離婚調停の注意点!〜離婚調停中にやってはならないこと〜

  
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


 

離婚調停の心構え

離婚調停に直面している方は、自ら離婚調停を申し立てた方もいれば、突然配偶者に離婚調停を申し立てられた方もいると思います。

どのような立場であれ、少しでも自分に有利な結果を導くためには、離婚調停とはどのような手続きなのか、どういうことに注意すべきなのか、しっかりと把握した上で調停に臨むことが大切です。

ここでは、「離婚調停中にやってはならないこと」に焦点を当てて、わかりやすく解説しています。

ぜひ、参考にされてください。

 

 

離婚調停で避けるべき11のポイント

  • 安易に合意をする
  • 無断欠席をする
  • 調停の録音・撮影をする
  • 調停委員に対し暴言を吐く
  • 必要な資料を意図的に提出しない
  • 非開示にすべき情報の記載された資料をそのまま提出する
  • 虚偽の主張や証拠の偽造をする
  • 婚姻費用の請求をしない
  • 面会交流をしない
  • 離婚調停中に不貞行為をする
  • 嫌がる相手に無理やり接触(連絡や訪問等)をする

Point1 安易に合意をする

調停は話合いの手続き

調停は、簡単にいうと「裁判所を利用した話合いの場」になります。

そのため、当事者の話合いがまとまらなければ「調停不成立」となるだけであり、訴訟手続きのように裁判所が最終的な判断を下すことはありません。

また、当事者の話合いがまとまれば「調停成立」となり、裁判所の判断と関係なく離婚を成立させることが可能です。

ここで、調停が話合いの手続きであるということは、最終的な合意内容が必ずしも法的に妥当である(訴訟において裁判所がすると思われる判断と同一である)必要はないことに注意が必要です。

例えば、親権について争いがある場合、訴訟で裁判所が判断を下すとすれば妻を親権者と指定する可能性が高い状況であっても、調停では親権者を夫と指定した上で調停を成立させることが可能です。

つまり、調停手続きでは裁判所の介入があるからといって、話合いの結果が法的に妥当であることが保証されているわけではないのです。

調停手続きについてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

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調停手続きは調停委員会によって進められます。

調停委員会は、裁判官1名と民間から選ばれた調停委員2名によって構成されていますが、調停手続きは基本的に調停委員によって進められ、裁判官が表に出てくることはほとんどありません。

また、調停委員は、「社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人」の中から選ばれるとされており法律の専門家とは限りません。

そのため、調停委員が提案することは、必ずしも法的に妥当であるわけではないですし、残念ながら、法的に誤ったことを妥当であるかのように説明したり、説得しやすい方を強く説得したりということもしばしば見受けられます。

過去ご相談を受けた方の中には、「婚姻費用の金額について調停委員が妥当だというので受け入れたが後に妥当でないことが判明した。」、「自己主張が得意でないからか調停委員が自分ばかり説得しようとする。」といった方もおられました。

調停の具体的な進め方は各調停委員により異なりますが、調停委員が提案することが必ずしも正しいとは限らないことに注意が必要です。

調停が成立したら弁護士も覆せない

一度調停が成立してしまうと、後に弁護士をつけたからといって調停内容を覆すことはできません。

このことは、先程の相談例のように、後に調停の成立結果が法的に妥当でないことが判明した場合でも同様です。

したがって、仮に調停委員の提案や勧めがあっても、安易に合意をしない(調停を成立させない)ことが大切です。

また、調停の成立まではしていなくても、本人がした不利な主張を後に弁護士が当然に取り消せるというわけでもないため、主張内容が自己に不利益なものにならないかも慎重に判断する必要があるでしょう。

 

Point2 無断欠席をする

離婚調停の期日は、1、2ヶ月に1回程度、平日の日中に開催され、当事者は基本的に裁判所に出頭しなければなりません。

しかしながら、第1回期日は、裁判所が一方的に期日を指定するため、既に予定があり調停に参加することが難しいという方もおられると思います。

そのような場合、どのように対応してよいかがわからず無断で調停を欠席される方がいますが、どうしても調停に参加できない場合でも裁判所に無断で欠席をすることは避けるべきです。

調停は話合いの手続きであることから、必ずしも無断欠席による悪影響があるとは限りません。また、1回程度の無断欠席であれば、特に問題視されずに手続きが進行することもあり得ます。

ただし、無断欠席をすることで以下のリスクもありますので、調停期日に参加できない場合には、必ず裁判所に連絡をする等して無断欠席とならないようにしましょう。

無断欠席のデメリット
    • 5万円以下の過料が発生するおそれがある(民事調停法第34条)
    • 裁判官や調停委員の心証が悪くなる
    • 調停が不成立となり解決が長引く
    • 「無断欠席」という対応が後の離婚訴訟において不利な事実として扱われる可能性がある

なお、一度期日に参加すれば、次回の期日については、調停の最後に当事者や裁判所の予定を確認しつつ調整をしていくことになりますので、どうしても調停に参加できない日があれば、そのような希望を述べることが可能です。

 

Point3 調停の録音・撮影をする

離婚調停については、以下の定めがあるとおり、基本的に録音や撮影をすることはできません。

「家事調停の手続の期日における写真の撮影、速記、録音、録画又は放送は、裁判長の許可を得なければすることができない。」(家事事件手続規則第126条2項、民事訴訟規則第77条)

録音等を希望する理由としては、調停で相手方が認めたことを証拠として残したい、自分の備忘録として残したい等、様々な理由があると考えられますが、どのような理由であったとしても基本的に録音等は認められないのでご注意下さい。

なお、メモを取ることは禁止されていないので、ノートや筆記用具を持ち込んでメモを取ることは問題ありません。

 

Point4 調停委員に対し暴言を吐く

当然のことながら、調停委員に暴言を吐かないよう注意が必要です。

「自分に不利になるかもしれないのに暴言なんて吐くわけない。」と思われた方も多いと思いますが、離婚事件では、ただでさえ相手方に対する不満で感情的になりやすい状況なので、調停委員の言動によって声を荒げてしまう方も少なくないようです。

調停委員に対し暴言を吐くと、調停委員ひいては裁判官の心証も悪くすることになり、調停だけでなく、後の離婚訴訟でも悪影響を及ぼしかねません。

以下、当事者の方が不満を抱えやすい状況をまとめたので、このような状況に直面した際は、いつも以上に冷静に対処することを心がけましょう。

あるある!苛立ちポイント
調停委員が相手方の味方をしているように感じる
  • 相手方の話ばかり前提にしてこちらの話を聞いてくれない
  • 相手方を説得せず、こちらばかり説得する
手続きが全然進まない
  • 同じことばかり話し合っている
  • 期日がなかなか入らない
以前伝えたことを調停委員が把握していない
相手方が前回調停で決めたことを守らない
  • 相手方が提出する予定だった資料を出さない

 

Point5 必要な資料を意図的に提出しない

調停は話合いの場にはなりますが、裁判所や相手方の求めにより、資料の提出が必要になることがあります。

また、離婚問題を早期に解決するためには、仮に裁判所や相手方の求めがなくても、相手方を説得するために、適宜必要な資料を積極的に提出していくべきだと考えます。

必要な資料を意図的に提出しない場合、その結果不利益を被る可能性もありますし(例えば、婚姻費用の調停において収入資料の提出をしない場合、その後審判に移行した際に相手方の主張のままに収入が認定されるという不利益が生じる可能性があります。)、必要な資料がなければ相手方の納得を得られないため、調停が不成立となる等争いが長期化する可能性が高くなります。

そのため、必要な資料を意図的に提出しないことは避けるべきです。

離婚調停中に提出する可能性のある資料には、以下のような資料が挙げられます。

争点 資料
離婚原因 離婚原因を裏付ける資料(不貞の調査報告書、暴力の診断書等)
親権 子の監護に関する陳述書、子の監護に関する資料等
養育費
婚姻費用
源泉徴収票(給与所得者)、確定申告書(個人事業主等)、雇用契約書や給与明細(転職直後)等
養育費
婚姻費用
預金通帳、各種保険の解約返戻金の試算書、住宅ローン関連資料、住宅の査定書、投資関連資料等

あくまで一例であり、人により提出が不要な資料や、その他提出が必要になる資料もあります。

また、戦略的にあえて調停の場では提出しない選択をすることもあるため、弁護士をつけている場合には弁護士に相談しながら提出する資料を精査するとよいでしょう。

 

Point6 非開示にすべき情報の記載された資料をそのまま提出する

調停では、様々な資料の提出を求められることがありますが、非開示にすべき情報の記載された資料をそのまま提出しないよう注意が必要です。

例えば、配偶者からのDVがある離婚事件においては、被害者の住所や職場が相手方に知られないよう細心の注意を払う必要があります。
そのため、どうしても提出が必要であるといった事情がなければ、そもそも住所等が記載された資料を裁判所に提出しないようにすべきです。

また、婚姻費用や養育費の算定のために収入資料(源泉徴収票等)が必要であり、その収入資料に住所等が記載されている場合等には、開示したくない部分を黒塗りにする等のマスキング処理をするとよいでしょう。

裁判所により多少手続きは異なりますが、マスキング処理で対応できない場合には、「非開示希望申出書」等を利用するとよいでしょう。

参考:福岡家庭裁判所(管内支部を含む) 主な申立書・申請書書式一覧表|裁判所

本来、資料や主張書面は裁判所と相手方の双方に提出する必要がありますし、仮に裁判所にだけ提出をした場合であっても、基本的に相手方もその内容を確認することができます。

また、一度資料等を提出すると取り消すことが難しいこと等から、資料を提出する前に慎重に検討をする必要があります。

 

Point7 虚偽の主張や証拠の偽造をする

調停の場に限ったことではありませんが、虚偽の主張や証拠の偽造はすべきでありません。

虚偽の主張について

虚偽の主張を目にする場面は様々ですが、よくある例としては、不貞行為をしたのに不貞行為をしていないと言い張ったり、財産があるのに財産は何もないと言ったり(一部のみしか開示しないことも含む。)することがあります。

そのような場合、相手方が何らかの証拠を持っていれば、後に主張が虚偽であることが発覚し、虚偽の主張をしたことが交渉や裁判の中でマイナスにはたらくことがあり得ます。

例えば、不貞行為をしていないと虚偽の主張をしていたけれども、後に相手方から調査報告書等の提出がなされ不貞行為の存在が明らかになった場合、不貞行為を認めていなかったことが、調査会社の費用を負担することに繋がったり、事実に反し不貞行為を認めなかったという対応が慰謝料の増額事由にあたったりする可能性があります。

また、財産に関しては、相手方が弁護士会照会や裁判所の調査嘱託といった制度を利用すると、自身の意思にかかわらず財産の開示がなされることもあるため、財産関係について虚偽の主張を貫くというのは容易ではありません。

弁護士会照会 弁護士が、依頼を受けた事件について証拠や資料の収集等を行う法律上の制度(弁護士法第23条の2)であり、弁護士会を通して照会を行う(その必要性と相当性について弁護士会の審査がある。)。
調査嘱託 裁判所を通して必要な情報を開示させる法律上の制度(民事訴訟法第186条)。

参考元
弁護士法|e-Gov法令検索
民事訴訟法|e-Gov法令検索

証拠の偽造について

偽造された証拠を目にすることは少ないですし、実際に証拠の偽造をされる方はほとんどいないと思います。

私自身、相談の際に「嘘をついてもいいですか?」と聞かれることはあっても、「偽物の証拠をつくっていいか。」や「証拠の内容を書き換えてもいいか。」等の質問をされることはほとんどありません。

法的に専門的な知識がない方でも、証拠の偽造となると、なんとなく大きな問題になるのではないかと考えている方が多いようです。

実際に、偽造の内容によっては、「私文書偽造罪」(刑法第159条)といった刑事上の責任が発生することもあり得ます。

したがって、証拠の偽造は絶対にすべきではありません。

紛争の長期化

相手方において、主張が虚偽であることや証拠が偽造されたものであることを覆す証拠が何もない可能性が高い場合はどうでしょうか。

そのような場合も、虚偽の主張や証拠の偽造はすべきでないと考えます。

仮に証拠はなくても相手方が疑いをもった状態であれば、交渉はまとまらず紛争が長期化することが予想されるためです。

離婚問題は、お互いに相手方の性格や日常生活をある程度把握している者同士の紛争であり、虚偽の主張等があれば相手方が疑念を抱く可能性は高いと考えられます。

したがって、一見、発覚さえしなければ虚偽の主張等をするメリットがあるように思えますが、虚偽の主張等を貫くことは困難であることや、一度虚偽の主張等をしてしまうと取り返しのつかない状況に陥ることもあるため、虚偽の主張や証拠の偽造はしないのが賢明です。

 

Point8 婚姻費用の請求をしない

もし、あなたが婚姻費用を請求できる立場にあり、現在離婚調停中であるならば、すぐにでも婚姻費用の請求をすべきです。

婚姻費用とは

婚姻費用とは、端的に言うと「生活費」のことであり、別居中の夫婦の間でよく問題になる事柄です。

同居中は一緒に生活をしているため、当然のように婚姻費用(生活費)を支払っていても、別居をした途端、相手方が一切婚姻費用を支払わなくなるということは珍しくありません。

特に、別居後、婚姻費用をもらう側が実家に帰っている場合や、婚姻費用をもらう側が支払う側の同意を得ずに別居を開始した場合には、相手方が婚姻費用を支払う必要はない等と主張をして婚姻費用を支払わないことが多い印象です。

しかしながら、婚姻費用をもらう側に明らかな有責事情(例えば、浮気をしており全面的にそれを認めているような状況)がなければ、基本的には婚姻費用は支払われるべきであり、裁判所も婚姻費用を支払うべきとの判断をします。

したがって、もしあなたが婚姻費用をもらう側(請求する側)であれば、婚姻費用を請求することを忘れてはいけません。

 

婚姻費用の適正額は?

婚姻費用が具体的にいくらになるかについては、双方の収入、未成熟子(経済的に独立していない子)の監護状況、未成熟子の年齢等を踏まえ、「算定表」を用いて婚姻費用の適正額を算出します。

「算定表」については裁判所HPをご確認ください。

引用元:養育費・婚姻費用算定表|裁判所

婚姻費用の具体的な金額を知りたい方はシミュレーターをご活用ください。

婚姻費用シミュレーター

しかしながら、未成年者が私立に通っている場合やその他特別の支出がある場合等は、算定表だけでは具体的金額を定めることはできないため、離婚問題を専門とする弁護士に相談されると良いでしょう。

婚姻費用を請求しないデメリット

婚姻費用の請求は、単に生活費を獲得するというだけではなく、それ以上の意味をもつことがあり、婚姻費用を請求しないことが離婚問題の結論を大きく分けることもあります。

特に、あなたが離婚を請求する側である場合、本来し得る婚姻費用の請求をしないことで交渉が不利になる(有利に進められたはずの交渉ができない)可能性があります。

一般的に、婚姻費用よりも養育費の方が金額は低くなることや、子どもがいなければ離婚後に生活費のような費用は発生しないことから、しっかりと婚姻費用を請求できていれば、相手方にとって離婚をした方が支払うべき費用が少なくなるという状況をつくることができます。

そうすると、相手方が経済的負担を減らそうと早期の離婚を考えるようになり、離婚に応じるか否かだけでなく、財産分与等でも有利な立場で交渉を進めていけることが多いです。

婚姻費用の請求はタイミングも大事!

離婚調停前の協議段階においては、あなたが離婚をしたくないという立場であれば、相手方の感情に配慮して婚姻費用の請求をしないという選択もあり得ます。

しかしながら、相手方が離婚を譲らず、後に離婚を決意して婚姻費用を請求したいと考えた時、裁判所は当然に別居まで遡って過去の婚姻費用の未払分全ての支払いを命じてくれるわけではありません。

そのため、戦略的に協議段階での婚姻費用の請求を控えていた場合でも、少なくとも離婚調停が申し立てられた場合には、婚姻費用の請求をした方がよいでしょう。

婚姻費用についてもっと詳しくご覧になりたい方はこちらをご覧ください。

 

Point9 面会交流をしない

面会交流は絶対にする必要がある?

面会交流とは、子どもと一緒に暮らしていない親と子どもとの交流のことをいい、離婚調停の際によく問題になる事柄です。

裁判所は、面会交流を実施することは、基本的に子どもの福祉に適う(子どもにとって有益である)との考えであり、特別な事情がない限りは面会交流を実施すべきとの立場にたっているように思えます。

そのため、面会交流の具体的な頻度や方法等の条件については話合いの余地があるものの、面会交流の実施自体は避けられないと考えていた方がよいでしょう。

なお、一定の場合には、裁判所も面会交流を制限すべきと判断することもあるため、どうしても面会交流を実施できない理由がある場合には、離婚を専門とする弁護士に相談されるとよいでしょう。

面会交流を制限すべき場合について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

面会交流をしないことのデメリット

基本的に面会交流をすべきであることは既に述べたとおりですが、それにもかかわらず面会交流に応じない姿勢を取り続けると、相手方が感情的になり話合いが進まないというデメリットが生じ得ます。

また、調停が不成立になり訴訟に移行すると、離婚訴訟の中で親権に争いがある場合には、面会交流に応じてこなかったことが親権者を判断する際に不利な事実として扱われる可能性があります。

他方で、充実した面会交流を実施すれば、相手方が子どもと交流できることに安心して親権の主張を取り下げたり、養育費や婚姻費用の支払いにすんなり応じてくれるようになったりと、離婚条件の調整が円滑に進むことがあります。

以上から、離婚調停に進んでいる(離婚条件について揉めている)状況において、面会交流を実施しないということは原則避けるべきと考えます。

 

Point10 離婚調停中に不貞行為をする

不貞行為をするとどんな問題が起こる?

不貞行為をすると、(離婚をしたくても)離婚の請求が認められない、(離婚をしたくないのに)離婚の請求が認められてしまう、慰謝料を支払わなければならなくなるといった問題が発生します。

また、職場内での不貞行為である場合には、配偶者があなたと不貞相手を同じ部署にしないよう人事課に相談する等して、職場での立場が悪くなるといったことも考えられるでしょう。

婚姻関係が破綻していれば離婚が成立していなくても不貞行為をしていいの?!

稀に「既に婚姻関係は破綻しているので不貞行為をしても問題ないのではないか。」と相談されることがあります。

確かに、婚姻関係が破綻している場合には、仮に不貞行為に及んだとしても、離婚の可否に影響を与えないことや、慰謝料が発生しないこともあり得ます。

しかしながら、「婚姻関係の破綻」については、裁判所は一般の感覚よりも厳格に判断をする傾向にあるため、「配偶者とほとんど会話がない」、「いつも喧嘩ばかりしている」といった状況であっても、安易に「婚姻関係の破綻」と判断すべきではありません。

婚姻関係の破綻について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

離婚調停中は不貞行為や不貞行為を疑われる言動をしないほうが吉!

「婚姻関係の破綻」について、裁判所は厳格に判断すると述べましたが、離婚調停中である場合には、「婚姻関係が破綻」していると評価される可能性は高くなります。

しかしながら、離婚調停中であるという理由だけでは、必ずしも「婚姻関係の破綻」が認められるとは限りません。

また、法的に破綻が認められるか否かはともかくとして、不貞行為を受けて感情的になった配偶者が頑なに離婚に応じてくれなくなるといった不利益も生じ得ます。

そのため、離婚調停中は、不貞行為はもちろんのこと、不貞行為を疑われる言動も控えた方がよいでしょう。

 

Point11 嫌がる相手に無理やり接触(連絡や訪問等)をする

離婚調停中の接触は極力控えるべき

離婚調停では、調停委員が当事者双方に交互に話を聞くことで手続きが進んでいくため、基本的にお互いが顔を合わせることはありません。

そのため、なかなか話が進まないことに痺れを切らしたり、相手方の主張に憤慨したりして、直接相手方と話をしたいと考える方も少なくないと思います。

しかしながら、離婚調停中の接触は基本的に控えるべきと考えます。

特に、相手方が調停を申し立ててきた場合や、相手方に弁護士がついている場合は、相手方があなたと直接やり取りをしたくないとの意思表示ととれるので、相手方が任意に連絡を取ることを受け入れるといった状況がない限りは接触をすることは控えたほうがよいでしょう。

無理やり接触するとどんなことが起こる?!

相手方が嫌がっているにも関わらず、一方的に連絡をし続けたり、自宅や職場等に直接訪問すると、以下の問題が生じ得ます。

まず、相手方に警察を呼ばれ、いわゆる「警察沙汰」になる可能性が高いです。

また、それらの行為がストーカー規制法の「つきまとい等」の行為にあたる可能性があります。そして、「つきまとい等」を繰り返すと「ストーカー行為」と捉えられ、場合によっては逮捕されたり処罰を受けたりする可能性もあるでしょう。

ストーカー規制法に違反した場合の罰則
対象者 条項 罰則内容
ストーカー行為をした者 第18条 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
禁止命令等に違反してストーカー行為をした者  第19条 2年以下の懲役又は200万円以下の罰金
禁止命令等に違反した者  第20条 6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金

参考
ストーカー行為等の規制等に関する法律| e-Gov法令検索
ストーカー規制法| 警視庁

さらに、相手方の居住宅の鍵を持っている場合に、相手方の居住宅に無断で入ってしまった場合には住居侵入罪(刑法第130条)に問われる可能性もあります。

このことは、仮に、相手方の居住する不動産の所有名義があなたであっても同様です。

以上から、離婚調停中は嫌がる相手方には無理に接触しないようにすべきでしょう。

 

まとめ

本稿では、調停でやってはならないことを中心にお話していきましたが、参考になったでしょうか。

調停では、当事者だけでなく裁判所も介入するため、積極的にした方が良いこともあれば、絶対にしてはいけないこと、できればしない方がよいこと、たくさんのことを考えながら手続きを進めていく必要があります。

裁判所が介入することで、なんとなく裁判所がどうにかしてくれるのではないかと思われる方もいると思います。

しかしながら、声を大にして言いたいことは、「あなたの権利を守れるのはあなただけ」ということです。

裁判所は、あくまで中立の立場であり、あなたに不利なことや有利なことを必ず指摘してくれるわけではありません。

そのため、裁判所が介入するからと、裁判所に身を委ねるのではなく、しっかりとご自身で権利を獲得するため、守るための行動をとる必要があります。

あなたに不利益な形で調停が成立したり、調停が不成立となった際に調停内容が次の訴訟手続き(裁判離婚)に大きな影響を与えたりすることもあり得ます。

そのため、調停について少しでも不安を抱えられている方は、まずは一度離婚を専門とする弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

当事務所は、離婚事件に精通する弁護士が全国の離婚問題に苦しむ方をサポートしています。

LINEなどオンラインでのご相談も可能ですので、お気軽にご相談ください。

この記事が、離婚問題でお悩みの方にとって、お役に立てれば幸いです。

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