養子縁組した子どもの養育費は離婚後誰に請求できる?
養子縁組した子どもの養育費について、養親と離婚した場合も、法的には養親との親族関係あるため、養育費を請求できなくなるわけではありません。
ただし、養子縁組を消滅(離縁)することが一般的ですので、その場合は、実父に対して養育費の請求を検討されてよいでしょう。
このページでは、養子縁組した子どもの養育費は離婚した場合どうなるのかについて、具体的な相談事例をもとに、解説します。
具体例
私は、以前に離婚をしており、前夫との間の子どもについては私が親権者となりました。
その後、現夫と再婚した時に、子どもについても養子縁組をしました。
そして、この度、現夫との離婚を考えています。
現夫と離婚した場合、現夫と養子縁組した子どもの養育費をどちらかに請求することはできますか。
養子縁組とは
養子縁組とは、血縁関係のない者の間に親子関係を成立させる法律行為です。
養子は、縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し(民法809条)、未成年者の養子は養親の親権に服します(民法818条2項)。
また、養子と養親の血族との間には、親族関係が生じます(民法727条)。
離縁について
離縁とは、養子縁組を消滅することをいいます。
離縁が成立した場合、養親子関係・養親族関係は終了し、法定嫡出子関係が終了し、養子と養親の血族との法定血族関係は消滅します(民法729条)。
また、離縁の方法としては、協議離縁、裁判離縁と死後離縁があります。
協議離縁
縁組当事者の協議と届出により行う離縁をいいます(民法811条1項)。
調停離縁
調停離縁とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して、話し合いによって離縁を行う手続きです。
離縁には後述の裁判離縁という方法もありますが、裁判を起こす前に、法律上、原則として調停離縁を申し立てなければならなくなっています。
これを調停前置主義といいます。
実務上は、離婚調停を申し立てた際に、合わせて離縁調停を申し立てることが多いと思われます。
裁判離縁
裁判所の判決によって、離縁が成立する場合をいいます(民法814条2項)。
協議離縁が成立しない場合、養子縁組を解消したい当事者としては、離縁原因を主張して裁判を提起する必要があります。
①他の一方からの悪意で遺棄されたとき、②他の一方の生死が3年以上明らかでないとき、③その他縁組を継続し難い重大な事由があるときが挙げられています。
「縁組を継続し難い重大な事由」の内容として、裁判例は、
「破たんに関する状況、破たんについての責任に関する事由、右有責性を排斥する事由などが考えられ、右重大な事由はこれらを基礎付ける多様な事実により構成されるものである」と総合的・個別的判断によることを判示しています。
また、有責当事者からの離縁請求については、判例は少なくとも「有責当事者からの離縁請求は認められない」という立場を堅持していますが、下級審では一定の要件で離縁請求を認めたものもあります。
死後離縁
縁組当事者の一方が死亡した後に、生存当事者は、家庭裁判所の許可を得て、離縁することをいいます(民法811条6項)。
参考:民法|電子政府の窓口
離婚したら離縁しなければならないのか?
法律上、離婚と離縁はまったく別の制度として規定されています。
そのため、実親と養親が離婚したからといって、離縁することが論理必然というわけではありません。
ただ、離婚後も養子縁組をしたままということはあまり聞きません。
一般的には離婚と離縁はセットで行われます。
そして、現夫と離婚し、現夫と子どもの養子縁組が解消(離縁)した場合、第一次的扶養義務者である再婚相手がいなくなるため、前夫との関係では事情変更があったと考えられます。
したがって、前夫からの養育費は増額される可能性があります。
仮に、離婚と同時に養子縁組が解消されない場合、養親子関係は終了しないため、この場合、養親は依然として扶養義務を負うことになり、論理的には現夫に養育費の支払い義務が発生しえます。
慰謝料請求について
離婚の場合と同様、離縁に際しても、縁組当事者の一方は、有責な相手方に対し慰謝料請求できることについては争いがありません。
裁判例は、「離縁についても、縁組によって期待された合理的な親子関係が破綻したことによって精神的な苦痛を被った場合には、慰謝料請求権が発生する」と判断しています。
まとめ
以上、養子縁組の養育費の問題について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
養子縁組がなされると、法律上、子供に対する扶養義務は第一次的には実父ではなく、養親が負うことになります。
そのため、子供の母が養親と離婚する場合、法律上当然に養育費を請求できなくなるわけではありません。
しかし、通常の場合、離婚するのであれば、離縁することが多いと思われます。
したがって、このような場合は、実父(前夫)に対する養育費の請求を検討されてよいでしょう。
養育費は、もらう側にとっても、支払う側にとっても、将来的に及ぼす影響が大きいと予想されるため、養育費についてお悩みの方は、専門の弁護士にご相談されることお勧めいたします。
この記事が養育費の問題に直面されている方にとって、お役に立てば幸いです。
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