セックスレスの離婚率とは?対処法も解説
セックスレスの離婚率とは、セックスレスを理由に離婚する夫婦の割合のことで、おおよそ7%と推測できます。
セックスレスを理由に離婚するケースは、決して珍しいものではありません。
しかし、セックスレスは非常にセンシティブで表に出しにくい問題でもあります。
そのため、セックスレスと離婚の問題に直面している方は、
「セックスレスは離婚の理由になる?」
「セックスレスだと離婚は避けられない?」
など疑問や不安を感じていることも多いと思います。
そこでこの記事では、セックスレスの離婚率やセックスレスと離婚の関係などについて解説していきます。
セックスレスで離婚を決断した場合の対処法にも触れますので、ぜひ参考になさってください。
目次
セックスレスの離婚率とは?
セックスレスの離婚率とは、ここでは、「離婚する夫婦のうち、セックスレスを理由に離婚する夫婦が占める割合」を指すものとします。
すなわち、“セックスレスを理由に離婚をする夫婦はどのくらいいるのか”を示すものです。
この意味でのセックスレスの離婚率は、あくまでも参考値となりますが、7%くらいと推測することができます。
参考になるデータについては、次の項で紹介いたします。
「セックスレスの離婚率」は、上記の他にも”セックスレスの夫婦が離婚に至る確率はどのくらいか”を示すものとして用いられる場合もあるでしょう。
そして、この確率にこそ関心があるという方も多いと思われます。
もっとも、セックスレスで離婚に至るか・至らないかについては、個別具体的な事情によるところが大きいです。
そのため、この点に関しては、具体的な数値の分析ではなく、離婚に至りやすい(離婚の回避が難しい)のはどのような場合かという視点から解説を加えたいと思います。
詳しくは、「セックスレスによる離婚を回避できない?」の項をご参照ください。
セックスレスと離婚率に関するデータ
裁判所のデータによると、2023年度に申し立てられた離婚調停のうち、申立人が「性的不調和」を申立ての動機の一つとして挙げた件数は、全体の約7%とのことです。
詳細は以下の通りです。
申立人 | 離婚調停の申立件数 | 性的不調和が申立ての動機として挙げられた件数(※) |
---|---|---|
全体 | 56,844件 | 4,234件(約7%) |
夫 | 15,192件 | 1,592件(約10%) |
妻 | 41,652件 | 2,642件(約6%) |
※申立ての動機は、3つまで挙げる方法で調査重複集計されています。
引用:司法統計|2023年
約7%というと、「少ない」と感じる方も多いかもしれません。
しかし、「珍しい」というほどでもないと思います。
ちなみに、申立ての動機として「異性関係」(浮気など)が挙げられた件数は全体の約12%(7,179件)、「暴力を振るう」(DVなど)は全体の約15%(9,031件)です。
浮気やDVは「離婚の理由の典型」というイメージを持たれている方も多いと思いますが、これらの数値と比較しても、性的不調和の約7%が「特段低い」とまでは言えないでしょう。
当事務所の調査結果に見るセックスレスの離婚率ついて
上記は、離婚調停のみのデータであり、裁判所を利用せずに離婚する場合(協議離婚)や、裁判官に離婚判決をもらって離婚する場合(裁判離婚)は含まれていません。
しかし、当事務所に離婚相談に訪れた方の統計データにおいても、離婚を考えている理由で「性的不調和」を上げた方は、女性が7.3%、男性が7.5%となっています。
順位 | 離婚理由 | 総数に対する割合 |
---|---|---|
1位 | 性格の不一致 | 31.6% |
2位 | 精神的虐待 | 26.1% |
3位 | 異性関係(相手) | 15.8% |
4位 | 暴力 | 10.6% |
5位 | その他 | 10.5% |
6位 | 生活費を渡さない | 9.9% |
7位 | 浪費 | 8.3% |
8位 | 性的不調和 | 7.3% |
9位 | 借金 | 6.0% |
10位 | 両親との不和 | 5.8% |
11位 | 異性関係(自分) | 3.6% |
病気 | 3.6% | |
13位 | 同居しない | 2.1% |
14位 | 異性関係(自分か相手か未記入) | 1.0% |
順位 | 離婚理由 | 総数に対する割合 |
---|---|---|
1位 | 性格の不一致 | 31.6% |
2位 | 精神的虐待 | 26.1% |
3位 | 異性関係(相手) | 15.8% |
4位 | 暴力 | 10.6% |
5位 | その他 | 10.5% |
6位 | 生活費を渡さない | 9.9% |
7位 | 浪費 | 8.3% |
8位 | 性的不調和 | 7.3% |
9位 | 借金 | 6.0% |
10位 | 両親との不和 | 5.8% |
11位 | 異性関係(自分) | 3.6% |
病気 | 3.6% | |
13位 | 同居しない | 2.1% |
14位 | 異性関係(自分か相手か未記入) | 1.0% |
この統計データは、当事務所のすべての離婚相談を対象としています。
当事務所の調査結果を踏まえると「セックスレスの離婚率 = 7%程度」と見積もって良いと思われます。
セックスレスで離婚する理由
セックスレスで離婚する理由としては、次のようなものが考えられます。
浮気(不倫)を引き起こす
夫婦の一方がセックスレスであること(配偶者と性交渉ができないこと)に不満や不安を抱いている場合、不満等を抱いている側が浮気に走ってしまうことがあります。
浮気は配偶者の信頼を裏切るものであり、夫婦関係を悪化させる原因となり得ます。
たとえセックスレスであっても、それだけで浮気が正当化されることは通常ありません。
また、浮気が肉体関係(性交又は性交類似行為)を伴うものである場合は、離婚原因(法律上離婚が認められる場合)の一つである不貞行為(「配偶者に不貞な行為があったとき」)にも該当します(民法770条1項1号)。
引用:民法|e−GOV法令検索
そのため、浮気をされた側が離婚を求めた場合は、裁判でも離婚が認められる可能性が高いです。
夫婦間の精神的な結びつきが薄れる
セックスレス(夫婦間での性交渉の欠如)は、夫婦間の精神的な結びつきを薄れさせる原因になる可能性があります。
夫婦間での性交渉は、単に性欲を満たすというよりも、肉体的な結びつきを通じて「愛されているという実感」や「精神的なつながり」が得られることに大きな意義があると考えられるためです。
セックスレスで夫婦間の精神的な結びつきが薄れると、次第に夫婦として一緒に生活することも難しくなり、離婚に至る場合もあります。
相手への不信感や不満が蓄積される
相手に一方的に性交渉を拒否され続けると、「相手に拒絶されている」、「異性として見てもらえない」などと思うようになり、相手に対する不信感や不満がつのります。
それが原因で夫婦関係が冷え切ってしまい、離婚に至る場合もあるでしょう。
セックスレスによる離婚を回避できない?
セックスレスによって離婚に至るかどうかは、あくまでもケース・バイ・ケースです。
たしかに、夫婦間での性交渉は、一般的には結婚生活において重要なものと考えられています。
そのため、セックスレスは離婚の原因となり得ます。
しかし、セックスレスの背景事情や夫婦関係に及ぼす影響等は様々です。
そのため、セックスレスが必ず離婚につながるわけでもありません。
これを踏まえ、以下では
- 離婚を回避するのが難しいケース
- 離婚を回避する余地があるケース
- セックスレスでも離婚の問題が生じにくいケース
について、一般的な傾向を解説していきたいと思います。
離婚を回避するのが難しいケース
夫婦関係が破綻して修復不可能な状態になっているケース
セックスレスであるだけでなく、それによって夫婦関係が破綻し、修復不可能な状態になっている場合は、離婚を回避するのは一般的に難しいです。
例えば、次のような場合です。
- (例1)夫が理由もなく一方的に性交渉を拒否し続けた結果、妻が夫に対して強い不安や不信感を抱くようになり、夫と夫婦として暮らす意欲も完全に失ってしまった場合
- (例2)妻がセックスレスに悩み、夫との暮らしに耐えかねて別居し、別居状態が長期間続いて同居再開の見込みもない場合
上記のようなケースでは、離婚原因の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にも該当する可能性があります(民法770条1項5号)。
引用:民法|e−GOV法令検索
そのため、上記のようなケースでは、夫婦の一方(セックスレスに悩んでいる側)が離婚を求めた場合、裁判でも離婚が認められる可能性があります。
セックスレス以外にも離婚の原因があるケース
セックスレス以外にも、浮気(不貞行為)、暴力、モラハラなど、夫婦関係を破綻させる要因がある場合は、一般的には離婚の回避は難しいと考えられます。
特に、セックスレスの原因となっている側が、浮気をしていたり、暴力やモラハラも行っている場合は、他方(被害者側)が結婚生活の継続を望んでいる場合を除き、夫婦関係の修復は非常に難しいでしょう。
また、上記のようなケースでは、離婚原因の「配偶者に不貞な行為があったとき」もしくは「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にも該当する可能性があります(民法770条1項1号、5号)。
引用:民法|e−GOV法令検索
そのため、被害者側が離婚を求めた場合は、裁判でも離婚が認められる可能性があります。
離婚を回避する余地があるケース
セックスレス解消の余地がある場合
夫婦関係の悪化の原因がもっぱらセックスレスにある場合は、セックスレスを解消できれば、離婚を避けられる可能性があります。
とはいえ、セックスレスの解消は簡単でないことが多いです。
しかし、生活リズムのズレや気持ちのすれ違いなどがセックスレスの原因となっている場合は、夫婦で話し合ったり、カウンセリングを受けたりすることにより、解消できる余地はあるでしょう。
性交渉以外の手段で精神的つながりを維持できる場合
セックスレスを解消することができなくても、性交渉以外の手段によって精神的なつながりを深め、夫婦関係を維持することができれば、離婚は回避できるでしょう。
性交渉以外の手段としては、例えば、言葉によるコミュニケーションやスキンシップを増やすことなどが考えられます。
セックスレスの原因となっている側が、セックスレスに悩んでいる側に対し、上記のような手段によって十分なケアを行うことができるかどうかがポイントとなります。
セックスレスでも離婚の問題が生じにくいケース
セックスレスであっても、夫婦がお互いに性交渉をしないことに納得しており、円満な夫婦関係を維持しているのであれば離婚の問題は生じにくいです。
このような場合は、仮に夫婦の一方が裁判で離婚を求めたとしても、少なくともセックスレスだけを理由に離婚が認められることはまずないといってよいでしょう。
セックスレスが理由で離婚を決断した場合のポイント
①離婚に強い弁護士に相談する
セックスレスで離婚をお考えの場合は、まずは離婚問題に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士に相談することで、
- 離婚できるのか
- どのように手続きを進めていけばよいのか
- 慰謝料は請求できるのか
- 離婚すると夫婦の財産はどうなるのか
- 子供の親権や養育費はどうなるのか
などについて、具体的な助言を受けることができます。
それによって、漠然とした不安が解消され、離婚の準備に向けて具体的な行動をとることができるようになるでしょう。
②弁護士による代理交渉を活用する
セックスレスが問題になるケースでは、感情面での対立が生じやすく、争いが複雑化・長期化してしまうことも多いです。
また、セックスレスは非常にプライベートかつセンシティブな問題ですから、手続きにかかる精神的な負担も大きくなりがちです。
そのため、離婚に向けて進めていく際には、弁護士を間に入れ、代理交渉(弁護士が代理人として直接相手と交渉すること)による解決を図ることをおすすめします。
専門家である弁護士が間に入ることで、話し合いをスムーズに進めることができるようになるケースは多いです。
そのため、早期解決につながる可能性があります。
また、弁護士が間に入ることで、慰謝料、財産分与、養育費などの離婚条件の取り決めや、離婚協議書の作成などに関しても適切に対応することができるようになります。
そのため、不利な条件を押し付けられてしまったり、離婚後にトラブルが生じたりすることも防止することができます。
さらに、自分で相手と直接交渉しなくて済むため、精神的な負担を大幅に減らすこともできます。
セックスレスと離婚率についてのQ&A
セックスレスで離婚するとき慰謝料をもらえる?

セックスレスで離婚する際に慰謝料を請求できるのは、セックスレスによる夫婦関係の破綻の要因が相手側にある場合に限られます。
例えば、次のような場合であれば、慰謝料を請求できる可能性があります。
- 相手が理由もなく一方的に性交渉を拒否し続け、かつ、それによる夫婦関係の悪化を防ぐ努力を全くしていなかった場合
- 相手が浮気もしていた場合
- 相手が暴力やモラハラも行っていた場合
一方、次のような場合は、慰謝料の請求は難しいです。
- お互いに性交渉がないことについて納得していた場合
- 自分から積極的に誘うことがなかった場合
- 病気などが原因で性交渉ができなかった場合
もっとも、具体的な見通しを立てたり、適切な請求方法・請求金額を判断したりするのは、専門家でないと難しいと思われます。
そのため、詳しくは離婚問題に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
まとめ
以上、セックスレスの離婚率やセックスレスと離婚の関係について解説しましたが、いかがだったでしょうか。
セックスレスの離婚率は、おおよそ7%と推測されます。
セックスレスを理由に離婚するケースは、決して珍しいものではありません。
もっとも、セックスレスの背景事情などは夫婦によって様々です。
セックスレスで離婚できるかどうかや、どのように離婚に向けて進めていくべきかは、個別の事情に基づいて判断する必要があります。
そのため、セックスレスと離婚の問題にお悩みの場合は、離婚問題に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所には、離婚問題に精通した弁護士のみで構成された専門チームがあり、離婚問題に悩む方々を強力にサポートしています。
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