不倫相手との別れ|リスクや対処法を弁護士が解説
不倫関係というのは、いつの世にもあります。
そして、いつの世でも、不倫関係はトラブルの種となってきました。
不倫関係が頻繁に古今東西を問わず物語で取り上げられるのは、トラブルが多くて題材に事欠かないからこそなのかもしれません。
トラブルを回避すべく、不倫相手と別れようとしている方もおられるでしょう。
しかし、上手く別れられず、不倫を暴露されないよう苦慮する羽目になるなど、泥沼状態になってしまう場合もあります。
今回は、不倫相手と別れる際のリスクや対処法について解説していきます。
不倫相手との別れの特徴
配偶者のある人が不倫相手と別れようという場合には、次のような問題が起こることがあります。
- 別れを切り出したら、慰謝料を請求されたり、不倫したことを黙っている代わりに手切れ金・口止め料を払え、と言われる。
- 相手に、「別れたくない。どうしても別れるというなら、職場や家族に浮気のことを暴露する。」と迫られる。
- 実際に不倫の事実を暴露される。
- 別れに納得しない不倫相手に付きまとわれる。
いずれも大変厄介な事態です。
配偶者のある側にとっては特に、不倫は他人には知られたくない事実であるため、別れようとする際、相手に「不倫の事実を公にする」と言われると大変困ったことになります。
これが、不倫相手と別れる場合の特徴といえるでしょう。
このような事態に陥らないよう、不倫は最初からしないのが一番です。
もし不倫をしてしまった場合にも、なるべく早く別れることで、深刻なトラブルを未然に防げる可能性が高まります。
不倫を続けることには、
- 配偶者から慰謝料を請求される。
- 離婚を求められる。
- 離婚したかったのにできなくなる。
- 社会的信用が大きく損なわれる。
といったリスクもあります。
次は、不倫を続けることにより生じる不利益などについてご説明します。
別れたい側(配偶者のある側)の注意点
不倫をしているがもう別れよう、と考えている方は、そのまま別れるようお勧めします。
不倫関係は、社会的に認められず、非難される関係であり、早期に清算するに越したことはありません。
配偶者にバレるまで関係を継続する?
しかし、現在不倫をしている人の中には、不倫相手との関係を断ちがたく思う人もいるかもしれません。
実際のところ、配偶者が気が付いていない間は不都合を感じない、ということもあるでしょう。
そのため、配偶者にバレなければ、不倫関係を続けても別によいのでは?と思うかもしれません。
そう簡単にバレはしない、と思っている方もいるかもしれません。
しかし、配偶者はあなたのことをよく見ています。
配偶者は、あなたの行動パターンが急に変わった(残業や出張が増えた、休日の外出が増えた、スマホをよくいじっているなど)、態度が変わった、おしゃれになったなどの変化やSNS上での不自然な振る舞いなどに、あなたが思う以上に敏感に気づいています。
いつ何時、不倫関係の証拠を突き付けられるかわかりません。
不倫関係はバレたが最後、以下に示すように大きなデメリットがあります。
深入りしてしまう前に別れ、関係を速やかに終わらせるのが賢明です。
なお、以下でご説明する内容は、特に記載のない場合、配偶者と相当程度の期間別居しているなどして婚姻関係が破綻している、という状況ではないことを前提としています。
別居した夫婦の一方が不倫をした場合の慰謝料請求については、以下のサイトをご覧ください。
慰謝料を請求される
配偶者には、他方の配偶者が不倫していた場合、不倫をしていた配偶者に慰謝料を請求する権利があります。
不倫(法律上は「不貞行為」といいます。)が配偶者への不法行為(民法709条)となり、慰謝料請求の対象となるということは、法律上確立していることです。
不倫をされた配偶者は、離婚を請求する場合はもちろん、離婚までは望まない場合でも、慰謝料の請求ができます。
不倫をしていたとなれば、配偶者に、数十万円~300万円程度の慰謝料を支払うことになると覚悟しておかなければなりません(あくまで目安であり、状況次第で、これ以上の慰謝料となることもないわけではありません。)。
自動計算ツールには注意
ネット上には、不倫慰謝料を自動的に計算できるというツールも見られますが、不倫の慰謝料はそう単純なものではありません。
慰謝料は示談で決まることも多く、どのような結果を希望するか(離婚するか否か)や、調停や裁判になっても良いのか、といった交渉の状況によって、慰謝料額が大きく変わってきます。
裁判になった場合でも、不貞行為の慰謝料額は、
- 不倫相手との関係性
- 不貞行為の状況・期間・回数
- 婚姻してからの年数
- 家庭の状況
- 子どもの有無、年齢、人数
- 当事者の健康状態
- 不倫された配偶者の精神的打撃の程度、被った影響
などの多くの要素について全般的に考慮して柔軟に定められます。
裁判官の裁量も大きいのが実情です。
ネット上の計算ツールのように、定型的ないくつかの質問に答えるだけで金額が決まるようなものではないのです。
そうしたツールを用いる際には、あまり信用せず、「慰謝料はこの程度になる」と思いこまないよう気を付けましょう。
慰謝料を請求されたらどうする?
配偶者から不倫の慰謝料を請求されたら、どうすればよいでしょう?
ご自身で話し合うことももちろんできますが、弁護士に交渉を依頼することもお勧めです。
特に、相手が感情的になっている、あまりに高額な慰謝料を要求されている、など、話し合いが困難な場合には、弁護士に相談する方が良いかもしれません。
弁護士に交渉を依頼すれば、以後弁護士が代わりに相手方と話をしてくれます。
不貞行為による慰謝料については、以下のサイトでも詳しく解説していますので、ご参照ください。
離婚を求められる
不倫がバレれば、当然、配偶者から離婚を求められる場合もあります。
民法は、配偶者に不貞行為(不倫)があった場合、裁判に訴えれば離婚を認める、と定めています(民法770条第1項一号)。
そのため、不倫していた場合、配偶者から離婚を求められると、最終的には拒否することはできません。
第770条第1項
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
・・・
引用元:民法|電子政府の窓口
「たった一度のことだ。」「軽い遊びで本気じゃない。」などと言っても、言い訳として通用しません。
不倫というのは、それだけ重大な配偶者への裏切り行為だということです。
「話し合えば何とかなる」「謝れば許してくれる」などと甘い考えの方もいるかもしれませんが、本気で離婚を求めている配偶者の気持ちを変えることは、なかなかできるものではありません。
離婚、別居ということになれば、配偶者とも、自分が親権者とならない場合は子どもとも、以前のように交流することはできなくなってしまいます。
家庭生活も維持しながら、不倫関係も継続しよう、というのは、とてもリスクの高いことなのです。
裁判で離婚が認められる場合については、以下のサイトも参考にしてください。
離婚したくてもできない
逆に、もう配偶者とは離婚したいと思っている場合でも、不倫がバレてしまうと、離婚できなくなってしまうことがあります。
不貞行為をした当事者は、婚姻関係が破綻に至ったことについて責任がある有責配偶者(ゆうせきはいぐうしゃ)となります。
有責配偶者からの離婚請求は、社会倫理、道徳感に反するとして、法律上簡単には認められません。
自分が不倫して夫婦関係を壊しておいて、「離婚してくれ」と言い出して夫婦としての義務を放棄する、というのは、あまりにも身勝手で許されない、ということです。
配偶者も、「不倫しておいて、離婚してほしいと言い出すなんて!!」と感情的になり、意地になってしまうこともあるでしょう。
有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- ① 夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと
- ② 夫婦の間に未成熟の子が存在しないこと
- ③ 配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれる等離婚を許容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと
このような要件を全て満たすことは、すぐには難しい場合が多いでしょう。
裁判にしても簡単に離婚が認められないとなると、話し合って協議離婚するしかなくなります。
そうすると、相手に離婚に応じてもらう必要が出てくるわけですから、高額の慰謝料や財産分与、養育費の支払に応じなければならなくなってきます。
有責配偶者で離婚したい方も、離婚の交渉について弁護士に相談することが可能です。
通常の慰謝料、財産分与、養育費の相場に沿った交渉とは異なる対応が必要となりますし、調停や裁判になった場合にはより慎重な対応が必要となりますので、弁護士に相談する必要性は、むしろ高いかもしれません。
有責配偶者から離婚を請求する場合については、以下のサイトでも詳しく解説しています。
社会的信用が傷つく
芸能人の不倫スキャンダルを見ても明らかなように、不倫をしたということは社会的信用を著しく傷つけます。
職場でも、嫌な噂を立てられる、評価が低くなって出世等に差し障る、職場に居づらくなる、といったことがあるかもしれません。
もし不倫相手が職場内の人であれば、一方又は双方が退職せざるを得なくなることも実際にあります。
子どもにも知れてしまえば、子どもも重大な精神的ショックを受け、不倫していた親への信頼をなくしてしまうでしょう。
PTA不倫など保護者同士での不倫となれば、子どものいじめの原因になるなどして、親子ともその地域にいることができず、転居を余儀なくされるかもしれません。
不倫は、自分も家族も不倫相手も、大きく傷つけるリスクのあることだと知ってください。
相手が別れてくれない場合
不倫関係を清算しようと別れを切り出しても、相手が別れてくれない、という事態も考えられます。
男女関係のもつれは執着を生みやすいので、こういうことも十分起こり得ます。
不倫相手としては、別れを切り出されるということは自分より配偶者を選ぶということであると受け取ってしまい、自尊心が傷つけられる可能性があります。
「自分を粗末に扱って家庭を選ぶなんて!」「妻(夫)とはもう別れたいと言ってたくせに!!」と逆上してしまうことが十分あり得るのです。
不倫相手は、あなたが不倫をしていたという事実を握っているのですから、逆上されてしまうと大変なことになるかもしれません。
無事に別れるためには、相手に真摯に謝罪し、しっかりと対応しましょう。
後に述べるように不倫相手も不倫による不利益を被っているのだということ、別れを切り出すことで相手の自尊心を傷つけているかもしれないことを忘れず、誠意をもって対応しましょう。
通常は、不倫相手と別れる場合、離婚とは異なり、財産の清算などの法律上の問題が生じることは少なく、弁護士に依頼して別れについてサポートを受ける、ということは一般的に行われているわけではありません。
しかし、
- 相手が逆上して、「不倫のことをバラしてやる」などと脅迫してきた。
- 不倫のことをばらされたくなければ関係を続けろ、などと言われた。
- ストーカーまがいの行為を受けている。
- これまでのプレゼントやデート代を返せと言われた。
- 手切れ金を要求された。
- 相手が弁護士を立てて要求をしてきた。
- 家族や職場に知られずに解決したい。
などという場合には、弁護士のサポートを受けるのが有効な場合もあります。
お困りの場合は、一度弁護士に相談してみてください。
弁護士に相談するメリット、弁護士選びのコツなどについて、以下のサイトも参照してください。
不倫関係を職場や家族に知られずに解決するための対応の仕方について、以下のサイトでも詳しく解説していますので、ご参照ください。
別れを切り出された側の注意点
次は、別れを告げられた側についてです。
不倫関係とはいえ、別れようなどと言われたら、穏やかでいられない方もおられるでしょう。
しかし、不倫関係は、社会的に非難される関係であることは疑いようがありません。
不倫の関係を続けることは、不倫相手となっている方も傷つくことなのです。
既婚者と不倫をしていると、その人の配偶者から慰謝料を請求されるおそれもあります。
慰謝料を請求される可能性は別れたからといってなくなるわけではありませんが、関係を続けていればいるほど、他方の配偶者に知られてしまう可能性は高まりますし、慰謝料も高額化していくおそれがあります。
自身の置かれた状況をよく見極め、別れに向けて進むことをお勧めします。
関係継続を強制できる?
不倫関係を続けるよう強制することは、できません。
恋人、友人などの人間関係でも、付き合いを続けるよう強制できないのと同じです。
関係を続けるよう法律上強制されることがあるのは、婚姻関係だけです。
婚姻関係は、それほど法律上保護されているということです。
不倫関係を続けたくて、
- 不倫のことを家族や職場にばらす
- 不倫のことを家族や職場にばらす
- 別れるなら何をするか分からない
などと迫ってしまうと、脅迫罪や強要罪になる恐れもあります。
別れたくなくて付きまとったり、しつこく電話するなどした場合も、ストーカーとなってしまうかもしれません。
下手をすれば警察沙汰になります。
警察沙汰にまでならなくても、不倫のことや、相手に関係を強制しようとしたことが明るみに出ると、あなた自身、友人・家族・近所などとの関係が悪化したり、職場での信用を無くして居心地が悪くなる(場合によっては退職に追い込まれる)ことも考えられます。
自分自身を守るためにも、別れを切り出されたときには、一度落ち着いて、いっそ良い機会と捉え、冷静に対処してください。
慰謝料を請求できる?
配偶者のある不倫相手に慰謝料を請求することは、多くの場合難しいです。
お互い不倫関係であることを承知の上で付き合っていたような場合には、相手に慰謝料を請求することはできません。
ただ、配偶者のある人が結婚していることを隠し、独身であると相手に信じ込ませてだましていたような場合などには、慰謝料が認められる可能性はあります。
慰謝料を請求したい場合は、相手が独身であるなどと偽っていたことの証拠が必要となります。
電子メールやLINEなどのSNSのメッセージ、手紙などは、完全に破棄してしまわず、写真に撮ったりプリントアウトするなどして証拠とできるよう残しておくようにしましょう。
証拠の集め方について、以下のサイトでも詳しく解説しています。
以下のサイトは、直接的には不貞行為の立証に関するものですが、今回解説しているケースでも参考になると思われます。
慰謝料を請求しても相手が応じてくれない場合、弁護士に相談してみることも考えられます。
ご自分の状況を客観的に把握するためにも、弁護士に相談してみることも選択肢に入れておきましょう。
なお、「慰謝料を払わないと、不倫のことを会社や家族に言う」などと迫ると、恐喝罪になる恐れがあります。
十分に注意してください。
慰謝料を請求されることがある?
不倫相手に妻や夫がいる場合、その妻や夫から慰謝料を請求されることは十分考えられます。
配偶者のいる人と不倫関係になることは、その人の配偶者の「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」を侵害する行為であるとして、不法行為とされているのです。
慰謝料の請求には、不倫関係があったことに加え、故意又は過失があったことが必要です。
具体的には、
- ① 不倫相手が、「相手は既婚者である」と認識していた、又は認識することができた(過失があった)こと
- ② 不倫相手が、「相手の結婚生活は破綻しているわけではない」と認識していた、又は認識することができた(過失があった)こと
などが必要とされます。
そのため、「相手が既婚者だとは知らなかった、独身だと言っていた」「相手の結婚生活は既に破綻していると思っていた」などと反論することは可能です。
ただ、既婚者である不倫当事者は、配偶者の感情を害さないよう、「独身と偽って不倫していた」などと配偶者には言わない可能性があります。
下手をすると、「相手から誘ってきた」などと言い訳をしているかもしれません。
そうした言い分を前提に、配偶者が不倫相手に慰謝料を請求してくることは十分考えられます。
そのようなトラブルから身を守るため、相手が独身と偽っていた、夫婦関係は壊れていると言っていた、などという場合には、そのことが書かれたメールなどは安易に削除せず、少なくとも何らかの形(写真で撮る、プリントアウトするなど)で証拠として残しておきましょう。
なお、最初は独身だとか婚姻関係は破綻しているなどと信じていたとしても、途中から既婚者であることや婚姻関係も通常の状況であることが分かったのに、それでも交際を続けていた場合は、不法行為となり、慰謝料を支払う義務が生じます。
不倫相手の配偶者から慰謝料を請求された場合、弁護士に相談し、代わりに交渉を行うよう依頼することもできます。
慰謝料を請求されて困ったときは、一度、離婚問題に詳しい弁護士に相談してみてください。
不倫していて慰謝料を請求された場合のこと、弁護士に相談するメリットについて、以下のサイトもご参照ください。
社会的信用が傷つく
配偶者がいない不倫当事者でも、やはり不倫により社会的信用は傷つきます。
友人からも白い目で見られたり、付き合いを断たれる場合もあるかもしれません。
親などの家族を怒らせたり、悲しませたりすることもあるでしょう。
学校や職場で、悪い噂を流されることもあります。
場合によっては、退学、退職に追い込まれることもあるかもしれません。
不倫をしていることの代償は、とても大きいものなのです。
不倫相手との復縁はやめるべき?
これまでご説明したとおり、不倫関係には多くのリスク・代償が伴います。
相手が正式に離婚したという確たる証拠(戸籍謄本など)でもない限り、不倫相手との復縁は、やめるべきです。
不倫相手のことはあきらめて、ご自身の人生をしっかりと築いていくことに時間を使うことをお勧めします。
まとめ
今回は、不倫相手と別れるときの注意点、不倫を継続することのリスク、別れを告げられた側の注意点について解説しました。
不倫関係は、社会的に許容されていない関係です。
そのため、慰謝料を請求される、離婚を求められる、逆に離婚が難しくなる、社会的信用を失うといった多数の不利益を伴います。
不倫相手とはなるべく早く別れることが賢明です。
別れる際には、トラブルを招かないよう、誠意を尽くして対応しましょう。
既婚者と不倫していて別れを告げられた側も、別れることが自分自身のためでもあると考え、冷静に対応しましょう。
不倫に関連したトラブルについても、弁護士に相談できることがあります。
当事務所には、離婚に関連する事件に注力する弁護士で構成される離婚事件チームがあり、不倫にまつわるトラブルにも対応してきています。
全国対応も可能ですので、お困りの方は当事務所までご相談ください。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?