離婚したらもらえる手当や扶助【離婚弁護士が解説】
離婚して経済的に苦しい方を守るために、国や自治体では児童扶養手当(母子手当)などの公的援助を設けています。
離婚するとこれまでとは収入が大きく異なることがありますので、事前にどのような手当や扶助があるか把握しておくと安心です。
離婚したらおもらえるお金について、離婚問題に詳しい弁護士が解説します。
母子家庭への各種手当や扶助の重要性
離婚を考えたとき、「離婚して食べていけないのでは・・」「子供を育てることができない」などの不安を抱える方がほとんどです。
特に、女性の場合、一般的に男性よりも収入が少ないため、離婚後の生活に対する不安から、離婚を諦めてしまう方もいます。
しかし、離婚した場合、夫(子の父親)から養育費等の財産給付の他にも、地方自治体等の各種手当(児童扶養手当など)、税制上の優遇措置等があります。
これらの情報は、離婚を考えたとき、とても重要です。
すなわち、離婚後の生活に不安を感じる原因は、情報が少ないからです。
離婚後、どの程度の収入を得ることができるか、ある程度正確な数字を知ることができれば、不安はなくなるでしょう。
そこで、このページでは、弁護士、税理士、ファイナンシャル・プランナーの資格を有する専門家が離婚した後にもらえる各種手当や活用できる制度について、わかりやすく解説します。
※公的援助は、市区町村によって異なりますので、詳細は市区町村役場の窓口に問い合わせをして下さい。ここでは目安として記載させて頂きます。
児童扶養手当
児童扶養手当(母子手当)とは
これは離婚等の場合に子どもを養育する母(父)に対し、支給される手当です。
かつて、「母子手当」と呼ばれていたものですが、法改正により父親であっても受給可能となりました。その際、手当の名前も児童扶養手当となりました。
子どもが18歳に到達して最初の3月31日(年度末)まで(子どもが特別児童扶養手当を受給できる程度の障害にある場合、20歳に到達するまで)の間、受給できます。
したがって、高校を卒業するまでは受給できるものです。
なお、離婚が成立していなくても、相手方配偶者から引き続き1年以上遺棄されている場合も受給できます。
具体的には別居して、相手方に生活費(婚姻費用)を請求しても、支払ってもらえず、別居から1年が経過したような場合です。
また、DV被害が深刻化する中、平成24年8月の法改正で、裁判所からのDV保護命令が出た場合も受給できるようになりました。
児童扶養手当の支給額
支給額は、養育者の所得や子供の数によって異なります。
また、所得が多くなると、もらえる額が制限され、一部受給となり、一定の所得限度額を超えると受給できません。
これをまとめたものが下表となります。
子供の数 | 全部受給できる場合 | 一部受給できる場合 |
---|---|---|
1人 | 月額4万4140円 | 月額1万0410円 ~ 4万4130円 |
2人 | 月額5万4560円 | 月額1万5620円から5万4540円 |
3人 | 月額6万0810円 | 月額1万8750円から6万0780円 |
4人以降 | 1人につき月額6250円加算 | 一人につき月額6240円から3130円を加算 |
※2023年7月20日現在
所得の限度額について
では、所得がいくらであれば、「全部受給できる場合」に該当するのでしょうか。
所得の限度額については、行政が早見表を公開しています。
児童扶養手当を受けようとする人または生計同一の扶養義務者(父母・祖父母・子・兄弟など)の前年(1 月から 6 月までに請求する人については前々年)の所得が次表の額(本人の場合は一部支給欄の額)以上の場合、手当は支給されません。
所得の限度額 | |||
---|---|---|---|
扶養人数 | 請求者本人 | 孤児等の養育者 配偶者・扶養義務者 |
|
全部支給 | 一部支給 | ||
0人 | 69万円 | 208万円 | 236万円 |
1人 | 107万 | 246万 | 274万 |
2人 | 145万 | 284万 | 312万 |
3人 | 183万 | 322万 | 350万 |
4人 | 221万 | 360万 | 388万 |
5人以上 | 1人につき38万加算 | 1人につき38万加算 | 1人につき38万加算 |
上に掲げたとおり、この早見表は、とても複雑で素人の方にはわかりにくいです(早見表の役割を果たしておりません。)。
そのため、正確には、最寄りの役場に問い合わせることをお勧めいたします。
ここでは、イメージしてもらうために、具体例で、所得の限度額をわかりやすく解説します。
具体例①
- シングルマザー(又はファザー)で子供が1人(16歳未満)の場合
- 他に同居親族がいない場合
上記の場合、全部支給の年間の所得限度額は107万円となります。
また、一部支給できる年間の所得限度額は246万円です。
つまり、所得が246万円を超えると、まったくもらえません。
ここで、所得とは、税引き(給与所得控除)後の手取り金額をいいます。
ただし、養育費をもらっている場合は、その80%が所得に加算されます。
また、社会保険料の相当額として一律に 8万円が控除されます。
式にすると下記になります。
※その他、障がい者などの控除が適用される可能性がありますが、複雑なのでここでは説明を省きます。
例えば、養育費として年間100万円をもらっている方の場合、80万円を所得として加算することになります。
したがって、全部受給できるのは、専業主婦やパートタイマーの方であり、正社員として勤めている多くの方は、一部の受給も難しいと考えられます。
具体例②
- シングルマザー(又はファザー)で子供が2人(16歳未満)の場合
- 他に同居親族がいない場合
上記の場合、全部支給の年間の所得限度額は145万円となります。
また、一部支給できる年間の所得限度額は284万円です。
つまり、所得が284万円を超えると、まったくもらえません。
児童扶養手当の支給の時期
児童扶養手当の支払いは、奇数月(1月、3月、5月、7月、9月、11月)に2か月分ずつ、年6回支払われます。
例えば、5月支払いの手当は、3月~ 4月の2か月分の手当が支給されます。
児童手当とは
児童手当とは、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方に対して支給される金額をいいます。
支給額は、下表のとおりです。
児童の年齢 | 児童手当の額(一人あたり月額) |
---|---|
3歳未満 | 1万5000円(第3子以降は3万円) |
3歳以上高校卒業まで※ | 1万円(第3子以降は3万円) |
※18歳の誕生日後の最初の3月31日まで
第3子以降とは、年齢が上の子から数えて3人目以降の子のことをいいます。
第3子以降のカウント対象の年齢は22歳年度末です。
具体例1 ■小学生の子供1人、3歳未満の子供1人を監護している場合■
3歳以上(小学生):10,000円
3歳未満:15,000円
月額2万5000円を受給できます。
具体例 ■大学生(21歳)の子供1人、中学生の子供1人、3歳未満の子供1人を監護している場合■
21歳(大学生・第1子):0円
3歳以上(中学生・第2子):10,000円
3歳未満(第3子):30,000円
月額4万円を受給できます。
※大学生(21歳)は高校を卒業しているので、児童手当の支給対象ではありません。
しかし、第3子のカウントの対象の対象となります。
児童手当の支給の時期
児童手当は、偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)に、2か月分(前月分まで)が支給されます。
特別児童扶養手当
特別児童扶養手当とは
これは身体や精神に障害のある20歳未満の児童について、支給される手当です。
前述した児童扶養手当とは別の目的に基づいて支給されるものですので、併給が可能です。
特別児童扶養手当の支給条件
- 1級(重度)
療育手帳A・身体障害者手帳1、2級 - 2級(中度)
療育手帳B・身体障害者手帳3級または4級の一部
※手帳がなくても該当する場合があります。くわしくは最寄りの役場へお問い合わせください。 - 所得が一定未満であること
所得要件は厳しくなく、ほとんどの世帯では受給可能ですが、計算が複雑なため最寄りの役場へお問い合わせください。
児童が、児童福祉施設等(通園施設は除く)に入所しているときは受給できません。
特別児童扶養手当の支払額
手当の月額は次のとおりです(2024年11月1日現在)。
1級(重度) | 該当児童1人につき 5万5350円 |
---|---|
2級(中度) | 該当児童1人につき 3万6860円 |
特別児童扶養手当の支給の時期
手当の支払いは、4月、8月及び11月の3期に、それぞれの前月までの分が支払われます(11月は当月までの分)。
就学援助
就学援助とは
これは、経済的理由によって、就学困難と認められる児童等に対して、市町村が学用品費、給食費、通学費などを援助する制度です。
援助の条件や内容等は自治体によって若干異なるため、くわしくは最寄りの自治体にお問い合わせください。
なお、例として、東京都(渋谷区)の場合を紹介しますが、概ね他の自治体も同じような内容となっています。
就学援助の要件
(一例)前記の「児童扶養手当」を受給していることなど。
支給費目及び支給額
具体例 小学校1年生の場合
- 給食費:実費
学用品費:1年間 1万5690円
新入学学用品費:5万1060円
校外活動費:実費(上限 3690円)
通学費:必要と認められる額
※2023年7月20日現在
東京都の就学援助について、くわしくは以下のページをごらんください。
参考:就学援助について|東京都
母子父子寡婦福祉資金
母子父子寡婦福祉資金は、母子家庭等の経済的自立と、その扶養する20歳未満の子供の福祉の増進を図るため、原則、無利子で各資金の貸付を受けられる制度です。
利子と償還(返済)期間は、貸付金の種類によって異なりますが、無利子や低金利で資金を借りられ、3~20年で返済を行います。
借り入れの条件等について、くわしくは最寄りの役場へお問い合わせください。
参考:手当・助成金|東京都
その他
公的扶助としては、上記が主要なものとなりますが、その他にも税の減免、医療費助成等があります。
お住まいの地域によって援助の内容が異なるため、くわしくは最寄りの自治体にお問い合わせください。
まとめ
離婚後に受給できる各種手当や制度について解説しましたが、いかがだったでしょうか?
上記のとおり、日本では、母子(父子)に対して、様々な公的援助があり、離婚して生活ができないという状況はあまり考えられません。
これらの制度は、正しく活用すると、離婚後の生活が楽になるためとても重要です。
なお、当事務所では、離婚後の生活に対する不安を解消していただくために、上記の公的扶助や必要な手続等を解説した「新生活サポートBOOK」を相談者の方に無料で進呈しております。
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