托卵とは?托卵女子の特徴や末路を弁護士が解説

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托卵とは?

托卵とは、妻が夫以外の男性との間にできた子どもを夫の子どもとして出産し、夫に夫自身の子どもと信じ込ませて養育させることをいいます。

托卵された子は、法律上は夫の子どもとして扱われます。

この法律上の父子関係を否定するためには、3年以内に法的手続きをしなければなりません。

妻が托卵女子、又はその疑いがある場合は、状況に応じて、早急に対処する必要があります。

この記事では、托卵女子の意味、背景、特徴や、托卵女子への対応方法などについて解説していきます。

ぜひ参考になさってください。

托卵とは?

托卵の意味と読み方

「托卵」(読み方:たくらん)とは、自分の子どもを他の人に育てさせることをいいます。

もともとは、カッコウなどの鳥が他の種類の鳥の巣に自分の卵を産み落とし、その鳥に雛を育てさせるという習性を表す言葉です。

このような鳥の行為にたとえて、女性が夫以外の男性との間にできた子どもを夫の子どもとして出産し、夫に夫自身の子どもと信じ込ませて養育させるという行為を俗に「托卵」といいます。

 

 

托卵女子とは?

托卵をする女性(妻)は「托卵女子」と呼ばれています。

すなわち、托卵女子とは、夫以外の男性との間にできた子どもを夫の子どもとして出産し、夫に夫自身の子どもであると信じ込ませて育てさせる女性のことを指します。

妻自身、夫以外の男性との子どもであるという確証を持っていない場合であっても、その可能性を認識しており、そして実際に夫以外の男性の子どもであったという場合は、托卵女子といえるでしょう。

托卵女子といえるかどうかのポイントは、「夫に夫自身の子どもと信じ込ませて育てさせる」ということだと考えられます。

例えば、妻が夫に対し、別の男性の子どもかもしれないと告げ、夫がそれを承知した上で「自分の子どもとして育てる」と宣言したような場合は、托卵とは区別されるのが一般的です。

 

なぜ托卵女子が存在するのか?

托卵女子の心理としては、次のようなものが考えられます。

なぜ托卵女子が存在するのか?

 

不倫の事実を隠したい

不倫で子どもができてしまったという場合は、不倫の事実を隠すために、托卵を考えるものと思われます。

仮に妻が夫に「他の男性の子どもかもしれない」と正直に話せば、不倫の事実が露呈し、夫から離婚や慰謝料を請求されることになるかもしれません。

不倫相手も既婚者である場合(いわゆる「ダブル不倫」の場合)は、相手の家庭も崩壊することになりかねません。

このような事態になるのを避けるため、不倫の事実は隠して、夫に妊娠の事実だけを告げることが考えられます。

妻から妊娠の事実だけを知らされた夫は、夫婦間での性交渉がなかったとか、妻の不倫を疑っていたといった事情がない限りは、自分の子どもであると信じるのが通常でしょう。

 

父子関係を巡るトラブルを避けたい

結婚している男女の間に生まれた子どもは、夫の子どもであると推定され(民法772条)、法律上の父親は夫と扱われます。

参考:民法|e-Gov法令検索

托卵に”成功”すれば、その推定が覆ることはなく、父子関係を安定させることができます。

これがもし、妻が正直なところを夫に告げれば、夫がこの法律上の父子関係を否定する可能性があります。

そうなると、子どもに法律上の父親がいない状態(戸籍の父親の欄が空欄)になってしまいます。

もっとも、実の父親に認知してもらうことができれば、その者が法律上の父親となりますから、父親がいない状態になることは避けられます。

しかし、実の父親にも妻子がいるような場合など、任意に認知してもらえない場合もあるでしょう。

そのような場合、強制的に認知させる手段はあるものの、不倫の件も相まって複雑な紛争に発展するのは避け難いものと考えられます。

托卵女子には、托卵によってこのような父子関係を巡るトラブルを回避したいという心理があるとも考えられます。

 

夫の経済力に頼りたい

夫が子どもの法律上の父親となれば、子どもは、父親から扶養される権利を得ることになります。

托卵女子の視点で言えば、子育てに関する経済的な面を夫に頼ることができるということです。

夫に経済力がある場合は、これが托卵の狙いになっていることもあるでしょう。

これがもし、妻が正直なところを夫に告げたならば、夫に父子関係を否定され、子どもが父親から扶養される権利を享受できなくなるかもしれません。

その場合でも、子どもの実の父親に認知してもらうことができれば、その男性に扶養してもらうことはできますが、経済力のない男性であれば請求できる扶養料(養育費)も低額にとどまります。

そうすると、母がほとんど一人で子育てにかかる費用を負担しなければならず、経済的に困窮する可能性もあるでしょう。

托卵女子の心理として、このような事態になることは避けたいというのもあると考えられます。

 

好きな男性の子どもが欲しい

托卵を考えるタイミングとしては、「不倫などによって夫以外の男性との子どもができてしまった後」であることが多いと思われます。

しかし、最初に托卵を計画して、経済力がある男性と結婚し、かつ好きな男性と不倫(又は結婚直前に性交渉)をして子どもを作るというケースもあり得るでしょう。

不倫相手にも家庭があるなどの事情から、不倫相手と結婚して子どもを一緒に育てることができない場合や、不倫相手は恋愛対象としては魅力的だが経済力はなく結婚はしたくないという場合には、このようなことが起こり得ると考えられます。

 

 

托卵女子の特徴とは?

托卵それ自体は、人をだますものですから、一般的には狡猾、不道徳などと評価されるものでしょう。

もっとも、托卵女子が普段から狡猾で不道徳な振る舞いをする人であるとは限りません。

誠実そうに見えても実は托卵女子という場合もあります。

そこで、こういう条件がそろった場合は托卵が起こりやすいという観点から、托卵女子の特徴を考えてみたいと思います。

 

不倫をしている

少なくとも妊娠可能な時期に夫以外の男性と性的関係を持つ機会があった女性であれば、托卵女子になる可能性はあります。

典型的なケースとしては、不倫(結婚後に夫以外の男性と性的関係を持つこと)で子どもができたので、托卵をしようと考えるというものが想定されます。

結婚前に現夫以外の男性と交際や結婚をしていたという場合も、不倫とは言えませんが、その時期次第では托卵が起こる可能性はあります。

 

夫とも性的関係を持っている

妻の妊娠可能な時期に夫との性的関係がなかった場合、生まれた子どもが夫の子どもであると夫に信じ込ませることはできないため、托卵は成功しません。
そのため、托卵女子は、不倫と並行して夫婦間の性的関係も継続するよう努めています。

 

夫の経済力に頼って生活をしている

托卵の目的が夫の経済力である場合もあることに鑑みれば、托卵女子は、自身に自立できるだけの収入がなく、夫の経済力に頼って生活をしていることが多いでしょう。

 

 

托卵がバレたらどうなる?

托卵は離婚の理由となる?

托卵は離婚の理由となり得ます。

まず、結婚後に夫以外の男性との性交渉によって妊娠したケースであれば、妻の行為は「不貞行為」に該当し得ます。

「不貞行為」とは、既婚者が配偶者以外の人と性的関係を結ぶことで、離婚原因(離婚が認められる法律上の条件)の一つとしても定められています(民法770条1項1号)。

参考:民法|e-Gov法令検索

他方、妻が夫以外の男性と性交渉をしたのが結婚前(結婚後はしていない)という場合は、不貞行為は成立しません。

しかし、托卵、すなわち、夫の子どもではないと知りながら、夫の子どもであると偽って夫に子どもを養育させていたということ自体、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当するとして、離婚が認められる可能性があります。

 

托卵が発覚することで修羅場となる?

托卵が発覚したら、多くの場合は修羅場となるでしょう。

自分の子どもだと思って育ててきた子どもが実は他人の子どもであったことが発覚するわけですから、混乱、当惑、妻への怒り、失望などから、感情的になるのは当然です。

ただし、妻に暴力を振るってはいけないのはもちろん、妻子を一方的に追い出したり、生活費を渡さず経済的に圧迫したりすることも控えるべきです。

子どもとの血のつながりがないことが判明したとしても、法的な手続きによって父子関係を否定しない限り、子どもの法律上の父親はあくまでも夫のままです。

法律上の父親である以上は、子どもを扶養する義務などからは基本的には逃れることができません。

上記のような行為をしてしまうと、法律上の父親ないしは夫が果たすべき義務に反したとして、妻に離婚や慰謝料を求める際に不利に扱われる可能性もあるので注意する必要があります。

托卵が発覚した場合は、まずは落ち着いて事態を受け止め、それから専門家に相談するなどして、速やかに然るべき対処をすることが重要です。

 

托卵の場合に養育費はどうなる?

結婚している男女の間に生まれた子どもは、夫の子であると推定されるため(民法772条)、法律上は夫の子として扱われます。

参考:民法|e-Gov法令検索

したがって、妻が托卵した場合、夫がその子どもの法律上の父親と扱われます。

そして、法律上の父子関係がある以上は、父親は子どもを扶養する義務を負います。

夫婦が離婚し、妻が親権者として子どもを引き取ったとしても、法律上の父子関係は存続するため、これを否定する手続きをとらない限り、父親として子どもを扶養する義務から免れることは基本的にはできません。

そのため、妻と離婚をしても、原則として子どもが成人するまでは、子どもの養育費を支払い続けなければならなくなります。

一方、法的手続きによって父子関係を否定することができれば、子どもを扶養する義務はなくなりますから、養育費は支払わずに済むようになります。

 

托卵を理由に慰謝料を請求できる?

托卵という行為それ自体、夫の権利を侵害して精神的苦痛を与えるものですから、托卵それ自体を理由に慰謝料を請求できる可能性があります。

また、妻が結婚後に他の男性と性的関係を持って妊娠したのだとすれば、「不貞行為」を理由に慰謝料を請求することもできます。

なお、離婚とともに慰謝料を求める場合は、通常、「托卵ないしは不貞行為によって夫婦関係が破綻し、離婚せざるを得なくなったこと」を理由に、離婚慰謝料としてまとめて請求をすることになるでしょう。

請求できる金額や、適切な請求方法等については、具体的な事情に基づいて判断する必要があります。

慰謝料請求を考える場合は、まずは離婚問題に強い弁護士に相談されることをおすすめします。

 

夫側が親権を取れない?

親権とは、子どもの養育をするために父母に認められた権利義務のことをいいます。

父母が婚姻中は、父母が共同して行使するものとされており(民法818条3項本文)、父母が離婚する場合は、いずれか一方が単独で親権者となるものとされています(同項但書)。

参考:民法|e-Gov法令検索

ここにいう「父母」は、法律上の父母のことです。

托卵の場合、子どもの法律上の父親は夫となりますから、父子関係を否定する手続きをとらない限りは、夫も子どもの親権者となることができます。

それでは、父母が離婚する場合に、双方とも親権を希望した場合は、どちらが親権者となるのでしょうか。

親権者を父母の合意によって決めることができない場合は、最終的には裁判所が定めることになります。

その際には、どちらが親権者になるのが子どもの利益に適うかということが判断基準となります。

多くのケースでは、子どもの監護の継続性が重視されるため、これまで主として子どもの面倒をみてきた側(母親である場合が多い)が有利となります。

しかし、事情によっては父親の方が親権者にふさわしいと判断される場合もあります。

托卵の場合、子どもと父親に血のつながりがないことが、父親にとって不利な事情になるのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、それ自体が不利な事情になることはないと考えられます。

ただし、血のつながりがないことを理由に、父親が子どもに愛情を持って接することができないといった事情がある場合、そのような事情自体が父親が親権を獲得するのにマイナスの要素となる可能性はあります。

 

 

托卵の可能性がある場合の対処法

DNA鑑定をする

托卵が疑われる場合は、まずはDNA鑑定をして事実を確認するのがよいでしょう。

後に解説しますが、法律上の親子関係を否定するためには、子どもが生まれた時から3年以内に手続きをする必要があります。

そのため、托卵が疑われるのであれば、とにかく早めに事実を確認することが重要になります。

 

父子関係を否定する手続きをとる

結婚している男女の間に生まれた子ども(妻が婚姻中に生んだ子ども)は、夫の子どもと推定されます(民法772条)。

参考:民法|e-Gov法令検索

したがって、托卵の場合、子どもの法律上の父親は夫と扱われます。

DNA鑑定の結果、夫が子どもの生物学上の父親でないことが判明しても、夫と子どもの法律上の父子関係は存続し、自動的になくなることはありません。

法律上の父子関係を否定するためには、法的手続きをとる必要があります。

具体的には、「嫡出否認(ちゃくしゅつひにん)の訴え」によることになります。

 

嫡出否認の訴え

結婚している男女の間に生まれた子どもは、夫の子どもと推定されますが、この推定を覆して父子関係を否定することを「嫡出否認」といいます。

嫡出否認をするためには、「嫡出否認の訴え」という手続きによらなければならないとされています(民法775条)。

参考:民法|e-Gov法令検索

 

手続きの流れ

嫡出否認の手続きの流れ

嫡出否認をするには、いきなり訴え(裁判)を提起することはできず、まずは家庭裁判所に嫡出否認の「調停」を申し立てる必要があります(このように、まずは調停を経なければならないというルールを「調停前置主義」といいます。)。

「調停」とは、裁判所で話し合いをする手続きです。

話し合いの結果、当事者間(相手方は子又は親権を行う母となります)で「夫の子どもではない」との合意ができた場合、家庭裁判所が必要な事実を調査した上、合意を正当と認めるときは、合意に従った「審判」という決定がなされます。

通常は、DNA鑑定を行い(裁判所の調査として行われます)、その結果、生物学上の親子関係がないことが明らかになれば、嫡出否認の審判、すなわち、「夫の子どもではない」という決定がされることになります。

一方、調停での話し合いで「夫の子どもではない」ということに合意ができない場合は、調停は不成立として終了し、その後に嫡出否認の訴え(裁判)を提起することになります。

裁判では、裁判官が当事者の言い分や提出証拠を踏まえて結論(判決)を出します。

DNA鑑定の結果、生物学上の親子関係がないことが明らかであれば、通常は嫡出否認を認めるとの判決がされます。

DNA鑑定ができない場合(母が子の検体提出に協力しない場合など)は、裁判官が父母の性交渉の状況や血液型などを総合的に判断したうえで結論を下すことになります。

上記のような手続きを経て、嫡出否認を認める審判又は判決が確定すれば、法律上の父子関係は否定され、子どもは夫の子ではないものとして扱われるようになります。

子の戸籍の記載も訂正される(父の欄から夫の名前が消される)ことになります。

(審判又は判決の確定から1か月以内に役所に訂正の申請をする必要はあります。)

 

出訴期間は子の出生を知ってから3年以内

嫡出否認の訴えは、子の出生を知ってから3年以内にしなければなりません(民法777条1号)。

参考:民法|e-Gov法令検索

なお、調停が不成立となった場合は、調停終了の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起すれば、調停申立時にその訴えの提起があったものとみなされます。

子の身分関係を早期に安定させて子の利益を保護するために、このような期間制限が設けられています。

この期間を過ぎてしまうと、嫡出否認を主張することは原則できなくなります。

 

親子関係不存在確認の訴え

親子関係を否定する手段として、もう一つ、「親子関係不存在確認の訴え」というのがあります。

これは、実の父ではない人の子として戸籍が作られている場合など、親子関係の不存在を確定させる必要がある場合に行う手続きのことです。

親子関係不存在確認の訴えには出訴期間はありませんから、嫡出否認の訴えの出訴期間が経過してしまった場合は、これによって親子関係を否定すればよいようにも思えます。

しかし、結論から言うと、托卵の場合には、親子関係不存在確認の訴えを起こすことは基本的にはできません。

この訴えは、夫の子であるとの推定を受けない場合でなければ起こすことができないとされているからです。

夫の子であるとの推定を受けない場合とは、一つは、妻が婚姻中に生んだ子どもではない場合(民法772条の規定に当てはまらない場合)です。

もう一つは、例えば、妻の妊娠可能な時期に夫が長期の海外出張、服役、離婚を前提とした別居をしており、妻が夫の子を妊娠することが客観的に不可能な事情がある場合(民法772条の推定の前提を欠く場合)です。

この点、托卵のケースでは、妻が婚姻中に子どもを生んでいるのはもちろん、妻の妊娠可能な時期に夫婦間の性交渉もあったというのが通常です(そうでなければ夫に自分の子どもと信じ込ませることはできません)。

したがって、托卵の場合は、通常であれば必ず夫の子であるとの推定を受けることになります。

そのため、親子関係不存在確認の訴えを起こすことはできません。

 

生物学上の父親でなくても父子関係を否定できない?

最高裁は、生物学上の父子関係がないことが明らかでも、夫の子であるとの推定を受ける場合は親子関係不存在確認の訴えによって父子関係を争うことはできないとの判断をしています(最高裁平成26年7月17日判決)。

その理由としては次のようなことが指摘されています。

  • 夫の子どもであるとの推定を受ける子について、夫との父子関係を否定するには嫡出否認の訴えによるべき
  • 法律が同訴えについて出訴期間(当時の法律では1年)を定めているのは、身分関係の法的安定性を保持する上から合理性がある
  • 夫と子との間に生物関係上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであるなどの事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではない

参考1:裁判所ウェブサイト|最高裁平成26年7月17日判決
参考2:裁判所ウェブサイト|最高裁平成26年7月17日判決

以上を踏まえると、DNA鑑定によって托卵が発覚したとしても、子どもが生まれてから3年以上が経過している場合は、親子関係を否定することは基本的にはできなくなるといえます。

 

父子関係を否定できない場合の対処法

ここまで述べたように、托卵が発覚する時期によっては、法律上の父子関係を否定できないケースもあります。

このような場合の次善の策としては、次のようなものが考えられます。

父子関係を否定できない場合の対処法

妻に離婚・慰謝料請求をする

父子関係を否定できなかった場合に限られることではありませんが、托卵について妻の責任を追及することが考えられます。

具体的には、子どもの親権者を妻と定めて離婚をすることや、托卵ないしは妻の不倫等によって受けた精神的苦痛を償うための慰謝料を請求することが考えられます。

 

養育費を支払わないとの合意をする

妻を親権者と定めて離婚したとしても、法律上の父子関係が存続する限りは子どもに対する扶養義務がなくなることはありませんから、離婚後も養育費の支払いという形でその義務を果たす必要があります。

もっとも、妻との合意によって、養育費を支払わないとする(0円とする)ことは可能です。

また、妻が上記のような合意を拒否する場合は、妻からの養育費請求について、権利濫用であるとして争うことも考えられます。

実際に、嫡出否認の訴えの出訴期間を経過してから托卵が発覚したケースで、妻が夫に対して養育費を求めることは権利濫用に当たると判断された事案もあります。

参考判例:最高裁平成23年3月18日判決裁判所ウェブサイト

ただし、同判決では、托卵によって夫が親子関係を否定する法的手段を失ったことに加えて、

  • 夫は、婚姻中、相当に高額な生活費を妻に交付するなどして、当該子の養育・監護のための費用を十分に分担してきたこと
  • 離婚後の当該子の監護費用をもっぱら妻において分担することができないような事情がうかがわれない

といった事情が考慮されたうえで、上記のような判断がされています。

したがって、托卵の場合に養育費の支払いを拒否できるかどうかは、あくまでも具体的な状況によるものと考えられます。

なお、夫婦の間で養育費を支払わないとの合意ができたとしても、子ども自身の扶養を受ける権利がなくなるわけではありません。

そのため、子ども自身が扶養料を請求した場合、父親が扶養料の支払義務から逃れることは原則できません。

 

引き続き自分の子どもとして育てる場合の注意点

托卵が発覚した後も、引き続き自分の子どもとして育てる選択をすることも可能です。

もっとも、嫡出否認の訴えの出訴期間を過ぎると、「やっぱり父子関係を否定したい」と思っても、父子関係を否定することはできなくなります。

そうなると、法律上の父子関係から生じる権利義務(扶養義務や相続権など)からも、将来にわたって免れることはできなくなります。

例えば、将来、夫婦が離婚し、妻が子どもを連れて子どもの実の父親と再婚して3人で暮らすようになる場合もあるかもしれません。

このような場合、自分が子どもの養育費を負担するのは納得がいかないということもあるかもしれませんが、子どもの法律上の父親である以上、養育費の支払義務から逃れることは原則できません。

(もっとも、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合は、一次的には養親が扶養義務を負うことになるため、養育費を支払わなくてよくなることもあります。)

このように、将来状況が変わったとしても、法律上の父親という立場から逃れることはできなくなるということを念頭に置いたうえで、慎重に検討する必要があるでしょう。

 

離婚問題に強い弁護士に相談する

托卵が発覚した場合、冷静に、何をどうしたらよいか判断するのは難しいものです。

しかし、父子関係を否定するための手続きには期間制限がありますから、托卵が発覚した場合は速やかに状況を整理して対処法を考えなければなりません。

そのため、まずは離婚問題に強い弁護士に相談されることをおすすめします。

離婚問題に強い弁護士であれば、親子関係に関する問題、夫婦関係に関する問題ともに幅広く対処することが可能です。

具体的な事情に即して見通しを立てることもできますから、托卵が発覚したものの親子関係、夫婦関係をどうすべきか迷っているという方も、まずはご相談ください。

 

 

托卵についてのQ&A

托卵子とはどういう意味ですか?

托卵された子どもという意味です。

托卵子とは、俗に托卵によって生まれた子どもを指します。

托卵女子が夫以外の男性との間につくって出産した子どもということです。

 

托卵のメリットは何ですか?

次のようなものが考えられます。
  • 不倫がバレないことにより離婚や慰謝料支払いから逃れることができる
  • 父子関係を安定させることができる
  • 夫の経済力に頼って子育てをすることができる
  • 好きな人の子どもを持つことができる

托卵は、バレなければよいという考え方もあるかもしれませんが、夫に対する重大な背信行為です。

托卵が発覚した場合に托卵女子自身や子どもが受ける不利益も重大なものとなります。

また、托卵は、DNA鑑定によって簡単にわかってしまうものです。

そのため、上記のようなメリットがあるということ以上に、リスクは大きいものといえるでしょう。

 

 

まとめ

以上、托卵女子について、意味、背景、特徴、対応方法などについて解説しました。

妻が托卵女子である疑いがある場合は、早めに事実を確認した上で、親子関係をどうするかを検討する必要があります。

托卵が発覚した場合、又はその疑いがある場合は、まずは離婚問題に強い弁護士にご相談されることをおすすめします。

当事務所には、離婚問題に注力する弁護士で構成された離婚事件チームがあり、男女問題でお困りの方を強力にサポートしています。

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