DV男の特徴とは?弁護士がわかりやすく解説
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、家庭内又は親密な関係の中での暴力のことを指します。
DVは、女性から男性に対して行われるれることもありますが、男性から女性に対して行われることの方が多いです。
DVには身体的な暴力だけでなく、精神的、経済的、性的な暴力も含まれ、そのいずれもが相手の人格を傷つけ、深刻な被害をもたらします。
そのため、相手がDV夫・DV彼氏の場合は早期に対処する必要があります。
しかし、DVは親密な関係性の中で行われ、加害者が被害者をコントロールするものであることなどから、被害者は、相手がDV夫・DV彼氏なのかどうか判断がつかなくなってしまうことも多いです。
そこで、ここではDV夫やDV彼氏の特徴と、DV被害を受けている場合の対処法などについて解説していきます。
夫や彼氏の言動等に苦しんでいるという方はぜひ参考になさってください。
DVとは?
DVとは、ドメスティック・バイオレンス(Domestic violence)の略称で、配偶者から振るわれる暴力のことをいいます。
暴力には、殴る・蹴るなどの身体的暴力のみならず、精神的暴力、性的暴力、経済的暴力も含まれます。
暴力は、妻から夫に振るわれる場合もありますが、夫から妻に振るわれる場合の方が多いです。
また、法律婚に限らず、事実婚の夫婦間に起こる暴力や、恋人など親密な関係にある人の間に起こる暴力も一般にDVといいます。
特に恋人からのDVは「デートDV」と呼ばれています。
DV加害者の特徴
DV夫の特徴
妻を支配・コントロールしようとする
意識的であるかどうかはともかく、DV夫は「自分には妻を支配・コントロールする権利がある」という考えを持っており、妻を自分の思い通りに動かそうとします。
妻を支配・コントロールする手段として、身体への暴力や脅しなどによって直接的に妻の恐怖心をあおることもあれば、言葉などによって妻を精神的に追い詰める方法がとられることもあります。
自分は正しいと思い込んでいる
DV夫は、自分は常に正しく、妻よりも優れていると考えていることが多いです。
妻の言動や考え方などを全て否定したり、うまくいかないことを全て妻のせいにしたりすることがあります。
DVについても、「妻が反抗したのでおとなしくさせるために殴ったに過ぎない」「悪いのは妻である」などと言って自分の非を認めないことが多いです。
外面がよい
DV夫は、家庭内では暴力を振るっていても、家庭外では「良い夫」「良い父親」のように振る舞い、周囲から高い評価を受けていることも少なくありません。
そのため、妻が周囲の人に助けを求めることを躊躇してしまったり、勇気を出して相談しても「あの人がそんなことをするわけがない」などと言われてしまい解決にならないということもあります。
また、妻自身も、交際前あるいは結婚前には、相手に対して「良い男性」との印象を持っていたというケースは多いです。
そのため、「本当は優しい人だから、いつか戻ってくれるはず」「彼が変わってしまったのは私のせいかもしれない」などと思い、DVから抜け出すことが難しくなることもあります。
束縛をする
DV夫は、妻が自分の支配下から逃げ出すことを恐れていることが多いです。
そのため、妻のスマホの中身を勝手にチェックする、外出を制限する、頻繁に連絡して居場所を報告させるなど、監視・行動規制をすることがあります。
また、妻が自立できないように仕向けるというのもDV夫の特徴です。
DV夫が、妻が仕事を持つことや友達と付き合うことを禁止し、妻が社会と関わりを持つことを阻止しようとするケースも多いです。
DV男性(彼氏)の特徴
DV男性(彼氏)の考え方・行動原理の根本はDV夫と共通ですので、その特徴もDV夫と重なります。
もっとも、DV夫は女性と夫婦という深い関係で結び付いている一方、DV彼氏にはそのような結びつきがないという点で違いがあります。
夫婦は別れるのに離婚届の提出や裁判所での手続きが必要になりますが、恋人は別れるのに特段の手続きも必要ありません。
このように、理屈上は彼女の意思一つで簡単に別れることができてしまう関係性の中で、彼氏が彼女に対する支配・コントロールの欲求を満たすためには、彼女を束縛しておくことが必要になります。
そのため、DV彼氏は、束縛が強いということが特徴的であるケースが多いと考えられます。
例えば、次のような行為がみられることが多いです。
- 彼女のスマホを勝手にチェックする
- 彼女にスマホで位置情報を共有させる
- 彼女が他の異性と話すことを禁ずる
- LINE等のSNSで即レス(即座に返事)がないと怒る
- 別れたら自殺する、殺してやるなどと言って脅す
付き合う前に特徴はある?
DV加害者は、交際前はとても優しく、魅力的に映るように振る舞っていることが多いです。
女性と交際を始めて親密な関係になってから、人が変わったかのようにDVを行うケースがほとんどであり、付き合う前に相手がDVをする人かどうかを見極めることは簡単ではありません。
もっとも、DVは、加害者の「相手を支配する」という考え方に基づいて生じます。
DVをするようになる人は、もともとこのような考え方を身に着けていることがほとんどであり、その兆候は交際前にも表れることがあります。
相手に次のような言動が見られる場合は要注意です。
- 以前の交際相手(元恋人)の悪口を言う
- 女性をバカにしたり、見下すような言動をする
- 「アドバイス」などと称して女性が望んでいないことをする
- 自分の都合を優先させようとする
- 自分の考えを押し付けようとする
- 人によって態度を変える
- 不都合なことが起こると全て他人のせいにする
DV被害者の特徴
DVされやすい女性に特徴はある?
DV加害者は、真面目で責任感が強く、人に尽くすのが好きで、何かあると「自分が悪かったのではないか」と考えがちであるといった特徴を持つ女性をターゲットにすることが多いです。
また、自己肯定感が低く、他人に屈しやすいという特徴を持つ女性も、DV加害者から「支配・コントロールしやすい」と思われてターゲットにされやすいです。
被害者の方は、上記のような特徴を持つことから、「自分が悪いから相手が怒るんだ」などと自分を責めてしまうことも多いです。
また、加害者から長年にわたって「お前が悪い」などと言い続けられることにより、相手の言動がDVなのかどうか、自分が被害者なのかどうか、わからなくなってしまっていることもあります。
しかし、次のような場合、被害者である可能性が高いです。
- 殴られる・蹴られるなど、身体に危害を加えられたことがある
- 常に相手の機嫌をうかがっている
- 家族や友人と疎遠になってしまった
- 気分が落ち込んでいる
- 行動を起こす気力がわかない
- 自分がダメだから暴力を振るわれるのだと思う
DV被害者の対処法
①別居をする
DVの態様や被害の状況にもよりますが、DVを受けている場合、加害者と物理的な距離を置いて身の安全を確保することが最重要と思われます。
殴る・蹴る等の身体的な暴力の場合、最悪、命にかかわる事態にもなりかねません。
精神的暴力などの場合であっても、精神的に追い詰められ取り返しのつかないことになる可能性があります。
決して軽く考えず、早期に別居して加害者と距離を置くことを検討した方がよいでしょう。
まずは安全を確保し、冷静な状態になってから、離婚などについて検討するという方法もあります。
別居に当たっては、持ち出す荷物や当日の段取り、生活費の請求などについて押さえるべきポイントがあります。
そのため、事前に専門の弁護士に相談し、サポートを受けることをおすすめいたします。
②離婚を検討する
DV夫と縁を切りたい、夫婦関係を清算したいという場合は、離婚を検討することになります。
離婚は、当事者間で合意ができる場合は理由の如何を問わずにすることができますが、合意ができない場合(相手が応じない場合)は、裁判所に離婚判決をもらわなければすることができません。
そして、離婚判決を出してもらうためには、法律が定める条件(「離婚原因」といいます。)が認められる必要があります。
この点、DVは、離婚原因のうち、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)に当たる可能性があります。
引用:民法|電子政府の窓口
しかし、DVの内容や被害状況などは事案により異なるため、全てのDVが直ちに離婚原因となるわけではありません。
例えば、殴る・蹴るなどの身体的暴力が繰り返し行われ、被害者が入通院が必要なほどの重傷を負ったような場合は「婚姻を継続し難い重大な事由」があると認められる可能性があります。
他方で、身体的な暴力がない場合や、体に傷が残らない軽微な暴力の場合、暴力が離婚原因に該当すると認めてもらうのは難しいケースが多いです。
また、加害者がDVの事実を否定している場合は、被害者側でDVの事実を立証する必要があります。
すなわち、DVがあったことを証拠によって裏付けなければなりません。
しかし、入通院がなくケガの診断書等がとれない場合や、精神的暴力の場合などは、DVの事実を立証するのが困難な傾向にあります。
離婚に向けて進めていく場合は、以上のようなことを踏まえつつ、慎重に対応する必要があります。
そのため、離婚をお考えの場合は、DV問題に強い弁護士に相談されるようにしてください。
③保護命令の申立てを検討する
保護命令とは、被害者からの申立てにもとづき、裁判所が加害者に対し、被害者に接近等をしてはならないことを命ずるものです。
夫からの暴力が悪質で、今後も被害を受け続けるおそれがある場合は、この保護命令の申立てを検討するべきです。
申立ての必要性の判断や、申立ての手続きは、専門知識がないと難しいため、詳しくは弁護士にご相談ください。
なお、保護命令は、今後加害者が被害者に暴力等を振るうのを防止するためのものであり、現に生じている事態に緊急に対処するものではありません。
夫が現に暴力を振るってきた場合など、緊急の対処が必要な場合は、すぐに警察に通報し、身の安全を確保するようにしてください。
④DVに強い弁護士に相談する
DVの相談機関には、配偶者暴力相談支援センターや警察署、民間の支援団体などがありますが、どこに相談してよいかわからないという場合、DV問題に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。
被害者の方は、DVによる恐怖や無力感などから、自分でもどうしたいのかわからない、という状態になっていることも少なくありませんが、そのような場合でも問題ありません。
弁護士に状況を整理してもらい、今後の見通しを立ててもらうことにより、具体的に考えられるようになることもあります。
別居のサポート
別居のサポートを弁護士に依頼した場合、別居と同時に、弁護士から加害者に対して通知を送り、今後は弁護士が窓口となること、及び、被害者への直接接触を禁ずることを申し入れることができます。
これによって、加害者が被害者に接触してくることを一定程度防止することができます。
また、その後は弁護士が加害者との間に入ってくれるので、ご自身で直接加害者とやり取りをする必要がなくなり、精神的・肉体的負担を大幅に軽減することができます。
そして、別居後は、相手よりも収入が少ないのであれば、相手に対して生活費(「婚姻費用」といいます。)の支払いを求めることができます。
この生活費の請求も、弁護士に行ってもらうとよいでしょう。
離婚のサポート
DVの内容にもよりますが、DVの加害者と被害者が冷静・対等に離婚の話し合いをすることは難しいことがほとんどです。
安全確保の面からも、直接のやり取りは避けて、弁護士に間に入ってもらうようにするべきでしょう。
また、相手がDV夫の場合、相手がDVを認めず、離婚がスムーズにできないというケースも少なくありません。
このようなケースでも、弁護士が交渉することによって、裁判所の手続きを利用することなく、協議による早期解決ができる場合もあります。
さらに、離婚をする際は、離婚の条件面(親権、養育費、財産分与、慰謝料など)についても慎重な判断が必要になります。
適切な条件を見極め、相手に不利な条件を押し付けられることを防ぐためにも、離婚を進める際には弁護士のサポートを受けることを強くおすすめいたします。
DVの特徴についてのQ&A
DV暴力の特徴は?
DVは支配やコントロールを行い、被害者の恐怖や不安を引き起こします。
身体的暴力のみならず、精神的暴力、性的暴力、経済的暴力のいずれも、被害者の人格を傷つけ、深刻な影響をもたらします。
暴力が絡む夫婦喧嘩との区別がつきにくいという場合もありますが、夫婦喧嘩は、あくまでも対等な関係性の中での対立状態のことをいいます。
一方が他方を支配・コントロールするというパターンではなく、継続的な暴力はないケースがほとんどです。
DVから抜け出せない理由は何ですか?
- ① 離婚後の生活が不安
- ② 別居や離婚による子どもへの影響が心配
- ③ DV被害による恐怖や無力感で身動きが取れない
- ④ 周囲に助けを求めることが容易ではない
- ⑤ 「いつかは夫も変わってくれるはず」と思い耐え続けてしまう
DV夫と別れた後の生活に不安があったり、子どもへの影響が心配で別居や離婚に踏み出せないというケースは多いです。
また、DV被害によって恐怖や無力感を抱き、DVから逃れるための行動を起こすことが困難になっている場合もあります。
DV夫から、行動制限や監視を受けて社会から隔離されてしまい、周囲に助けを求めることが難しく、現状を打開することができないということもあります。
また、DV夫も常にDV行為を行っているというわけではなく、優しくなるときや、子どもの面倒をよくみてくれることもあるため、「いつかは夫も変わってくれるはず」と思い、DVに耐え続けてしまうというケースもあります。
いずれの場合でも、支援機関や弁護士に相談することが現状を打開する第一歩となります。
一人で抱え込まず、相談されるようにしてください。
DV男に好かれる女の特徴とは?
上記のような特徴を持つ女性は、DV男から暴力を振るわれても、「相手が怒るのは自分のせいかもしれない」「私がもっとちゃんとすれば」などと思って受け入れいてしまいがちです。
そして、男を簡単に見捨てることはありません。
そのため、DV男から支配・コントロールしやすいと思われ、ターゲットにされやすい傾向にあります。
まとめ
以上、DV夫・DV彼氏の特徴や、DV被害を受けている場合の対処法などを解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
DV男には、相手を支配・コントロールしようとする、自分は正しいと思い込んでいる、外面がよい、束縛をするなどといった特徴があります。
DV被害を受けている場合は、早期に対処する必要があります。
具体的な対処法は、暴力の態様や被害者の方の状況などにより異なりますので、まずはDV問題に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。
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