婚姻費用は調停・審判どちらがいい?
調停、審判ともメリットやデメリットがあります。
基本的にはまずは調停での合意形成を目指し、合意が整わないようであれば審判という流れになります。
婚姻費用の調停・審判
今回のコラムでは、婚姻費用の調停・審判の話をとりあげます。
婚姻費用というのは、簡潔に言えば、別居期間中の生活費のことです。
婚姻費用の支払いがない場合、権利者(多くは妻です)は、義務者(多くは夫です)に対して、家庭裁判所において調停を申立てることになります。
調停というのは、交渉の場を家庭裁判所に移した話し合いというイメージですから、合意が整わないこともあります。
その場合は、家庭裁判所の裁判官が強制的に定めることになります。
これを婚姻費用の審判といいます。
なお、法律では、調停と審判の関係について、まずは調停を申立てなければならないようになっています。
いきなり審判を申し立てても、よほどの事情がないと、調停手続きに回されるようになっています(調停前置主義といいます。)。
では、婚姻費用を争っている場合、調停で合意するのが良いか、審判をもらうのが良いか、どちらが良いのでしょうか。
結論があるところではないので、今回は、コラムという形で私見を交えて解説してみたいと思います。
調停で合意するメリット
婚姻費用を調停で合意するメリットは多々あります。
例えば、審判と比較すると、調停は合意を基礎とするものですから、任意での支払いが期待できる点でメリットがあります。
また、審判というのは、裁判官が強制的に決めるものですから、一種の不気味さがあるような印象を受けます。
当事者双方は、自己に有利な婚姻費用の額になるようにいろいろな主張を行いますが、その主張が採用されるかは蓋をあけてみなければわかりません。
時として、「こんなはずでは…」という結果になってしまうこともあるのが審判の怖さです。
したがって、極力「こんなはずでは」を避けるべく、多少は譲歩した額で合意することにメリットを感じる相手方当事者(及び弁護士)も少なくありません。
その結果、審判になるよりも自己に有利な額で調停にて合意できる可能性は十分にあります。
このように、婚姻費用を調停で合意するメリットは小さくありません。
調停で合意するデメリット
では、婚姻費用を調停で合意することにデメリットはないのでしょうか?
結論からいえば、婚姻費用を調停で合意してしまうと、事情変更に基づく婚姻費用の増減額請求が認められにくくなるというデメリットはあります。
裁判例においても
「調停において合意した婚姻費用の分担額について、その変更を求めるには、それが当事者の自由な意思に基づいてされた合意であることからすると、合意当時予測できなかった重大な事情変更が生じた場合など、分担額の変更をやむを得ないものとする事情の変更が必要である。」
旨を判示した例があります(大阪高決平22.3.3)。
したがって、将来における事情変更による増減額を見据えるのであれば、調停で婚姻費用の額を合意するのは少し慎重になった方が良いかもしれません。
もっとも、私個人としては、上記のデメリットを踏まえたとしても、調停で合意した方が良いように感じています。
感情的な対立が弱くても済むため、その後の手続(例えば離婚調停等)がスムーズにいくことが多いためです。
婚姻費用の調停中の方は、参考にされてみてください。
まとめ
以上を簡単にまとめると下表のとおりとなります。
■ 調停(話し合いによる解決) | |
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メリット | デメリット |
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■ 審判(裁判所の命令) | |
メリット | デメリット |
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婚姻費用は、もらう側にとっても、支払う側にとっても、将来的に及ぼす影響が大きいと予想されるため、婚姻費用についてお悩みの方は、専門の弁護士にご相談されることお勧めいたします。
この記事が婚姻費用の問題に直面されている方にとって、お役に立てば幸いです。
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