離婚後に前夫と同居。児童扶養手当を受給できる?【弁護士が解説】
離婚後、何らかの理由で前夫と同居することになった場合、児童扶養手当が受給できるかどうか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。
前夫との同居がどのように影響するのかは、法律の解釈や具体的な状況によって異なります。
この記事では、前夫との同居が児童扶養手当に与える影響について、相談者の事例に沿って弁護士が詳しく解説します。
私は、夫との離婚を考えております。
離婚後、しばらくは、現在夫と同居している家で暮らそうと考えています。
もっとも、同家屋は、二世帯住宅となっていますので、夫との接触はほとんどありません。
子どもは、2人います。2人とも私が親権者となる予定です。
この場合にも、児童扶養手当を受給することができますでしょうか。
また、仮に、私の実家で、実父母と暮らす場合は児童扶養手当を受給することができますか。
ちなみに、私の現在の所得は月額約8万円です。
このご質問に対し、当事務所の離婚弁護士がご回答いたします。
結論としては、児童扶養手当を受給できない可能性があります。
母子手当(児童扶養手当)とは
児童扶養手当とは、父母の離婚・死亡などによって、父または母と生計を同じくしていない児童について、手当を支給する制度です。
具体的には、「父母が婚姻を解消した児童」のうち、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童(障害のある児童については20歳未満)を監護している母(父)又は母(父)に代わってその児童を養育している方に支給されます。
いわゆる母子手当は、この児童扶養手当のことです。
現在は、シングルファザー(父)であっても受給要件を満たせば受給できるので、正式には児童扶養手当という名称が使われています。
手当の月額は、以下のとおりです。
子供の数 | 全部受給できる場合 | 一部受給できる場合 |
---|---|---|
1人 | 45,500円 | 45,490円から10,740円 |
2人 | 56,250円 | 56,230円から16,120円 |
3人 | 67,000円 | 66,970円から21,500円 |
4人以降一人につき | 10,750円を加算 | 10,740円から5,380円を加算 |
※2024年11月1日現在
また、児童扶養手当を受給するためには、所得制限があります。
詳しくは以下をご覧ください。
離婚後に同居した場合
本件の場合、まず、前夫と同じ家(二世帯住宅になっている家屋)で暮らす場合の所得の限度額は「扶養親族等の数 2人」で、請求者本人の所得が「145万円」以下ですから、全額支給の限度額を満たします。
したがって、所得制限はクリアできると思われます。
しかし、児童扶養手当については、所得制限の他に、受給できない場合が規定されています。
具体的には、以下の場合です。
- 母(父)が婚姻の届出をしていなくても事実上の婚姻関係(内縁関係など)にあるとき
- 手当を受けようとする父(母)、又は養育者が、日本国内に住所を有しないとき
- 対象児童が日本国内に住所を有しないとき
- 対象児童が里親に委託されたり、児童福祉施設(母子生活支援施設・保育所・通園施設を除く)や少年院等に入所しているとき
本件では、前夫と同じ家屋に居住しているため、「事実上の婚姻関係」に該当すると判断される可能性があります。
したがって、受給要件を満たさない可能性があると考えられます。
なお、「事実上の婚姻関係」がないとして審査に通る可能性があるので、一度支給の申請を行ってみる必要はあります。
実家で生活する場合は同居家族の所得で制限される
実家で、実父母と暮らす場合、実父もしくは実母のうち、所得の高い者についての所得限度額が設定されています。
そのため、本件においても、仮にご実家で生活される場合は、最も所得の高い実父もしくは実母の所得が、一定額(本件では312万円)を超えると、手当の全部が支給停止となります。
なお、この場合の「所得」とは、総年収とはことなりますのでご注意ください。
所得制限については、以下のページをご覧ください。
まとめ
以上、離婚後、前夫と同居した場合の児童扶養手当の収入について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
児童扶養手当等の公的扶助は、離婚によって収入が激減した方にとっては、大きな収入源となるため、とても大切です。
しかし、前夫との同居は、児童扶養手当が受給できなくなる可能性もあるため、注意が必要です。
事実婚となるか否かの判断は難しいため、同居される方は、専門家の助言を得られると良いでしょう。
当事務所の家事事件チームに所属する弁護士は、皆ファイナンシャル・プランナーの資格をも取得しており、公的扶助に関する知識も豊富です。
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