婚姻費用を増額するポイントと注意点を弁護士が解説

  

婚姻費用は離婚が成立するまでの生活費です。

そのためか、一時的な費用にすぎないと捉えている方が多いです。

しかし、婚姻費用の取り決めは養育費・慰謝料・財産分与などの離婚条件に影響を与えることがあります。

また、離婚協議が長期化するケースもあるため、婚姻費用を合意する場合は慎重に判断すべきです。

ここでは、離婚問題に注力する弁護士が婚姻費用を増額するポイントや方法、婚姻費用を増額するためのNGな行動などを解説しています。

婚姻費用を増額したい方はぜひ参考になさってください。

 

婚姻費用を増額する7つのポイント

まず、婚姻費用を増額する重要なポイントについて解説いたします。

婚姻費用は、夫婦双方の収入に応じて判定されます。

そのため、相手の実質収入を正確に押さえておくことがとても重要となります。

注意していただきたいのは、収入の意味を正確に理解しておくということです。

例えば、給与所得者の場合、手取りの収入ではなく、税込みの収入となります。

また、自営業者、高額所得者、不動産所得や株式の配当など副収入がある方の場合、確定申告書の確認が必要となります、

しかし、相手が確定申告書や源泉徴収票などの収入資料を開示してくれないケースもあります。

また、開示してくれたとしても、確定申告書の読み解きは離婚専門の弁護士でないと難しいと思われます。

弁護士に依頼すれば、あなたの代わりに相手に対して収入資料の開示を求めるなどして、調査することが可能です。

相手の実質収入を把握できたら、婚姻費用の適正額を計算します。

婚姻費用の計算は、本来、標準算定方式と呼ばれる複雑な計算式を用います。

素人の方が計算すると、間違ってしまう可能性がありますし面倒です。

婚姻費用の算定表と呼ばれる早見表もありますが、算定表では対応できないケースも多いため参考程度とすべきです。

したがって、婚姻費用の適正額については専門の弁護士に相談するとよいでしょう。

当事務所では、婚姻費用の金額を調べたい方のために、婚姻費用の診断サービスをご提供しています。

婚姻費用の診断サービスの内容や方法については、こちらを御覧ください。

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婚姻費用は請求の意思を明確にしたときから支払い義務が発生すると考えられます。

そのため、具体的な適正額が確定していなくても、早い段階で相手に対して内容証明による通知(弁護士に依頼可能)や婚姻費用の調停申し立てを行う必要があります。

例えば、内容証明で婚姻費用の請求をすれば、相手がすぐに支払ってくれなくても、後日、請求した時点から未払分の婚姻費用全額を受け取ることが可能です。

相手に対して、相場を超える婚姻費用を支払ってもらう場合、対立姿勢は取らない方が無難です。

例えば、相手の言い分を聞かずに一方的な請求をする、相手を非難する、子供と面会させない、などの行動を取ると、相手が態度を硬化させて増額に応じてくれなくなることがあります。

相場を超える婚姻費用を請求する場合、「なぜ相場の婚姻費用ではお金が足りないのか」を具体的に説明すべきです。

すなわち「婚姻費用を多く支払ってほしい」「婚姻費用の金額が足りない」などの結論だけでなく、その理由が重要です。

増額の必要性を具体的に説明しても、相手が理解してくれない場合、家計表などの資料を用いるとよいでしょう。

家計表のサンプルはこちらよりご覧いただけます。

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家計表のサンプル

このサンプルのように、収入と支出の内訳が記載されていると、家計が苦しいという状況をよりイメージしやすくなるため、説得に応じてくれることがあります。

婚姻費用の増額に応じてくれたら、合意書を締結しましょう。

口約束だけでは、後日、相手が約束を反故したとき、言った言わないの争いとなり、結局相場の額しか受け取れなくなるというリスクがあります。

 

 

婚姻費用の増額を検討すべきケース

婚姻費用の増額を検討すべき典型的な例をご紹介いたします。

子供が私立学校に通っているケース

お子さんが私立学校に通っている場合、公立学校と比較して授業料が高額になります。

他方で、婚姻費用の相場は、公立学校の授業料相当額しか考慮されておりません。

したがって、公立学校の授業料相当額を上回る金額については、一定程度、婚姻費用に加算できる可能性があります。

 

子供が習い事をしているケース

お子さんが塾、英会話教室、野球やサッカーなどの習い事をしており、それが高額な場合、一定程度、婚姻費用に加算できる可能性があります。

 

子供が大学に行っているケース

子供が大学生の場合、国公立・私立を問わず、授業料が高額となります。

他方で、婚姻費用の相場は、公立の小・中・高校の授業料相当額しか考慮されておりません。

したがって、公立の小・中・高校の授業料相当額を上回る金額については、一定程度、婚姻費用に加算できる可能性があります。

 

子供に病気や障害があるケース

お子さんに重い病気や障害がある場合、高額な医療費や介護費用が必要となる場合があります。

これらについては、一定程度、婚姻費用に加算できる可能性があります。

 

父親が子育ての重要性に理解があるケース

上記のような特別な事情がなくても、父親が子育てに熱心な場合、十分な暮らしをさせたいと考えてくれるかもしれません。

そのような場合、婚姻費用の増額に応じてもらえる可能性があります。

 

 

婚姻費用を増額する方法

婚姻費用を増額する方法にはいくつかの選択肢があります。

ここでは、その方法のメリットやデメリットについて解説いたします。

夫婦だけでの話し合い

夫婦だけでの話し合い

間に弁護士や家裁を介さずに、夫婦のみで婚姻費用の合意をする方法です。

この方法のメリットは、専門家に支払う費用の負担がないということです。

反面、以下のようなデメリットが考えられます。

  • 婚姻費用の適正額での合意ができないリスク
  • 相手と直接交渉しなければならない

 

弁護士による代理交渉

弁護士による代理交渉

弁護士に依頼し、相手に婚姻費用を請求してもらい、合意の締結を目指すという方法です。

この方法の大きなメリットは、離婚に強い弁護士に依頼することで、婚姻費用の適正額を知ることができるという点にあります。

また、弁護士が相手に対して収入資料の開示を求め、交渉を行いますので安心して任せることができます。

婚姻費用の交渉だけのご依頼も可能ですが、ほとんどの案件は離婚問題を含めた依頼を受けて、婚姻費用もあわせて請求するというパターンです。

そのため、離婚問題そのものの解決が可能です。

さらに、調停手続と比べると比較的早く合意の締結が可能です。

デメリットとしては、弁護士費用の負担があります。

しかし、メリットが大きいため、費用の負担を考慮してもお勧めできる方法です。

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婚姻費用の調停・審判

婚姻費用の調停・審判

婚姻費用の調停を申し立てるという方法です。

婚姻費用が不成立となったら、自動的に審判という手続きに移行します。

調停のデメリットとして、以下のような点が挙げられます。

  • 解決まで長期間を要する傾向
  • 間に調停委員を通すため、相手と直接交渉ができない
  • 時間や労力が増える分、弁護士費用も増加する傾向

婚姻費用の調停には上記のようなデメリットがあるため、当事務所の場合、まずは弁護士の代理交渉を行い、相手が応じてくれない場合、次善の策として調停を申し立てることをお勧めしています。

 

 

婚姻費用を増額したいときのNGな行動

ここでは、婚姻費用を増額したい人が取るべきではないNGな行動をご紹介いたします。

婚姻費用を増額したいときのNGな行動

①専門家の助言を得ずに婚姻費用の合意をする

上で解説したように、婚姻費用の適正額の診断は難しいです。

また、一度合意をすると、後から変更は基本的にはできません。

そのため、専門家のご相談の上、適正額を確かめてから合意するようにしましょう。

 

②相手の収入を確認しない

婚姻費用は、夫婦双方の収入をもとに計算します。

そのため収入の資料(確定申告書や源泉徴収票など)を開示してもらい、専門家に分析してもらうことをお勧めしています。

 

③安易に合意してしまう

婚姻費用は一度合意すると基本的に変更できません。

そのため、慰謝料、財産分与や離婚後の養育費の交渉にも影響を及ぼします。

婚姻費用をもらえる期間は離婚が成立するまでであったとしても、その後の交渉に悪影響を及ぼすことがあるため、慎重に判断してから合意するようにしましょう。

 

 

婚姻費用を増額するための弁護士費用

婚姻費用については、婚姻費用の問題のみを依頼することも可能ですが、通常はその他の離婚問題と合わせてご依頼される方がほとんどです。

離婚問題をサポートする場合、協議によるのか、調停対応まで必要となるのかで弁護士費用は異なります。

調停対応の場合、弁護士の労力も増すため、追加費用が必要となるのが一般的です。

また、離婚問題についての弁護士費用は、各法律事務所によって金額が異なります。

そのため、具体的な費用については相談の際に確認されることをお勧めいたします。

明朗会計の法律事務所であれば、ご相談時にお願いされるとお見積りを出してくれるでしょう。

 

 

婚姻費用の増額についてのQ&A

ここでは、婚姻費用の増額を検討している方に多い質問をご紹介しています。

婚姻費用の上限はいくらですか?

婚姻費用を算定するときは、実務上、算定表という簡易的な早見表を使っておよその額を算定します。

 

この算定表は、夫婦双方の所得を当てはめて婚姻費用の適正額を算出するものですが、早見表であるため、所得の上限が設けられています。

すなわち、サラリーマン等の給与所得者については上限が年収2000万円、自営業者については上限が所得1567万円です。

そのため、これを超える高所得者の場合、婚姻費用の額をどのようにすべきかが問題となります。

大きく分けて、所得が算定表の上限を超える高所得者であっても、算定表の上限額をもって頭打ちと考える説と、頭打ちとはならないという説があります。

仮に、裁判所が頭打ちはないという見解に立つのであれば、婚姻費用の上限はないということになります。

他方で、裁判所が頭打ちがあるという見解に立てば、上記の上限の収入をもとに婚姻費用が計算されることとなります。

 

 

 

まとめ

以上、婚姻費用の増額請求について、くわしく解説しましたが、いかがだったでしょうか。

婚姻費用を増額するためには、まずはその適正額を理解することがポイントとなります。

その上で、増額できる事情の有無を判断します。

特段の事情がない場合でも、相手との交渉次第では増額できるケースもあります。

いずれにせよ、婚姻費用の適正額については、専門の弁護士による助言が重要です。

当事務所では、婚姻費用の適正額を調べたい方のために、婚姻費用の診断サービスをご提供しています。

婚姻費用の診断サービスの内容や方法については、こちらを御覧ください。

 

 

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