DVの相談はどこにすべき?|各窓口の特徴やデメリットを解説
DV相談で迷われたときは、DVにくわしい弁護士へ相談することをお勧めいたします。
DV被害を受けている場合は、早めに相談窓口に相談することが非常に重要です。
しかし、被害を受ける中で、どこに、どうやって相談をすればよいかわからないという方も多いと思われます。
そこで、ここでは、DVの相談窓口の紹介と、各窓口の特徴、費用、メリット・デメリットなどについて解説をしていきます。
DVの相談窓口一覧
相談窓口 | 支援内容等 | 連絡方法 |
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配偶者暴力相談支援センター | 相談、相談機関の紹介、カウンセリング、一時保護、自立支援等に関する助言など | 内閣府|配偶者暴力相談支援センターの機能を果たす施設一覧 DV相談ナビ「#8008」に電話をかけると最寄りの支援センターにつながります |
DV相談プラス |
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福祉事務所 | 生活資金の援助、母子生活支援施設への入所などに関する相談窓口 | 厚生労働省|福祉事務所一覧 |
女性センター | 相談、相談機関の紹介、一時保護、自立支援等に関する助言など | 内閣府|都道府県・市区町村の男女共同参画・女性のための総合的な施設 |
警察 | 緊急対応 |
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安全確保に関する相談 |
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民間の相談窓口 | 相談、相談機関の紹介、カウンセリング、一時保護、裁判所等への同行支援など(支援内容は団体によって様々です) | インターネット検索や自治体の広報などから情報入手できます |
弁護士 |
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DVの各相談窓口の特徴や費用
配偶者暴力相談支援センター
配偶者暴力相談支援センター(以下、「支援センター」といいます。)は、DV被害者の保護のための中心的役割を担っている公的機関です。
各都道府県には必ず一つ以上、市区町村でも独自に設置がされており、全国で313か所(2023年7月3日現在)あります。
施設の名称は、自治体等によって異なり、婦人相談所、女性センター、福祉事務所などの公的施設が支援センターとして機能しているところもあります。
支援センターでは、次のような支援等を行っています。
- ① 被害者に関する各般の問題についての相談対応又は相談機関等の紹介
- ② カウンセリング(心のケアなど)
- ③ 被害者やその同伴家族の緊急時における安全確保・一時保護
- ④ 自立支援(就業・住宅確保・援護等に関する制度の利用等についての情報提供その他の援助)
- ⑤ 保護命令制度の利用についての情報提供その他の援助
- ⑥ 被害者を居住させ保護する施設(シェルターなど)の利用についての情報提供その他の援助
一時保護については、婦人相談所が自ら行うか、婦人相談所から委託を受けた民間のシェルター等によって行われます。
利用料はかかりません。
相談受付時間や利用方法は施設により異なりますので、各センターにお問い合わせください。
予約制となっているところが多いので、まずは電話で連絡を取るとよいでしょう。
どの施設に相談すればよいのかわからない場合は、DV相談ナビ(#8008)に電話をすれば最寄りの支援センターに自動転送され、相談や相談機関の紹介などを受けることができます(通話料金はかかります)。
DV相談プラス
DV相談プラスは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うDV被害の増加・深刻化への懸念を背景に、2020年に政府によって設置された相談窓口です。
電話は24時間対応、メールは24時間受付、チャットでも相談可能で外国語にも対応しています。
必要な場合は、相談後に直接の面接や関係機関への同行支援、緊急保護などにつないでもらうことができます。
利用料はかかりません。
福祉事務所
福祉事務所は、生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法などに定める援護や措置の実施を担っている公的機関です。
住む場所、一緒に避難した子どもの保育所、生活資金のことなど、これからの生活についての相談窓口となります。
利用料はかかりません。
相談受付時間や利用方法は施設により異なりますので、各事務所にお問い合わせください。
女性センター
女性センターは、都道府県や市区町村等が自主的に設置している女性のための総合施設で、女性の困りごとについて様々な相談をすることができます。
支援センターに指定されている施設や、DV相談の専門窓口を置いている施設もあります。
名称は、「男女共同参画センター」「男女平等推進センター」など、施設によって異なります。
利用料はかかりません。
相談受付時間、利用方法等は施設により異なりますので、各施設にお問い合わせください。
警察
最寄りの警察本部や警察署の生活安全課に直接出向くか、相談専用電話(#9110)でDV相談をすることができます。
以前は、警察は家庭問題への介入に消極的な傾向にありました。
しかし、現在は、法律(DV防止法)でもDV防止や被害者の保護に関する警察の責務が明文化されており、積極的に対応する方針も打ち出されています。
警察は、暴力の防止、被害者の保護、被害発生防止のために必要な措置・援助を行っています。
相談することで、必要に応じて加害者の検挙、加害者への指導警告、パトロールの強化、避難の援助などを受けることができるようになります。
なお、身に危険が差し迫っている場合など、緊急対応が必要なときは、ためらわずに110番通報するようにしてください。
民間の相談窓口
DV被害者を支援している民間の団体も全国各地にあります。
支援内容は団体により異なりますが、相談やカウンセリング、一時保護、同行支援(裁判所などにいく際に付き添ってくれる)などのサポートを受けることができます。
被害回復(心のケアなど)のためのプログラムや、講演会などを実施している団体もあります。
利用料は団体によって異なります。
多くの団体がボランティアや寄付によって運営されており、相談は無料というところもありますが、シェルター利用などには通常1泊500円〜2000円程度の料金がかかります。
民間の相談窓口に関する情報は、インターネットや地域の広報、支援センターなどから得ることができます。
DVに強い弁護士
弁護士には、法律相談をしたり、交渉や裁判手続きの対応などを依頼することができます。
法律相談では、弁護士が事情を聴いて、その場でアドバイスをしたり、見通しを立てたり、方針を説明したりします。
ひとまず自分の現状や、とりうる解決手段を知りたいという場合は、まずは法律相談をしてみるとよいでしょう。
弁護士に依頼する場合は、具体的には次のようなサポートを受けることができます。
①別居のサポート
別居日や別居時に持ち出す荷物、注意すべき点などについて、弁護士と打ち合わせを行います。
必要に応じて、一時保護や保護命令の申立て、住民票の閲覧制限の申出など、安全確保や加害者からの追跡防止策等に関してもアドバイスをもらうことができます。
また、別居を実行するときは、それに合わせて、弁護士から加害者に対して文書を送付し、今後の連絡は全て弁護士宛とし、被害者本人には直接接触しないことなどを申し入れます。
その後は、弁護士が加害者との窓口となるので、被害者の方が加害者と直接話をしたり、顔を合わせたりする必要はなくなります。
②別居後のサポート
別居後、離婚が成立するまでの間、相手に対して婚姻費用(生活費のことです)の支払いを請求することができる場合があります。
その場合は、弁護士から相手に対して婚姻費用を請求し、早期に、適正額を受け取れるようにします。
また、子どもがいる場合は、別居後、子どもの引き渡しや監護者(子どもの面倒をみる人)指定を求める手続きが必要になるケースもあります。
例えば、子どもと一緒に避難したものの、その後に加害者が子どもを勝手に自宅に連れ帰ってしまったような場合です。
このような場合、速やかに裁判所に子の監護者指定・子の引渡しの審判と保全の手続きを申し立てます。
③保護命令
保護命令とは、DV加害者からの暴力を防ぐため、被害者の申立てにより、裁判所が加害者に対し、被害者に接近してはならないことなどを命令するものです。
暴力が悪質で今後も継続する恐れがある場合、弁護士が代理人として保護命令を申立て、被害者の身の安全を確保します。
④離婚の手続き
弁護士には、離婚に至るまでの手続きを全般的に依頼することができます。
通常、まずは、弁護士が代理人として、協議離婚に向けて加害者と直接交渉をします(これを「代理交渉」と呼んでいます。)。
協議離婚とは、当事者同士が話し合い、離婚することや、離婚条件(親権、養育費、財産分与、慰謝料など)について合意をし、離婚届を提出することにより離婚する方法です。
DV加害者が相手の場合は、スムーズに離婚することができないケースも多いですが、弁護士が間に入って交渉することで、話し合いで早期解決できるようになるケースもあります。
相手が話し合いを拒否する場合や、話し合いがまとまらない場合には、裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申立てることになります。
離婚調停とは、裁判所で、調停委員会を仲介にして離婚について話し合い、合意による解決を目指す手続きです。
調停は、原則、当事者本人の裁判所への出頭が必要になりますが、手続内で加害者と顔を合わせる必要はありませんし、弁護士が同席してサポートします。
また、弁護士から裁判所に対し、裁判所で加害者と被害者が鉢合わせることのないよう、集合・解散時間をずらすなどの配慮を申し入れることもできます。
調停でも解決できない場合は、離婚裁判(離婚訴訟)を提起することになります。
裁判になった場合は、基本的には弁護士のみが裁判所に出頭して対応します。
当事者本人の出頭が必要になる手続き(尋問など)を実施する場合もありますが、その際には、弁護士から裁判所に対し、被害者が加害者と顔を合わせることを避ける措置(遮へいやビデオリンク方式など)をとるよう申し入れることもできます。
DVの各相談窓口のメリットとデメリット
配偶者暴力相談支援センター
【メリット】
無料で様々な支援が受けられるという点がメリットです。
相談だけでなく、カウンセリングや、一時保護、自立のための支援も無料で受けることができます。
また、設置件数が多く、全国どこからでも比較的アクセスしやすいこともメリットといえるでしょう。
【デメリット】
自治体(施設)や相談員によって対応にばらつきがあるようで、全ての相談員が寄り添って懇切丁寧に対応してくれるとは限りません。
これは、女性センターや福祉事務所など、他の公的機関にも共通するデメリットでもあります。
DV相談プラス
【メリット】
24時間受付の電話やメール・チャットで、気軽に相談できるという点がメリットといえるでしょう。
相談できる時間が限られていたり、施設に出向いての相談を躊躇してしまう場合であっても、DV相談プラスであれば利用しやすいと思われます。
【デメリット】
相談件数と人員の関係で電話がすぐにつながらなかったり、メールの返信が数日後になることもあるようです。
また、込み入った事情がある場合は、メールやチャットなどの文面ではやり取りしづらく、状況がうまく伝わらず、的確なアドバイスを受けられない場合もあるかもしれません。
警察
【メリット】
身に危険が差し迫っている場合に緊急出動してくれる点や、安全確保(被害の防止)のために動いてくれるという点がメリットといえるでしょう。
【デメリット】
緊急性や危険性が客観的には低いと判断されるような場合(例えば、「無視をする」といった形態でモラハラをされている場合など)は、警察にすぐに直接動いてもらうことは難しいでしょう。
また、加害者の中には、警察が関与すると、警察に相談した被害者を逆恨みして報復してくる人もいるため、相談の前後を通じ、安全確保には十分に気を配る必要があるでしょう。
民間の支援団体
【メリット】
公的機関よりも、柔軟に、きめ細やかな対応をしてくれる団体が多いです。
元被害者の方がサポーターとして活動している団体もあり、寄り添ってくれる安心感を得られることもあるでしょう。
また、民間のシェルターは、公的シェルターよりも入所できる期間が長かったり、ペットと一緒に入れるところもあったりと、制限が緩やかなところも多いです。
【デメリット】
団体によって支援内容は様々であり、必ずしも相談先の団体が自分の思うような支援をしてくれるとは限りません。
また、基本的には利用料がかかります。
DVに強い弁護士
【メリット】
法律相談では、状況を整理してもらった上で、解決までの道筋や、見通しを教えてもらうことができます。
それにより、漠然とした不安や、「DVから逃れられない」といった思い込みを解消することができ、解決に向けて具体的に行動できるようになっていきます。
依頼者の代理人として加害者と直接交渉をすることができる専門家は、弁護士だけです。
弁護士に依頼した後は、弁護士が加害者との窓口となるため、依頼者が加害者と直接接触する必要はなくなります。
そのため、安全を確保しながら離婚協議等を進めることができます。
また、加害者と直接やり取りしなくて済むので肉体的・精神的な負担を大幅に軽減することができます。
弁護士は、保護命令の申立て、離婚調停・訴訟などの法的手続きも代理人として行うことができます。
法的な手続きを弁護士に任せれば、書類の作成・提出や裁判所とのやり取りなどの負担を大幅に軽減できるうえ、「法律知識がなくて損をしてしまった」という事態も回避することができます。
【デメリット】
弁護士に相談等をするには、弁護士費用がかかります。
弁護士費用は、依頼する弁護士(法律事務所)や依頼内容、得られた結果などにより異なります。
そのため、一概に言うことはできませんが、離婚のサポートを依頼する場合、最低でも40万円くらいはかかると考えた方がよいでしょう。
詳しくは、依頼を検討している事務所のホームページや、相談時に見積もりを出してもらって確認するようにしてください。
なお、DV問題に注力している法律事務所の中には無料相談を行っている事務所もあります。
また、各弁護士会の法律相談センターや法テラスでの法律相談は、条件によっては無料で受けられることがあります。
また、法テラスでは、経済的に余裕のない方に対して弁護士費用を立て替える業務も行っており(民事法律扶助制度)、これを利用すれば手元にまとまったお金がなくても、弁護士に依頼することができます。
ただし、この制度を利用する場合は、依頼できる弁護士の範囲が限られるため、DV問題に強く、依頼したいと思える弁護士を探し出すのが難しくなることもあります。
メリット | デメリット | |
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配偶者暴力相談支援センター |
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DV相談+ |
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警察 |
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民間の支援団体 |
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弁護士 |
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DVの相談で迷ったら弁護士に相談
どこに相談したらよいかわからないという場合は、DV問題に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。
DV問題に強い弁護士であれば、具体的な状況を聞きした上で、どこに相談すべきかも助言することができます。
また、弁護士は、加害者との交渉や、保護命令の申立て、婚姻費用の請求、離婚などの法的手続きまで、幅広くサポートすることができます。
離婚は具体的には考えていないという場合であっても、問題ありません。
DV被害に悩まれている場合や、配偶者等の言動に疑問を抱いている場合は、まずはご相談ください。
DV相談についてのQ&A
DVを相談したらどうなる?
相談窓口により役割や支援内容は異なりますが、いずれの窓口に相談した場合であっても、相談をきっかけに、DVからの脱出へのスタートをきることができるようになります。
別居中の夫や別れた夫からの暴力に関する相談も可能ですか?
別居中の夫や別れた夫からの暴力もDVであり、各窓口で相談を受け付けています。
別居後や離婚後は、状況によっては、加害者が被害者に報復しようとしたり、連れ戻そうとしたりして、危険度が高まるときでもあります。
そのような実情を踏まえ、各相談機関では別居中や離婚後のDVについても様々なサポートをしています。
少しでも不安を感じる場合は、ためらわずに相談するようにしてください。
別居中や離婚後は、保護命令の申立て、婚姻費用の請求や離婚の手続き、養育費の請求など、法的なサポートが必要になる場面も多いため、弁護士への相談もおすすめいたします。
DVから逃れるためにどのようなことができますか?
具体的には、次のようなことです。
別居の準備をする
(安全な避難場所の確保、現金・キャッシュカード・保険証など持ち出すべき荷物の準備(いつでも持ち出せるようまとめておく))
離婚を見据えて、DVの証拠を集めておく
(ケガの写真、診断書、暴言の録音など)
別居後(避難後)に加害者から追跡を受けないよう注意する
(弁護士に依頼して窓口になってもらう、保護命令を申し立てる、警察に行方不明届の不受理を要請する、住民票の閲覧制限を要請するなど)
離婚の手続きを進める
(協議が難しい場合は、調停を申し立てる)
自立した生活のためにできることをする
(就職や公的扶助の申請など)
被害を受ける中で、一人で計画立てて準備や実行するというのは非常に難しいことです。
そのため、まずは相談窓口に相談し、助言や必要なサポートを受けるようにしてください。
まとめ
以上、DVの相談窓口の紹介と、各窓口の特徴、費用、メリット・デメリットについて解説をしましたがいかがだったでしょうか。
大まかに、総合的な支援は支援センター、身の危険を感じる場合は警察、離婚など法的手続きは弁護士に相談するとスムーズということを押さえておくとよいと思います。
ただ、窓口の使い分けを意識するよりも、あなたが相談しやすいと思う窓口に、まずは相談をするということが何より大切です。
どこに相談してよいかわからない場合は、DV問題に強い弁護士に相談されるとよいでしょう。
弁護士であれば、丁寧にお話をお聞きした上で、具体的な状況をもとに、どこに相談するべきか助言することもできます。
当事務所には、DV問題に注力する弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、DV問題にお困りの方を強力にサポートしています。
LINEなどによるオンライン相談も実施しており、全国対応が可能です。
お気軽にご相談ください。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?