うつ病と離婚の関係とは?離婚率や注意点を弁護士が解説
うつ病と離婚の関係
離婚問題に直面した場合、誰もが大きなストレスを抱えます。
特に、パートナーの不貞、子の奪い合い、DV・モラハラ等の悩みがある場合は、強度のストレスによって、うつ病にかかる方はとても多いです。
また、相手がうつ病の場合、結婚生活を続けていくことに自信が無くなることもあります。
このようにうつ病と離婚問題と密接に関連しています。
ここでは、うつ病と離婚の関係や、離婚を進めていくときの手続きなどについて解説いたします。
ぜひご参考にされてください。
うつ病による離婚率
相手がうつ病にかかったことを直接の理由とする離婚の割合については、国などが発表している正確なデータがありません。
そのため、執筆者の個人的な主観とはなりますが、「相手のうつ病を直接の理由とする離婚率」はそれほど高くないと感じています。
実際に、当事務所が実施した「離婚の理由調査」では、「相手の病気」を上げた方は女性側で3.6%(9位)、男性側で3.5%(8位)に過ぎませんでした。
この「病気」には、当然、うつ病以外も含まれます。
仮に、病気の大部分がうつ病だったとしても、その他の離婚理由と比較すると、それほど大きな割合とはなっていないことがわかります。
なお、相手がうつ病であっても、それは直接の理由ではなく、性格の不一致、浪費などで離婚すべきか悩んでいる方は多いです。
また、相手からのモラハラやDV等によって、精神的不調に陥っている方も多いという印象です。
相手がうつ病の場合のポイント
うつ病の相手とは離婚したほうがいい?
パートナーがうつ病などの病気を患っている場合で、その症状が重い場合、結婚生活は大変だと思います。
しかし、離婚すると生活は一変します。
まずは相手がうつ病から回復してくれる可能性を検討すべきでしょう。
また、離婚すべきか否かについて、離婚問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めいたします。
本当のプロフェッショナルであれば「離婚ありき」ではなく、離婚した場合のメリットやデメリットについて、親身になって助言してくれると思います。
うつ病の相手から離婚を求められたら
うつ病の相手が離婚を請求してきた場合、離婚に応じるか否かは慎重に判断すべきです。
特に、うつ病の程度が重い場合、離婚は相手の真意とは言えない可能性もあります。
このような場合、相手の主治医と面談するなどして、相手の離婚請求が真意といえるのか、見極めるべきです。
うつ病の相手が離婚をしたがる場合の対応
相手がうつ病の場合、精神的に不安定な状態にあるため、一時の感情に流されて離婚を切り出すことがあります。
相手が正常な状態ではないことを前提に対応しましょう。
決して逆上することなく、寛容な気持ちで接してあげてください。
それでも相手の離婚意思が強く、同居生活が難しいと感じたときは、一時的な別居も検討されてはいかがでしょうか。
冷却期間をおくことで夫婦関係が改善するかもしれません。
相手のうつ病を理由に離婚できる?
もし、相手との離婚を決意した場合、離婚できるのかが問題となります。
日本では、夫婦が離婚について同意すれば協議離婚が成立します。
協議離婚については理由は不要です。
したがって、相手がうつ病の場合であろうとなかろうと、相手が同意すれば離婚できることになります。
では、相手が離婚を拒んだらどうなるのでしょうか。
相手が離婚に応じないと、最終的には離婚裁判を起こさなければなりません。
離婚裁判において、裁判所が離婚判決を出すためには、「離婚原因」と呼ばれる、下表の5つの要件のいずれかに該当することが必要となります(民法770条1項)。
【 離婚原因 】
- ① 相手方に不貞行為があった
- ② 相手方の生死が3年以上明らかでない
- ③ 相手方から悪意で遺棄された
- ④ 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な理由がある
相手がうつ病の場合、上記の④「精神病」に該当しそうに思えます。
しかし、ここで注意が必要なのは、④の「精神病」には「強度の」という言葉が加わっていることです。
かつ、「回復の見込みがない」という条件も必要です。
うつ病については、比較的軽度の精神病と考えられます。
また、回復の可能性もある病気です。
したがって、「うつ病」というだけでは裁判所は離婚を認めないでしょう。
もっとも、相手との夫婦関係が悪化し、別居期間が長くなるなどの事情があれば、⑤の「その他婚姻を継続し難い重大な理由」に該当する可能性があります。
どのような場合にこれに該当するかについては専門的な判断が必要となるので、離婚問題にくわしい弁護士へ相談なさってください。
なお、当事務所では、交渉だけでうつ病相手との離婚を成立させた事例が多くあります。
ぜひ参考になさってください。
自分がうつ病の場合のポイント
結婚生活が原因でうつ病となったら離婚できる?
結婚生活によるストレス等が原因でご自身がうつ病となっている場合、相手と離婚したいと感じることでしょう。
相手に離婚を切り出し、相手が離婚に応じてくれれば協議離婚が成立します。
しかし、相手が離婚に応じてくれない場合、最終的には裁判を起こさなければなりません。
この場合、上で解説したように、裁判所は「うつ病」だけを理由として離婚を認めることはないでしょう。
もっとも、相手からモラハラやDVなどを受けており、それが原因でうつ病になった場合は別です。
このようなケースでは、相手に非があるため、⑤の「その他婚姻を継続し難い重大な理由」に該当する可能性があります。
モラハラやDVについては、その立証が問題となるため、離婚問題にくわしい弁護士へ相談なさってください。
相手との関係を修復したいときはどうすればいい?
相手との関係を修復したい場合、率直に相手と話し合いをすることをおすすめいたします。
その際に、ご自身のうつ病のことも打ち明け、隠し事はないようにしたほうがよいでしょう。
当事者同士での話し合いが難しいケースでは、家庭裁判所の円満調停などを利用する方法が考えられます。
家庭裁判所では、離婚調停だけでなく、夫婦関係の修復を目的とした円満調停があります。
うつ病離婚の手続きと流れ
どちらかうつ病の場合の離婚の流れとしては、次の道筋が考えられます。
一般的には、まずは夫婦の間で離婚についての話し合いをして、協議離婚を目指します。
ただし、うつ病の程度が重症の場合、状況によっては成年後見人の申立てを検討しなければなりません。
相手の病状が重症ではない場合で、当事者間での協議離婚難しければ、次に家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
調停が不成立となった場合には、さらに訴訟提起をして「裁判離婚」を目指すという順になります。
これらの簡単な特長とメリットやデメリットをまとめると下表のとおりとなります。
※一般的な傾向であり事案によって異なります
協議離婚(当事者同士の話し合い)
メリット | デメリット |
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相手がうつ病の場合は、不必要に刺激しないように冷静に話し合うことが重要です。
したがって、相手を非難するような言葉は基本的には避けましょう。
うつ病の症状が重い場合、協議による解決は難しいと考えられます。
冷静な話し合いが難しい場合は弁護士に相談するなどして、離婚調停などの他の手続きへの移行を検討しましょう。
調停離婚(裁判所での話し合い)
メリット | デメリット |
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相手がうつ病の場合でも、軽度であれば離婚調停は可能です。
もっとも、うつ病が重症の場合、上述のとおり、成年後見人の選任を検討しなければなりません。
離婚調停は話し合いの場であり、うつ病を立証しなければならないわけではありません。
もっとも、相手がうつ病の事実について信じていないようなケースでは、診断書を提出することで、相手を納得させることができる可能性があります。
そのようなケースでは、診断書の効果があるといえます。
裁判離婚(裁判所による命令)
メリット | デメリット |
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※柔軟性についての説明
裁判で判決となると、多くの場合、裁判基準に従った画一的な結果となります。
裁判基準に納得できない場合、裁判離婚は避けた方がよいということになります。
上で解説したように、よほど重病でなければ「うつ病」だけを理由とする離婚請求は厳しいです。
原告側(離婚を求める側)は、具体的な結婚生活の問題を主張し、「婚姻を継続し難い重大な事由」があったことを立証していく必要があります。
弁護士による交渉
離婚問題では、弁護士に交渉してもらう方法をお勧めいたします。
裁判所を利用しないため、柔軟な解決の可能性や、スピード解決の可能性を確保できます。
また、弁護士が相手と交渉するため、依頼者の精神的・肉体的な負担を軽減できます。
まずは弁護士が相手と直接交渉し、納得がいく解決が得られない場合に、次善の策として、調停手続の利用を検討するとよいでしょう。
うつ病の場合の離婚調停
相手がうつ病の場合でも、軽度であれば離婚調停は可能です。
うつ病が重症の場合、上述のとおり、成年後見人の選任を検討しなければなりません。
うつ病と離婚についてのQ&A
うつ病で離婚するときの慰謝料の相場とは?
うつ病の原因によって異なりますが、筆者の経験上、慰謝料の請求は難しい場合が多いです。
仮に相手に非があり、慰謝料が認められても数十万円程度になると思われます。
相手の不倫などが原因で離婚する場合は200万円から300万円程度が多いと思われます。
以下、くわしく解説します。
慰謝料の条件
慰謝料の請求が認められるためには、加害者の不法行為の成立が必要となります。
したがって、配偶者のDV・モラハラなどがあり、そのことが原因でうつ病にかかってしまったような場合は慰謝料を請求できる可能性があります。
また、DVの場合は怪我の治療費なども賠償請求の可能性がありますが、これは財産的損害であって、精神的損害の慰謝料とは区別されています。
もっとも、DV・モラハラの場合、裁判所に慰謝料の支払いを認めてもらうのは決してかんたんではありません。
それは、DV・モラハラについての立証が壁となるからです。
すなわち、DV・モラハラの加害者が加害行為の存在について否認した場合、その立証責任は請求者である被害者側が負います。
他方、うつ病を患う方の多くは、加害者から精神的な虐待や暴言を受けていたという事案です。
このような精神的な虐待や暴言は、目に見えない暴力であり、証拠がない場合がほとんどです。
そのため、うつ病の場合の慰謝料請求は難しい場合が多いのです。
慰謝料請求の証拠とポイントについてはこちらのページをご覧ください。
うつ病で離婚するとき親権はどうなる?
うつ病であることだけでは、親権の判断に大きな影響を与えることはないでしょう。
親権の判断では、これまでの監護の実績が大きく影響します。
すなわち、子供が生まれてから、父母のどちらが子供の面倒を見ていたか、ということです。
監護能力についても重要となりますが、子育てに大きな影響があるくらいの精神病でなければ、不利には働かないと考えられます。
うつ病離婚の養育費への影響とは?
養育費とは、子どもが社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用です。
養育費の内容としては、子の衣食住の為の費用・健康保持のための医療費・教育費が含まれます。
養育費の額について争いがある場合、基本的には父母双方の収入、子供の数と年齢によって算出されます。
それでは、父母のどちらかがうつ病の場合、養育費に影響するでしょうか。
父母のどちらかが重度のうつ病で、稼働能力(働く能力)がない場合、収入がゼロと認定される可能性が高いと思われます。
したがって、養育費の金額に影響します。
まとめ
以上、うつ病と離婚との関係について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
離婚問題はうつ病が伴わない通常のケースでも負担が大きいです。
これにうつ病が伴うと、さらに大きなストレスがかかり、苦慮されることが予想されます。
少しでも、ご負担を軽減するために、離婚問題に精通した弁護士にご相談されることをお勧めします。
この記事がうつ病と離婚の問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。
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