養育費の裁判とは?手続きの流れ・費用・期間を弁護士が詳しく解説!
養育費とは
養育費とは、子どもが経済的・社会的に自立するまでの衣食住や教育及び医療に要する費用のことをいいます。
養育費の分担とは
子どもの両親は、子どもを世話して育てなければなりません(民法第820条)。
そして、子どもを世話して育てる際にかかる費用(養育費)も、両親が分担して負担しなくてはなりません。
たとえ、子どもの両親が離婚したとしても、子どもの父母であることに違いはないため、子どもの「監護に要する費用(民法第766条1項)」として、養育費を分担することになります。
引用:民法|e-GOV法令検索
子どもの両親が離婚している場合は、子どもの監護・教育を実際に行っている(専門用語としては「親権者」といいます。)母もしくは父は、親権者とならなかった父または母に養育費の支払いを求めることができます。
養育費の額について
養育費の額について、子どもの両親の話し合いで取り決めができた場合は、取り決めた額になります。
けれども、養育費の額について争いがある場合は、基本的に父母双方の収入、子どもの数と年齢に応じて負担する額が決まります。
養育費の算出は、複雑な計算式を使って行います。
この計算を手計算で行うのは大変なので、家裁実務では、「養育費算定表」という早見表を使って養育費を算出します。
養育費の額について詳しく知りたい場合はこちらをどうぞ。
子どもが自立するまでとは
成人年齢は、法律では18歳とされています(民法第4条)。
引用:民法|e-GOV法令検索
しかし、養育費に関しては、一般的に、子どもが20歳になるまで、支払わなければなりません。
養育費について詳しくは、こちらをご覧ください。
養育費が決まるまでの手続きの流れ
では、これから離婚をする人や、既に離婚をした人が、相手方(元パートナー)に養育費の支払を求めたいときはどうすればよいのでしょうか。
以下、これから離婚をする人と既に離婚をした人、それぞれについて、基本的な手続きの流れを図示します。
なお、一般的に「養育費の支払請求」とは、子供を監護するうえで必要な離婚後の費用の支払を相手方に求めることを意味します。
離婚前の別居期間中の養育費の支払は、婚姻費用として相手方に求めることができます。
婚姻費用について詳しく知りたい場合はこちらをどうぞ。
まだ離婚が成立していない人の場合、下記の流れで養育費を決めることとなります。
まず、離婚の話し合い(専門用語としては「協議」といいます。)のなかで養育費について、金額や支払期間、支払時期、方法などを決めます。
話し合いで決まらなかった場合や、話し合いができなかった場合は、離婚調停を申立てることになります。
離婚調停のなかで養育費についても話し合います。
調停とは、裁判所(調停委員会)の仲介によって、夫婦が話し合い、合意による解決を目指す手続です。
調停で解決できない場合は、離婚裁判を起こし、同時に養育費について申し立てることができます(離婚裁判の他に離婚審判という手続きもありますが、通常は、離婚裁判の手続きに進みます)。
なお、調停を経ずに、いきなり離婚裁判を申し立てることは原則としてできません(専門用語としては「調停前置主義」といいます。家事事件手続法第257条)。
離婚裁判では、まず離婚が認められるか否かの判断がされます。
離婚が認められた場合は、養育費についても判決が下されます。
なお、裁判所から、和解を進められることがあり、和解によって離婚することもあります(専門用語としては「和解離婚」といいます。)。
家庭裁判所での判決に不服がある場合は、原則、判決書が特別送達郵便で届いた日(専門用語としては「送達」といいます)から2週間以内に、上級裁判所にあたる高等裁判所での裁判のやり直しを求めることができます(専門用語としては「控訴」といいます。)。
控訴がなければ、判決が確定します。
養育費の取り決めをせずに先に離婚が成立しているケースでは、下記の流れで養育費を決めることとなります。
養育費について、金額や支払い期間、支払い時期、方法などを決めます。
話し合いで決まらなかった場合や、話し合いができなかった場合は、養育費請求調停を申し立てることができます。
養育費請求調停は、家裁(調停委員会)の仲介のもと、話し合いでの解決を目指す手続きです。
すでに離婚が成立しているケースでは、調停の話合いがまとまらなかった場合、自動的に審判手続が開始されます。
審判手続とは、裁判官が、必要な審理を行った上、一切の事情を考慮して、審判という形で養育費の額を決定する手続きになります。
裁判官の定めた養育費の額に不服がある場合は、2週間以内に不服の申立て(専門用語としては「即時抗告」といいます。)をすることができます。
このように、離婚後、養育費の支払いを求める場合は、裁判所を利用した手続きとして、「調停」もしくは「審判」があります。
では、具体的に各手続きについて説明をします。
まずは、夫婦の話し合い(協議)についてです。
当事者の協議
前記フロー図のとおり、離婚前に離婚後の養育費の額を決める場合も、離婚後に額を決めたり、支払いを求める場合も、まずは、話し合い(協議)によることをお勧めします。
なぜなら、当事者間の協議は、裁判所を利用した調停などと比べて、直接相手方と話せるので早期かつ柔軟な解決の可能性があるためです。
ただし、養育費の適正額については、離婚問題専門の弁護士に相談し、助言をもらうようにしましょう。
柔軟な解決とは
裁判所での調停や、特に判決では、多くの場合、「養育費算定表」の額を基準として養育費の額が決まります。
しかし、相手方との協議では「養育費算定表」の額にとらわれない自由な話し合いが可能です。
したがって、「養育費算定表」の額に納得ができない場合は、裁判所での調停や、特に裁判は避けた方がよいということになります。
協議で決めるべき内容
具体的には、以下についてを決めます。
- ① 養育費の金額
- ② 支払期間
- ③ 支払方法
- ④ 支払う人(義務者)、受け取る人(権利者)
金額については前述のとおり、話し合いで金額を自由に定めていただいて構いません。
ただし、養育費は将来にわたって大きな影響を及ぼします。
また、簡単に金額の変更はできません。
適正額がいくらかを把握した上で、後々後悔しないように合意すべきです。
そのため養育費の適正額については、事前に離婚問題専門の弁護士に相談されることを強くお勧めいたします。
養育費の支払始期は、離婚前に話し合いをするケースでは、離婚時(〇年〇月から)とすることが多く、また、離婚後に話し合いをするケースでは、養育費の請求をしたとき、とすることが多くみられます。
養育費の支払い終期は、子どもが20歳になるまでとするのが一般的です。
しかし、お互いの合意で短く、反対に長くすることも可能です。
現在は、大学に進学する子どもも多く、たとえ20歳に達しても自立した生活が営めない場合も考えられます。
例えば、大学に通う間の生活費などを養育費として支払う必要がある場合は、お互いの合意で養育費の終期を「大学卒業まで」とすることも可能です。
支払方法は、「毎月末日限り、金〇円を、相手方が指定する口座に振り込む方法で支払う。」といったように、毎月決まった額を振り込む方法が一般的です。
なぜなら、養育費は、支払終期までの額を一括で相手方に支払わせるには高額であること、また、養育費が子どもの成長とともに必要な費用であるため、継続的な支払方法である定期払いが合理的であるためです。
夫婦のどちらが、養育費を支払う人(義務者)か、また養育費を受け取る人(権利者)かを明確にします。
離婚協議書(離婚後は協議書)の作成
離婚前に話し合いで合意をした内容は、必ず離婚協議書に記載するようにしましょう(離婚後に養育費について話し合いをした場合も協議書を作成するようにしましょう)。
離婚協議書とは、夫婦が離婚する際に、離婚の方法や諸条件を取り決めるために作成する書面のことです。
離婚の諸条件として、養育費についても記載しておくべき内容になります。
離婚協議書を作成することで、後々、言った言わないのトラブルを防止することができます。
養育費を含めた離婚協議書について詳しく知りたい場合はこちらをどうぞ。
書き方のテンプレートもあります(無料です)
次に、調停の手続きについて説明します。
養育費の調停
離婚前でも離婚後でも、養育費について協議が不成立の場合は、家庭裁判所に調停の申立てをすることができます。
離婚前は、離婚と合わせて養育費について話し合うために、離婚調停の申立てをします。
離婚後は、元夫婦間で養育費の支払いについて話し合うために、養育費請求調停の申立てをします。
調停とは
調停とは、簡単にいえば、家庭裁判所を通した話し合いの手続きになります。
調停委員会(裁判官1名と民間から選ばれた調停委員2名で構成)が、調停の申立人と相手方の双方の話を聞いて、解決案を提示したり、解決のための助言をするなどして、双方の合意を目指した話し合いを進めていきます。
協議も話し合いですが、調停は、調停委員や裁判官を介する話し合いであるため、協議と違って、相手方と直接に話をすることはありません。
したがって、相手方との冷静な話し合いが望めないような場合は、協議よりも調停を利用すべきでしょう。
ただし、調停は、およそ月に1回のペースで話し合いの場が設けられるため、協議と違って、時間がかかることがあります。
調停は、あくまで話し合いですから、夫婦で合意できない場合には、調停は「不成立」となって終了します。
養育費の調停について詳しくは、こちらをご覧ください。
養育費の審判
審判の手続きでは、家庭裁判所の裁判官が、元夫婦から提出された資料や主張などに基づいて養育費について判断し決定します。
調停は双方の話し合いによって合意を目指す手続きでしたが、審判は、合意が成立しなくても、裁判所が結論を下すことになります。
審判は、裁判所が結論を出すという点では裁判と同じです。
しかし、一般的に審判の方が短期間で結論が出るという点で大きく異なります。
ケースにもよりますが、調停から審判に移行した後、1〜2ヶ月ほどで審判がくだされることが多いという印象です。
養育費の裁判〜離婚訴訟〜
養育費の裁判は、これから離婚をしようとしている夫婦の一方が離婚調停を経た後に提起する手続きとなります。
なお、上述したように、裁判では養育費だけでなく、離婚の請求を行うこととなり、専門用語としては「離婚訴訟」という言葉を使用します。
養育費の裁判は、一般的に次の流れとなります。
※一般的な傾向であり、事案によって異なることがあります。
訴えを提起するには、訴状(そじょう)を作成し、必要な書類及び費用を添えて、管轄を有する家庭裁判所(原告の住所地および相手方の住所地を管轄する家庭裁判所)に提出します。
裁判では、裁判所に訴えを提起した側の当事者を「原告」といい、訴えを提起された側の当事者を「被告」といいます。
訴状には、離婚を請求することのほか、親権者指定、面接交渉、財産分与、養育費等の審理を求めることも記載できます。
したがって、養育費の請求をする場合は、その旨を記載します。
原告と被告に、第1回の口頭弁論の期日を記した呼出状が届きます。
被告に対しては、訴状の写しが送付されます。
第1回目の口頭弁論は、通常は訴状を出した1~2か月後に開かれます。
訴状の送付を受けた被告は、訴状に記載されている内容に対して、「認めるか認めないか(認否「にんぴ」」、「認めない場合の理由(反論)」を記載した書面(これを「答弁書:とうべんしょ」といいます。)を家庭裁判所に提出します。
原告は訴状を、被告は答弁書の内容を主張(陳述「ちんじゅつ」といいます。)します。
そして、次回の期日や次回までに準備しておくことなどを決めます。
被告が答弁書で十分な反論を行っている場合、次回期日では、被告の答弁書に対する原告の認否や反論が行われます。
被告が答弁書で十分な反論を行っていない場合、次回期日では、被告の主張の補充が行われることが多いです。
2回目以降の期日は、概ね1か月ごとに行われます。
ここから数回、お互いの言い分を書面(準備書面「じゅんびしょめん」といいます。)で提出していき、争点を明確にしていきます。
また、争点の明確化のために、弁論準備手続(民事訴訟法第168条)という手続きを行っていくことがが通常です。
弁論準備手続は、口頭弁論と異なり、法廷でなく会議室で行われます。
ラウンドテーブルで、裁判官と代理人弁護士が争点等を話し合う手続きになります。
弁論準備手続においても、準備書面の提出や文書の証拠調べができることから、いずれの手続きを利用するかは裁判所が決めます。
ただし、弁論準備手続では、証人尋問はできません。
準備書面などによって原告と被告が主張と反論を繰り返すことで、争点が明確になってきて、証拠の提出も終わったら、本人に対する質問(専門用語としては「本人尋問」といいます。)が行われます。
離婚裁判では、原告、被告以外への尋問である「証人尋問」が行われることは多くはありません。
本人尋問が終了すれば、通常は全ての主張立証が終わります。
進行によっては、最終準備書面というこれまでの主張をまとめた書面を提出することがありますが、離婚の裁判ではあまり多くないという印象です。
すべての主張立証が終わると(専門用語としては「口頭弁論の終了」といいます。)、判決の言い渡し日が指定されます。
なお、離婚訴訟では、本人尋問終了後、多くのケースで裁判官より、後述する和解の勧めがあります。
ここで和解が成立すれば、裁判離婚ではなく和解離婚が成立します。
判決言渡日には、原告の請求を認めるか、棄却するかが言い渡されます。
ケースによりますが、通常、口頭弁論終了後、判決が出るまでは1~3か月程度を要する印象です。
判決は、判決言渡日に法廷で言い渡されるので、聞くことも可能です。
しかし、判決内容は文書(判決正本)で当事者双方に送付されるので、実務上は聞きに行くことは稀です。
判決内容に不服がある場合は、送達を受けた日から2週間以内に控訴を提起することができます。
裁判の途中でも裁判所に和解を勧められることがあります。
裁判を進めるうちに、双方が現実的な落とし所が見えてきた場合、判決を待つよりも和解を成立させた方が早くに離婚が成立することや、和解の方が条件を自由に決められることから、裁判所の和解提案を受け入れるケースも多くあります。
和解が成立したら「和解調書(わかいちょうしょ)」が作成され、離婚が成立します。
なお、「和解調書」は裁判所が出した判決と同じ効力を有します。
したがって、養育費の支払いを内容とする和解離婚ができた場合で、相手方が養育費の支払いを怠った場合は、この書類を使って強制執行の申立てをすることができます。
離婚の訴え提起に必要な書類
一般的には、以下の書類が必要になります。
- ① 訴状2部
- ② 夫婦の戸籍謄本及びそのコピー
戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場などで入手できます(郵送での入手も可能)。 - ③ 離婚とともに年金分割をする場合は、「年金分割のための情報通知書」及びそのコピー
- ④ 養育費や婚姻費用の算定のために必要となる源泉徴収票、その他、財産分与で必要な預金通帳などの証拠となる書類のコピー各2部
- ⑤ 離婚調停不成立調書
裁判に要する時間の目安
離婚裁判は、一般的に解決まで長期間を要します。
下図は、この平均審理期間をグラフにしたもので、2021年の離婚事件全体の平均審理期間は14.1か月でした。
もっとも、これには相手が欠席したり、和解で解決した事案も含まれており、これらを除いた場合、平均審理期間は2021年で19.1か月となっています。
参考:人事訴訟の概況|令和3年
裁判所の呼び出しを無視したらどうなる?
まず、代理人弁護士がいるならば、本人が出席する必要はありません。
しかし、本人で訴訟をしているにも関わらず、離婚裁判の場にいない場合は問題が生じます。
なぜなら、離婚裁判は、当事者がいなくても手続きが勝手に進んでしまうからです。
原告なら訴状、被告なら答弁書を提出している場合は、訴状及び答弁書に記載している事項を陳述したとみなすことができます(擬制陳述「ぎせいちんじゅつ」・民事訴訟法第158条)。
したがって、被告も最初の口頭弁論期日については、答弁書を提出している限り、欠席をしてもそこで裁判が終わるようなことはありません。
ただし、被告が答弁書も出さず、裁判にも出ない場合は、訴状に記載された事実(被告にとっては不利な事実)を自ら認めたものとみなされることがあります(擬制自白・民事訴訟法第159条)。
一度くらいの欠席ではすぐに裁判が終わることはほぼありませんが、このような場合は、被告に争う意思がないと裁判官も判断して、被告が欠席のままで判決を言い渡すことになります。
2回目以降の期日は、前述の擬制陳述はできません。
したがって、出席した当事者の申出があれば、裁判所も訴訟の状況等を考慮して審理の現状に基づく判決が可能となります。
そのため、裁判所の呼び出しを無視すると、自分の主張や反論を裁判所に聞いてもらえないまま判決を出される可能性があるので、呼び出しを無視することは得策とは言えないでしょう。
養育費の裁判にかかる費用
離婚をこれからしようとする人が、離婚裁判の中で養育費を請求する際の費用について説明します。
実費
まず、離婚裁判を行う場合、申立ての時に、裁判所に手数料を支払わなければなりません。
離婚裁判の提起するための手数料として、収入印紙と郵便切手が必要となります。
一般的には、収入印紙(1万3000円~)と郵便切手(6000円程度)を合わせて2万円程度となります。
基本的な手数料は下記のとおりですが、印紙代等は請求する内容によって異なるため、正確な額は裁判所若しくは弁護士に確認されたほうがよいでしょう。
ア 離婚(親権者の指定を求める場合を含む)のみを求める場合は、1万3000円
イ 離婚と併せて附帯処分(財産分与,養育費等の子の監護に関する処分など)を求める場合は、上記アの他、各金1200円を合算した額
具体例 離婚請求と併せて子2人の養育費を請求する場合
1万3000円 + 1200円 × 子2人分(養育費) = 1万5400円になります。
ウ 上記イと併せて慰謝料を求める場合は、上記アの手数料と慰謝料請求に対する手数料とを比較して、多額の方に附帯処分に対する手数料を合算した額
具体例 離婚請求と子2人の養育費に併せて慰謝料300万円を請求する場合
慰謝料請求300万円に対する手数料は2万円(民事訴訟費用などに関する法律によって定められています。)なので、上記アの手数料と比較して、多額なのは、慰謝料請求の手数料の2万円になります。附帯処分に対する上記イの手数料を合算した額2万円(慰謝料請求に対する手数料) + 1200円 × 子2人分(養育費) = 2万2400円が収入印紙代となります。
基本的に、160万円を超える慰謝料を請求する場合は、上記アの手数料と比較して、慰謝料の金額に応じた手数料の方が多額になります。
なお、調停不成立等の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起した場合には、調停申立の際に納めた手数料に相当する額を控除することができます。
郵便切手代は、訴えを提起する裁判所によって金額が異なります。
福岡家庭裁判所の場合は、6000円(500円×8枚・100円×9枚・84円×5枚・50円×5枚・20円×10枚・10円×15枚・5円×10枚・2円×15枚)になります。
他の裁判所でも、だいたい6000円程度になります。
弁護士費用
離婚裁判については、通常、弁護士に依頼されることが多いです。
その場合は、上記手数用に加えて、弁護士に支払う着手金や成功報酬が必要となります。
着手金とは、ご依頼時に支払う費用で、成功報酬は終了時に出来高に応じて支払う費用となります。
具体的な金額については、法律事務所によって異なるため、相談時にお見積りを出してもらうようにすると良いでしょう。
裁判は自分ではできないか
本人訴訟という制度もあるため、理屈の上では本人で裁判をすることも不可能ではありません。
しかし、上述したように裁判は、書面の提出が求められます。
また、その書面に記載する内容は法令に基づいており、一般の方が作成するのは難しいと思われます。
さらに、相手には弁護士がついていることが想定されるため、弁護士をつけていないと専門知識や経験という点で、不利な立場におかれることが懸念されます。
また、訴訟は基本的に弁護士が出廷していれば対応ができるため、平日に出廷する負担が軽減されます。
そのため、離婚裁判については弁護士に依頼されることを強くお勧めいたします。
また、養育費の協議や調停においても、弁護士の経験や法的知識に基づいた交渉によって、有利な結果を得る可能性があります。
相手方との話し合いに少しでも不安がある場合は、弁護士に相談されるべきでしょう。
養育費の裁判の3つのポイント
養育費の裁判では、以下の3つのポイントがあります。
①できるだけ裁判(判決)を回避すること
前述のとおり、裁判では、「養育費算定表」を基準として、裁判官が相当と判断する額が判決で出されます。
したがって、養育費を請求する側が、「養育費算定表」の額よりも多くの金額を求めている場合、また反対に請求されている側が、「養育費算定表」の額よりも低い金額で解決したい場合は、裁判(判決)という手続きは避けた方がよいということになります。
この点、裁判の途中でも和解はできます。
和解は、当事者の合意があれば条件を自由に設定できます。
また、裁判上の和解ならば、判決を待つよりも早期に問題が解決することになります。
実際に離婚訴訟の約4割が和解をしています(人事訴訟の概況|令和3年)。
引用:人事訴訟事件の概況
よって、裁判上の和解も訴訟においては選択肢の一つとして検討すべきでしょう。
②養育費の相場を知っておくこと
裁判では、原告が訴状で請求した金額の範囲内で、請求を認めるか否かを判断されます。
したがって、「養育費算定表」の額を把握しておらず、その額よりも低額な金額を請求してしまうと、本来認められるはずの養育費よりも低い金額で判決が出されることになります。
このような不利益が生じないためにも、養育費の適正額を知っておくことは重要です。
養育費の適正額は、離婚専門の弁護士に相談することで知ることができるでしょう。
③相手方の情報を把握しておくこと
前述のとおり、双方の収入が「養育費算定表」で養育費を計算するにあたっては必要な情報になります。
したがって、相手方が嘘をついて収入を低く主張してきた場合、相手方の嘘に気付かないままだと、こちらが養育費を請求する側ならば、本来請求できる額よりも養育費の額は低くなってしまいます。
そこで、相手方の源泉徴収票など収入に関する書類などは、可能な限り、相手方と同居をしている間に把握しておくことが大切になります。
養育費の裁判のデメリットの回避
協議、調停、裁判の大きく3つの手続きについて解説してきました。
確かに、裁判は裁判官が公平な立場で養育費の紛争についても最終的な判断をしてくれます。
しかし、裁判は協議や調停といった話し合いと違い、柔軟な解決とならない可能性が高いことはこれまで指摘したとおりです。
また、弁護士に依頼した場合、離婚裁判が時間と労力がかかる手続であることから、協議や調停と比べて弁護士費用も割高になってしまいます。
そこで、できるだけ裁判所を通さず、まずは協議による解決を目指した方がよいでしょう。
ただ、協議による解決は、離婚に関する専門知識がないと損をしてしまう可能性があります。
そのため、「弁護士による代理交渉」による解決方法をお勧めしています。
これは、弁護士が依頼者に代わって相手と直接交渉するという方法です。
裁判や調停と異なり、短期間で解決できる可能性があり、通常は弁護士費用も大幅に抑えることができます。
以上から、代理交渉を試してみて、解決できない場合に、次善の策として調停の申し立てや裁判を検討されるとよいでしょう。
まとめ
以上、養育費が決まるまでの手続きについて、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
養育費は、長期にわたり支払いが継続する、子どものための大切な費用です。
したがって、養育費を支払う側にとっても、もらう側にとっても非常に重要な問題です。
養育費の問題で失敗しないために最も重要なことは、離婚(養育費)事件を熟知し、かつ、依頼者目線に立ってくれる弁護士を代理人として選任することです。
くわしくは離婚(養育費)に精通した弁護士へご相談されることをお勧めいたします。
当事務所は、離婚問題に注力する弁護士で構成された離婚事件チームがあり、養育費でお困りの方を強力にサポートしています。
LINEやZoomなどによるオンライン相談を活用して全国対応も行っていますので、お気軽にご相談ください。
この記事が養育費問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?