妻のAV出演が判明。離婚できますか?慰謝料は?【弁護士が解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士

結婚した後に相手がAV出演していたことが発覚した場合、離婚は認められる可能性はあります。しかし、慰謝料の請求は難しいでしょう。

裁判所は、過去のAV出演歴を告げなかったことだけでは、慰謝料を請求できないと判断しています。

離婚は今後の人生に大きな影響を与えます。

ここでは、妻のAV出演が判明した場合の離婚の可否や慰謝料請求について、弁護士がわかりやすく解説していきます。

離婚問題でお悩みの方はぜひ参考になさってください。

離婚が認められる場合とは

相談者の方のご状況であれば、離婚を決意されるのも当然と考えられます。

この場合、相手が離婚に応じれば、協議離婚という形で離婚することができますが、仮に、そうでなければ、最終的には離婚裁判を起こす必要があります。

離婚裁判において、裁判所が離婚判決を出すためには、「離婚原因」と呼ばれる、下表の5つの要件のいずれかに該当することが必要となります(民法770条1項)。

離婚原因の5つの要件

引用:民法|電子政府の窓口

 

 

AV出演の場合

婚姻後にAVに出演していた場合には、貞操義務違反として、離婚事由(民法770条1項1号の不貞行為)に該当すること及び離婚慰謝料が発生する点については、争いがありません。

問題は、婚姻前のAV出演歴を秘匿していた場合です。

この点については、東京地方裁判所平成24年1月25日の裁判例が参考になります。

この事案は、妻が婚姻前にAVに多数出演していたことを夫に秘匿したまま婚姻し、その後当該事実が発覚したため夫が損害賠償を請求したという事案です。

裁判所の判断の要旨は以下です。

裁判所の判断
婚姻後にAV男優との性行為を内容とするAV(アダルトビデオ)に出演することは、相手方の同意がない限り、貞操保持義務に違反する行為であり、そのような意思を有していながら、そのことを秘して婚姻したことは、婚姻後実際に出演したことと併せて、原告に対する不法行為に当たると認められる。
しかし、婚姻関係は、財産的取引とは異なり、相互の全人格的結びつきにより、現在から将来に向かって形成されるものであって、過去の出演歴は、その事実が将来に向かって婚姻関係を継続しがたい重大な事由にあたり、離婚事由になりるう場合があるとしても、婚姻前に告しなかったこと自体が不法行為にあたるとまでは認められない。

すなわち、本裁判例で、裁判所は、過去のAVの出演歴の単なる不告知は不法行為には該当しないと判断しています。

とはいえ、将来に向かっての離婚事由に該当する場合があるとしているため、過去のAVの出演歴の不告知が、結果的に、離婚事由(婚姻を継続しがたい重大な事由:民法770条1項5号)に該当する可能性については裁判所も肯定しているため注意が必要です。

なお、上記の裁判例でも触れていますが、婚姻後のAV出演の意思を有していながらそれを告知せずに結婚した場合には、不法行為にあたり、慰謝料が生じます。

「婚姻後のAV出演の意思を有していたこと」については、主観面なため立証が問題になります。

この点については、例えば、AV出演の契約書や撮影スケジュール表等から立証することになると思われます。

このように、妻が過去にAV出演していたことが発覚した場合には

  • 単なる過去のAV出演のケース
  • 結婚後も出演を予定していたケース
  • 結婚後に実際に出演していたケース

のそれぞれで、離婚事由にあたりうるか、慰謝料発生事由になるか、の結論が異なってきます。

離婚事由 慰謝料
過去のAV出演 ×
結婚後も出演予定 ◯(ただし立証に注意)
結婚後に実際に出演

より詳しくは、慰謝料の問題に詳しい弁護士にご相談ください。

 

 

まとめ

以上、妻のAV出演と離婚との関係について、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

相手が離婚に応じない場合、法律上の離婚原因を満たさなければ離婚は認められません。

結婚前のAV出演の場合は、離婚原因として認められない可能性もあります。

また、慰謝料については、結婚後に出演を予定していた場合や実際に出演した場合に限定されると考えられます。

いずれにせよ、具体的な状況に応じて取るべき方法は異なってきます。

そのため、まずは離婚問題を専門とする弁護士にご相談のうえ、今後について助言をもらうことをお勧めいたします。

この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

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