世界と比較する日本の離婚

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


弁護士本村安宏去年(平成29年)は、不倫報道や離婚報道がよく取り上げられていました。

今回は、世界の国々と比較した日本の離婚についてみていこうと思います。

 

世界と比較した日本の離婚率

夫婦厚生労働省は、2017年における日本の離婚の割合(千分率、つまり人口1000人あたり何人が離婚しているか)は、約1.7人と発表しました。

この数字だけを見ると、意外に少ないのでは?という印象を受けるのではないでしょうか。

離婚率自体は減少傾向にありますが、婚姻率や人口そのものも減少しているので、一概にはなんとも言えません。

では、世界で離婚率がトップの国はどこでしょうか。

なんとトップはロシアです。

ロシア国旗ロシアでは人口千人当たりの離婚数の割合が約4.6人となっており、日本の2倍以上の人が離婚していることになります。

ロシアは、ソ連時代の離婚率は低かったようですが、ソ連崩壊後に離婚率が上昇し、今なお高い割合を維持しているようです。

次に多いのはアメリカです。

アメリカ国旗アメリカの場合は人口千人当たり約3.2人が離婚しており世界2位となっています。

なお、アメリカの場合は州ごとに離婚率が異なるため、場所によって離婚に対するイメージも異なるものと考えられます。

その他、主な先進国の離婚割合は以下のとおりです。

ロシア 4.6
アメリカ 3.1
韓国 2.1
ドイツ 2.05
イギリス 2.05
フランス 1.91
日本 1.7
イタリア 0.86

※出典:厚生労働省「平成29年(2017)人口動態統計の年間推計」。他国の割合は統計年度が若干異なります。
ロシアについては、「Divorces and percentage distribution by duration of marriage, latest available year: 2007 – 2016」をもとに算出しています。

日本こう見てみると、日本は、先進国中では下位の方にランク付けされ、比較的離婚割合は少ないことがわかります。

また、イタリアが圧倒的に離婚率が低いことに驚きです。韓国及びヨーロッパ諸国はあまり変わらない数値になっています。

離婚となるとテレビや雑誌で大きく報道されますが、日本の離婚の割合は世界に比べるとまだまだ低いというのが実情です。

 

 

日本における離婚までの婚姻期間

日本国旗国連は、夫婦が離婚に至るまで、どれくらいの期間婚姻関係にあったのかも調査しています。

日本の場合、5~9年間が20.8%と最も多く、4年間が5.5%と最も少なくなっています。

1年未満 6.1%
1年 7.2%
2年 6.8%
3年 6.1%
4年 5.5%
5~9年 20.8%
10~14年 13.8%
15~19年 10.8%
20年以上 17.1%
回答なし 6.1%

※出典:Divorces and percentage distribution by duration of marriage, latest available year: 2007 – 2016

家族「5~9年間」は4年間の合算の数字なので一概には言えませんが、そのあたりから割合も減少傾向にあるので、婚姻期間10年が、少し安心してもよい(=離婚の心配はないといえる)ひとつの目安なのかもしれません。

一方で、20年以上同居していた方の離婚割合も多く、年代としては40代~50代といった層が該当するでしょう。

お子さんがいればすでに成人しており、そのタイミングで婚姻関係を解消しようと考える方が多いのかもしれません。

成人

ちなみに、離婚大国ロシアも同様の結果となっており、5~9年間の同居期間を経て離婚をする人が24.7%に上ります。

一方、お隣の韓国では、20年以上同居していた方の離婚が30.4%と圧倒的に多くなっています。

いわゆる熟年離婚といわれる方が多くなっているのかもしれません。

 

 

離婚成立のための手続き

離婚届日本では、話し合いがうまくできれば、双方署名の上離婚届を提出すれば、離婚することができます。

ただ、この離婚制度は世界的にいえば珍しい方です。

離婚届と印鑑

海外では、必ず裁判手続きをしなければ、法的な離婚成立を認めてくれない国の方が圧倒的に多いです。

極端な例では、フィリピンでは、離婚そのものが制度上認められていません(もっとも、実質的に離婚と同様の手続自体はあります。ただし、日本の制度に比べるとはるかに離婚は難しいし、大変です。)。

 

 

日本における離婚理由

別居離婚理由として挙げられることの多くが、経済的理由、不貞、性格の不一致です。

法的な観点からは、不貞はそれだけで法律上の離婚原因(民法770条1項1号)となります。

経済的理由や性格の不一致については、それによってどのように婚姻関係が破綻したといえるのか考える必要があります(法律上は「婚姻を継続し難い重大な事由」といえるかが問題となります。)。

多くの場合、重要になるのは別居期間です。

カレンダー婚姻関係が破綻したと判断するにあたり、どれくらいの別居期間を要するかについてはケースバイケースです。

ただし、婚姻期間が短い場合は、必要となる別居期間も短く判断される傾向にあります。

また、別居期間が短かったとしても、「離婚が不可能」ということではありません。

協議を行い、条件面についてしっかりと話し合いをすれば、別居期間が短いとしても、離婚できる可能性はぐっと上がります。

 

 

離婚するということ

書類ここまで、他国との比較で日本の離婚の状況を見てきました。

もっとも、他国の状況がこうだからといって日本の制度がよい悪いといったことではありません。

どこの人であろうと、離婚するときは離婚します。

ただ、どうせ離婚するのであれば、納得のいく形で合意をすることが理想です。

弁護士本村安宏

日本ではまだまだ離婚そのものに対する後ろめたさがあると思いますが、我慢しすぎて自分がつぶれてしまう婚姻関係であれば、それを継続するメリットとは一体どこにあるのでしょうか。

他国を見ていると、離婚そのものに過度な後ろめたさを感じる必要はないのではないかと思います。

 

 

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