審判で決まったのに面会交流を拒否されたら?【弁護士が解説】
事例
Aさんは、数年前に離婚をし、妻であるBさんが8歳の息子の親権者となりました。
Aさんとしては、離婚後も息子との面会交流を続けたいと考えていましたが、離婚後しばらくするとBさんは面会交流の実施を拒否するようになりました。
そこで、Aさんは裁判所を通して息子との面会交流を求めたところ、審判において「Bさんは面会交流を許さなければならない。」という内容の決定を受けました。
しかしながら、Bさんは審判の後しばらくするとまた面会交流を拒否するようになりました。
このような場合、Aさんはどうすればよいのでしょうか?
Aさんが採ることのできる方法としては、①履行勧告、②再度の調停、審判の申立て、③強制執行、④損害賠償請求が考えられます。
面会交流とは
面会交流とは、離婚の際に、親権者とならず、子を監護・養育していない親が、子どもに面会したり、一緒に時間を過ごしたりして交流する権利のことです。
また、離婚前であっても、別居して生活している状況などでは、同様に面会交流をする権利があります。
面会交流については、特に問題がなければ、他の離婚条件と同時に合意して取り決めることがあります。
親権者(監護者)が面会交流をさせてくれない場合、家庭裁判所に面会交流の調停を申し立て、調停委員会の関与のもと、面会交流について話し合うことが可能です。
話し合いがまとまれば、面会交流の調停が成立します。
面会交流の注意点など詳しい情報はこちらのページをご覧ください。
面会交流の審判
家裁の調停でまとまれば問題はありませんが、まとまらない場合、調停は不成立となります。
このような場合、面会交流の調停は審判に移行します。
審判とは、話し合いではなく、当事者の主張をもとに、最終的に裁判所が決定するという手続きです。
例えば、「母親は父親に対し、毎月1回、子供との面会交流を実施しなければならない」というような命令が出ます。
この命令が出ると、当然、母親はそのとおり、実施しなければならない法的な義務が発生します。
それでも面会交流させてくれない場合
このような命令が出ているのに、面会交流をさせてくれない場合があります。
このような場合、どのように対応するかが問題となります。
①履行勧告について
審判や調停によって、監護親(Bさん)の面会交流をさせる義務が定められたにもかかわらず面会交流が実施されないという場合に、非監護親(Aさん)の申出により、家庭裁判所は、義務の履行状況を調査し、監護親に義務の履行勧告をすることができます。
この履行勧告には強制力はありませんが、家庭裁判所が介入することによって面会交流が再開されることも十分に考えられます。
なお、面会交流に関しては、履行命令の対象にはならないのでご注意ください。
②再度の調停、審判の申立て
調停や審判で面会交流について定めがなされた後でも、再度調停や審判を申し立てることが可能です。
本事案において、審判後しばらくしてBさんが面会交流を拒否するようになった理由が明らかではありません。
再度面会交流の調停や審判をすることで、Bさんが面会交流を拒否するようになった理由を明らかにでき、前にした調停や審判内容に縛られず現状に応じた内容での合意ができるというメリットがあります。
③強制執行
面会交流を命ずる審判や面会交流を行うことを合意した調停調書には執行力があり、相手方が任意に義務を履行しない場合には強制執行を行うことができます。
もっとも、面会交流をさせる義務については、もっぱら間接強制(民執172条)の可否が問題となります。
間接強制について、詳しくはこちらをご覧ください。
④損害賠償請求
監護親が定められた義務に違反して面会交流をさせない場合に、非監護親が監護親に対して損害賠償請求をすることが考えられます。
もっとも、損害賠償請求は事後的な手段に過ぎないため、間接強制ほどの実効性はないものと考えられます。
具体的にどのような手段を採るべきかについては、具体的事案に即した専門的な判断が必要になります。
面会交流の実現についてお困りの方は、一度専門家である弁護士にご相談されることをお勧め致します。
まとめ
以上、審判が言い渡されたにもかかわらず、相手が面会交流を拒否する場合の対応について、解説しましたがいかがだったでしょうか。
面会交流は、子供の未来に大きな影響を及ぼします。
そのため、親権者(監護者)が不当に面会交流を拒否している場合は、適切な法的措置を持って対応していくべきです。
しかし、法的対応としては、履行勧告、再度の調停、強制執行、損害賠償請求などの多様な方法があり、どの方法が最適かは具体的な状況をもとに判断しなければなりません。
このような対応については、離婚問題に精通した専門家でなければ、助言が難しいと思われます。
そこで、面会交流でお困りの方は、この問題に詳しい専門家にご相談されることをお勧めします。
当事務所には、離婚問題に注力する弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、面会交流についてのトラブルを強力にサポートしています。
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