年金分割に応じない夫から50%分割できた妻Mさん
解決方法:調停
子どもなし
離婚を求められた
Mさんは夫と25年前に結婚しましたが、10年前から別居状態となっていました。
夫から離婚調停を申し立てられたため、離婚自体には応じることにしました。
そして、老後の生活を考え、年金分割を主張しました。
これに対して、夫は、別居期間が長期化していることを理由に年金分割に応じないと言い張りました。
弁護士は、Mさんの代理人として、調停に出席し、年金分割について、50%の分割割合を主張しました。その結果、50%の分割に成功しました。
解説
年金分割を行うと、老後の年金受給額が増加します。
専業主婦はもちろん、扶養に入っていない場合でも、夫の年収の方が高ければ、分割請求できる可能性が高いといえます。
男性側からは分割に応じないという主張がよくなされますが、その場合、年金分割制度の趣旨等を主張し、説得する必要があります。
年金分割には、合意分割と3号分割の2種類があります。
合意分割とは、当事者の一方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金記録を当事者で分割することができる制度です(婚姻期間中に3号分割の対象期間があれば、合意分割と同時に3号分割の請求があったとみなされます。)。
平成20年5月1日以後に離婚をした場合に、国民年金の第3号被保険者であった方(厚生年金加入者である配偶者の扶養に入っている人)からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録の2分の1ずつを当事者間で分割することができる制度です。
3号分割は合意分割と異なり、当事者間の合意は必要ありません。
合意分割は、その名の通り、当事者間の合意を要する年金分割となります。
当事者間で年金分割の按分割合等について合意ができれば、その合意内容を書面に残しましょう。
相手方が年金分割に合意してくれない場合は、一方的に合意分割の手続を進めていくことはできません。
このような場合は、裁判所に年金分割の調停又は審判を申し立てることになります。(本事例も調停において年金分割の問題を解決しています。)
その結果、調停の中で合意が成立したり、合意の代わりになる審判がでたりすることで、合意分割の手続を進めていくことが可能です。
裁判所は、特別な事情がない限り、50%の按分割合で年金分割を認めてくれる傾向にあるため、相手方が年金分割に応じないと言っている場合には裁判手続きを利用するとよいでしょう。
分割のための合意や裁判手続きによる按分割合が決定した後は、年金事務所で分割請求の手続をする必要があります。
ここで、①合意のための手続と、②年金事務所への分割請求の手続は異なる手続であり、②の手続を忘れないよう注意しなければなりません。
仮に、審判等において按分割合が決定していたとしても、分割請求の期限が過ぎてしまうと年金分割をすることはできなくなります。
合意分割の分割請求期限については、日本年金機構のHPをご覧ください。
引用元:離婚時の厚生年金の分割(合意分割制度)|日本年金機構
なお、合意分割の場合、②の手続において、年金分割及びその割合を明らかにできる書類が必要になるため、①の手続の結果を書類に残す必要があります。
書類の種類によっては、②の手続を1人で行えず、相手方の協力が必要になることがありますのでご注意ください。
具体的には、以下のとおりです。
書類の種類 | 分割請求の手続き |
---|---|
私文書(離婚協議書・合意書等) | 夫婦2人で行う必要有り |
公証人の認証を受けた私署証書 | 年金分割をしてもらう方1人で可能 |
公正証書 | 同上 |
調停調書 | 同上 |
審判書及び確定証明書 | 同上 |
和解調書 | 同上 |
判決書及び確定証明書 | 同上 |
年金分割を行うと、老後の年金受給額が増加します。
専業主婦はもちろん、扶養に入っていない場合でも、夫の年収の方が高ければ、分割請求できる可能性が高いといえます。
男性側からは分割に応じないという主張がよくなされますが、裁判所は基本的に按分割合を50%とする年金分割を認めてくれる傾向にありますので、場合によっては裁判手続きを利用する等して年金分割の実現を目指すべきでしょう。
- 争点 :#年金分割
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