でも、できるだけ相談されることをお勧めいたします。
良識のある弁護士であれば、事件を依頼しなくても(法律相談だけでも)、きちんと対応してくれるはずです。
また、法律事務所の中には、協議離婚書のサンプルを提供したり、診断してくれるサービスを行っているところもあります。
このような無料のサービスを利用してみるのも手です。
離婚調停の場合
離婚調停については、弁護士がいれば、情報提供だけでなく、代理人として様々な活動を行ってくれます。
したがって、交渉のとき以上に弁護士に依頼するメリットを感じるでしょう。
しかし、調停は、「話し合い」を本質とするため、絶対に弁護士が必要というわけではありません。
そのため、弁護士費用のお支払いが難しい場合、弁護士に依頼せず、ご自身だけで離婚調停に臨むという選択肢を検討しましょう。
ただ、この場合でも、要所々々で離婚問題に精通した弁護士に相談されることをお勧めいたします。
弁護士に相談される際は、法律相談の料金が発生することが予想されますが、相談料だけであれば、調停手続きを依頼するのと比べて格段に費用が安くなるはずです。
また、ご自身だけで離婚調停に出席する場合、調停手続きのノウハウなどが掲載された詳しいウェブサイトを確認して、知識をつけておくことをお勧めいたします。
離婚裁判の場合
裁判手続きは、調停のような話し合いとは異なり、法的に意味のある主張や反論を所定の書面で提出しなければなりません。
そのため、素人の方がご自身だけで対応するのは困難と思われます。
また、何とか自分だけで訴訟遂行できたとしても、相手に弁護士がつくことが想定されるため、不利な立場に置かれることが懸念されます。
したがって、できるだけ弁護士に代理人になってもらうようにすべきです。
ただし、離婚裁判も法律上、代理人をつけない本人訴訟が許されています。
どうしても弁護士に依頼することが難しい場合は、離婚裁判に関して十分な情報を入手して臨まれるようにしてください。
解決時に弁護士費用を払えないという状況を回避するために
弁護士に依頼した後、事件が無事に解決したときに弁護士に報酬が支払えないという状況も想定されます。
このような状況に陥る理由としては、「弁護士報酬が想定していたよりも高額だった」ということが考えられます。
このような事態を回避するためには、事前に報酬金がいくらになるか、十分確認しておく必要があります。
明瞭会計の法律事務所であれば、法律相談の際に見積もりを尋ねると、見積書を渡してくれと思います。
成功報酬に関しては、具体的な金額を示すことが難しいため、計算方法のみを示すことが一般的ですが、ある程度の予算感は把握できるでしょう。
また、依頼された後も、ある程度事件が進んでいくと、証拠書類等が開示されるため、見通し(落としどころ)が立てられるようになります。
そのため、一定程度期間が経過した段階で、予想報酬額を担当弁護士に確認されると、上記の事態を回避できると思われます。
まとめ
以上、離婚の弁護士費用が払えない場合について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
弁護士費用の捻出が難しい場合、法テラスの利用、親族等への相談、依頼したい弁護士への相談などを検討することとなります。
ただし、法テラスの利用はメリットとデメリットがあるため、活用については慎重に判断すべきです。
また、状況によっては弁護士を立てないという選択肢もあります。
いずれにしても、まずは離婚問題に精通した弁護士に相談されることをお勧めいたします。
離婚に強い弁護士であれば、弁護士費用の支払いが難しい方であっても、今後の方向性について親身になって相談に応じてくれると思います。
この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。
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