養育費の減額を成功させるポイント|弁護士が解説

  

養育費は一度取り決めをすると、子供が大人になるまで支払い義務が生じます

そのため、支払う側にとっては大きな負担と感じることもあるでしょう。

ここでは、養育費の減額を成功させるポイント・方法のほか、減額したいときのNGな行動や減額に必要となる弁護士費用等をご紹介しています。

長年離婚問題に注力する弁護士がわかりやすく解説していきますので、養育費の支払いに困っている方はぜひ参考になさってください。

養育費を減額する8つのポイント

養育費を減額するために押さえておきたい重要なポイントについて解説いたします。

相手の実質収入を正確に調べる

養育費を減額するために、まずは「養育費の相場」を知ることが重要です。

相場を認識していなければ、「減額」できているのか判断できないからです。

養育費の相場は、父母の収入によって決まります。

この「収入」の意味については、誤解が多いので注意が必要です。

例えば、給与所得者の場合、収入は年収(手取りではなく税込み)で判断します。

また、自営業者、高額所得者や副収入がある方については、確定申告書の確認が重要となります。

しかし、離婚専門の弁護士でなければ、確定申告書を適切に読み解くことは難しいと思われます。

そのほか、例えば、次のようなケースは、実質的な収入をどう考えるかが難しいです。

  • 収入の変動が大きなケース
  • 同居中専業主婦だった相手が別居後就職しているケース
  • パートから正社員に変わったケース
  • 育休などの理由で収入が一時的に減少したケース

養育費の判定する前提の「収入」には、このような難しい問題があるため、離婚に強い弁護士に助言を求め、アドバイスを受けるとよいでしょう。

当事務所では、養育費の金額を調べたい方のために、養育費の診断サービスをご提供しています。

養育費の診断サービスの内容や方法については、こちらを御覧ください。

養育費診断サービス

相手の実質収入を調べたら、養育費の適正額を計算します。

養育費の計算は、本来、標準算定方式と呼ばれる複雑な計算式を用います。

素人の方が計算すると、間違ってしまう可能性がありますし、面倒です。

素人の方でも養育費の概算を調べるための早見表(いわゆる算定表)がありますが、対応できないケースが多いため、参考程度とすべきです。

したがって、養育費の適正額は専門の弁護士に相談するとよいでしょう。

養育費の相場(適正額)がわかったら、相手と協議していきます。

養育費の金額を相場よりも減額したい場合、できるだけ対立せず、友好的に話し合いましょう

例えば、相手の言い分を聞かずに一方的に減額を求める、相手に暴言を吐く・非難する、などの行動を取ると、相手が態度を硬化させて減額に一切応じてくれなくなる可能性があります。

権利者(養育費をもらう)側にとって、養育費は子供を育てるための大切なお金です。

そのため、単に「養育費を減額してほしい」「養育費を支払うことができない」などと主張しても聞く耳を持ってくれないでしょう。

養育費の相場を支払うことができない理由について、具体的に説明することがポイントとなります。

養育費を減額したい理由が家計が逼迫していることにあるのであれば、「生活が苦しい」だけではなく、数値で示すべきです。

このような場合、家計表などを使うとよいでしょう。

家計表とは、家計の収入と支出の内訳が記載されたものです。

具体的な内訳を示すことで、減額の必要性をイメージしてもらえることがあります。

家計表のサンプルはこちらをご覧ください。

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家計表

自分の賞与や所得が減少する見込みの場合、口頭で「収入が減るから養育費を減額してほしい」と言っても相手は納得してくれないでしょう。

このようなケースでは、なぜ減少するのかについて、根拠資料(賃金規程、個人事業主は売上の帳簿、過去の変動があったことの資料)を開示し、説明すべきです。

養育費の減額に相手が応じてくれたら、養育費の合意書を締結しましょう。

口頭での約束は、言った言わないの争いになることがあり、その場合、相場を支払わなければならなくなるからです。

養育費の合意書のサンプルはこちらをご覧ください。

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養育費の合意書

すでに養育費の合意を締結している方でも、再婚があるケースでは、養育費の減額が可能となる可能性があります

相手が再婚している場合、相手の再婚と子どもの養子縁組の調査が必要です。

自分が再婚した場合、扶養家族が増加したことを理由に養育費の減額が認められることがあります。

 

 

養育費の減額を検討する例

以下は、養育費を減額したいと支払義務者(通常は父親側)が考えるケースの具体例です。

 

母親が実家で子供を育てるケース

母親が実家に帰って子供を育てているケースでは、父親から養育費を減額したいというご相談が多いです。

実家で生活しているため、住居費はゼロで、食費等の生活費も押さえることができるというのが理由です。

ワンポイント

母親が子供と実家で生活していたとしても、家裁はそのことを理由に養育費の減額は認めません。

しかし、家裁を通さず、協議での解決であれば、多少の減額に応じてくれる例もあります

 

母親の収入が高いケース

通常、子育てをしている母親の多くは専業主婦やパートタイマー等で収入は高くありません。

しかし、時折、母親が正社員として働いている、会社を経営しているなどのケースがあり、このような場合、父親から養育費を減額したいという相談があります。

ワンポイント

養育費は父母双方の収入をもとに判断します。

したがって、母親の収入が高い場合は一定程度養育費の額は低くなりますが、それはあくまで相場(いわゆる算定表上の金額)です。

仮に裁判所で判断すれば、相場を下回るほどの養育費の減額は認められないと考えられます。

しかし、裁判所を通さず協議での解決であれば、母親側が任意に減額に応じてくれる例もあります

 

妻が積極的に離婚したいケース

妻の離婚の願望が強く、夫に対して離婚を切り出しているケースでは、夫は妻から裏切られたような気持ちになります。

このようなケースでは、夫が養育費の支払いに消極的になるでしょう。

 

 

養育費を減額する方法

養育費を減額する方法としては、大きく4つが考えられます。

ここでは、それぞれの方法のメリットとデメリットをご紹介します。

 

父母だけでの話し合い

父母が当事者だけで協議によって養育費を取り決めるという方法です。

この方法は、専門家に支払う費用がかからないというメリットがあります。

反面、養育費についての妥当な解決が得られない可能性があります。

上で解説したように、養育費の適正額の判断は難しい場合があり、そのようなケースでは、本人同士での妥当な解決が困難となるからです。

また、離婚に直面している状況では、双方とも嫌悪感や不信感が強いため、相手と協議にならないという状況も多いです。

このような状況の場合、専門家や家庭裁判所に間に入ってもらわなければ解決できないことがあります。

ワンポイント

弁護士費用を心配されている方でも、法律相談は積極的に利用しましょう。

離婚に注力している事務所であれば、正式に依頼しなくても、養育費や離婚の条件について相談すれば親身になって助言してくれると思われます。

 

弁護士による代理交渉

次に、養育費の減額や離婚問題の交渉を離婚に強い弁護士に依頼するという方法です。

この方法のメリットは、養育費の適正額がわかる、相手と直接協議しなくていい、調停などと比べて早く解決できる可能性がある、という点です。

デメリットは、専門家に依頼するための費用がかかるという点です。

ワンポイント:代理交渉を最もお勧めする理由
弁護士による代理交渉は、依頼者の負担が最も少なく、かつ、上記のメリットが大きいため、当事務所では、通常最もお勧めしている方法です。

 

養育費の調停(離婚調停)

養育費は、家裁の調停手続きでも決めることができます。

もし、離婚が未成立の場合は離婚調停を申し立てて、その中で養育費の減額を主張していくこととなります。

離婚調停のデメリットとしては、次の点が挙げられます。

  • 解決まで一般的には長期間を要する
  • 調停委員を介すため相手と直接協議ができず、本音を知ることが難しい
  • 弁護士の負担が大きくなるため、弁護士費用も増加する

上記のような難点があるため、当事務所ではまずは弁護士による代理交渉を行い、解決できない場合に次善の策として調停手続に移行することをお勧めしています

 

養育費の裁判(離婚訴訟)

離婚が未成立の事案の場合、離婚調停が不成立となれば、次に離婚訴訟となります。

離婚が既に成立している事案の場合は、養育費の減額調停が不成立となれば、審判手続へ自動的に移行するため訴訟提起は不要です。

離婚訴訟のデメリットとしては、次の点が挙げられます。

  • 離婚調停以上に解決まで長年月を要する傾向である
  • 弁護士の負担も大きくなるため、弁護士費用も増加する
  • 裁判なので柔軟な取り決めができない

養育費診断サービス

 

 

養育費を減額したいときのNGな行動

養育費を減額したいと考えている方は、次の行動に注意してください。

 

専門家の助言を得ずに養育費の合意をする

上で解説したように、養育費の適正額は簡単には判定できません。

例えば、本来月額8万円の養育費が適正な事案で、月額10万円と信じて合意するなどです。

一度養育費の合意をすると、後から変更することは基本的にはできません。

そのため、養育費の合意前に専門家に相談し、養育費の適正額を診断してもらうことをお勧めいたします

養育費の診断サービスはこちら

 

相手の収入を調べない

養育費の適正額は、父母双方の収入をもとに算定します。

そのため、相手の収入を調査することが重要となります。

収入の調査は面倒と感じるかもしれませんが、損をしないようにするためにきちんと資料を入手して確認するようにしましょう。

相手の収入が不明な場合や相手が資料を開示してくれない場合、弁護士に依頼されると、弁護士が代理人として収入資料(源泉徴収票、所得証明書、確定申告書など)の開示を求めていきます。

 

感情的に行動する

養育費は一度取り決めをすると、その金額を子供が大人になるまで支払い続けなければなりません。

養育費が適正な金額であれば問題ありませんが、相場を大きく超える場合、ご負担が大きくなります

一時的な感情に流されずに、専門家の助言のもと慎重に判断するようにしてください。

 

 

養育費を減額するための弁護士費用

養育費の減額を弁護士に依頼するための費用は、依頼する弁護士、依頼内容、減額できた養育費の金額などにより変動するため、事案によって幅が広いものとなっています。

トータルで40万円から100万円くらいになる場合が多いですが、事案により様々です。

養育費の弁護士費用については、下記のページでくわしく解説していますので、気になる方は参考になさってください。

 

 

養育費の減額についてのQ&A

養育費の減額について、よくある質問をご紹介いたします。

養育費は算定表より少なくすることはできますか?

養育費は当事者(父母)双方が合意をすれば、いくらでも自由に取り決めることが可能です。

したがって、算定表より少ない金額であっても、相手が同意してくれれば問題ありません。

ただ、現実問題として、相場よりも少ない金額に相手が応じてくれることは難しいと考えられます。

 

養育費の減額が認められないケースは?

相手が減額に同意してくれない場合、適正額を下回る養育費の減額は難しいです。

一度合意した養育費を減額する場合、事情の変更が必要となります。

例えば、相手のほうが再婚して再婚相手が子供を養子に入れた、当方が再婚し、扶養家族が増えたようなケースだと、事情の変更が認められることがあります。

養育費の減額の可否については、下記のページにくわしく解説しています。

 

 

まとめ

以上、養育費の減額について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

養育費を減額するためには、まずは養育費の適正額を押さえることが重要です。

その上で、減額できる事情の有無を判断します。

特段の事情がない場合でも、相手との交渉次第では減額できるケースもあります。

いずれにせよ、養育費の適正額については、専門の弁護士による助言が重要です。

当事務所では、養育費の金額を調べたい方のために、養育費の診断サービスをご提供しています。

養育費の診断サービスの内容や方法については、こちらをご覧ください。

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