養育費調停|手続きの流れ・必要書類・費用等を弁護士が解説
養育費が支払われない、養育費について話し合いができないという場合、養育費の調停を利用することが考えられます。
養育費の調停とは、養育費について裁判所で話し合いをする手続きです。
裁判所で話し合うといっても、「どのような手続き?」「必要書類や費用は?」「調停ではどのようなことに気をつければいい?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
そこで、ここでは養育費の調停について、調停が成立または不成立になった場合にどうなるか、手続きの流れ、必要書類、費用について解説し、デメリットや調停に臨む際のポイントについてもご紹介していきます。
養育費の調停を申し立てた方・申立てを検討している方のみならず、申し立てられた方・申し立てられるかもしれない方も、是非参考になさってください。
養育費の調停とは
養育費とは、子どもが社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用です。
養育費の内容としては、子どもの衣食住のための費用・健康保持のための医療費・教育費が含まれます。
養育費の調停(「養育費請求調停」と呼ばれています。)とは、養育費の金額などについて、裁判所で話し合って合意を目指す手続きのことです。
養育費は、「離婚後」に請求できるものですので、離婚前に養育費請求調停を申し立てることはできません。
離婚前に離婚条件の1つとして養育費の金額等を取り決めたい場合は、離婚調停を申し立て、その中で養育費について話し合うことになります。
なお、離婚前、別居中に、離婚するまでの期間における子どもの養育のための費用も含む夫婦の生活費について話し合う場合は、「婚姻費用」の調停を利用することになります。
養育費の調停が成立するとどんな効果がある?
養育費の調停が成立すると、養育費の支払いが滞った場合に強制的に回収する手段を使えるという効果があります。
この強制的に回収する手段を「強制執行」といいます。
調停で話し合いがまとまり、調停が「成立」した場合、裁判所によって合意内容が記載された「調停調書」という書面が作成されます。
この「調停調書」は、裁判所で正式な合意がされたという証になるので、調書記載どおりの支払いがなされない場合、相手方(支払義務を負っている人)の財産を差し押さえて強制的に回収する手段(強制執行)を申し立てることができます。
強制執行は強力な手段なため、調停調書、裁判の判決、公正証書などの正式な書面がないとすることができません。
養育費の調停が不成立となったらどうなる?
調停で話し合いをしたけれども合意ができなかった場合、調停は「不成立」となって終了します。
その後、引き続いて「審判」という手続きに移行することになります。
特に当事者からの申し立ては必要なく、自動的に移行します。
審判は、調停のような話し合いの手続きではなく、裁判所が養育費の金額や支払方法などを決める手続きです。
なお、離婚調停で養育費について合意ができなかった場合は、離婚調停は不成立として終了になりますが、自動的に審判に移行することはありません。
どちらかの当事者が改めて訴訟(裁判)を提起し、その中で養育費の判断をもらうことになります。
ただ、養育費についてだけ判断をもらうために裁判をするのは非効率な場合もあるので、「調停に代わる審判」というものが利用されることもあります。
※「調停に代わる審判」とは、調停が成立しない場合において裁判官が必要と判断したときに、諸事情を考慮して解決案を審判(裁判官の判断)という形で提示するものです。
裁判官の判断に納得できない場合は異議を出すことができ、どちらかの当事者から異議が出た場合、「調停に代わる審判」はなかったこととなり通常の裁判で解決されることになります。
調停呼び出しを無視したらどうなる?
相手から養育費請求調停を申し立てられたときは、裁判所から調停に出席するようにという呼出状が届きます。
それを無視して調停に出席しなかった場合、どうなるかについて解説します。
呼び出しを無視して調停に出席しなければ合意はできませんので、調停は不成立になり、審判に移行することになります。
裁判官は、通常であれば双方の言い分・双方から出された証拠を踏まえて判断しますが、一方の当事者が呼び出しを無視して何らの言い分や証拠を提出しない場合は、他方の言い分や証拠だけを見て判断することになります。
そのため、呼び出しを無視した人に不利な内容の判断がされてしまう可能性があります。
法律(家事事件手続法)では、裁判所からの呼び出しには応じなければならず、正当な理由なく呼び出しを無視した人には5万円以下の過料が課されるとされています(258条1項、51条2項・3項)。
実際に過料を課されることはほとんどありませんが、呼び出しを無視するメリットはありませんので、無視せずに応じるようにしましょう。
養育費の審判
養育費の審判は、裁判官が一切の事情を考慮して結論を定める手続きです。
調停とは異なる手続きですので、調停委員は関与しません。
当事者同士でやり取りするわけではなく、当事者双方が裁判官に自分の言い分やそれを根拠づける資料を提出し、判断をもらうという形態になります。
結論は裁判官が決めるため、必ずしも当事者が納得できるものになるとは限りません。
特に義務者(支払う側)が結論に納得しない場合、任意に支払うモチベーションは低くなります。
そのため、審判の場合の方が任意に支払われず、権利者(請求する側)が強制執行をせざるを得ない状況になる可能性が高くなると考えられます。
審判 | 調停 | |
---|---|---|
結論の決め方 | 裁判官の判断 | 当事者双方の合意 |
調停委員の関与 | なし | あり |
メリット | 合意ができない場合でも結論が出る | ・柔軟な解決ができる ・任意の支払いが期待できる |
デメリット | ・柔軟な解決は難しい ・任意に支払われず強制執行に至る可能性がある |
合意ができない限り成立しない |
審判を無視し、審判で決まったとおりに養育費を支払わない場合、最終的には権利者(請求する側)に強制執行を申し立てられ、財産(給与などが典型的)を差し押さえられて強制的に養育費相当額を回収されることになるでしょう。
養育費の場合は、支払期限を経過してしまった分のみならず、将来支払うべき分についてまで差し押さえをすることが可能です。
また、給料などの差押えは、通常はその4分の1に相当する部分しかできませんが、養育費の場合は2分の1に相当する部分まですることができます。
このように養育費の回収は比較的簡単で強力なものになっています。
強制執行以外にも、履行勧告や履行命令をされることがあります。
履行勧告とは、裁判所が義務者に対し、審判で定められたとおりの支払いをするように書面や電話で強く説得することです。
履行勧告に従わなくても特にペナルティはありません。
履行命令とは、裁判所が義務者に対し、審判で定められたとおりに支払っていない養育費について、一定期限内に支払えと命令を出すことです。
この命令に正当な理由なく従わないときは、10万円以下の過料が課されるとされています。
履行勧告や履行命令は強制執行の前段階として行われることも多く、これらを無視した場合は最終的には強制執行されるでしょう。
いずれにしても、無視し続けても支払義務を免れることはできず、余計に負担がかかることになりますので、無視せずに対応するべきといえます。
事情があって支払うことができない場合、減額について話し合うために調停を申し立てることもできますので、お困りの場合は弁護士に相談することをおすすめします。
養育費の相場
養育費については、目安となる相場があります。
ここでは、養育費の相場がどのように決まるのか、簡単に解説いたします。
父母の収入、子どもの年齢、人数によって決まる
養育費の額は、当事者(父母)が協議によって合意できればその額でかまいせん。
もっとも、権利者側(もらう側)は高い額を希望し、義務者側(支払う側)は低い額を希望することが多いです。
そのため、養育費については、目安となる相場があります。
そして、その相場は、父母の収入や子供の年齢・人数によって計算されます。
この相場の金額の算出は、複雑な計算式を使って行われます。
養育費費算定表
この相場についての複雑な計算を手計算で行うのは大変です。
養育費は子どもの生活にかかわる重要なお金ですので、簡易に素早く相場を確認できるようにしておく必要もあります。
そこで、養育費の相場を簡易に素早く参照できるよう、「養育費算定表」という早見表があります。
家庭裁判所では、この算定表を用いて算出された養育費の金額を、養育費決定の際に重要視する傾向にあります。
引用元:養育費・婚姻費用算定表|裁判所
算定表の詳しい見方については、こちらのページをご覧ください。
なお、当事務所では、養育費の目安を素早く確認したいという方のために、オンラインで、かつ、無料で自動計算できるサービスをご提供しています。
こちらからご覧ください。
養育費請求調停の流れ
養育費請求調停の手続きの流れは以下のとおりです。
養育費請求調停を始めるためには、まず家庭裁判所に申立てをする必要があります。
申し立ててから約1か月後、第1回目の調停が開催され(初回期日)、それから約1か月に1回のペースで話し合いが進められていきます。
1回の調停の所要時間は2時間程度であり、その時間内に話し合いがまとまらなければ2回目、3回目と合意がまとまるまで(または、まとまる見込みなしとして終了になるまで)期日が重ねられていきます。
調停期日では、当事者が交互に調停委員に話をしていくという離婚調停と同様のスタイルで話し合いが進められていきます。
離婚調停の手続きの流れについては、こちらをご覧ください。
養育費請求調停の申立て手続き
養育費請求調停の必要書類
養育費請求調停を申し立てるには、次の書類が必要となります。
必要書類
申立書の書式は、裁判所の窓口でもらうこともできますし、ホームページでダウンロードすることもできます。
引用元:申立書|裁判所
- 対象となる子の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 申立人の収入に関する資料(源泉徴収票写し、給与明細写し、確定申告書写し、非課税証明書写し等)
戸籍謄本は、子どもの本籍のある市区町村役場で取り寄せます。
また、養育費の金額は父母の収入額に応じて算定されますので、収入に関する資料が必要になります。
申立書・標準的な添付書類の他に、裁判所に提出を求められる書類があります。
たとえば、東京家庭裁判所では、事情説明書、進行に関する照会回答書、連絡先等の届出書の提出が求められます。
事情説明書とは、調停を申し立てた経緯や調停で話し合いたいことなどを記入したものです。
進行に関する照会回答書とは、日程調整や必要な配慮(相手方と裁判所で鉢合わせしないように集合時間をずらす等)など調停の進行に関して参考になる事項を記入したものです。
連絡先等の届出書とは、日中の連絡先を裁判所に知らせておくためのものです。
他の裁判所においても、これらに類似する書類を申立書と一緒に提出することが求められます。
詳しくは、申立先の家庭裁判所の窓口やホームページでご確認ください。
参考:家事調停の申立て|裁判所
養育費請求調停の管轄
養育費請求調停を取り扱う裁判所(管轄裁判所)は、原則として、相手方(調停を申し立てられた側)の住所地を担当する裁判所となります。
また、申立人(調停を申し立てた側)と相手方が「この裁判所でやりましょう」と合意した場合は、その合意された裁判所でも取り扱うことができます。
参考:裁判所の管轄区域|裁判所
なお、支部や出張所については合意管轄の対象とはならないので注意してください。
養育費請求調停の費用
養育費請求調停にかかる費用は、家庭裁判所に支払う費用と弁護士費用の2つに大きく分けられます。
弁護士に依頼しない場合は、家庭裁判所に支払う費用として3000円程度あれば調停を始めることができます(子ども1人の場合)。
家庭裁判所に支払う費用
家庭裁判所に支払う費用は以下のとおりです。
- 収入印紙(子ども1人につき1200円分)
- 郵便切手(1000円分程度)
- 戸籍謄本取得費用(450円)
- その他の実費(数千円程度)
養育費請求調停を申し立てる際には、申立手数料として、申立書に1200円分の収入印紙を貼って提出する必要があります。
養育費の対象となる子どもが2人以上の場合、子どもそれぞれについて1200円分の収入印紙を貼る必要があります。
また、申立書と一緒に、指定された金額の郵便切手も納める必要があります。
裁判所により指定される金額は異なりますが、1000円程度のところが多いです。
また、子どもの戸籍謄本も添える必要があるので、その取得手数料として450円かかります(手数料の納付先は各市区町村役場です)。
その他、調停に出向くための交通費や、調停調書を交付してもらうときの手数料などの実費も必要になります。
弁護士費用の相場
調停を弁護士に依頼して行う場合、弁護士費用がかかります。
弁護士費用の金額は、依頼する弁護士(法律事務所)により異なりますが、少なくともトータルで50万円くらいはかかると考えられます。
以前は、弁護士の報酬に関して、弁護士会としての基準がありました(旧報酬規程)。
現在、弁護士報酬は自由化されており、各法律事務所が独自に定めていますが、旧報酬規程を踏襲している事務所も多いかと思いますので、相場としてはこの旧報酬規程が参考となります。
旧報酬規程(調停事件)の弁護士費用の内訳と相場は以下のとおりです。
項目 | 内容 | 支払時期 | 旧報酬規程相場 |
---|---|---|---|
法律相談料 | 法律相談の費用 | 相談時:正式な依頼前 | 30分5000円〜1万円 |
着手金 | 弁護士に依頼するとき最初に支払う費用 | 依頼時 | 20万円〜50万円程度 |
報酬金 | 結果に応じて支払われる費用 | 終了時 | 20万円〜50万円程度(※) |
日当 | 弁護士が事務所を離れたときの費用 | 終了時またはその都度 | 半日3万円・1日5万円程度 |
実費 | 弁護士が事件処理をするうえで必要になった費用 | 終了時またはその都度 | 数千円程度(交通費などで高額になる場合もある) |
(※)一定の金額ではなく、「得られた(または減額できた)養育費の○年分の○%」(「得られた養育費の2年分〜5年分の10%〜16%程度」のことが多い)という形で定められていることが多いです。
たとえば、「得られた養育費の5年分の11%」という定めの場合、月6万円の養育費が得られた場合、報酬金は39万6000円となります。
なお、以上に示した費用の相場は養育費請求調停のみを依頼する場合のものです。
離婚前に離婚調停を依頼した場合、特に報酬金は離婚達成・離婚条件獲得に応じて算定された金額も加算されるので、上記の相場を大幅に上回ることもあります。
具体的な金額については、各法律事務所のホームページや法律相談でご確認ください。
養育費請求調停のデメリット
養育費請求調停には、以下のようなデメリットが考えられます。
- ① 解決までに時間がかかる
- ② 適切な解決とならない可能性がある
- ③ 弁護士費用が割高となる
デメリット①解決までに時間がかかる
調停の最大のデメリットは、解決までに時間がかかることです。
調停は1回の所要時間が2時間程度で、その時間内に話し合いがまとまらなければ2回目、3回目と約1か月ごと(うまく日程調整ができない場合は1か月半〜2か月ごと)のペースで進んでいくので、どうしても解決に至るまで時間を要します。
令和3年度の司法統計によれば、家事調停の既済事件の平均審理期間は7.4か月と発表されています。
家事調停には養育費調停以外の調停も含まれているところ、養育費請求調停の場合は平均審理期間(7.4か月)よりも若干短くなる傾向にあると思われます。
ただ、権利者(請求する方)または義務者(支払う側)が自営業のなどで収入を確定する作業が複雑になる場合や、算定表で考慮されていない特別な費用(私立学校の学費、塾代、習い事の月謝、留学費用、特別な治療費など)の分担で争いがある場合などは、1年程度かかることもあります。
養育費は、子どもの生活に必要なお金ですので、養育費請求調停の間(調停成立前)も「仮払い」という形で、義務者(支払う側)が適正と思う金額が暫定的に支払われることがあります。
ただ、あくまでも義務者が適正と思う金額を任意に支払うものですので、権利者(請求する側)が請求している金額よりも少額であることがほとんどですし、義務者が適正と思う金額が0円である場合は、全く支払われないことになります。
未だ調停が成立していない段階だと、先に説明した差押えなどもすることができませんので、強制的に回収することができません。
したがって、調停での解決に時間がかかればかかるほど、養育費を受けるタイミングが先延ばしになってしまうことになります。
なお、仮払いを命令してもらう手続きもあります(これを「仮払い仮処分」といいます。「審判前の保全処分」という手続きの一つです。)が、厳格な条件(子どもの生活に現に支障が生じているなど)に当てはまる場合にしか利用することができません。
調停期日には、原則として出席することが求められています。
調停期日は平日の日中に設定されますので、その時間帯に仕事をしている方は、仕事を休まなければいけません。
調停が成立するまで1か月に約1回のペースで仕事を休んで調停に出席することになるのは大きな負担といえます。
対応策
いきなり調停を申し立てるよりも、まずは協議による解決を試みるのがよいでしょう。
協議による解決とは、裁判所を通さず、相手方に直接養育費の支払を求め、その金額や支払方法などについて話し合って取り決め、支払ってもらうようにすることです。
裁判所を通さないので早いペースで進めることができ、解決に至るまでの期間を短縮することができます。
その分養育費を受け取れるタイミングを早めることもできます。
また、裁判所に出頭する手間もありません。
ただ、協議による解決は養育費に関する専門知識がないと損をしてしまう可能性があります。
また、離婚した相手方と直接交渉するのは気が重いという方も多いでしょう。
そのため、弁護士に代理人として交渉してもらうこと(代理交渉)を依頼するのがおすすめです。
弁護士に代理交渉を依頼すれば、弁護士が代理人として直接相手方と交渉を行い、適切な条件での解決を図ってくれます。
ただし、相手方が話し合いを拒否する場合や、話し合っても全く折り合いがつかない場合は、次善の策として調停を申し立てる必要があります。
デメリット②適切な解決とならない可能性がある
仲介をしてくれる調停委員は法律の専門家ではありません。したがって、「相手方の言い分とこちらの言い分の中間値で合意するのがよいのではないか」など少々雑な提案をしてくることもあります。
弁護士をつけずにご自身で対応している場合、「調停委員の言うことが正しい」と思い込んでしまい不利な条件でも合意してしまうことがあるかもしれません。
これでは適切な解決とはなりません。
また、一旦合意して調停が成立してしまうと、後で不利な条件で合意してしまったと気づいた場合でも、後から合意内容を変更することは困難です。
対応策
弁護士に依頼することにより、勘違いなどによって不利な条件で合意してしまうことを防ぐことができます。
弁護士は調停に同席し、調停委員に誤解の生じるような言動があった場合は指摘してくれますし、調停委員からの提案についてもどういう意味なのか説明してくれます。
そして、審判になった場合はどうなるかについての見通しをつけた上で最善の判断ができるように導いてくれます。
そのため、調停委員の言うことに翻弄されたり、誤解したりすることなく、適切な判断ができる状態になることができます。
デメリット③ 弁護士費用が割高となる
調停は協議よりも手間や時間がかかるので、弁護士に調停を依頼する場合は代理交渉を依頼する場合よりも弁護士費用が割高になることがほとんどです。
対応策
まずは弁護士に代理交渉による解決をお願いするのがよいでしょう。
代理交渉によっても解決できなかった場合は調停に進むことになりますが、その際に一旦交渉を試みたことが余計な出費になるとは限りません。
一旦交渉を試みてから調停に進む場合、調停の着手金全額が改めて必要になるのではなく、調停の着手金と代理交渉の着手金の差額だけが必要になるとの料金設定になっている事務所も多くあります。
養育費調停の4つのポイント
養育費について適切に取り決めるために心がけるポイントをご紹介します。
ポイント① 相手の収入資料を必ず確認する
養育費の適正額は、自分の収入・相手の収入・子どもの年齢と人数によって決まります。
そのため、実際よりも少ない収入額を前提として養育費を算定してしまうと、算出された養育費の金額は本来の適正額よりも少なくなってしまいます。
そこで、収入額を正確に把握するため、相手の収入は必ず資料で確認するようにしましょう。
基本的には源泉徴収票で確認する(「支払金額」を見る)ことになります。
複数の収入源がある場合は市区町村発行の所得証明書、税額決定通知書なども提出してもらって確認する必要があります。
また、個人事業主として副業をしている場合、確定申告書も提出してもらい事業収入の金額も確認する必要があります。
基本的には確定申告書で確認する(「課税される所得金額」を見る)こととなります。
ただ、養育費と税金では算定の考え方が異なりますので、必ずしも養育費の算定をする際に基礎となる収入額が「課税される所得金額」と一致するとは限らず、調整が必要になる場合があるので注意しましょう。
このように、資料を確認することができても、養育費の算定をする際に基礎となる収入額を正確に把握するのは難しいことがあります。
資料に記載してある金額をそのまま算定の基礎としてしまうと損をしてしまうこともあるので、できる限り弁護士に収入資料を見せて相談することをおすすめします。
ポイント② 特別支出があれば加算する
算定表においては、あくまでも標準的な生活費しか考慮されていないことに注意しましょう。
私立学校に通う場合の学校教育費、塾の費用、習い事の月謝、留学費用、特別な治療費など(「特別支出」といいます。)は算定表で考慮されていませんので、その分担に関しては別途決める必要があります。
これを決めずに算定表どおりの金額でいったん合意してしまうと、相手が任意に応じない限り後から加算するのは困難です。
そのため、特別支出がある場合は、その分担について、必ず調停の中で話し合うようにしましょう。
実際にかかっている金額について資料(学校からの通知、請求書、振込明細など)を準備し、どの程度分担を求めるのか(折半・収入割合で按分など)、どのように加算するか(月々の養育費に加算する、入学金などは必要な時期にまとめて支払うなど)について意向をまとめておくとよいでしょう。
なお、特別支出を加算するかどうかについては争いになることも多いです。
調停で話し合いがまとまらずに審判になった場合は、特別支出の性質、両親の収入・学歴・地位などから義務者(支払う方)に負担させるのが不合理でない場合には加算が認められる傾向にあります。
弁護士が代理人についている場合は、審判になった場合の見通しを踏まえた上で話し合いができるので、調停でうまく調整できる可能性も高まります。
ポイント③ 金額以外の条件にも注意する
養育費の調停では、養育費の金額をいくらにするかに意識が集中しがちですが、それ以外の条件についても気を配るようにしましょう。
養育費は子どもが社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用ですので、いつまで支払うか(終期)については子どもが独立自活するまでとするのが本来です。
ただ、一般的には、20歳(かつての成人年齢)になれば独立自活できると考えられているため、裁判で判断される場合は20歳までとされることが多いです。
しかし、たとえば子どもが大学に進学することが予想できる場合は22歳までとするのが実態に即します。
実際に22歳までとすることができるかについてはケースバイケースですが、「一般的には20歳までだから」という理由で漫然と決めずに、よく検討して話し合うようにしましょう。
支払方法について
養育費の支払方法は、定期的に(月々)子どもを育てている親に渡す(通常は口座振込)というのが原則です。
しかし、合意ができるのであれば、一括支払い、子どもの口座への直接振込、学校等への直接支払いなど、他の方法で支払うことも可能です。
ただ、イレギュラーな方法ですので、採用する際は注意が必要です。
調停の中でこのような支払方法を相手方から提案された場合や、自分から提案したいという場合は、できる限り弁護士に相談して慎重に検討するようにしましょう。
養育費の一括払いについて、詳しくはこちらをご覧ください。
将来の紛争を回避する工夫
養育費は子どもが独立自活するまで定期的に支払われるという性質上、調停成立後に再び争いになるケースも多いといえます。
養育費調停では、養育費の金額はその時のお互いの収入額や特別支出などを前提に決められますが、調停成立後に前提としていた事情が変わることがあります。
合意の前提としていた事情に変更があった場合、養育費の変更をすることは可能ですが、合意時に予測できたかどうか、養育費を変更するほどの事情変更なのかなどについて争いになる場合も多いです。
このような将来の紛争を完全に封じる策を講じることは難しいですが、できる限り回避するように工夫することは可能です。
たとえば子どもが現在5歳で将来大学に進学するかわからない場合、「子どもが大学に進学した場合は、その学費について別途協議する」という合意を調停でしておくなどです。
これにより、少なくとも、実際に子どもが大学に進学した際に「子どもが大学に進学することが予測可能だったかどうか」という争いが生じることは回避できると考えられます。
ただし、養育費の問題に精通した弁護士でないと対応は難しいので、弁護士に相談しながら検討するようにしましょう。
ポイント④弁護士に依頼する
適切な解決のためには、養育費の問題に精通した弁護士に依頼することがおすすめです。
養育費の相場は算定表を参照すればわかるため、調停も簡単にできるような気がするかもしれません。
しかし、算定の基礎となる収入の把握、特別支出、終期などについてよく精査しないと、不利な条件であることに気づかないまま不利な条件で合意してしまう場合もあり得ます。
弁護士に依頼した場合はこのような事態を防ぐことができるのはもちろん、上記にご紹介したポイント①〜③も効果的に実践することができ、適切な解決につながりやすくなります。
弁護士に依頼すると弁護士費用がかかりますが、自分で対応するよりも受け取る養育費を増額できる(または、支払う養育費を減額できる)可能性は高くなるといえます。
まとめ
以上、養育費調停について、調停が成立または不成立になった場合にどうなるか、手続きの流れ、必要書類、費用、デメリット、調停に臨む際のポイントについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
養育費は子どもの日々の生活に必要な大切なお金です。
養育費の調停では、迅速かつ適正な解決を目指すことが重要です。
ただ、専門知識や技術がないと難しい面も多いです。
養育費の問題に精通した弁護士であれば、最適な手段で、最善の解決を図ってくれますので、お困りの場合はまずはご相談されることをおすすめいたします。
この記事が、養育費でお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?