別居とは?メリット・デメリットと注意点|弁護士が解説
別居とは、夫婦がそれぞれ違う家で暮らし、共同生活の実態がない状態をいいます。
夫婦関係が悪くなり、一緒に暮らすことができなくなって別居をするというのが典型的なケースです。
別居には、離婚を望む方にとっては離婚しやすくなる、同居のストレスを解消することができるなどのメリットがあります。
他方でデメリットや注意するべき点もあるので、それらも押さえておくことが重要です。
ここでは、別居することのメリット・デメリット、離婚への影響や注意点について解説していきます。
別居とは
別居とは、夫婦がそれぞれ違う家で暮らし、共同生活の実態がない状態のことをいいます。
広い意味では、夫婦に限らず、親と子、恋人などが別々に暮らしていることも含まれますが、ここでは夫婦が別々に暮らしている場合のみを「別居」ということにします。
また、夫婦関係の良し悪しにかかわらず、別々の家で暮らしている形があるケース全てを指して別居という場合もありますが、ここでは、夫婦関係が悪くて別々に暮らしている場合を「別居」ということにします。
単身赴任(仕事の都合で別々に暮らしている場合)や、いわゆる別居婚(お互いに納得した上であえて別々に暮らしている場合)は、ここにいう「別居」に含まれないものとします。
以上をまとめると、ここでいう「別居」とは次の全てを満たす場合を指します。
- 夫婦が別々の家に住んでいる
- 夫婦が別々に生活している(共同生活の実態がない)
- 夫婦関係はうまくいっていない
別居の理由
夫婦関係が悪くなり、一緒に生活することができなくなったために別居をするというのが典型的なケースです。
夫婦関係が悪くなる経緯は夫婦により様々ですが、典型的なケースとしては、
- 夫婦の一方の不貞行為(不倫)やDVによって夫婦関係が破綻したケース
- 性格の不一致などにより、どちらが悪いというわけではなく徐々に関係が悪化(形骸化)していったケース
などが考えられます。
別居と単身赴任との違い
「単身赴任」とは、夫婦の一方が一人で仕事の任地に住むことをいいます。
夫・妻・子どもが同じ家で一緒に暮らしていたところ、夫が遠方に転勤となったので、夫のみが任地で一人暮らしをするようになるといったケースが典型です。
別々の家に住んでいるという点では「別居」と共通していますが、夫婦関係は円満であることが前提となっているという点では「別居」と異なります。
一般に、単身赴任は、夫婦関係に問題があるからではなく、仕事(任地)の都合や、マイホームを簡単に手放せない・子どもの教育環境を変えたくない・親の介護が必要といった事情があるために、やむなく住居を分ける場合をいいます。
住居は別々でも、夫婦間で日常的に連絡を取り合ったり、週末は一緒に過ごしたりするという場合が多いです。
※単身赴任をしている期間中に夫婦関係が悪化した場合は、そのタイミングで単身赴任から「別居」に切り替わったと見ることができます。もっとも、いつから「別居」になったか明らかでなく、争いになるケースも多いです。
別居と家庭内別居との違い
「家庭内別居」とは、夫婦が同じ家に住みながらも、別々に生活をしていることをいいます。
夫婦仲が悪く、共同生活ができない一方で、別々の家に住むことができない事情があるために、やむを得ず同じ家に住んだまま別々に生活をしているという状態が想定されます。
夫婦仲が悪く共同生活の実態がないという点は「別居」と共通していますが、同じ家に住んでいるという点で「別居」とは異なります(家庭内別居は形の上では「同居」です)。
別居 | 単身赴任 | 家庭内別居 | |
---|---|---|---|
住んでいる家 | 異なる | 異なる | 同じ |
共同生活の実態 | ない | 基本的にはない | 基本的にはない |
夫婦関係 | 悪い | 良い(悪くはない) | 悪い |
別居することによる影響
別居は離婚の理由となる?
別居は、状況次第では離婚の理由となる可能性があります。
離婚をするには、夫婦間で合意をするか、裁判で離婚を認めてもらう(離婚判決をもらう)必要があります。
夫婦間で合意をする場合は、離婚の理由は問われないため、別居をしていなくても合意ができる限りは離婚することができます。
他方、合意ができずに裁判で争うことになった場合、離婚判決をもらうためには、「離婚原因」という離婚が認められる事情があると判断される必要があります。
離婚原因については、法律では次のように定められています(民法770条1項)。
- 1. 相手方に不貞行為があったとき
- 2. 相手方から悪意で遺棄されたとき
- 3. 相手方の生死が3年以上明らかでないとき
- 4. 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- 5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
引用:民法|電子政府の窓口
このうちの5.「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、夫婦関係が破綻して回復の見込みがない状態になっていることを指します。
この点、別居をして長期間が経過している場合、それは夫婦関係が破綻して回復の見込みがないことを基礎づける事情となります。
そのため、別居をして長期間が経過している場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚が認められる可能性があります。
ただし、夫婦関係が破綻して回復の見込みがない状態になっているかどうかは、別居期間のみで判断されるものではありません。
同居期間との対比や、夫婦関係修復に向けた努力がされているかどうかなど、様々な事情が総合的に考慮されたうえで判断されることになります。
そのため、どのくらいの別居期間があれば離婚が認められるのかは事案によって異なり、一概に言うことはできません。
もっとも、3年~5年くらい別居が続いている場合であれば、離婚が認められる可能性は高くなると考えられます。
有責配偶者から離婚を求める場合は、別居期間が相当長期に及んでいなければ離婚は認められないとされています。
「有責配偶者」とは、不貞行為(不倫)や暴力によって自ら夫婦関係を破綻させた配偶者のことをいいます。
有責配偶者からの離婚請求は、正義に反するものとして原則認められず、例外的に次のような厳しい条件を満たす場合にのみ認められるというのが裁判所の考え方となっています。
- ① 別居が相当長期に及んでいること
- ② 未成熟子がいないこと
- ③ 離婚により相手方配偶者が苛酷な状態に置かれるなど離婚を認めることが社会正義に著しく反するといえるような特段の事情がないこと(最高裁昭和62年9月2日判決)
このうち①の別居期間については、10年弱(8年程度)が一つの目安となると考えられています。
ただし、その他の事情との兼ね合いで、もっと短くても離婚できる場合もあれば、10年以上別居が続いていても離婚できない場合もあります。
別居による離婚率
別居をすると高い確率で離婚に至ると考えられます。
夫婦関係が悪化して別居をしたという場合であれば、その後に夫婦関係が修復して同居再開となる可能性は低い傾向にあると思われます。
「別居後すぐに離婚協議や離婚調停が始まり離婚に至るか」、「いつかは離婚することを前提に、当面は別居を続けるということで落ち着くか」のいずれかになるケースがほとんどであるという感覚です。
別居すると生活費はどうなる?
相手よりも収入が少ない場合は、別居後、相手に対して生活費を支払うように求めることができます。
法律上、夫婦には、その収入等に応じて生活費を分担する義務があるとされています。
民法
(婚姻費用の分担)
第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
引用:民法|e-Gov法令検索
「婚姻から生ずる費用」は「婚姻費用」と呼ばれており、夫婦や子どもが生活するために必要なお金のことを指します。
夫婦仲が悪くなって別居をした場合でも、この婚姻費用を分担する義務がなくなることは基本的にはありません。
そのため、夫婦が別居をした場合、通常、収入が多い方が少ない方に対して婚姻費用を渡すことになります。
婚姻費用が渡されない場合、収入が少ない方は、多い方に対して婚姻費用分担請求をすることができます。
別居中の生活費の相場
別居中の生活費(婚姻費用)は、裁判所のデータによると、月額4万円〜15万円程度になるケースが多いとのことです。
ただし、婚姻費用の適正額は、夫婦双方の年収や子どもの数・年齢によって全く異なります。
そのため、自分の場合はいくらが適正額になるのかを知ることが大切です。
また、当事務所では、婚姻費用の目安を素早く確認したいという方のために、オンラインで、かつ、無料で自動計算できるサービスをご提供しています。
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別居すると住民票はどうなる?
相手と同居をしていた家を出ていく形で別居をした場合、住民票上の住所と、実際に住んでいる場所が異なる状態になります。
この場合、原則としては、役所で住民票を移す手続きをする必要があります。
住民票上の住所と実際に住んでいる場所は一致していることが前提とされており、法律上も、異なる状態になった場合は住民票を現在の住所に移さなければならないことになっています(住民基本台帳法22条、23条)。
もっとも、夫婦が離婚前に別居をする場合、次のような状況にあるのであれば、住民票を移す必要はないでしょう。
離婚を前提とせず、夫婦関係を見直すために一時的に別居をした場合などは、住民票を移す必要はありません。
また、転居先が見つかるまでの間、一時的に実家に身を寄せる場合なども、実家の住所に住民票を移さなくても問題はないでしょう。
住民票を移すと、相手が戸籍の附票を確認することにより、あなたの現在の居場所がバレてしまう可能性があります。
DVやモラハラから逃れるために別居をしたケースなど、相手に居場所がバレてしまうことを避けたい場合は、離婚成立までの間は、住民票を移さないということも考えられます。
別居先が住民票でバレる?
夫婦は同じ戸籍に入っているため、相手は、自分の戸籍の附票を確認することにより、あなたがどこに住民票を移したかを知ることができます。
そのため、先に述べたように、DVやモラハラから逃れるために別居した場合など、相手に別居先を知られたくない場合、住民票を移すことには慎重になるべきです。
しかし、住民票を移さないと、市区町村からの郵便物が相手の住む家に届いてしまったり、児童手当の受給者を変更できなかったりと、生活上の不都合が生じることがあります。
このような不都合を避けるために、住民票を移したうえで、市区町村役場にDV等支援措置の申し出をするという方法も考えられます。
DV等支援措置とは、DV等の被害者を保護するため、DV加害者が被害者の住民票や戸籍の附票の閲覧等をすることを制限する措置のことです。
この措置をとってもらえば、住民票を移しても、相手に別居先がバレることを防ぐことができます。
ただし、第三者からの請求があった場合の閲覧等は制限されないため、そこから情報が漏れてしまう可能性はゼロではありません。
そのため、絶対にバレたくないという場合は、生活上の不都合とのバランスによりますが、離婚成立までは住民票の異動を見送ることを検討する必要もあるでしょう。
別居のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
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別居のメリット
(DV・モラハラ被害を受けている場合)安全を確保できる
別居をして加害者と物理的な距離を置くことで、直接的な被害を受けずに済むようになります。
DV・モラハラ事案では、このように別居をして安全を確保することが最優先・最重要となります。
離婚が認められやすくなる
先に述べたように、長期間別居をしていることは「婚姻を継続し難い重大な事由」の一事情として考慮されます。
そのため、相手が離婚に応じない場合でも、別居を開始すれば、時間をかければ離婚ができる状態にすることができます。
この状態になると、相手としても、何年か後に裁判をして離婚となるよりも、いま話し合いで離婚した方がよいと考えるようになることが多いです。
そのため、別居を始めることにより、協議離婚によって早期解決できる可能性も高まるものと考えられます。
夫婦関係について冷静に考え直すことができる
別居をして相手と距離を置くことにより、夫婦関係について冷静に考え直すことができるようになります。
離婚による影響は大きいものであるため、一旦冷静になって夫婦関係について考える時間を持つことは重要です。
冷静になって考え直すことにより、すぐには離婚せずに、当面の間は婚姻費用をもらいながら別居を続けることがベストであるとの結論に至る場合もあるかもしれません。
落ち着いて離婚の準備をすることができる
離婚をしてから別居をするとなると、家族関係の変化と、生活環境の変化という二重の変化によって心身に大きな負担がかかることになってしまいます。
他方で、まずは別居をして、ご自身の生活環境を整えてから離婚をすることで、離婚後の生活をスムーズにスタートさせることができます。
また、子どもの親権、養育費、財産分与、慰謝料などの離婚条件についても、相手と距離を置くことで冷静になって慎重に考えることができるようになります。
そのため、焦って不利な条件で合意をし、後で後悔するという事態も防ぐことができます。
婚姻費用をもらうことができる
相手よりも収入が少ない場合は、別居から離婚が成立するまでの間、婚姻費用をもらうことができます。
婚姻費用をもらいながら仕事を探すなどして、離婚後の自立した生活に向けて準備をすることもできます。
別居のデメリット
生活が苦しくなる
別居して家計(夫婦の財布)が別々になると、自分の暮らしにかかるお金は基本的には自分で負担しなければならなくなりますから、お金の面で生活が苦しくなる場合があります。
婚姻費用をもらえる場合であっても、相手と同居していたときと全く同じような生活をすることは難しくなることが多いです。
また、家事の分担などもできなくなりますから、自分の周りのことは全て自分でしなければならなくなります。
そのため、これまで家事全般を相手に任せていたような場合、これまで通りに暮らすことができずに生活が荒れてしまうこともあります。
婚姻費用を支払う必要がある
自分の方が相手よりも収入が高い場合、相手に婚姻費用の分担請求をされたならば、基本的には婚姻費用を支払わなければならなくなります。
婚姻費用は、請求時から離婚が成立するまでの間、原則としては毎月支払う必要があります。
そのため、金額によっては大きな負担となる場合もあります。
財産分与が少なくなる可能性がある
財産分与とは、夫婦が結婚生活の中で築いた財産を離婚の際に分け合うことをいいます。
財産分与で分け合う対象となるのは、「基準時」に存在した財産となります。
「基準時」は、「離婚時」又は別居が先行している場合は「別居時」となります。
そのため、離婚前に別居をする場合は、「別居時」に存在した財産を分け合うことになります。
仮に、別居後に相手名義の財産が増加したとしても、その増加した部分は分与の対象にはなりません。
例えば、結婚後、毎月相手の収入から一定額を貯めている相手名義の預金口座があり、その残高が別居時には100万円、離婚時には200万円であったとします。
この預金口座については、財産分与の対象となるのは別居時の100万円となります。
離婚時に200万円に増えていたとしても、この増加分100万円は、相手独自の財産となり、分与の対象にはなりません。
夫婦の一方又は双方に安定した収入がある場合、このように時間の経過とともに財産が増加していくことの方が多いです。
そのため、離婚前に別居をすると、別居しなかった場合(基準時が離婚時となる場合)と比べると、財産分与の対象となる財産が少なくなる可能性があります。
(離婚したくない場合)離婚が認められてしまう可能性がある
先ほど、別居のメリットとして、「離婚が認められやすくなる」ということを紹介しましたが、これは離婚したくない場合にはデメリットとなります。
離婚するつもりがなくても、別居状態が長く続くと、夫婦関係が破綻したものとみなされ、相手が離婚請求をすると、離婚原因があるとして離婚が認められてしまう可能性があります。
離婚を前提とせず、夫婦喧嘩の一時的な冷却期間として別居を始めた場合でも、関係を修復して同居に戻るタイミングを逸して別居状態が続いてしまうこともあります。
そのため、離婚をしたくない場合、別居には慎重になった方がよいケースもあります。
別居で注意すべきこと
子どもの親権を希望する場合は子どもと離れない
子どもを相手のもとに残したまま別居し、子どもと離れてしまうと、親権を巡って争いになった場合に不利になる可能性があります。
子どもの親権について争いになった場合、最終的には裁判所が決めることになりますが、その際には、これまで誰が主として子どもの面倒をみてきたか(主たる監護者は誰か)という点が重要視されます。
子どもを置いて別居をして、相手の方に監護実績ができた場合、親権を決める際に、相手が主たる監護者であるとして、相手の方が有利になる可能性があります。
そのため、子どもの親権を希望する場合は、子どもと離れないよう、子どもと一緒に別居することを検討する必要があります。
ただし、同居時に子どもの監護を全般的に相手に任せていたという場合、親権獲得のために無断で子どもを連れて出ていくと、違法な連れ去りと評価されてかえって不利になる可能性があります。
また、監護実績をつくるため、相手のもとで暮らしている子どもを無断で自分のもとに連れてくるといった行為も、違法な連れ去りと評価される可能性があります。
上記のように注意が必要となるケースもあるため、最適な対応方法については専門の弁護士にご相談ください。
利用できる公的扶助の手続きをする
離婚前でも受給できる手当等は受給するようにしましょう。
例えば、中学生以下の子どもがいる家庭には児童手当が支給されますが、受給者が相手になっている場合、別居後、受給者を自分に変更する手続きをすることができます。
また、DVから逃げるために別居をして、保護命令が発令された場合は、児童扶養手当を受給することができます。
婚姻費用の適正額を押さえる
先に解説したように、別居後、離婚が成立するまでの間、収入が高い方が低い方に対して婚姻費用を支払う必要があります。
婚姻費用をもらう側、渡す側のいずれの立場であっても、婚姻費用はいくらが適正額なのかを押さえることが大切です。
適正額は、家庭裁判所で婚姻費用を決める際に用いられている「婚姻費用算定表」という早見表で算出した金額を目安にするのが一般的です。
また、先にも紹介しましたが、当事務所では、夫婦の年収額と、子どもの数・年齢を入力することで簡単に婚姻費用の目安を自動計算できるサービスをご提供しています。
算定表では、収入が2000万円を超える場合や子どもが3名を超えるケースでは算出することができませんが、当事務所の自動計算ツールではこれらのケースにも対応しています。
もっとも、算定表等によって算出した金額はあくまでも参考程度にとどめ、具体的な適正額については離婚問題に詳しい弁護士に相談するようにしてください。
金額算定の前提として、夫婦双方の収入が明らかになっている必要がありますが、収入が不安定な場合や収入源が複数ある場合など、収入をいくらと見るかが問題となるケースもあります。
また、算定表等は、標準的なケースにおける生活費のみを考慮して作成されたものです。
そのため、算定表等で考慮されていない特別な事情(高額な教育費や医療費など)を考慮して、金額を調整する必要が生じる場合もあります。
以上のように、適正額を調べるには、具体的な事情を踏まえた検討が必要になります。
離婚に強い弁護士に相談する
別居をお考えの場合は、離婚問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
既に別居先を確保しており近日中に別居を予定している場合はもちろん、別居をしたいけれども、別居後の生活への不安などから別居に踏み切ることができないという場合も、一度ご相談されるとよいでしょう。
相談をしてみることによって漠然とした不安が解消され、解決策について具体的に考えることができるようになることもあります。
別居の際には、別居前にやるべきこと(財産分与に備えて相手名義の財産資料を集めることなど)、別居時に持ち出す荷物、別居当日の段取りなど、いくつか注意するべきポイントがありますので、弁護士に具体的なアドバイスをもらうとよいでしょう。
DV事案の場合は、DV問題に詳しい弁護士に相談をすれば、安全な避難先や避難方法についてもアドバイスを受けることができます。
一時保護(シェルター利用)や、保護命令(裁判所がDV加害者に対して被害者への接近禁止等を命じるもの)の申立てに関して助言をもらうこともできます。
弁護士に別居のサポートを依頼した場合は、別居に合わせて、弁護士から相手に対して通知を送り、今後は弁護士を窓口とすることや、依頼者に直接接触をしないこと等を申し入れることができます。
相手との接触を断って、その後のやり取りを全て弁護士に任せることができるため、精神的・肉体的な負担を軽減することができます。
婚姻費用を請求できる事案では、別居後、弁護士から速やかに相手に婚姻費用を請求します。
相手が請求に応じない場合は、弁護士が交渉し、状況次第では裁判所の手続き(調停・審判)を申し立てて適正額を受け取れるようにサポートします。
相手よりも収入が高いケースで、相手から婚姻費用の請求を受けたという場合にも、弁護士が適正額を判断して交渉や裁判所の手続き対応をします。
離婚に向けて進めていく場合は、別居後、弁護士が代理人として協議離婚のための交渉や、事案によっては離婚調停の申立てなどを行います。
別居についてのよくあるQ&A
別居中にやってはいけないことは?
配偶者以外の人との交際、生活費の不払い、子どもの連れ去りなどは、離婚の際に不利になる可能性があるので控えるべきです。
別居中であっても、離婚が成立するまでの間は、配偶者以外の人と交際をすることはやめた方がよいでしょう。
特に、配偶者以外の人と性的関係を持つこと(いわゆる「不倫」)は、離婚原因のうちの一つでもある「不貞行為」をしたものと評価される可能性があります。
不貞行為をしたものと評価されると、有責配偶者と認定され、別居が相当長期に及んでいるなどの厳しい条件を満たさない限り、離婚できなくなる可能性もあります。
また、不貞行為を理由に慰謝料を請求されるリスクもあります。
なお、不倫をした時点で既に夫婦関係が破綻していた場合は、上記のような責任は負わないものと考えられています。
そのため、「別居後であれば不倫してもよい」との認識を持っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、別居と夫婦関係の破綻はイコールではありません。
別居中であっても、その期間などによっては夫婦関係は破綻していないと判断される可能性は十分にあります。
また、仮に破綻が認められる場合であっても、他の人との交際は相手の反感を招き離婚協議などを停滞させる要因になり得ますから、控えるに越したことはありません。
婚姻費用を請求されたにもかかわらず、請求を無視し続けていると、最終的に給料等を差し押さえられて強制的にお金を回収されてしまうリスクがあります。
また、状況によりますが、離婚協議や裁判になった場合、婚姻費用の支払いをしなかったということが不利に働く可能性もあるので注意する必要があります。
相手のもとで暮らしている子どもを無断で自分のもとに連れ帰ってしまうと、違法な連れ去りと評価され、親権を決める際に不利になる可能性があります。
相手に対して子どもを引き渡すことを求めたい場合は、子の監護者指定・引渡しの手続きをとる必要があります。
お早めに離婚問題に強い弁護士にご相談ください。
別居してから離婚するまでの期間は?
別居期間が長くなれば、それが離婚原因(「婚姻を継続し難い重大な事由」)として考慮され、裁判でも離婚が認められる可能性が高くなります。
どのくらいの期間別居していれば離婚原因となるのかについては、同居期間との対比など、他の事情との兼ね合いによることになります。
そのため、一概には言えませんが、大体3年くらいというのが一応の目安といってよいと思います。
もっとも、裁判まで行くことなく、話し合い(協議や調停)での解決によって、もっと短期間で離婚できるというケースも多いです。
なお、過去の統計データによると、別居期間が1年未満で離婚する夫婦の割合は約82%、1年~5年未満の割合は約11%とのことです。
離婚の種類別に見ると、協議離婚では1年未満の夫婦が約86%、裁判離婚では1年未満の夫婦が約56%、1~5年未満の夫婦が約34%とのことです。
多くの場合は別居から1年未満で離婚をしており、裁判になるケースでも半分以上は1年未満、9割が5年以内に離婚を成立させていることがわかります。
別居は違法ですか?
理由もなく一方的に別居をした場合は同居義務違反となりますが、合意がある場合や正当な理由がある場合は違法ではありません。
法律では、夫婦には同居する義務があると定められています。
「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」
引用:民法|e-Gov法令検索
もっとも、別居することについて合意がある場合や、正当な理由があって別居をする場合は、この同居義務に反するものではないと考えられています。
正当な理由がある場合とは、例えば、DVやモラハラから逃げるために別居をした場合や、相手が不倫をして夫婦関係が破綻したので別居をしたという場合です。
また、性格の不一致などにより、どちらが悪いというわけでもなく夫婦関係が破綻して一緒に暮らせない状態になったので別居をしたという場合も、ほとんどのケースでは同居義務違反にはならないと考えられます。
他方で、自分が不倫をして、不倫相手と一緒に暮らすために一方的に家を出て行ったような場合は、同居義務違反となります。
ただし、同居義務違反だからといって、犯罪が成立したり、同居を強制されるということはありません。
別居婚でお互いが実家にいる場合の親の気持ちは?
気持ちは人それぞれだと思います。
子どもが一緒に住んでくれて安心、嬉しいと思っている方もいれば、親の年代によっては「夫婦は一緒にいるのが当たり前だ」と考えている方も多いため、子どもが別居婚で実家にいることを好ましく思っていない方もいらっしゃると思います。
まとめ
以上、別居のメリット・デメリット、離婚への影響や注意点について解説しました。
別居には、離婚が認められやすくなる、婚姻費用を受け取れるといったメリットがあります。
一方、親権獲得への影響、財産分与の基準時、婚姻費用の請求など、押さえておくべきポイントもいくつかあります。
別居をお考えの場合は、離婚問題に詳しい弁護士に相談し、具体的なアドバイスをもらうことをおすすめいたします。
当事務所には、離婚問題に注力する弁護士で構成された離婚事件チームがあり、別居や離婚の問題でお困りの方を強力にサポートしています。
LINEやZoomなどによるオンライン相談も受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
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