別居した方がいい夫婦とは?弁護士が解説
次のような夫婦は、別居することを検討した方がいいと考えられます。
- DV・モラハラがある夫婦
- 離婚を迷っている夫婦
- 離婚の合意ができない夫婦
- 一人の時間がほしいと考えている夫婦
ここでは、別居した方がいい夫婦とは、どのような夫婦かについて、解説していきます。
別居に慎重になった方がいいケースや、別居の注意点などについても紹介しますので、別居すべきか迷っているという方は、ぜひ参考になさってください。
別居したほうがいい夫婦とは?
DV・モラハラがある夫婦
DV(家庭内暴力)やモラハラ(言葉や態度による嫌がらせ)がある場合は、別居した方がよいでしょう。
このようなケースでは、被害者の方が加害者と物理的な距離を置いて、身の安全を確保することを最優先に考える必要があります。
夫婦の一方が他方に対してDV等をする場合のみならず、子どもに対する暴力がある場合も、他方が子どもを連れて別居し、加害者と子どもを引き離すことを検討する必要があります。
離婚を迷っている夫婦
離婚を迷っている場合は、いきなり離婚をするのではなく、まずは別居することを検討するとよいでしょう。
別居をすると、相手との距離ができて冷静に夫婦関係を考え直すことができるようになります。
また、離婚後にどのような生活になるのかのイメージがつくため、今後するべきこと(就業など)について、具体的に考えることができるようになります。
相手よりも収入が少ない場合は、別居後、離婚又は同居再開までの間、相手に対して生活費(婚姻費用といいます。)を請求することができます。
離婚後の経済面が心配で離婚を迷っているという場合は、まずは別居をして婚姻費用をもらいながら生活し、離婚後に自立して生活していく準備をするという方法も考えられます。
離婚の合意ができない夫婦
離婚したいけれども、相手が離婚に応じないという場合は、まずは別居することを検討するとよいでしょう。
別居期間が長くなれば、相手が離婚に応じない場合や、その他の離婚原因(離婚が認められる法律上の条件)がない場合でも離婚が認められ得る状態になります。
夫婦が別居し、その状態が長期間続いている場合、それ自体が夫婦関係が破綻して回復の見込みがないことを基礎づける事情として考慮されるためです。
夫婦関係が破綻して回復の見込みがない状態になっている場合、離婚原因の一つである「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に当たるとして、裁判で離婚が認められる可能性があります。
したがって、別居をすれば、「時間をかければいずれは離婚できる状態」にすることができます。
また、別居をして、いずれは離婚できる状態にすることで、相手も離婚はやむを得ないと考えるようになり、離婚協議に積極的になるケースもあります。
それによって、裁判まで至ることなく、話し合いで早期に離婚を成立させることができる場合もあります。
一人の時間がほしいと考えている夫婦
お互いに離婚するつもりはないものの、一人の時間が欲しいと考えている場合や、共同生活が煩わしいと思う場合は、別居を考えてもよいかもしれません。
相手と生活習慣や生活スタイルが大きく異なる場合は、一緒に暮らしているとお互いにストレスがたまり、衝突も起こりやすくなります。
そのような状態で我慢して同居を続けていると、夫婦関係が悪化してしまう可能性もあります。
そのため、敢えて別居をしてお互いに自由に生活することで、夫婦関係の円満を保つという方法もあります。
いわゆる「別居婚」というスタイルです。
別居に慎重になった方がいいケース
子どもの情緒が心配なケース
別居によって子どもの情緒に悪い影響が及ぶ恐れがある場合は、別居に慎重になった方がよいでしょう。
子どもの年齢や発達段階にもよりますが、両親が別居すると、子どもは「自分のせいで両親が別居してしまった」「自分は別居親から捨てられた」などと思って傷ついたり、両親とも裏切りたくないが一方の親としか暮らせないことについて葛藤を抱いて悩んだりすることもあります。
それにより、心身に様々な不調が生じたり、精神的に不安定になり不登校や問題行動が起こったりすることもあります。
また、夫婦の一方が子どもを連れて家を出る形で別居をする場合、子どもの生活環境は変わることになります。
場合によっては、転園や転校が必要になったり、習い事などをやめなければならなくなったりします。
そのような生活環境の変化も、子どもにとって大きなストレスとなります。
もっとも、別居が子どもに及ぼす影響は事案により異なります。
別居によって、子どもが安心して伸び伸びと暮らせるようになり、むしろ精神的に安定するというケースもあります。
また、別居をしても、夫婦がお互いに子どものことを第一に考え、面会交流(別居親が子どもと会うなどして交流すること)を充実させることなどにより、子どもの心情への影響を最小限に抑えることができる場合もあります。
そのため、「子どものために我慢して同居を続ける」ことよりも、子どもへの影響を最小限にするためにはどうすればよいかという視点が重要になると考えられます。
生活できなくなるほど困窮するケース
別居をすると生活が成り立たなくなるという場合も、別居に慎重になった方がよいでしょう。
別居をすると、住居費や水道光熱費なども含め、自分の生活にかかるお金は、基本的には自分で支払わなければならなくなります。
また、別居の際には引っ越し費用、新しく借りる家の賃料や初期費用など、ある程度まとまった支出をすることになります。
そのため、自分に収入がない場合、手元にまとまったお金を用意することができない場合、実家を頼ることが難しい場合などは、別居後の生活の見通しについて慎重に検討したうえで、別居するかどうかを判断した方がよいでしょう。
ただし、DV等を受けており、安全を確保する必要性が高い場合は、別居を優先させるべきです。
このような場合は、無料又は低額で利用することができるDVシェルターに一時的に避難をすることも考えられます。
DVシェルターでは、安全を確保しつつ、今後の生活のための支援(生活保護の申請、就業支援、母子生活支援施設の入所のサポートなど)も受けることができます。
まずは、配偶者暴力相談支援センター、警察などの公的窓口や、DV問題に強い弁護士にご相談ください。
別居するときは婚姻費用を考慮する
先ほども触れましたが、相手よりも収入が少ない場合は、別居後、離婚が成立するまでの間、婚姻費用を請求することができます。
専業主婦などで自分に収入がない場合でも、婚姻費用を考慮すれば、別居して生活することができるという場合もあります。
そのため、婚姻費用も考慮に入れたうえで、別居するか否かを検討するとよいでしょう。
もっとも、別居後すぐに婚姻費用を当然にもらうことができるというわけではありません。
婚姻費用は原則として、請求時(具体的には、内容証明郵便で請求を出した時や、婚姻費用分担請求調停の申立時)からしかもらえません。
また、相手が請求にすんなりと応じない場合は、交渉や裁判所の手続き(調停・審判)をする必要があります。
そのため、婚姻費用を実際に受け取れるようになるまで、時間を要することもあります。
別居後の生活の見通しを立てる場合は、このようなことも考慮しておく必要があります。
相手に愛情があって離婚したくないケース
相手に愛情があって離婚をしたくないケース、夫婦関係の修復を第一に考えているケースでは、別居には慎重になった方がよいでしょう。
離婚を前提とせず、一時的な冷却期間のつもりで別居を始めたような場合でも、一度別居すると、同居に戻るタイミングを逸し、別居状態が長く続いてしまうこともあります。
別居状態が長く続くと、その事実をもって夫婦関係が破綻したものとみなされ、相手に離婚請求をされた際、離婚が認められやすくなる可能性があります。
別居のメリットとデメリット
別居には、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
別居の注意点
①親権を希望する場合は子どもと離れない
親権を決める際には、子どもの監護の継続性が重視されるため、現に子どもと一緒に暮らし、子どもの面倒をみている親の方が有利になる場合が多いです。
相手のもとに子どもを残して別居をすると、親権を巡って争いになった際、現に子どもを監護している相手の方が有利になる可能性があります。
したがって、親権を希望するのであれば、子どもと一緒に別居をし、子どもと離れないよう注意する必要があります。
※ただし、違法な連れ去りと評価されるリスクを伴うケースもあるので注意する必要があります。詳しくは、専門の弁護士にご相談ください。
②婚姻費用の適正額を調べる
婚姻費用は、別居後の生活のための重要なお金となりますから、自分のケースではいくらが適正な金額なのかをきちんと調べることが大切です。
別居前に適正額を調べることで、別居後の生活の見通しを立てたり、別居の時期を具体的に検討したりすることができるようにもなります。
当事務所では、婚姻費用の目安を素早く知りたいという方のために、自動計算ツールをご提供しています。
自動計算ツールは以下からご利用ください
③配偶者以外の人との交際は控える
別居中であっても、離婚が成立するまでの間は、配偶者以外の人との交際は控えた方がよいでしょう。
場合によっては、離婚原因のうちの一つでもある「不貞行為」(民法770条1項1号)をしたものと評価され、離婚の際に不利になったり、慰謝料を請求されたりする可能性があります。
なお、配偶者以外の人との交際が始まった時点で、既に夫婦関係が破綻していたという場合は、その交際によって夫婦関係が破綻したわけではないため、慰謝料支払義務などは負わないものと考えられています。
しかし、「別居」イコール「夫婦関係の破綻」ではありません。
別居していても、別居の経緯や期間等によっては夫婦関係は破綻していないと評価される可能性は十分にあります。
④離婚問題に詳しい弁護士に相談する
別居の方法や、別居の際に持ち出す荷物、その他の注意点は、事案によって異なります。
そのため、事前に離婚問題に詳しい弁護士に相談し、別居の要否やタイミングなども含め、具体的な事情を踏まえたアドバイスをもらうようにするとよいでしょう。
また、弁護士には、別居のサポートから、婚姻費用の請求、保護命令(※)の申立て、子どもの引渡しに関わる手続き、離婚協議や調停・訴訟手続きに至るまで、幅広い対応を依頼することもできます。
※保護命令とは、DV被害者の申立てにより、裁判所がDV加害者に対し、被害者への接近禁止等を命じるものです。
別居する夫婦についてのQ&A
別居した方がいい夫婦に特徴はある?
その他の場合、別居した方がいいかどうかはケース・バイ・ケースであり、これといった特徴があるわけではありません。
別居するときはどちらが家を出ればいいですか?
どちらが家を出るかについては、特に決まりはありません。
夫婦双方が別居に納得している場合は、別居先を確保できるか、通勤に不都合は生じないか、子どもの養育環境はどうするか、離婚後はそれぞれどこに住むのかなど、様々な事情を考慮した上で、どちらが出ていくべきか、話し合って決めることになるでしょう。
他方、夫婦の一方のみが別居を希望している場合は、通常は別居したいと考えている方が出ていくことになります。
相手(別居を希望していない方)を説得し、相手に出て行ってもらうことができるケースもあるかもしれませんが、相手の意に反して追い出したり、締めだしたりすると、婚姻費用や離婚を請求する際に不利な事情として考慮される可能性もあるので注意が必要です。
まとめ
以上、別居した方がいい夫婦について解説しましたが、いかがだったでしょうか。
- DV・モラハラがある夫婦
- 離婚を迷っている夫婦
- 離婚の合意ができない夫婦
- 一人の時間がほしいと考えている夫婦
このような夫婦は、別居を検討した方がよいでしょう。
もっとも、別居をすると経済状況や子どもの生活環境が大きく変わることもあるため、慎重に検討するべきケースもあります。
別居した方がよいかどうかは、あくまでも具体的な事情に即して判断する必要があります。
そのため、別居をお考えの場合や、別居すべきかどうか迷っている場合は、まずは離婚問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめいたします。
当事務所には、離婚問題に注力する弁護士で構成された離婚事件チームがあり、別居の問題でお困りの方をサポートしています。
LINEやZoomなどによるオンライン相談も受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?