ダブル不倫(W不倫)とは?本気でも遊びでも辛い代償を弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

ダブル不倫とは、不倫関係が重なっているケースのことをいいます。

ダブル不倫は様々な代償を伴う可能性がある危険な行為です。

このページでは、ダブル不倫のリスクや慰謝料請求の難しさ、慰謝料請求や離婚する際の注意点などについて、離婚問題に詳しい弁護士が解説します。

不倫問題でお悩みの方は、ぜひご参考にされてください。

ダブル不倫とは

ダブル不倫とは、不倫関係が重なっているケースのことをいいます。

ダブル不倫は、法律上の言葉ではなく俗語です。

しかし、きちんと定義づけしないと誤解が生じるため、ここではダブル不倫の意味を明確にした上で、リスク等について解説いたします。

 

ダブル不倫には2つのタイプがある

①既婚者同士が不倫しているパターン

不倫関係が1つのパターン例えば、Bさんご夫婦のうち、B夫さんがA妻さん(既婚者)と不倫を行ったとします。

不倫の被害者としては、B妻さんとA夫さんの二人がいます。

このような不倫の被害者の人数に着目して、ダブル不倫と呼ぶ場合があります。

 

②夫婦二人とも不倫しているパターン

不倫関係が2つのパターン例えば、Aさんご夫婦のうち、A夫さんがB子さんという女性と不倫を行ったとします。

そして、A妻さんもC男さんという男性と不倫を行っている場合、不倫関係が重なっています。

この場合、夫婦二人ともが他者と不倫をしており、不倫関係が2重に発生しています

 

 

ダブル不倫のきっかけ

ある資料によると、出会いのきっかけで最も多いのは、多くの年代で「同じ会社」、次いで「友人」となっています

出会いのきっかけに関するグラフ

参考:相模ゴム工業株式会社

上記資料は不倫を前提としたもので、ダブル不倫であることを限定したものではありませんが、出会いのきっかけとしては両者でさほど違いはないと考えられます。

 

 

ダブル不倫をしてしまう人の心理

ダブル不倫をする人の心理は様々で、個々の状況や背景によって異なりますが、一般的には以下のような心理的要因が考えられます。

 

満たされない欲求

自分の結婚生活において、感情的、肉体的、または精神的に満たされていないと感じることが不倫の動機となることがあります。

 

自己確認

恋愛や性的な関係を通じて、自分が魅力的であることを再確認したいという欲求が存在することがあります。

 

感情的つながり

配偶者との間で十分な感情的なつながりがないと感じる場合に、他の誰かとの間でそのつながりを求めることがあります。

 

偶然の機会

特別な意図がなくても、偶然の出会いや状況が重なって不倫に発展することもあります。

 

個人の価値観やモラルの問題

倫理観やモラルに対する考え方が影響することもあり、不倫を特に問題視しない価値観を持つ人もいるかもしれません。

 

 

ダブル不倫しやすい人の特徴

ダブル不倫しやすい人に特徴はあるのでしょうか。

この点については、信頼性がある統計データは見当たりませんが、上で解説した不倫のきっかけや心理からすると、次のような特徴が考えられるでしょう。

  • 仕事を通じて異性との交流の機会が多い
  • 異性の友人が多い
  • スリル感・背徳感を求める性格

反対に、次のような場合、不倫の可能性は低くなると考えられます。

  • 無職の方
  • 専業主婦(主夫)の方
  • 異性の友人がいない
  • 保守的な性格

 

 

ダブル不倫の4つのリスク

ダブル不倫には次の4つの大きなリスクがあります。

ダブル不倫の4つのリスク

 

①夫婦関係が破綻するリスク

貞操観念には、個人によって様々な捉え方があります。

しかし、現在の日本においては、「夫婦は不倫をしない」ということが当然の前提であって、不倫は相手への信頼を失う可能性が極めて高い行為といえます。

人は自分を中心に物事を考える傾向があります。

わかりやすく言うと、「自分の不倫は許せても、相手の不倫は許せない」と考えてしまうおそれがあります。

もちろん、ケース・バイ・ケースですので、「お互い様」と割り切って夫婦関係を継続する方々もいるでしょう。

しかし、そのようなケースはあくまで一部であり、大前提としては、ダブル不倫によって夫婦関係が破綻するリスクが有るということを認識しておくべきです。

 

②子供の健やかな成長を阻害するリスク

夫婦の問題と子供との関係は、一応は切り離すことが可能です。

しかし、成長期にある子どもにとって、両親の存在は極めて大きいです。

「夫婦が愛情をもってお互いに気遣いながら生活している家庭」と、「形骸化した夫婦の家庭」とを比較した場合、後者は子供の情緒不安定の原因になるなどして、成長に悪影響を及ぼすることが懸念されます。

 

③経済的に莫大な損失を被るリスク

ダブル不倫によって夫婦関係が破綻したとき、離婚を選択する方が多いです。

そして、離婚した場合、夫も妻も、経済的に大きな損失を被るでしょう。

以下、それぞれの場合の予想される経済的損失の例を示します。

養育費の支払い 未成熟の子供がいる場合、父母の年収に応じた養育費の支払い義務が生じます。養育費の金額・計算シミュレーターはこちら
財産分与の支払い 結婚して築いてきた預貯金、生命保険、不動産、自動車などの財産を精算して基本的に2分の1を分与することになります。財産分与に強い弁護士をお探しの方へ
年金分割について 会社員や公務員などは、基本的に50%を分割することとなります。年金分割に強い弁護士をお探しの方へ
婚姻費用について 正式に離婚が成立するまでの生活費の支払い義務が生じます。婚姻費用算定シミュレーターはこちら

 

④既婚者同士ダブル不倫の慰謝料請求は複雑になるリスク

離婚するしないに関係なく、既婚者同士のダブル不倫では慰謝料請求が複雑なため、注意が必要です。

くわしくはこの後の「既婚者同士によるダブル不倫は慰謝料請求に注意」で解説します。

 

 

タブル不倫の慰謝料の相場

既婚者同士のダブル不倫の場合

既婚者同士のダブル不倫については、慰謝料の相場は通常の不倫のケースと変わりません。

すなわち、離婚する場合で200万円から300万円程度離婚はしない場合で100万円から200万円程度となることが多いです。

 

夫婦二人とも不倫しているダブル不倫の場合

夫婦二人とも不倫しているダブル不倫については、後記の理由から、慰謝料が認められないか、認められても金額が低くなる傾向です。

 

 

既婚者同士によるダブル不倫は慰謝料請求に注意

既婚者同士のダブル不倫の場合、被害者である配偶者が慰謝料を請求すると、不倫相手の配偶者から反対に慰謝料を請求されることがあるので注意が必要です。

具体例で説明します。

A妻とB夫が不倫をした場合を例に説明します。

既婚者同士によるダブル不倫は慰謝料請求に注意の関連図

この状況で、仮にA夫が妻の不倫相手であるB夫に対して慰謝料を請求し、結果として200万円を支払ってもらったとします。

このとき、B妻も夫の不倫相手であるA妻に対して慰謝料を請求でき、結果として200万円を支払ってもらったとします。

A夫とA妻が離婚せずに夫婦関係を続ける場合、家計(財布)は通常一つです。

A世帯全体としてみれば、200万円を受け取っても、200万円を支払うのですから、お金の出し入れをしただけになります。

A夫とA妻が離婚すれば、家計は別なので、上記の問題は起こりません。

したがって、既婚者同士のダブル不倫の場合で、離婚しない場合、慰謝料を請求しても意味がない結果となることがあります。

 

 

夫婦二人ともが不倫している場合の慰謝料請求の注意点

ダブル不倫で夫婦二人ともが不倫している場合、ダブル不倫の場合、配偶者に対する慰謝料請求が認められない可能性があります。

具体例で説明します。

事例

A妻さんは、A夫がC子と不倫しているのを発見してしまいました。

A妻さんは、友人のB夫に相談しているうちに、B夫と男女の関係になってしまいました。

そんな中、A夫はA妻さんの不倫を知り、A妻さんに離婚を切り出しました。

A妻さんとしては、離婚するのであればA夫と不倫相手のC子に対し、慰謝料を請求したいと考えています。

A妻さんの慰謝料請求は認められるのでしょうか?

ダブル不倫での慰謝料請求の事例

慰謝料とは、不法行為の被害者の精神的な苦痛を金銭に換算したものです。

仮に、A妻さんが不倫をしていないのであれば、純粋な被害者として加害者であるA夫とC子に対して慰謝料を請求できます。

また、その金額は通常200万円から300万円程度が多いでしょう。

しかし、ダブル不倫の場合、夫婦の双方が不法行為の加害者に該当するため、慰謝料が認められる可能性が低いと考えられます。

もっとも、この事例では、先にA夫さんが不倫をしています。

そのため、その内容しだいでは、A夫の方が悪質であるなどとして、慰謝料が認められる場合もあります。

しかし、その金額は、不倫の慰謝料の相場よりも低額になってしまうでしょう。

 

 

ダブル不倫では裁判離婚が認められない可能性がある

上記の事例で、不倫の事実があり、有責配偶者であるA夫からA妻への離婚請求は認められるのでしょうか。

有責配偶者である夫から妻への離婚請求は認められるかの具体例

有責配偶者からの離婚請求の場合、最高裁は次の3つの要件を満たしていなければ離婚は認めないと判示しています。

判例 有責配偶者からの離婚請求の場合の3つの要件

    • 夫婦の別居が両当事者の年齢及び別居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと。
    • 夫婦間に未成熟子が存在しないこと。
    • 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚を許容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと。

(最判昭62.9.2)

参考:判例|裁判所ホームページ

この要件を満たすことは、通常、難しいです。

したがって、A夫の離婚請求は、裁判では認められない可能性があります。

また、この離婚請求においては、A妻から「有責配偶者の抗弁」が主張されるでしょう。

というのも、A夫は、先に不倫を行って、夫婦関係の破綻のきっかけを作っているからです。

「有責配偶者の抗弁」(ゆうせきはいぐうしゃのこうべん)とは、夫婦関係を破綻に導いたことについて責任ある配偶者からの離婚請求は認められないという反論のことです。

 

A妻からの離婚請求

それでは、仮に、A妻から離婚請求を行った場合はどうなるのでしょうか。

A妻が有責配偶者にあたるかが裁判での主たる争点になることが予想できます。

結論からいうと、A妻は、本事例では、有責配偶者とは認められず、離婚請求が認められる可能性は相当程度あると思われます。

というのも、この事例では、先に不倫をしたのはA夫だからです。

A夫が不倫しなければ、A妻はB夫と不倫関係にならなかったでしょうから、婚姻関係を破綻に導いた主たる責任はA夫にあると裁判所は考える可能性があります。

 

 

ダブル不倫の場合協議離婚が成立する可能性が高い

協議離婚とは、裁判所を利用せず、夫婦の話し合いで離婚条件を決めて、離婚届けを出すというものです。

不倫の場合、一般的には配偶者は被害者です。

被害者の感情として、「一方的に不倫をしておきながらの離婚は許せない」という方が多く、離婚協議は難航します。

しかし、ダブル不倫では、離婚を求める本人だけではなく、相手も不倫を行っています。

そのため、「相手を許せない」という憎悪の感情が少ないケースもあります。

したがって、あくまでもケース・バイ・ケースですが、協議離婚の成立可能性があると考えられます。

 

 

ダブル不倫についてのよくあるご質問

ダブル不倫が遊びの場合でも代償は大きい?

例えば、不倫が1回限りの軽い気持ちであった場合、夫婦関係が修復できる可能性はあるでしょう。

しかし、相手しだいです。

1回限りであったとしても、相手が許してくれなければ離婚につながってしまいます。

そして、離婚となれば、上記の経済的な損失が懸念されます。

 

ダブル不倫の期間が長いと影響も大きい?

長年に渡ってダブル不倫が継続していると、上記の3つのデメリットの影響も大きくなる傾向になります。

すなわち、不倫の期間が長年月であることを相手が知った場合、夫婦の信頼関係はより壊れやすく、修復が難しいと考えられます。

また、子供がいるご家庭では長年月に渡って子供の成長に悪影響を及ぼす可能性もあります。

さらに、仮に離婚に至った場合の経済的損失も大きくなる傾向にあります。

 

職場(社内)のダブル不倫の影響とは?

職場内の男女がダブル不倫に発展してしまうケースでは、発覚後、会社から人事上、不利益な処分を受ける可能性があります。

具体的な処分の内容については、ケース・バイ・ケースですので一概には言えませんが、実際の事例で多いと感じるのは、転勤や配転などの人事異動があるケースです。

会社としては、同じ部署に配置しておくわけには行かないという理由で、人事異動を行うのです。

なお、退職勧奨や解雇については、不倫だけの理由ではあまり例がありません。

 

 

まとめ

以上、ダブル不倫の問題について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

ダブル不倫には2つのタイプがあります。

既婚者同士が不倫しているパターンの場合で、不倫相手が既婚者の場合、慰謝料の請求が複雑化する可能性があります。

そして、夫婦二人とも不倫しているパターンの場合、通常の不倫と異なる法的な問題があります。

また、ダブル不倫には、夫婦関係の破綻、子供への悪影響、経済的な損失といった3つの大きなデメリットがあります。

これらのデメリットの具体的な内容については、専門的知識と経験をもとに判断する必要があります。

そのため、ダブル不倫の問題については、離婚問題を専門とする弁護士への早い段階でのご相談をお勧めいたします。

この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。

 

 

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