カサンドラ症候群とは?限界時の対処法をわかりやすく解説

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カサンドラ症候群とは、アスペルガー症候群(ASD)のパートナー等とのコミュニケーションや情緒的交流が乏しくなることなどを原因として、心身の不調をきたす状態のことをいいます。

ここでは、カサンドラ症候群について原因や症状、対処法、離婚の可否やポイントなどについて解説していきます。

ぜひ参考になさってください。

カサンドラ症候群とは?

カサンドラ症候群とは、アスペルガー症候群(ASD)やその傾向のあるパートナー等とのコミュニケーションや情緒的交流が乏しくなること等を原因として、不安や抑うつ等の心身の不調をきたす状態のことをいいます。

アスペルガー症候群は女性よりも男性の方が多いといわれており、アスペルガー症候群の夫との生活で、妻がカサンドラ症候群を発症するというケースが多いです。

アスペルガー症候群の夫と暮らす妻としては、夫について、

「気遣いをしてくれず、思いやりがないように感じる」
「大事なときにそばにいてくれない」
「子どものことなど大事なことを話しているのに、聞てくれない」
「相談しようとすると、煩わしそうにされる」

などといった悩みを抱えますが、夫は妻がなぜそのような悩みを抱えているのかも理解することができません。

また、このような悩みは、周囲の人から理解してもらうことも難しい傾向にあります。

そのため、妻が夫との生活における苦しみと、周囲に理解してもらえない苦しみの二重の苦しみを抱えていることも多いです。

 

カサンドラ症候群の原因

カサンドラ症候群は、アスペルガー症候群を含めた自閉スペクトラム症やその傾向を持つ人との関係がうまくいかないことによって引き起こされるのが典型とされています。

アスペルガー症候群の人は、他人の気持ちに共感したり、相互的なコミュニケーションをとることが苦手です。

そのため、アスペルガー症候群をもつ夫と暮らしている妻は、夫に受け入れられているのか不安になったり、夫が思うような反応を見せてくれないことに混乱したりイライラしたりするようになります。

そのような状態が続いていると、次第に夫に反応を求めることもむなしくなり、結婚生活も無意味に思え、落ち込み、抑うつ状態に陥ってしまいます。

あるいは、夫に対する怒りが爆発して自制がきかなくなり、暴力的になってしまうこともあります。

周囲に理解されにくい

アスペルガー症候群をもつ夫は、家の外では真面目でいい人と思われており、仕事で評価されていることも少なくありません。

また、暴力が絡むようなケースは別ですが、夫との生活における「やりにくさ」「違和感」「寂しさ」はどは、なかなか他人には伝わらないものです。

そのため、周囲の人に夫のことを相談しても、「いい夫なのに何が不満なのか」などと言われてしまうこともあります。

そうすると、妻は、一人で悩みを抱えて孤立していってしまいます。

このように、他人に苦しみをわかってもらえず、孤立してしまうことも、心身の不調を引き起こす要因となり得ます。

アスペルガー症候群に限られない

カサンドラ症候群を引き起こすのは、アスペルガー症候群に限られるわけではありません。

パートナーがパーソナリティ障害やその他の精神疾患等を抱えているケースでも、共感性や応答的コミュニケーションが乏しくなることによって、カサンドラ症候群が引き起こされる場合があります。

もっとも、この記事では、基本的には、アスペルガー症候群の夫との暮らしにより、妻のカサンドラ症候群が引き起こされたという事例を念頭において、解説していくことにいたします。

 

アスペルガー症候群の3つの特徴は?

アスペルガー症候群とは、発達障害の一種であり、自閉スペクトラム症(自閉症の傾向をもった状態)の中でも知的能力や言語能力に低下がないものをいいます。

症状の特徴としては主に次の3つがあります。

①コミュニケーションの障害

相互的なコミュニケーションが苦手です。

自分の興味関心のあることだけを一方的に話し続けたり、相手の話を聞いているようでも全く聞いていなかったりすることがあります。

また、言葉を字義どおりに解釈し、比喩やあいまいな表現を理解するのが苦手な傾向もあります。

そのため、相手に会話が成立しないと思われてしまうことがあります。

②対人関係の障害

相手の気持ちに共感したり、相手の行動や表情(明確な言葉以外のもの)からその気持ちを想像したりすることが苦手です。

そのため、共感的に応答することができず、相手に「わかってくれない」「配慮が欠けている」などと思われてしまうことがあります。

また、場の空気を読むことが難しいため、不適切な言動をして、他人と衝突してしまうことがあります。

このようなことから、対人関係が築きにくい傾向にあります。

③パターン化した行動、興味・関心のかたより

同じ行動パターンを繰り返すことを好み、想定外のことがあるとパニックになったり、怒り出したりすることもあります。

また、自分のやり方やルールにこだわり、それ以外のものを受け入れられない傾向にあります。

そして、狭い興味にとらわれやすく、いったん興味をもつと没頭して切り替えが難しくなります。

このような特性を活かして専門領域で活躍する方もいますが、パートナーとの関係では衝突を招く要因となる場合があります。

 

 

カサンドラ症候群の症状とは?チェックリスト

次のような状態になっている場合、カサンドラ症候群の可能性があります。

※カサンドラ症候群か否かは医学的な診断が必要となります。あくまで参考程度とし、医師の診察を受けるようにしてください。

 

 

カサンドラ症候群になりやすい人とは?

家庭のカサンドラ症候群の場合

次のような特徴をもつ方は、カサンドラ症候群になりやすい傾向にあります。

  • 真面目
  • 面倒見が良い
  • 責任感が強い
  • 我慢強い
  • 人に尽くすのが好き
  • ー相談できる人がいない(自分の実家との関係も悪く、実親を頼ることができないなど)

 

職場のカサンドラ症候群の場合

カサンドラ症候群は、職場でアスペルガー症候群やその傾向を持つ人(上司・部下・同僚)と関わりを持たざるを得ない人にも発症する可能性があります。

職場のカサンドラ症候群になりやすい人も、真面目、面倒見がよい、責任感が強い、我慢強いといった特徴を持っている傾向にあります。

相手との関係がうまくいかないことについて、「私が悪いのではないか」「私が何とかしなければ」と頑張るうちに、ストレスが積み重なり、心身に不調が出てくるというケースが多いです。

 

 

カサンドラ症候群への治療・対処法とは?

カサンドラ症候群の治療は、対症療法(症状に応じてする治療法)が主流となっています。

頭痛やめまいなどがある場合は十分な休息を取り、抑うつ状態やパニック症状に対しては薬物療法や心理療法によって症状の改善を図ります。

しかし、カサンドラ症候群の根本的な原因は、アスペルガー症候群などの精神疾患を持つパートナーとの関係性です。

したがって、まずはパートナーとの関係を改善するように努め、改善が難しければ離婚や別居などの関係の変化を検討する必要があるでしょう。

以下、具体的な対処法について解説していきます。

パートナーのアスペルガー症候群について理解する

まずはパートナーのアスペルガー症候群の特性について理解することが大切です。

アスペルガー症候群の人の行動原理や思考パターンは、そうでない人とは全く異なるといわれています。

それらを理解することにより、相手の言動に混乱したり、葛藤を抱いたりすることを回避できるようになることもあるでしょう。

また、特性を踏まえて関わり方を工夫することで、すれ違いや対立を改善していくことができる場合もあります。

 

アスペルガー症候群の疑いがあるパートナーに受診を強要しない

アスペルガー症候群の方には医療機関による適切な治療が必要となります。

しかし、パートナーに医療機関の受診を無理に強要するのはやめましょう。

また、医療機関を受診を促すときの伝え方も重要です。

パートナーに対し「あなたはアスペルガーだと思うから精神科を受診して」などと言うと、相手はプライドを傷つけられたと感じ、関係がより悪化することが懸念されます

上で解説したように、アスペルガー症候群の方は他社とコミュニケーションを上手く取ることが難しく、良好な関係性を築くことが苦手です。

まずはアスペルガー症候群のことについてよく理解し、相手にあった方法・伝え方で医療機関の受診を促すようにしましょう。

 

限界のときは距離を置く

パートナーと生活を続けることに限界を感じる場合は、心身の不調が深刻化する前に別居をして距離を置くようにしましょう。

必ずしも離婚を前提とする必要はありません。

別居をすることによって、パートナーが危機感を抱き、専門家の支援を得ながら改善しようと動き出すケースもあります。

そのようなパートナーの反応もみつつ、関係を修復するか、離婚するかの判断をするのもよいでしょう。

ひとまず距離を置くということが重要です。

別居について少しでも不安がある場合は、離婚問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめいたします。

別居した場合の見通しや、別居の際の注意点などについてアドバイスをもらうことができます。

また、別居のサポートを依頼すれば、弁護士が窓口となって相手とやり取りをしてくれるため、パートナーとの直接接触を避けることができます。

さらに、別居後は相手に生活費(婚姻費用)を請求できる場合がありますが、この請求についても弁護士に任せることができます。

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別居を弁護士がサポート

 

専門家に相談する

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターとは、発達障害者の日常生活についての相談支援等を行っている機関です。

パートナーとの生活で困っていることや、どのように接すればよいのかなどについて無料で相談することができます。

パートナー自身が自分の問題を自覚している場合は、一緒に相談に行くことを検討してもよいでしょう。

必要に応じて医療機関などの紹介も行ってくれます。

参考:発達障害情報・支援センター

 

離婚を検討する

パートナーとの関係修復が難しい場合は、最終的には離婚を検討することになるでしょう。

しかし、アスペルガー症候群のパートナーと離婚について話し合うことは簡単ではありません。

アスペルガー症候群の人は、もともとコミュニケーションが難しいうえ、相手の気持ちを想像することも苦手であるため、なぜ離婚を切り出されたのか理解できないという場合も多いです。

そのため、離婚に向けての話し合いが進まないというケースが多いです。

離婚自体については合意ができる場合であっても、親権や養育費、財産分与などの条件面で協議が滞ってしまうケースも少なくありません。

そのため、離婚の話し合いをする際には、アスペルガー症候群に理解のある弁護士に間に入ってもらうことをおすすめします。

アスペルガー症候群に理解のある弁護士であれば、協議の方法を工夫したり、丁寧な説明を心がけてくれるため、早期に、適切な条件で離婚の合意をすることができる可能性が高くなります。

アスペルガー症候群に理解がある離婚弁護士に相談を!

パートナーとの別居や離婚が視野に入る場合は、弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士に離婚までの道筋や見通しを説明してもらうことで、漠然とした不安や疑問を解消し、今後のことを具体的に考えることができるようになるでしょう。

相談の際は、アスペルガー症候群に理解のある弁護士を選ぶことがポイントです。

アスペルガー症候群に理解のある弁護士であれば、カサンドラ症候群の方特有の悩みに寄り添った対応をしてくれるでしょう。

また、相手がアスペルガー症候群である場合は、コミュニケーションが難しいことを前提に通常よりも丁寧な説明や対応が必要になります。

アスペルガー症候群に理解のある弁護士であれば、上記のことも踏まえて相手と交渉することができるため、話が進みやすくなります。

 

 

カサンドラ症候群を理由に離婚できる?

カサンドラ症候群を発症しても、それだけで直ちに離婚が認められるわけではありません。

しかし、カサンドラ症候群を発症した経緯や、症状が夫婦生活に及ぼした影響など、具体的な事情を考慮したうえで、夫婦関係が破綻して修復不可能な状態にあると認められた場合は、裁判でも離婚が認められる可能性があります。

 

離婚の方法

離婚の方法には、①協議離婚、②調停離婚、③裁判離婚の3つがあります。

①協議離婚は、裁判所を利用せず、当事者(本人又は代理人)同士で話し合いをし、離婚することや離婚条件について合意をし、離婚届を提出することにより離婚を成立させる方法です。

②調停離婚は、裁判所において、調停委員会を仲介に話し合いをして、合意を成立させることによって離婚する方法です。

③裁判離婚は、裁判官に離婚を認めるとの判断(離婚判決)を出してもらうことにより離婚する方法です。

協議離婚や調停離婚の場合は、当事者間で合意が出来さえすれば、離婚の理由の如何を問わず、離婚をすることができます。

他方、裁判離婚は、裁判官が法律に基づいて離婚の可否を判断するため、法律に定められている離婚できる条件(「離婚原因」といいます。)が認められなければ、離婚することはできません。

カサンドラ症候群は離婚原因になる?

離婚原因は、次のように定められています。

引用元:民法|電子政府の窓口

  1. ① 相手方に不貞行為があったとき
  2. ② 相手方から悪意で遺棄されたとき
  3. ③ 相手方の生死が3年以上明らかでないとき
  4. ④ 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

ご自身がカサンドラ症候群を発症したことや、その裏返しとして、パートナーがアスペルガー症候群であること自体は、上記の離婚原因のいずれにも該当しません。

もっとも、それらが間接的な要因となり、夫婦関係が破綻して修復不可能な状態になっている場合は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚が認められる可能性はあります。

ただし、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして離婚を認めてもらうためには、夫婦関係が客観的に破綻しており、かつ、それを証拠によって裏付けることができる必要があります。

そして、夫婦関係の客観的な破綻が認められるのは、別居が長期間(事案によりますが3年から5年のケースが多いです)継続している場合や、夫婦の一方が夫婦関係を破綻させるような行為(暴力など)をしたような場合です。

相手がアスペルガー症候群であるために、夫婦間でいさかいが絶えなかったり、一切会話がなかったりするとしても、それだけで客観的な破綻を認めてもらうのは難しいと考えられます。

また、「話を聞いていない」「無神経な発言をする」など、アスペルガー症候群にありがちな言動も、状況にもよりますが、それだけで夫婦関係を破綻させるような行為と評価される可能性は低いと考えられます。

仮に、上記のような言動の積み重ねによって夫婦関係が破綻した場合であっても、それを証拠によって裏付けることは難しいことが多いです。

以上のようなことから、別居が長期間続いているようなケースでなければ、裁判で離婚を認めてもらうことは難しい傾向にあります。

離婚のポイント

アスペルガー症候群の相手と裁判離婚をすることは難しいため、できる限り合意による離婚(協議や調停)を目指す必要があります。

ただし、先に述べたように、相手がアスペルガー症候群の場合、コミュニケーションの問題などから、離婚の話し合いがスムーズに進まないことも多いです。

そのため、アスペルガー症候群に理解のある弁護士に代理人として相手と交渉してもらうようにするとよいでしょう。

もっとも、相手が離婚を拒否し続ける場合や、離婚条件について折り合いがつかない場合は、最終的には裁判で解決せざるを得なくなります。

その場合、別居が長期間継続していると、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚が認められやすくなります。

そのため、離婚を決意した場合は早めに別居を開始することもポイントとなります。

 

カサンドラ症候群の離婚率

カサンドラ症候群の離婚率について、統計データはありませんが、全体の離婚率(約37%)よりも大幅に高くなるものと思われます。

カサンドラ症候群のケースでは、妻が不調を抱えていても、夫は何の気にも留めず、ともすれば煩わしそうにするといったことが起こります。

そのため、妻が結婚生活に限界を感じると、そこからの関係修復が難しくなることが多いと考えられます。

このようなことから、離婚率は高くなると推察されます。

※参考:厚生労働省|令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況

 

 

まとめ

以上、カサンドラ症候群について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

ご自身がカサンドラ症候群かもしれないという場合は、一人で抱え込まず、お早めに専門機関・専門家に相談されるようになさってください。

離婚も視野に入る場合は、アスペルガー症候群に理解のある弁護士のサポートを受けることをおすすめいたします。

当事務所には、離婚事件に注力する弁護士で構成されるチームがあり、アスペルガー症候群の相手との離婚問題についても強力にサポートしています。

LINEやZoomなどによる相談も受け付けており、全国対応が可能です。

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