慰謝料は請求しない方がいいの?そんな悩みを弁護士が解決
結論から言うと、状況によっては慰謝料請求をしない方がいい場合もあります。
具体的には、相手方から危害を加えられる可能性が高い場合や証拠がなく相手方が不倫を否定している場合、W不倫の場合などです。
理由はともかく、慰謝料を請求できるのならした方がいいのではないか、と思われる方も多いと思います。
しかし、その時の状況、慰謝料以外の希望内容、訴訟になった場合の勝訴見込み等によっては、慰謝料を請求しないほうがいいケースもあります。
この記事では、慰謝料を請求しない方がいい状況や慰謝料を請求しない場合でも実施した方がいいこと等について詳しく説明をしていきます。
慰謝料を請求しない方がいい場合とは
①相手方から危害を加えられる可能性が高い場合
慰謝料を請求することで、相手方から何らかの危害を加えられる可能性が高い場合には、慰謝料の請求をするか否かは慎重に検討する必要があります。
例えば、暴力夫と離婚をするにあたり、これまで暴力で苦しめられてきたことについて、妻が慰謝料を請求したいと考えることは当然のことだと思います。
しかし、夫が激情型であり、慰謝料を請求することで職場に押しかけられたり、身体的な暴力を振るわれたりする可能性が高い場合には、身を守るために慰謝料を請求しないという選択も十分に考えられます。
特に、慰謝料の見込額が低い場合などは、最初から慰謝料を請求しない方がいいといえるでしょう。
「暴力に屈する」という見方もあるかもしれませんが、慰謝料という経済的利益よりも、身の安全や危険人物と早期に縁を切ることを優先した方が余程有益であるとの判断もあり得るためです。
②証拠がなく、相手方が不倫を否定している場合
配偶者が不倫をしていることに間違いないものの、不倫の証拠はなく、配偶者も不倫を否定している場合には、慰謝料請求をしないという選択も検討すべきです。
慰謝料請求について、相手方が任意に慰謝料の支払に応じない場合には、最終的に訴訟で解決をすることになります。
訴訟で解決をするということは、慰謝料の請求を認めるか否かの判断を裁判所に任せるということですが、慰謝料を請求する側が不倫の存在を証明できなければ、裁判所は慰謝料の請求を認めてくれません。
そうすると、証拠がなく、相手方が不倫を否定している場合には、慰謝料請求の訴訟を起こしても慰謝料の請求は認められず、費用、労力、時間のみがかかってしまうという結論にもなりかねません。
そのため、このような場合には、そもそも慰謝料請求自体行わないという選択もあり得ます。
③夫婦関係に一切波風を立てたくない場合
例えば、妻の不倫が発覚したけれども、子どももいるし離婚をしたくないので、夫婦関係に一切波風を立てたくないと考えられる方もいると思います。
このように、夫婦関係に一切波風を立てたくないという場合には、たとえ慰謝料が発生するような事情があったとしても、慰謝料を請求しないという選択をとるべきでしょう。
どのような理由であれ、慰謝料を請求すれば、夫婦関係に少なからず悪影響を与えることは避けられないためです。
しかし、配偶者に慰謝料請求まではしないけれども、慰謝料請求以外の対応をとることや、不倫相手への慰謝料請求は検討の余地があると思います。
詳細は後述するとおりなので、夫婦関係に一切波風を立てたくない場合でも、配偶者への慰謝料請求以外に可能なことは、一度検討されてみることをお勧めいたします。
④W不倫の場合
W不倫の場合、状況によっては慰謝料を請求しないほうが良い場合がございます。
慰謝料請求をしない方がいい場合について、下図の事例で考えてみましょう。
上図の事例では、妻Aから妻Dに対する慰謝料請求と夫Cから夫Bに対する慰謝料請求がそれぞれ考えられます。
ここで、妻Aの慰謝料請求と夫Cの慰謝料請求は、夫Bと妻Dの不倫を原因とするものである点では同じですが、それぞれが得られる慰謝料額は異なる可能性が高いことに注意が必要です。
慰謝料の金額は、婚姻期間や不貞行為の期間、態様、結果等の様々なことを考慮して決められます。
妻Aの妻Dに対する慰謝料請求においては、AB夫妻の婚姻期間が3年であることや子どもがいないこと、夫婦関係は継続予定であること等を前提に慰謝料額が決まります。
他方で、夫Cから夫Bに対する慰謝料額は、CD夫妻の婚姻期間が15年であることや子どもが2人いること、不倫が原因で離婚すること等を前提に慰謝料額が決まります。
そうすると、上図の条件では、妻Aの妻Dに対する慰謝料請求より、夫Cの夫Bに対する慰謝料請求の方が高額になることが予想され、同じ不倫を原因とするものであっても慰謝料額に違いがでてくるのです。
妻Aの立場で考えると、妻Dから回収できる慰謝料額よりも、家計から出ていくお金(夫Bが夫Cに支払う慰謝料額)の方が大きく、経済的には損をしてしまうことになります。
そのため、妻Aの立場であれば、妻Dに慰謝料請求をすることで、夫Cから夫Bへの慰謝料請求を誘発することがないよう、そもそも妻Dへのに慰謝料請求をしない方が良いと考えられます。
特に、夫Cが妻Dの不倫を知らない場合には、妻Dへの慰謝料請求は慎重に検討すべきだと考えます。
また、上図の例では、双方不倫相手への慰謝料請求のみを行うことを前提にご説明しましたが、配偶者から慰謝料を獲得している場合には、そのことも不倫相手への慰謝料請求に影響を与えることになります。
以上からわかるように、W不倫においては、自分の置かれた状況や希望する条件によって、慰謝料請求をすべきでない場合があることに注意が必要です。
⑤職場不倫の場合
配偶者と不倫相手が同じ職場である場合(いわゆる「職場不倫」の場合)には、不倫相手への慰謝料請求は慎重に検討していく必要があります。
職場不倫の場合は、不倫相手に慰謝料請求をすることで、配偶者が仕事を辞めなければならなくなったり、転勤命令や降格処分を受けたりする可能性があり、そのような配偶者が被った不利益が結果的に自身の首を締める結果になることもあるためです。
特に、不倫相手が配偶者の部下である場合や、不倫行為が就業時間内に行われていた場合には注意が必要です。
以下、具体的事例を見ていきましょう。
具体例
妻からAさんへの慰謝料請求後、Aさんは夫との不倫行為は、夫からのパワハラ、セクハラによるものと主張(実際に、夫が積極的にアプローチ、夫とAさんは直属の上司部下の関係。)。
Aさんは、職場にもその旨を報告し、夫は職場から聞き取り等を受ける。その後、明確にセクハラ行為で処分まではされなかったものの、予定外の転勤命令と役職の変更を受ける。
夫からBさんに慰謝料請求をしたところ、慰謝料請求をされたことについてBさんが他の同僚に相談。
その後、社内で妻とBさんの不倫の噂が広まり、職場に居づらくなった妻は仕事を辞める。
ケース1の場合、妻が夫との婚姻関係を継続する予定であれば、夫の転勤に伴い、自身も引っ越しを余儀なくされるという不利益が発生し得ます。
また、役職の変更が給与の低下を伴うものであれば、家計の収入が減るというダメージもあります。
さらに、Aさんへの慰謝料請求については、夫が上司の立場であったこと、夫からの積極的なアプローチがあったことを前提とすると、場合によっては慰謝料が認められない可能性もあり、仮に認められるとしても低額になる可能性が高いです。
ケース2の場合、夫が妻との婚姻関係を継続する予定であれば、妻の収入がなくなることで家計の収入が減るという不利益が生じます。
また、仮に妻と離婚する場合でも、夫妻に子どもがいれば養育費の計算が必要であり、その際に妻の収入がないことで夫の負担分が増える可能性があります(※妻の責任による収入減少であり争いの余地はあります。)。
以上のように、職場不倫については、慰謝料請求をすることで発生しうる不利益と慰謝料請求をすることで得られる利益とを比較して、前者が大きい場合には慰謝料を請求しないという選択をとることが考えられます。
リスクを回避して慰謝料請求をするためには
各状況に応じて慰謝料請求をしない方がいいケースの説明をしてきましたが、それぞれの状況におけるリスクを回避して、あるいはリスクを軽減することで慰謝料請求をすることは可能でしょうか。
以下、上述のそれぞれの状況についてリスクの回避又は軽減方法をご説明いたします。
①相手方から危害を加えられる可能性が高い場合
- 弁護士に代理人になってもらう。
- DVの保護命令を申し立てる。
- 警察に相談する。
相手方から危害を加えられる可能性が高い場合、一番のリスク回避方法は、弁護士を代理人に立て相手方と別居をし、相手方との物理的距離を置くことだと考えます。
弁護士をつければ、慰謝料請求の交渉の窓口はすべて弁護士となるため、相手方と直接・間接問わず接触をする必要はなくなります。
また、相手方と距離を置いたとしても、相手方が職場や自宅に押しかけてくるのではないかと強く心配される場合もあるかと思います。
そのような場合は、裁判所に保護命令を申し立て、相手方に対し、自分や子どもへの接近禁止命令をだしてもらうという手段もございます。
保護命令についての詳細はこちらの記事をご覧ください。
さらに、保護命令の申し立てまでは行わなくても、DV状況について、事前に警察に相談をしておくと良いでしょう。
警察に相談をすると、警察は相談者の携帯電話番号について防犯登録をしてくれるため、万一の場合、すぐに最寄りの警察官がかけつけてくれます。
また、いざというとき保護命令もでやすくなります。
暴力夫への慰謝料請求及び離婚についてはこちらもご参照ください。
②証拠がなく、相手方が不倫を否定している場合
- 弁護士助言のもと証拠を収集する。
- 裁判外の交渉で解決する。
慰謝料の請求を諦める前に、まずは証拠の収集を試みるとよいでしょう。
証拠の収集には、調査会社への依頼、録音等様々な方法が考えられます。
ただし、どのような証拠が必要なのか、集めようとしている証拠がどのような意味を持つのかは事前に男女問題を専門とする弁護士に相談することをお勧めいたします。
例えば、お金をかけて調査会社に調査を依頼したけれども、結果的に慰謝料を回収できず調査会社依頼分が赤字になってしまうということもあるためです。
証拠収集の方法について、詳しくはこちらをご覧ください。
また、証拠がない状況でも、裁判外での解決を念頭において、慰謝料を請求するという方法もございます。
この場合、あくまで交渉での解決が必要であり、相手方が慰謝料の支払いに全く応じないということであれば、結局慰謝料は回収できないということになります。
しかし、相手方としても、裁判に進むことで様々な負担が生じ得ることから、交渉での解決に応じる可能性は十分にあります。
また、相手方との交渉において、必ずしも証拠の有無を示すわけではないため、特に、証拠がないだけで不倫の事実があるという状況であれば、後に不倫の証拠がでてくることを恐れた相手方が交渉での解決に応じる可能性は高いと考えます。
そのため、証拠はなく、相手方が不倫を否定していても、あなたの目からみて不倫をしているのは間違いない、と思えるのであれば、裁判外での解決を目指して慰謝料請求をされて良いと思います。
証拠がない場合の慰謝料請求について、詳しくはこちらをご覧ください。
③夫婦関係に一切波風を立てたくない場合
- 配偶者への請求はせず、弁護士を通して不倫相手にのみ請求する
配偶者が不貞をしていたけれども、夫婦関係に一切波風を立てたくないという場合には、配偶者への慰謝料請求は困難であるため、弁護士を通して、不倫相手にのみ慰謝料請求をするという方法があります。
配偶者に慰謝料を求めず不倫相手にのみ慰謝料請求をする場合、夫婦関係への影響は比較的少なくすみます。
また、弁護士を通すことで、不倫相手との直接の交渉は弁護士が行うことになるため、不倫相手に慰謝料請求をしたことを配偶者に気づかれにくいという利点があります。
一般的に、不倫相手に慰謝料請求をする最初の通知文書において、不倫相手に対し、今後配偶者に接触しないよう警告をします。
この警告に強制力はありませんが、弁護士から文書にて配偶者と接触しないよう警告を受けた場合には、それを無視すれば自身に不利益にはたらくのではないかと、接触を控える人が多い印象です。
そのため、配偶者に気づかれないままに、不倫相手から慰謝料を支払ってもらえるということも十分に考えられます。
もっとも、弁護士からの警告を無視して、慰謝料請求をされたことを配偶者に相談するというケースもありますので、不倫相手に慰謝料請求をしたことすらも絶対に配偶者に知られたくないという場合には、不倫相手への慰謝料請求も控えた方がよいかもしれません。
④W不倫の場合
- 配偶者と離婚する。
- 弁護士を通して相手方配偶者には不倫が発覚しないように交渉する。
W不倫の場合に慰謝料を請求するリスクは、端的に言うと、得られるお金より出ていくお金が多くなる可能性があるというリスクになります。
出ていくお金というのは、不倫をされた方が直接支払うお金があるわけではなく、配偶者が不倫相手の配偶者に支払わなければならなくなるお金、つまり家計から出ていくお金を意味します。
そこで、家計からお金が出ていくという状況を解消するために、配偶者との離婚を考えるというのも1つの方法です。
配偶者と離婚をすれば、配偶者が不倫相手の配偶者に支払わなければならないお金は、配偶者自身のお金から支払うことになり、家計からお金がでていくという状況は防ぐことが可能です。
また、配偶者と離婚はしたくないけれど不倫相手に慰謝料請求はしたいという場合、出ていくお金をなくすためには、そもそも不倫相手の配偶者に不倫の事実を知られないようにする(不倫相手の配偶者から自身の配偶者への慰謝料請求を防ぐ。)という必要があります。
不倫相手の配偶者に不倫の事実をしられないよう慰謝料請求をしていくために、弁護士に依頼するということが考えられます。
弁護士が依頼を受けると、基本的には、不倫相手に書面での慰謝料請求を行いますが、書面を自宅に送ると、不倫相手の配偶者が書面をみて不倫の事実を覚知する可能性が高くなるため、不倫相手に自宅以外の書面の送付先を確認したり、電話でやり取りをしたりして交渉を進めていくことになります。
弁護士を通さずに、本人でこのような方法をとることも考えられますが、口頭でのやり取りが必要になると、双方感情的になり話がまとまりにくいという不利益や、その場で法的な判断をすることが難しいという不利益があります。
そのため、特殊な配慮を要する慰謝料請求では、弁護士に依頼することを検討したほうが良いでしょう。
なお、上記方法は、不倫相手の配偶者にまだ不倫の事実が発覚していないこと、不倫相手も配偶者に不倫の事実を知られたくないこと、というのが前提になります。
⑤職場不倫の場合
- 配偶者の転職を検討する。
職場不倫の慰謝料請求リスクは、不倫相手に慰謝料請求をしたことがきっかけで、配偶者が職を失う、転勤が必要になる、給与が下がる等の不利益を被り、その結果自身にもその不利益が及ぶという点にあります。
慰謝料請求をすることで、不倫相手がどのような出方をするかは完璧には把握できないことから、職場から何らかの対応が取られる前に、最初から配偶者の転職を検討することがリスクの軽減に繋がると考えます。
離婚をしない状況で配偶者が転職をするとなると、もちろんその影響を受けることにはなりますが、突然会社から転勤やクビを言い渡されるより、事前に色々な準備をすることが可能になります。
不倫相手の中には、職場に不倫のことを話されたら困るだろう、ということで強気な態度にでてくる人もいるため、配偶者が転職をすることで交渉がスムーズにいくこともございます。
慰謝料を請求しないメリットとデメリット
慰謝料を 請求しないメリット |
慰謝料を 請求しないデメリット |
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慰謝料請求をしないメリット
早期解ができる
離婚問題の1つとして慰謝料請求を検討する場合、慰謝料請求をしないことで離婚問題の早期解決が見込めるというメリットがあります。
私の経験上、不倫の慰謝料請求をした場合に、相手方が素直に不倫を認め慰謝料額も含めて全面的に請求を受け入れるということはほとんどありません。
多くのケースでは、仮に不倫自体を認めても、不倫に至る経緯や不倫の具体的内容について双方の認識の食い違いがあり、慰謝料額自体も争いになる傾向にあります。
また、「不倫」という一方の明確な落ち度がある場合でも様々な争いが生じ得ますが、近年よく問題となる「モラハラ」や「精神的虐待」等を理由として慰謝料請求をする場合はより争いが激化することが多いです。
場合によっては、双方がそれぞれ相手方からモラハラを受けたと主張して、慰謝料請求合戦が起こることもあります。
慰謝料請求は、その性質上、請求する側もされる側も感情的になりやすい請求であり、双方感情的になった結果、解決が長引くということも少なくありません。
逆にいうと、慰謝料請求をしないという選択をすれば、慰謝料を請求する場合と比べ、全体として早期解決ができる可能性は格段に上がると考えられます。
話合いでの解決可能性が高まる
上述の通り、慰謝料請求をすると、その話合いの過程では、慰謝料を請求する側もされる側も感情的になりやすい傾向にあります。
特に、慰謝料請求をされた側は、自身が悪いということを前提にお金まで払わなければならなくなるわけですから、客観的に慰謝料請求が認められるか否かはともかくとして、請求をされたこと自体で、少なからず負の感情を抱くことになります。
そうすると、感情に任せて争わなくてもよいような内容で争ってきたり(例えば、法的に生活費の支払いをするのは当然のことであるのに支払わない等)、任意に協力してもらう必要があることに協力してくれなかったり(例えば、自宅に届いた郵便物を別居先に送ってもらいたいのに送ってくれない等)と、些細なことで衝突しやすくなり、話合いがなかなか進まないということああります。
もちろん、慰謝料を請求しなければ、これらの些細な衝突が必ず防げるというわけではありませんが、慰謝料請求をする場合と比べ感情の対立が少なくなることは間違いありません。
そのため、慰謝料請求をしない場合は慰謝料請求をする場合と比べ、話合いで解決できる可能性は高くなるといえます。
二次的被害(精神的、経済的)を避けられる
不倫による慰謝料請求においては、不倫をされたという一次的被害に加え、二次的被害が発生する可能性にも留意する必要があります。
例えば、上述したような、得られるお金よりも出ていくお金の方が大きいケースや、調査会社に依頼して証拠を収集したけれども慰謝料を回収できなかったケースなどは、慰謝料請求をすることで発生する経済的な二次的被害ということができるでしょう。
また、慰謝料請求をする場合、慰謝料請求をされた側の反論内容や、慰謝料請求をする過程において、精神的な二次的被害を受けることもあります。
具体的には、慰謝料請求をされた相手方の反論として、不倫の前に夫婦関係は既に破綻していた、夫婦関係は円満でなかった等の主張がありますが、このような相手方の心無い主張により、さらに精神的ダメージを負われる方もいます。
また、訴訟においては、慰謝料を請求する側が不倫の事実等を主張・立証していく必要がありますが、主張立証の際には、改めて不倫内容の詳細に直面しなければなりません。
そうすると、配偶者と不倫相手との淫らなやり取りを再確認しなければならなかったり、資料を精査する過程で新たに辛い事実に気づいたりすることもあり得ます(例えば、LINEのやり取りを精査すると、自身が病気で苦しんでいた時に出張と偽って不倫相手と旅行をしていた等)。
これらの二次的被害は、慰謝料請求をしなければ避けられる被害であるとも考えられます。
慰謝料請求をしないデメリット
得られる経済的利益が減る
慰謝料請求をしなければ、単純に考えると、慰謝料請求をすれば得られたであろう慰謝料分の経済的利益を得られない、というデメリットがあると思います。
精神的苦痛を発散する場がない
不倫で受けた精神的苦痛について、何らかの法的請求をする場合、その請求は「慰謝料請求」で行うことになります。
不倫の被害を受けた方の中には、不倫相手に少しでも同じ苦痛を味わってほしいと、不倫相手の職場に押しかけたり、不倫相手の親族に連絡をしたりすることを考えられる方もいますが、そのようなことはすべきではありません。
なぜなら、そのような行為をすることで、逆に刑事上、民事上の責任を問われかねないためです。
したがって、不倫相手から受けた精神的苦痛については、慰謝料を請求するしかないため、その慰謝料請求をしないとすれば、精神的苦痛を発散する場がないということがデメリットとして挙げられるでしょう。
相手方に反省を促せない
慰謝料請求をする際、その目的として、慰謝料という経済的利益を求めるだけではなく、相手方に反省を促したいと考えられている方は少なくありません。
むしろ、慰謝料の相談を受ける中では、慰謝料請求をすることで今後の不倫相手と配偶者との関係を抑止したい、同じように不倫の被害を受ける人を減らしたいという気持ちの方が強い方も多くいらっしゃる印象です。
確かに、不倫について特にお咎めなしで終わってしまえば、また同じことを繰り返す可能性は高いと思います。
そのため、慰謝料請求をしなければ、相手方に反省を促せない(さらなる不倫行為への抑止ができない)という点は、慰謝料請求をしないことの大きなデメリットといえるでしょう。
慰謝料を請求しない場合でも実施した方がよいこと
様々な事情を踏まえ、慰謝料を請求しないという判断をされた場合でも、以下の対応を検討されることをお勧めいたします。
①離婚・男女問題に詳しい弁護士への相談
慰謝料請求を諦める前に、まずは離婚問題に詳しい弁護士に相談することを強くお勧めいたします。
近頃は、弁護士でなくてもインターネット等で慰謝料請求に関しての最低限の知識を得ることは可能です。
ただ、一口に慰謝料請求といっても、それに付随して様々な問題が起こり得ます。また、慰謝料請求を検討される事情や、そのとき置かれている状況は人によって大きく異なり、そうすると、最善の解決策もまた人によって異なります。
そのため、自身にとって、何が一番の解決策となるのか、まずは離婚や男女問題に詳しい弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。
慰謝料に強い弁護士を探したい方はこちらをご覧ください。
②誓約書の作成
配偶者や不倫相手が不倫を認めているが、慰謝料の請求まではしないという場合、配偶者や不倫相手に二度と不倫をしないという誓約書を作成してもらうことが考えられます。
誓約書の内容は様々ですが、基本的には、不倫の事実や今後不倫をしないこと、不倫をした場合の違約金等を記載することが多いです。
誓約書を作成することは、今後の不倫についての抑止力になるという点や、万一不倫を繰り返した場合に金銭の回収を容易にするという点がメリットとして挙げられます。
誓約書は当事者間で交わすことも可能ですが、より意味のある内容にするためには弁護士の助言を受けると良いでしょう。
誓約書の記載例はこちらをご覧ください。
③証拠の収集・保管
慰謝料請求をしないという判断をしたとしても、今後、慰謝料を請求したいと考え直す可能性が0ではないことや、不倫を繰り返した際には慰謝料を請求しようと考えている場合には、不倫についての証拠の収集や保管はしっかりなされることをお勧めいたします。
特に、携帯電話に不倫に関するデータを保存される方が多いですが、いざ請求しようというタイミングで、携帯電話を紛失してしまった、携帯電話が変わってデータが消失したと仰る方も多々おられるため、別の媒体にデータを移行しておく等、証拠の保管方法には十分にご注意ください。
まとめ
この記事では、慰謝料を請求しない方がいい場合をメインにご説明していきましたが、ご参考になったでしょうか。
不倫の慰謝料請求をする際に重要なことは、慰謝料を請求する前の段階で、慰謝料請求をすることのメリットとデメリットをしっかり把握しておく、ということです。
なぜなら、慰謝料請求をすることのデメリットを考えずに慰謝料請求をした場合に、ただでさえ辛い状況に追い打ちをかけるような想定外の不利益を被ることもあり、慰謝料請求をしたことを後悔する可能性もあるためです。
そのため、慰謝料請求を考えるにあたっては、事前に離婚・男女問題を専門にする弁護士に相談することを強くお勧めいたします。
また、本記事で述べた通り、証拠収集前の段階でも弁護士の助言を受けた方が良いケースも多いため、配偶者の不倫を疑った段階で弁護士に相談できればなお良いと思います。
まだ慰謝料を請求するかどうかわからないのに弁護士に相談をしても良いものか、と迷われる方もいるかもしれませんが、男女問題を多く扱う弁護士としては、相談は早ければ早いほど、より相談者の方にとって有益な選択肢を提示できると考えております。
デイライト法律事務所には、離婚・男女問題に精通した弁護士が多く在籍しています。
慰謝料請求の気持ちを固めた方、今は不倫を疑っているだけの方、様々な状況の方がいらっしゃると思いますが、慰謝料請求後に後悔することがないよう、配偶者の不倫を疑われているのであれば、まずはお気軽にご相談にお越しください。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?