財産分与を払ってくれない|状況別の対処法を弁護士が解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

この記事では、離婚の協議で、相手が財産分与に応じてくれない場合の対処法について、離婚問題に注力する弁護士が、状況別に分けてそれぞれ解説します。

財産分与とは?

財産分与とは、離婚に伴い、結婚生活で夫婦が協力して築いた財産を分け合って清算することをいいます。

財産分与は、女性(権利者)が男性(義務者)に請求した場合、法律上、男性側はこれを拒否できません。

なお、この記事では、多くの離婚事件において、男性のほうが女性よりも財産が多いので、義務者を男性、権利者を女性と記載しております。

しかし、女性の方がより財産を保有している場合には、義務者が女性、権利者が男性に入れ替わりますので、ご注意ください。

 

 

男性(義務者)が財産分与に応じない背景

財産分与は、本来、夫婦の財産を平等に分ける手続きです。

しかし、稼ぎが多く、財産分与で支払う側になる男性(義務者)の中には、財産分与によって”自分の財産を取られる”と感じてしまう人が少なからずいます。

このような人は、離婚の協議の際に、財産分与には応じないという態度を示す傾向にあります。

 

 

財産分与に応じないときの対処法

財産分与に応じないケースには、様々なパターンがあります。

以下、この記事では、財産分与に応じてくれない典型的なパターンをいくつか挙げ、それに対する対処法をそれぞれ紹介していきます。

 

財産を開示しない

まず考えられるのは、そもそも財産の一覧を開示せず、財産を隠すというパターンです。

これに対する対処法は、3つの段階があります。

 

弁護士が説得する

まず第1段階として、弁護士が説得して、任意で財産の開示をするよう求めていきます。

私の経験上、弁護士から説得すると、意外と素直に開示してくれる方が多いという印象です。

 

弁護士会照会をする

相手が弁護士の説得に応じない場合、次の段階として、相手の資産があるであろう金融機関を特定した上で、金融機関に対し弁護士会照会を行うことを検討します。

弁護士会照会とは、弁護士が弁護士会を通じて、金融機関に対して情報の開示を求めていく制度です。

弁護士会照会をすれば、金融機関は、取引履歴の開示に応じてくれる傾向にあります。

もっとも、場合によっては、金融機関が開示を拒否するということもあります。

 

調査嘱託をする

より強制力をもった強力な手段としては、調査嘱託をする方法があります。

調査嘱託とは、裁判所を通じて金融機関に照会を行い、口座の取引履歴を開示してもらうものです。

裁判所を通じた手続きですので、相手は拒絶することができません。

ただ、なんの手がかりもないと裁判所も調査嘱託をしてくれませんので、弁護士会照会と同じように、口座がありそうな金融機関の目星はつけておきたいところです。

なお、調査嘱託は調停段階では裁判所が応じない傾向にあり、裁判段階では利用できるという印象です。

 

評価について争いがある

財産分与を行う際は、財産の価値を適切に評価する必要があります。

現金や預金ではその必要はありませんが、不動産や非上場会社の株といった財産では、その価値の計算方法が必ずしも画一ではなく、その評価について争いが生じる場合があります。

これに対する対処法としては、弁護士に依頼して財産の価値について意見書を作成してもらい、相手方に示すといったものが考えられます。

ただ、弁護士であっても、財産の評価は、財産分与に精通した弁護士でないと難しいです。

そこで、離婚に特化した財産分与に強い弁護士に相談し、依頼することをおすすめします。

 

財産分与の割合(2分の1)に納得していない

財産分与の割合は、原則として2分の1です。

この原則は、一方が専業主婦で仕事をしていなかった場合でも変わりません。

たしかに、夫婦間の貢献度に応じて割合を変動させることもありますが、あくまでこれは、2分の1で分けるのではあまりに不公平だと言えるような事情がある場合に採られる、例外的な処置にすぎません。

まずは、男性に対しては、財産分与の割合は原則2分の1であることを説明し、それでも納得せず財産分与に応じないような場合には、離婚問題に強い弁護士に相談して、意見書を書いてもらうとよいでしょう。

 

合意しているのに支払わない

既に、財産分与をすることで合意をしたのに、その後相手が支払ってくれない場合にはどうしたら良いのでしょうか。

この場合には、裁判所の強制執行の手続を行います。

強制執行とは、裁判所の執行官が相手の財産を差し押さえて、強制的に債務の弁済を実現させる手続きです。

しかし、強制執行を行うためには、合意の内容を記載した債務名義という文書が必要になります。

何が債務名義となるかは法律で定められています。

以下が債務名義の例です。

  • 公正証書
  • 調停成立の調書
  • 裁判の判決

注意しておきたいのは、離婚合意書を交わしたとしても、それだけでは債務名義にはならないという点です。

債務名義がない場合には、まずは、債務名義を取得する必要があり、そのためには、公正証書を作成したり、調停や裁判を申し立てたりしなければなりません。

既に債務名義をもっている場合には、裁判所に強制執行を申し立てて、相手の財産を差し押さえるなどして、強制的に財産分与を行います。

 

 

財産分与の手続きの流れ

財産分与の手続きの流れ

財産分与の手続きは、まずは協議、それでまとまらなければ調停、それでも無理なら最終的に裁判、という順で進んでいきます。

なお、上記は離婚が成立していないケースを前提としています(離婚がすでに成立している場合、「裁判」ではなく「審判」という手続きとなります。)。

 

財産分与の協議

まずは、協議による財産分与を試みます。

財産分与の範囲や財産の評価等の問題を、全て話し合いで決めることができれば、時間・費用・労力を最小限で決着させることができます。

後に述べる調停や裁判といった手続きは、一般的にかなりの時間がかかるので、できる限り協議の段階で解決することが望ましいです。

財産を積極的に開示したり、不動産業者などに依頼して財産を適切に評価してもらったりして、互いに協力して、話し合いを進めていきましょう。

そうして、話し合いがまとまった際には、離婚協議書を作成して、財産分与についてもそこに記載することをおすすめします。

当事務所のホームページでは、離婚協議書の書き方サンプルを公開していますので、是非ご活用ください。

また、万が一の強制執行に備え、離婚協議書を公正証書の形にして、債務名義を取得しておくのも忘れないようにしましょう。

ここで注意しなければならないのは、公正証書は法律文書であると言うことです。

もし、離婚協議書の文言に不備があれば、せっかく公正証書を作ったのに強制執行ができないという事態になりかねません。

公正証書を作成する時は、専門家のチェックを受けるようにしましょう。

当事務所では、サンプルの公開だけでなく、弁護士による離婚協議書作成のサポートも行っていますので、協議書を作成する際は、気軽にお問い合わせください。

また、協議の際には、当事者間では相場観がわからない、そもそも冷静に話し合いができない、というような場合もあるでしょう。

そのような場合には、弁護士に依頼して代理交渉を進めてもらうのが有効です。

一度、離婚問題に強い弁護士に相談してみましょう。

 

財産分与の調停

協議でまとまらない場合には、調停の手続きをすることになります。

調停とは、簡単に言うと、裁判所での話し合いの手続きになります。

裁判官を含む3名の調停員が間に入り、条件の交渉等が行われます。

しかし、調停でも、あくまで話し合いになりますので、最終的に合意に至らなければ、調停不調で手続きが終了することになります。

 

財産分与の裁判

調停が不調に終わった時は、いよいよ、最終手段となる裁判をすることになります。

裁判では、話し合いで物事を決めるのではなく、お互いが自分に有利な主張をして、最終的に裁判官が判決で決定することになります。

 

調停や裁判のデメリット

調停や裁判では、非常に時間がかかり、それが年単位になることも珍しくありません。

また、これらの手続きは、個人でも申立できますが、法律と手続きについて高度な専門的知識が要求されるため、弁護士に依頼することがほぼ必須となるでしょう。

そうなると、協議のときに弁護士に代理交渉を依頼するときと比べても、さらに一層弁護士費用が高額になってしまうことが考えられます。

ですので、繰り返しにはなりますが、できる限り調停や裁判を回避して、協議の段階で問題を早期解決することが望ましいです。

 

 

女性のための財産分与の解決法

女性のための財産分与の解決法

相手の財産をもれなく調査する

まずは、相手の財産をもれなく調査することが大事です。

上では、財産を調査する方法を紹介しましたが、そもそも何の手掛かりもなければ、弁護士や裁判所であっても、相手の財産を見つけ出すことは難しいです。

せめて、相手が預貯金や株を保有していると思われる金融機関や支店名くらいは、ご自身で押さえていただきたいと思います。

例えば、通帳の取引履歴や、ネットバンキングの送金記録などがあると良いでしょう。

それがあれば、仮に男性側が別のところに財産を移して隠そうとしても、追跡できるかもしれません。

 

財産を適切に評価する

不動産や非公開会社の株などの財産は、その価値を適切に評価する必要があります。

財産分与の対象の中で、これらの割合が大きい場合には、損をしないために、特に慎重に行った方が良いでしょう。

財産の評価には、不動産であれば不動産業者に査定の依頼をするといった方法が考えられますが、一度弁護士に評価が適正なのか相談してみるというのも良いでしょう。

 

財産分与に強い弁護士に相談する

きちんと財産を調査した上で、どの範囲の株を財産分与の対象とするのか、その評価をどうするのかという問題に、個人で対処するのは、やはり非常に難しいです。

こういった問題に適切に対処しないと、財産分与で大きく損をすることにもなりかねません。

また、当事者間だと、冷静に話が進められないということも少なくありません。

そこで、財産分与については、離婚を専門分野とし財産分与に強い弁護士に相談して、協議を進めることをおすすめします。

 

 

財産分与についての女性のQ&A

相手が財産分与を支払わないとどうなる?

財産分与は法律上認められた権利です。

もっとも、相手が財産分与をしないからといって、これが何か犯罪になるというようなことにはなりません。

相手が拒み続ける場合、最終的には、民事裁判、判決、強制執行という流れで、財産分与を実現することになります。

 

財産分与は財産がない場合ももらえる?

財産分与は、結婚期間に二人で築いた財産を分ける手続きです。

そもそも、財産分与の対象となる財産がないときには、基本的に財産分与はできません。

 

男性側に借金がある場合はどうなる?

男性側に借金がある場合、その借金も財産分与の対象となってしまう可能性があります。

具体的には、プラスの財産がある場合には、その評価額から借金総額を差し引いたものを財産分与の対象とするという形で考慮されることになります。

プラスの財産から借金総額を差し引いたものがマイナスになる場合は、財産分与請求はできません。

 

一度財産分与はしないという合意をしてしまった場合、後の調停や裁判で撤回することはできる?

一度財産分与はしないという合意をしてしまった場合、調停や裁判の手続きに移行したとしても、その合意が有効であるとみなされ、後から撤回することが認められないという可能性があります。

 

まとめ

相手が財産分与を払ってくれない場合について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

財産分与では、範囲の問題や評価の問題など、法律的に難しい問題がたくさんあります。

しかも、相手が支払いを拒んでいる場面では、当事者間で交渉を続けることはかなり困難でしょう。

そこで、相手が財産分与を払ってくれない場合には、離婚に特化した財産分与に強い弁護士に相談することをおすすめします。

当事務所は、離婚専門のチームを有し、年間数百件の離婚事件を処理しており、経験は非常に豊富です。

もちろん、財産分与についても非常に多くの解決事例を有しています。

財産分与でお困りの方は、是非当事務所にご相談ください。

当事務所は、遠方の方にはZoomやLINEを使ったオンライン相談も行っています。

どんな離婚問題にも柔軟かつ適切な対応が可能ですので、お困りの際は、お気軽にご相談ください。

この記事が、財産分与の問題でお困りの方にとって、お役に立てれば幸いです。

 

 

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