ハーグ条約とは?【離婚弁護士が解説】
ハーグ条約とは
ハーグ条約とは、国際結婚が破綻した後、一方の親が、16歳未満の子どもを、無断でもともと子どもが居住していた国から国外へ連れ去った場合、子どもを元の居住国に返還させるための条約です。
ハーグ条約が適用される事案
ハーグ条約が適用される具体例は次の3つのケースです。
連れ去られた側の親が返還を求めると、加盟国は、その子どもの現在の所在を調べるとともに元の居住国に返す義務を負うことになります。
我が国においては、返還要請があった場合には、外務省が子どもの所在を調べた後、相手方国で行われた連れ去りの原因についての調査結果をふまえ、東京地方裁判所もしくは大阪地方裁判所が、最終的に子どもの返還の要否を決定することとなります。
外国に居住する日本人親子が子供を連れて日本に一時帰国する際、連れ去りの危険が減少するため、帰国が不許可になる可能性が低くなります。
ハーグ条約の概要
ハーグ条約においては、
1 国境を越えた子の連れ去り・留置が行われた場合、生活基盤の急変などのリスクを伴うこと、監護権についての判断は子の元の居住国で行われるべきことなどを理由に、以下の5つの要件をすべて満たす場合には、原則として元の居住国に子どもを返還することが義務付けられています。
- 子が16歳に達していないこと
- 子が条約締約国に常居所(生活の本拠として生活していた場所)を有していたこと
- 常居所地国の法令によれば、連れ去り又は留置が、残された親の子に対する監護権を侵害するものであること
- 不法な連れ去り・留置の時点で、常居所地国と連れ去られた先(日本)の国の双方で、ハーグ条約が発効していること
- 子が日本に居住していること
2 また、子の利益を図るべく、国境を越えて、別々の国に離れて居住する親と子の面会交流を支援することを、加盟国に対し、義務付けています。
ハーグ条約の返還請求の手続
子を連れ去られた側の親は、ハーグ条約に基づいて、東京家庭裁判所もしくは大阪家庭裁判所に、子どもの返還請求を行うことができます。
これに対し、子を連れ去ったとされる側の親は、一定の、返還を拒否できる事由を主張・立証して対抗することになります。
返還請求事件の審理期間はきわめて短く、申立てからわずか6週間で結論が出されることが想定されています。
特に、子を連れ去ったとされる方の親は、短期間で、返還を拒否できる事由を主張立証する必要にせまられますので、ハーグ条約に詳しい弁護士に早期に相談する必要があるでしょう。
ハーグ条約のメリット
外国人配偶者によって、日本国外に子どもを連れ去られてしまった場合、子どもの所在を自力で探す必要がありません。
海外に連れ去られた子どもを探しだすのは大変な労力が伴います。
そのため、ハーグ条約に加盟していないと、連れ去られた側の親が泣き寝入りを余儀なくされることが多くあるでしょう。
ハーグ条約のデメリット
他方で、外国人配偶者のDVや薬物乱用に耐え兼ね、日本に子どもを連れて逃げ帰ってきたケースでも問題が出てくる可能性があります。
外国人配偶者が子どもの返還を求めた場合、相手国において十分な調査がなされず、DVや薬物乱用の事実が認められないという調査結果がでれば、裁判所は子どもの返還を認めてしまう可能性があります。
ただし、ハーグ条約には
①連れ去りから1年以上経過
②子どもを返せば身体的、精神的に重大な危険が及ぶと判断されるケース
では、返還を拒否できるという条項もあります。
子どもを返還しなくて良い場合
子どもを返還しなくてよいとなった場合にも、離婚後の親権、面会交流の考え方の違いによる影響が出てくる可能性があります。
日本では、離婚後は一方の親のみが親権者となる「単独親権」となりますが、ハーグ条約承認国の多くは、離婚後も両親が共同して子どもの親権者となる「共同親権」という制度です。
そのため、日本においては親権者でない親と子どもの関わり方は限定的ですが、諸外国においては関わり方が密であるため、頻繁な面会交流を要求されるなど、新たな紛争が起こることも考えられるのです。
ハーグ条約についてのご相談
ハーグ条約は、国際離婚問題という特殊な事案であり、離婚問題だけではなく、国際法についての専門的な知識やノウハウが必要となります。
しかし、ハーグ条約を取り扱った弁護士は決して多くないのが実情でしょう。
当事務所は、離婚事件に注力する弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、ハーグ条約が問題となる事案もサポートしています。
ハーグ条約や国際離婚について、お悩みの方は当事務所までお気軽にご相談ください。
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