離婚を考えたときに準備すべき6つのこと|弁護士が徹底解説
離婚すると、これまでとは生活が大きく変わります。
しかし、「いったい何から準備すればよいのかわからない」という方がほとんどではないでしょうか。
ここでは、離婚問題について経験豊富な弁護士が離婚準備の重要性や離婚前に準備すべきことについて、わかりやすく解説いたします。
最後まで読んでいただくことで、離婚前に検討すべきことを整理できると思います。
離婚するのに準備は必要?
このページをご覧の方の中には、離婚する前に準備が必要なのか、疑問を感じている方もいらっしゃるかと思います。
また、何となく準備した方がいい、と感じていても、その必要性を正しく認識している方はとても少ないです。
結論から申し上げると、離婚の準備は極めて重要です。
当法律事務所の離婚専門チームは多くの離婚相談を受けており、離婚問題の問い合わせ件数は累計で1万件を超えております。
多くの離婚事案を解決する中で、常に実感していることは「準備をしていたケース」と「準備していなかったケース」では、結果に大きな差が生じているということです。
「準備をしていたケース」は依頼者が望む結果を得られる可能性が高くなります。
これに対して、「準備していなかったケース」は不本意な結果に終わる可能性が高くなります。
そのため、離婚を検討されている方は、できるだけ初期の段階(離婚を相手に切り出す前の早い段階)から離婚専門の弁護士へのご相談をお勧めしています。
離婚問題に精通した弁護士であれば、離婚というゴールに向けて、具体的に何をすればよいかを助言し、離婚準備に漏れがないようにサポートしてくれるでしょう。
離婚を考えたときに準備すべき6つのこと
離婚を考えたときは、以下の6つのポイントを検討してください。
①離婚できるか否かを検討する
日本では、夫婦がともに離婚に同意し、離婚届を役場に提出すれば、法律上離婚が成立します。
したがって、あなたと相手が離婚に同意すれば、離婚できるということになります。
他方で、もし、あなたか相手が「離婚したくない」と言ったらどうなるのでしょうか。
夫婦のいずれか一方が離婚に応じない場合、最終的には離婚訴訟を提起し、裁判所の判断を仰がなければなりません。
ここで、重要なのは「裁判所がどのような場合に離婚を認めるか」ということです。
裁判所が離婚を認めるのは以下の5つの場合に限定されています。
- ① 相手方に不貞行為があったとき
- ② 相手方から悪意で遺棄されたとき
- ③ 相手方の生死が3年以上明らかでないとき
- ④ 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な理由※があるとき
※「婚姻を継続し難い重大な理由」とは、長期間の別居、DVなどがあげられます。
裁判所が離婚を認める5つの場合についてくわしくはこちらをご覧ください。
ご自身のケースが上記の5つのどれかに当てはまるか否かをチェックしてみてください。
判断が難しい場合、離婚専門の弁護士に相談すると良いでしょう。
以上をまとめると、下図のようになります。
現在、相手が離婚(夫婦関係の解消)について一応了承していたとしても、後述する離婚条件によっては今後、離婚に応じないと言ってくる可能性があります。
例えば、夫婦双方とも離婚に異論はないが、親権について意見が一致しないケースです。
日本では親権者を父母のどちらかに決めなければ、離婚が認められていません。
また、養育費や面会交流などの条件面において、合意が得られないケースも、最終的には離婚が成立しない可能性が高いため注意が必要です。
②別居の準備をする
夫婦のいずれかが離婚することを決意している場合、正式に離婚が成立する前に、別居をするケースが多いです。
衣食住の場所が変わるため、様々な手続きが必要となります。
以下のチェックリストを参考になさってください。
下の二つを追加しています
項目 | 検討すべき場合 | 相談窓口・備考 |
---|---|---|
|
配偶者よりも収入が少ない場合、子連れで別居する場合など | 弁護士 詳しい解説はこちら |
|
別居する側である場合 | 不動産会社など |
|
別居する側で、現在と異なる市区町村へ引っ越しをするとき | 役場 |
|
別居する側で、同一市町村内へ引っ越しをするとき | 役場 |
|
引越し先へ郵便物を転送してもらいたいとき | 郵便局 詳しい解説はこちら |
|
働いている場合 | 職場 |
|
子どもが学校に通っている場合 | 学校 |
別居中の婚姻費用について
別居が始まると、離婚が成立するまでの間、収入が少ない方(通常は妻側が多い)は収入が多い方(通常は夫側が多い)に対し、生活費を請求できます。
この生活費のことを婚姻費用といいます。
婚姻費用の相場は、夫婦の収入や子どもの有無・数・年齢によって異なります。
婚姻費用は一度正式に合意すると、後々簡単には変更できません。
そのため、婚姻費用については適正額を調べておくことがとても重要です。
婚姻費用の適正額について、くわしくは下記のページで解説していますので参考になさってください。
③離婚したときの条件を確認する
離婚を考えたときに重要なことは「離婚したらどうなるのか」をイメージできることです。
ここでは、子どもがいない家庭と子どもがいる家庭に分けて、離婚したときの条件面について、解説します。
財産分与の金額を調べる
財産分与とは、夫婦が同居して築いてきた財産を離婚時に分ける制度のことを言います。
財産分与の割合は基本的には2分の1です。
例えば、夫名義の財産が500万円で、妻名義の財産が100万円とすると、それぞれ300万円ずつ取得することが可能となります。
( 500万円 + 300万円 )× 2分の1 = 300万円
妻名義の財産は100万円ですので、妻は夫に対して、残りの200万円を請求できます。
財産分与においては、①対象となる財産をもれなく調査すること、②財産を適切に調査すること、の2点がとても重要となります。
預貯金や不動産のほかにも、現金、株式その他有価証券、保険金、自動車、貴金属などが財産分与の対象となります。
また、退職金がある会社に勤めている場合、退職金の一部が財産分与の対象となる可能性があるため注意が必要です。
さらに、相手が資産を隠している場合や資産を開示しない場合、財産調査が難航する傾向です。
なお、結婚前から持っている財産や結婚後でも親から贈与を受けた財産については、特有財産と言って、財産分与の対象とならない可能性があるためこの点も注意しましょう。
不動産、非上場会社の株式や自動車等はその時価を適切に評価することが重要なポイントとなります。
不動産については、固定資産評価額ではなく、時価査定を行います。
非上場会社の株式は、株価が公開されていないため、会社の決算報告書をもとにその時価を適切にします。
財産分与を適切に行うためには専門知識と豊富な経験が必要となります。
そのため、財産分与については離婚問題に強い専門家のサポートを受けることをおすすめいたします。
慰謝料の金額を調べる
例えば、夫婦のいずれか一方が不倫をしたようなケースでは、慰謝料の支払いが問題となります。
裁判となったときの不倫慰謝料の相場については、200万円〜300万円程度と考えられます。
しかし、慰謝料の金額は、被害者への影響の度合い(結婚していた期間や子供の有無等)、不倫の悪質性(不貞行為の頻度や態様、期間等)などによって大きく異なります。
また、示談交渉の場合の不倫慰謝料の金額については、上記金額よりもさらに幅が広く、数十万円の場合もあれば、中には1000万円を超えるケースもあります。
したがって、慰謝料の適正額については、離婚問題に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。
年金分割がどうなるかを調べる
年金分割とは、離婚する際、夫婦が加入していた厚生年金の保険料給付実績のうち、報酬比例部分(基礎年金部分は対象外とされています)について、多い方(多くは夫)から少ない方(多くは妻)へ分割する制度です。
年金分割は、基本的に50パーセントの分割が認められます。
結婚している期間が長くなると、年金分割は夫婦が将来受け取る年金額に大きな影響を与えるため、分割可能か否かについて、離婚問題に強い弁護士に相談しましょう。
子どもがいるご家庭の場合、上記に加えて、以下の点について検討しましょう。
親権をどうするか検討する
未成年子どもがいる場合、離婚に際して父母のいずれを親権者とするかを決めなければなりません。
この点について、父母間に争いがないのであれば問題ありませんが、両者とも譲らない場合は、裁判所がどのようにして親権者を決めるのかを押さえておくべきです。
子どもが小さいケースでは、多くの場合、母親が有利となります。
しかし、父親が親権者となるケースもあるため一概にはいえません。
裁判所は、親権について、下記の具体的事情をもとに判断していると考えられます。
親権の獲得方法について、くわしくは下記のページをご確認ください。
養育費の相場を調べる
父母のいずれが親権者として子どもを育てていくかを検討したら、次に、養育費の金額がいくらになるかを調べましょう。
養育費は、基本的には離婚後、子どもが20歳になるまで毎月支払われるもので、子供のための生活費です。
養育費の適正額は、父母の収入や子供の数・年齢をベースに判断されます。
また、養育費の終期(いつまで支払われるか)については、基本は20歳までですが、大学進学時に延長するケースもあります。
面会交流の頻度や方法を検討する
面会交流とは、離婚後、親権者とならない親が子どもと会うなどして交流することです。
多くは父親の権利となりますが、上で解説したように父親が親権者となるケースもあります。
この場合は母親の権利となります。
離婚問題を扱う中で様々な点が問題となりますが、とりわけ面会交流は対立が激しくなって争いになることもしばしばあります。
面会交流に関しては、頻度や面会交流の方法(面会交流の実施場所や子どもの受け渡しの方法など)などを検討します。
子どもが小さい場合は月に1回程度の頻度で合わせるケースが多いです。
子どもがある程度の年齢(小学校高学年程度)に達していると、特に回数の取り決めをせずに自由に合わせるケースも見受けられます。
もっとも、子どもの状況によっては特別なルールを設けることもあります。
面会交流は子どもの人格形成にも影響を与える重要な制度ですので、くわしくは離婚問題に強い弁護士に相談なさると良いでしょう。
④必要な証拠の収集をする
離婚事案では、上述した様々な離婚条件を決めていかなければなりません。
そのとき、相手から虚偽の主張をされると証明できずに適切な離婚給付を受けることができないケースが見受けられます。
例えば、相手に財産分与を求める場合、相手から当該財産の存在を否定されると、財産分与を受けることができなくなる可能性があります。
そのため、財産分与においては、夫婦の財産を漏れなく調査しておくことが重要となります。
下表は離婚条件ごとの典型的な証拠をまとめたものです。
ご参考にされてください。
離婚条件 | 証拠となり得るもの |
---|---|
親権 | 監護の実績の証明資料(母子手帳、育児日記、写真など) |
養育費 | 収入の証明資料(サラリーマンの場合は源泉徴収票、自営業の場合は確定申告書の控え等、所得・課税証明書など) |
慰謝料(不貞行為) | 相手方の不貞行為の証明資料(調査会社の報告書、メールのやり取り、SNSの書き込み、録音データなど) |
慰謝料(暴力) | 診断書、日記、写真(負傷の部位)、警察への被害届など |
財産分与 | 預貯金(通帳のコピーや金融機関からの郵便物)、不動産(固定資産の納税通知書、査定書)、住宅ローン(返済計画表)、保険(保険証券)、有価証券(証書) |
婚姻費用 | 収入の証明資料(サラリーマンの場合は源泉徴収票、自営業の場合は確定申告書の控え等) |
何が重要な資料となるかは、個別具体的な状況に応じて異なります。
そのため参考程度にとどめ、詳しくは離婚専門の弁護士にご相談されてください。
⑤精神的に自立する
離婚についての覚悟
離婚による様々な変化について、十分にイメージができたら、最後に今一度、離婚するか否かを慎重に考えましょう。
特に、あなたが離婚を求める側の場合、相手に離婚を切り出すと、もう後には戻れないかもしれません。
そのため「離婚」という言葉は、一時の感情に流されて口にすべきではありません。
適切に離婚するための準備を終えたら、最後に「夫婦関係の修復」について、話し合ってみてはいかがでしょうか。
DVや精神的虐待があるようなケースでは難しいかもしれませんが、性格の不一致が離婚の理由という場合、再度の話し合いで改善する場合もあります。
「離婚することになってもよい」との覚悟をもった上で話をすると、その覚悟が相手方に伝わり、相手方も自分の態度を真摯に反省してくれることもあり得ます。
そして、「雨降って地固まる」の言葉通り、良い夫婦関係を取り戻せる場合もあります。
もし、修復が難しいご状況であれば、離婚する覚悟をもって、準備した通りに新しい明日へ進んでいきましょう。
離婚を切り出すタイミングは?
あなたが離婚を考えている側の場合、上で解説したように、離婚を切り出すタイミングは「離婚する覚悟ができたとき」です。
もし、離婚することに迷いがあるのであれば、1人で悩まず、専門家に相談なさることをおすすめいたします。
心のケア
離婚問題に直面すると、精神的にもつらく感じることがあります。
そのような場合は、決して無理をせずに専門家のカウンセリングを受けて見られてはいかがでしょうか。
離婚専門の法律事務所の中には、法律相談だけでなく、依頼者のメンタル面についてもサポートしている事務所もあります。
精神的な面で不安なことがあれば、お気軽にご相談なさってください。
離婚問題に真剣に取り組んでいる事務所であれば、誰よりもあなたに寄り添い、解決に向けてサポートしてくれるはずです。
また、友人や親族に良き相談相手がいれば、その方を精神的な支えとされてもよいでしょう。
⑥離婚弁護士に相談する
以上、離婚で準備すべきことについて、一般的な解説をしました。
離婚に直面されている方の状況は様々であり、最善の対策は個々人によって異なります。
例えば、これまでの経緯、年齢、仕事、収入、財産の状況、家族の状況、性格、価値観等によって、設定すべき目標(Goal)とそのための戦略は違います。
したがって、この記事の内容は参考程度として、離婚問題に強い弁護士に相談なさることを強くおすすめいたします。
離婚の準備に関してよくあるQ&A
男性が離婚準備で気をつけることはありますか?
男性の場合、女性よりも収入が多く家計を支えていたり、自分名義の財産の方が多かったりすることが多いと思われます。
それを踏まえ、男性の場合は次のような離婚準備をしておくようにしましょう。
自宅をどうするか
自宅不動産がある場合、財産分与でその自宅をどうするのかを考えておくべきです。
具体的には、①自分が取得するのか、②妻が取得するのか、③それとも売却するのか、の3つが選択肢となります。
また、男性名義の住宅ローンが残っている場合で②妻が取得する場合、住宅ローンの支払い義務を妻に負わせるのか、の検討が必要です。
別居中の生活費(婚姻費用)の支払い
離婚前に別居する場合で妻よりも収入が多い場合、妻側から婚姻費用を請求されると、基本的には支払い義務が生じます。
この場合、婚姻費用の適正額について検討する必要があります。
女性が離婚準備で気をつけることはありますか?
収入が少ない方の場合、離婚後の生活に不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
特に、専業主婦やパートタイマーの女性の場合、このような不安を感じている方が多い傾向です。
離婚後の生活に不安があれば、様々な公的扶助の内容について、押さえておくことが重要となります。
公的扶助としては、児童扶養手当、児童手当、就学援助などがあります。
専業主婦が離婚準備で気をつけることはありますか?
現在専業主婦である方の場合、上記の公的扶助に加えて、就職についても検討するとよいでしょう。
現在は人手不足の傾向ですので、職種や待遇等に強いこだわりがなければ、専業主婦の方であっても就職するのは以前より簡単になってきているようです。
熟年離婚を考えていますが準備すべきことはありますか?
離婚を検討されている方で、50代、60代の方については、結婚してからの期間が長年に及んでいる場合が多いです。
このような年代層の場合、特に、財産分与と年金分割が大きな影響を及ぼします。
財産分与については、相手の財産を漏れなく調査し、適切に評価することが重要です。
例えば、退職金制度がある会社に相手が勤めている場合、退職までまだ何年も期間があったとしても、退職金の見込額を財産分与の対象とできる可能性があります。
このような判断は、離婚問題の専門家でないと難しいため、離婚に精通した弁護士へのご相談をお勧めいたします。
離婚の準備は相手にバレないようにした方が良いですか?
状況(目的)にもよりますが、現時点で離婚の意志が固まっていないような場合、基本的には軽々と離婚を口に出すべきではないです。
例えば、相手が不倫をしており、相手が不倫を否定する可能性がある場合、相手の不倫の証拠を集めているとは言わないほうがよいでしょう。
他方で、相手に改善してほしいことがある場合、あなたが深刻に悩んでいることを打ち明けるべき場面もあります。
具体的な状況で判断したほうが良いため、くわしくは離婚問題に強い弁護士へ相談なさってください。
まとめ
以上、離婚準備について、ケース別にくわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
離婚準備として検討すべき事項はとても多く、適切に判断するためには専門的な知識や経験が必要となる場合があります。
また、具体的に何をすべきかは状況によっても異なります。
そのため、離婚を検討されている方は、離婚問題に強い弁護士への早い段階でのご相談をお勧めいたします。
この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。
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