デートDVとは?具体例や対処法を弁護士が解説|チェックリスト

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  

デートDVとは、恋人から振るわれる暴力のことをいいます。

恋人間の暴力は、夫婦間の暴力と比べると軽視されてしまうこともあります。

しかし、重大な人権侵害であり、命にかかわる事態になることもある深刻な問題です。

被害を受けている場合は、早めの対処が必要です。

ここでは、デートDVの意味や具体例、対処法について解説していきます。

恋人からの暴力に困っている方、恋人の言動に疑問や不安を感じている方は、ぜひ参考になさってください。

デートDVとは?

デートDVとは、恋人(交際相手)から振るわれる暴力のことをいいます。

暴力には、殴る・蹴るなどの身体的暴力だけでなく、暴言などの精神的暴力、性行為を強要するなどの性的暴力、金銭的負担を押し付けるなどの経済的暴力も含まれます。

 

デートDVとDVとの違い

デートDVとDVは、加害者と被害者の関係性の範囲が異なります。

DVとは、一般に、夫婦(法律婚のみならず事実婚の場合も含む)、恋人、親子など、親密な関係性にある人の間で起こる暴力のことを指します。

デートDVは、そのうちの、恋人間で起こる暴力のことを指します。

「恋人」が何を意味するかは、人によって考え方が異なる場合もありますが、ここでは恋愛関係にあり、婚姻関係にはないということがポイントとなります。

異性の恋人に限らず、同性の恋人から受ける暴力もデートDVです。

また、かつて交際していたが現在は関係を解消している人(元恋人)から受ける暴力も、デートDVに含まれます。

 

デートDVの具体例

高校生のケース

  • 「ブス」「バカ」等の暴言を吐く
  • 他の異性と話すことを禁止する
  • 交友関係を制限する
  • 部活や友達との約束よりもデートを優先することを強要する

 

大学生のケース

  • 殴る・蹴るなど身体的な暴力を振るう
  • スマホで位置情報を共有させる
  • アルバイトのお金を要求する
  • アルバイトやサークル活動よりも自分といることを優先させる
  • 嫌がっているのに性行為を強要する
  • 避妊に協力しない
  • 性的な写真や動画を撮ってSNS等で送ることを強要する

 

社会人のケース

  • いつもおごらせる
  • 仕事中も絶えず連絡するなどして行動を監視する
  • 飲み会などに参加することを妨害する
  • 仕事を辞めさせる
  • (同棲している場合)生活費を渡さない
  • (同棲している場合)外出を禁止する

 

デートDVの発生状況

交際相手がいた(いる)人(2、193人)を対象に行われた内閣府の調査によると、交際相手からの暴力の被害経験が「あった」と回答した人は全体の12.6%とのことです。

男女別でみると、女性は16.7%、男性は8.1%となっており、女性の方が被害経験が多くなっています。

デートDVの発生状況

また、年代別で見ると、女性では20代、30代で25%以上、男性では30代で15%以上となっており、20代、30代で被害経験が多くなっています。

引用:内閣府男女共同参画局|男女間における暴力に関する調査」(令和2年度調査)

 

 

デートDVのチェックリスト:危険度を簡単に確認する方法

次のような行為はデートDVに該当します。

当てはまるものが一つでもある場合は危険度が高いです。

ここで挙げるものがデートDVの全てということではありませんが、参考程度にチェックしてみてください。

当てはまるものがない場合でも、あなたが不安や恐怖を感じているのであれば、DVを疑い早期に対処するようにしてください。

 

 

デートDVの問題点

若い世代にも起こりやすい

デートDVは、10代や20代など、若年のカップルに起こることも多いのが特徴です。

特に高校生や大学生のカップル間での暴力は、被害者の将来に及ぼす影響が大きいものになる可能性があります。

被害を受けることで、被害者は心身に不調をきたし、学校に行けなくなったり、進学や就職が難しくなったりすることもあります。

そうして自立する力を奪われ、その後、加害者に精神的にも経済的にも依存せざるを得ない状態になった場合は、DVから抜け出すことはますます困難になります。

 

軽視されがち

デートDVは、夫婦間でのDVと比べて軽視されてしまうことが多いです。

恋人は、夫婦とは異なり、別れるのに特段の手続きも必要としないため、「簡単に別れられる」と考えられてしまいがちです。

そのため、デートDVの被害について周囲に相談をしても、「別れればよい」などと簡単に言われて解決にならない場合があります。

被害者自身も、「別れられない自分が悪い」と思って我慢し続けてしまうこともあります。

 

抜け出すことが難しい

加害者と別れてDVから抜け出すことが難しいケースは多いです。

被害者にとって、別れを決断することは簡単ではありません。

加害者に対する恐怖心の他にも、「彼(彼女)もいつか変わってくれるはず」という期待や愛情などから、離れがたくなっているのです。

また、別れたとしても復縁し、その後も別れと復縁を繰り返し、DV被害を受け続けてしまうケースもあります。

加害者は、被害者を友人から孤立させたり、自尊心を奪い「一人では生きていけない」と思い込ませたりして、自分の元から離れられないようにコントロールすることもあります。

さらに、別れた後、加害者がストーカー化してつきまといや嫌がらせ、さらには報復として身体的な暴力を振るうようになる場合もあります。

恋人が別れる場合、「離婚」のように明確な区切りはありません。

そのため、加害者が別れを受け入れられなかったり、簡単に「取り戻せる」と思ったりして、ストーカー化しやすい傾向にあるものと推察されます。

 

 

デートDVへの対処法

デートDVへの対処法

相談する

恋人の行為や態度について疑問を感じる場合や、恋人が怖い、対等な関係でないと思う場合、一人で抱え込まず、相談することが大切です。

相談は、信頼できる友人や家族でもよいですが、デートDVに理解のある人にすることがポイントです。

デートDVについて理解のない人に相談すると「別れればいい」「愛されている証拠ではないか」「あなたにも落ち度があるのでは」などと言われ、解決につながらない可能性もあります。

そのため、DV問題を扱う支援機関や警察署、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

相談窓口について、詳しくは後ほどご紹介いたします。

 

加害者と物理的な距離を置く

DV被害を受けている場合は、まずは加害者と物理的な距離を置いて安全を確保することが重要です。

当面の間、面会は控え、同棲している場合は別居を検討する必要があります。

それらを実行するのに、加害者の承諾は必要ありません。

ただし、一方的に面会を拒絶したり、別居したりすると、加害者が逆上し、あなたの自宅や職場などに押しかけてきたり、大量の嫌がらせの連絡等をしてくる可能性もあるので、十分注意してください。

必要に応じて警察に相談したり、保護命令の申立てを検討する必要があります。

DV問題に詳しい弁護士に相談し、加害者とのやり取りの窓口になってもらうのもよいでしょう。

その後の関係修復又は解消に関する話し合いや、保護命令の申立て、慰謝料の請求、刑事告訴などについても、弁護士であればサポートすることができます。

 

関係を解消する

DVが改善されない場合は、関係を解消することを検討することになるでしょう。

恋人の関係は、片方の意思によって一方的に解消することができ、加害者の承諾を得る必要はありません。

ただし、別れる際や、別れた後は、加害者が逆上して更なる暴力を振るってくる危険性があるので十分注意するようにしてください。

別れ話をする際は、予め警察に相談しておいたり、弁護士に代理人になってもらうなどの対処を検討するべきでしょう。

また、穏便に別れることができた場合でも、その後は当面の間、安全確保に特に気を配るようにしてください。

なお、上記のようなケースとは逆に、別れを切り出された途端に別人のように態度がよくなったり、謝罪や反省の色を見せてやり直したいと懇願してきたりする加害者もいます。

このような場合、復縁を考えることもあるかもしれません。

しかし、復縁には慎重になった方がよい場合がほとんどです。

加害者が態度を改めたのは、あなたを引き留めておくための一時的なものである可能性もあります。

復縁後に暴力が再開されるのは時間の問題かもしれません。

その際は、あなたに対する支配を強めようと、さらに悪質な暴力を振るわれる危険性もあります。

 

保護命令を検討する

保護命令とは、DV防止法に基づき、被害者の申立てにより、裁判所が加害者に対し、被害者への接近を禁止すること等を命ずるものです。

相手からの暴力が悪質で、危険性が高い場合は、保護命令の申立てを検討する必要があります。

ただし、デートDVで保護命令を申し立てることができるのは、次のような条件をみたす場合に限られます。

  • 交際相手(加害者)と生活の本拠を共にしている(一緒に住んでいる)
  • 身体的暴力又は生命又は身体に対する脅迫を受けた
  • さらなる暴力によって生命又は身体に重大な危害を受けるおそれがある

したがって、加害者と生活の本拠を共にしていない場合、保護命令制度を利用することはできません。

保護命令制度を利用することができない場合は、状況に応じて警察に相談し、ストーカー規制法による対処等を検討する必要があります。

 

ストーカー規制法等による対処を検討する

加害者と生活の本拠を共にしておらず、保護命令制度を利用することができない場合、ストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)による対処を検討する必要があります。

ストーカー規制法とは、「つきまとい等又は位置情報無承諾取得等」を取り締まる法律です。

具体的には、つきまとい、待ち伏せ、住居等への押しかけ、面会や復縁の要求、乱暴な言動、メール等の大量送信、位置情報の取得などを禁止しています。

これらの被害を受けている場合、警察に申し出ることにより、警察署長等から加害者に対してこれらの行為をやめるよう警告を出してもらうことができます。

加害者が警告に反した場合は、公安委員会に禁止命令を出してもらうこともできます。

また、ストーカー行為(つきまとい等を反復して行うこと)や、警告・禁止命令への違反があった場合は、告訴して処罰を求めることもできます。

その他、警察本部長等に対して、防犯対策についての助言やパトロールの強化など、被害防止のための必要な援助を求めることもできます。

引用:ストーカー行為等の規制等に関する法律|e-gov

 

 

デートDVの相談窓口

配偶者暴力相談支援センター

DV被害者保護のための中心的な役割を担っている公的な機関です。

被害に関する相談対応やカウンセリング、一時保護、関係機関への連絡調整などの支援を行っています。

引用:内閣府男女共同参画局|相談機関一覧

 

DV相談ナビ、DV相談+(プラス)

全国共通の電話番号・#8008に電話をかけると、最寄りの配偶者暴力相談支援センターに自動転送され、相談をしたり支援につないでもらったりすることができます。

DV相談+では、電話・メール(24時間)の他、チャットでも相談等をすることができます。

引用:内閣府|DV相談+

 

警察署

最寄りの警察署や警察本部でもデートDVの相談を受け付けています。

ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令、援助を求める申出や、被害届の提出をすることができます。

加害者からの暴力やつきまとい等の内容をメモしたものや、加害者から送られてきたメッセージ等を保存したものを準備して持参するとよいでしょう。

なお、緊急の場合は、ためらわずに110番通報をするようにしてください。

 

DVに強い弁護士

弁護士には、法律的な対処法に関する助言や、安全な避難方法、加害者からの追跡防止策などについての助言をもらうことができます。

また、弁護士は、被害者の代理人として、加害者と直接交渉をすることができます。

弁護士に加害者との間に入ってもらえば、ご自身で直接加害者とやり取りをせずに話し合いをすることができるため、安全確保の面でもメリットは大きいでしょう。

弁護士に対応してもらい、関係解消に関する合意や、今後接触しないとの約束などについて、きちんとした書面を取り交わすことができれば、今後のトラブル防止にもつながります。

さらに、保護命令の申立てや、DV被害についての慰謝料請求(※)を検討する場合は、専門知識が不可欠となりますので、弁護士のサポートを受けることを強くおすすめいたします。

(※)DV被害による精神的な苦痛を償うためのお金として、慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし、慰謝料が認められるか否かは、暴力の程度や被害状況により異なりますので、具体的な見通しについては専門の弁護士にご相談ください。

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デートDVについてのQ&A

DV彼氏とは結婚しない方がいい?

必ずしも一概に言えることではありませんが、しない方がよいケースが大半だと思われます。

交際時にDVをしていた人は、結婚してもDVを継続する可能性は高いです。

結婚したら変わる、子どもが生まれたら変わる、ということはほとんどないと考えた方がよいでしょう。

結婚して、当面の間は落ち着いていたとしても、妊娠・出産のタイミングなどで再発するという可能性もあります。

結婚して子どもをつくることを予定している場合、DVが継続又は再発した場合の子どもへの影響も憂慮するべきでしょう。

両親間のDVは、子どもに少なからず影響を及ぼし、DV加害者が子どもに対しても直接暴力を振るうケースもあります。

結婚後にDV被害を受けた場合、その最終的な解決方法としては離婚が考えられますが、DV夫との離婚は簡単にはできない場合が多いです。

裁判で離婚の可否や、子どもの親権を争うことになったような場合は、離婚成立まで年単位で時間がかかることも少なくありません。

その間は、法律上はDV夫との夫婦関係が継続し、再婚することもできません。

このように、DV彼氏と結婚するリスクは大きいため、DV彼氏との結婚は慎重になるべきでしょう。

 

DVとデートDVの違いは何ですか?

加害者と被害者の関係性の範囲が違います。

DVは、加害者が(元)配偶者、(元)恋人、親など、親密な関係にある人全般の場合をいいます。

一方、デートDVは、加害者が恋人の場合のみを指す言葉です。

DVとデートDVの違い

 

 

まとめ

以上、デートDVの意味や具体例、対処法などについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

恋人間の暴力は見過ごされやすく、被害から抜け出すことが難しい場合もあります。

しかし、被害を受け続けていると、深刻な事態になりかねません。

被害を受けている場合は、早めに支援機関や専門家に相談し、加害者と距離をとるなど適切な対処をするようにしてください。

当事務所には、DV問題に注力する弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、DV問題にお困りの方を強力にサポートしています。

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