離婚公正証書の作成費用はいくらかかる?具体例で解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA


離婚の公正証書の作成費用は、自分で作成する場合は数万円程度になることが多いです。

離婚の際に公正証書を作成すると、慰謝料や財産分与、養育費の支払いをより確実に行うことができます。

ただし、離婚公正証書を作成すると、その費用がかかってしまいます。

公証人に支払う手数料は 「慰謝料」「財産分与」「養育費」 の金額を元に計算され、計算方法が複雑なため、注意が必要です。

また、手数料以外にも必要になる費用があります。

この記事では、公正証書の作成費用について、具体例を交えながら弁護士がわかりやすく解説します。

公正証書(離婚)の手数料の決まり方

離婚の公正証書を作るときに、公証人に支払う手数料は 「慰謝料」「財産分与」「養育費」 の金額を元に計算されます。

それぞれ別の契約(法律行為)として扱うので、手数料も個別に計算 されます。

最終的に、それぞれの手数料を合計したものが、公正証書の手数料になります。

ただし、養育費の支払いは、支払期間が長期にわたる場合でも、10年分の金額のみが目的価額になります。

例えば20年払うとしても、手数料は10年分の金額で決まるということです。

 

 

公正証書作成の手数料

公正証書を作成する際には、公証人に支払う手数料が必要です。

この手数料は、全国どこの公証役場でも同じ基準で決められており、「公証人手数料令」という政令によって金額が定められています。

スムーズに手続きを進めるためにも事前に費用を把握しておくことをおすすめします。

金銭の総額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 1万1000円
500万円を超え1000万円以下 1万7000円
1000万円を超え3000万円以下 2万3000円
3000万円を超え5000万円以下 2万9000円
5000万円を超え1億円以下 4万3000円
1億円を超える場合

超過額5000万円ごとに

◯3億円までは
1万3000円づつ加算

◯3億円超~10億円までは
1万1000円づつ加算

◯10億円を超える部分は、
8000円づつ加算

参考:公証人手数料令|e−GOV法令検索

参考:12 手数料|日本公証人連合会

 

公正証書作成手数料の具体例

妻Aさんが夫Bさんから次の給付を受けるとします。

  • 財産分与 ⋯ 400万円
  • 慰謝料 ⋯ 300万円
  • 養育費 ⋯ 子Cが10歳で20歳まで月額10万円の養育費を受け取る
    (月額10万円 × 12ヶ月 × 10年間で計算)
合計金額
 400万円(財産分与) + 300万円(慰謝料) + 1200万円(養育費) = 1900万円

よって、上記の表を参考にすると手数料は、手数料は2万3000円となります。

 

 

年金分割の私文書の認証手数料

年金分割のイメージイラスト

年金分割の私文書の認証手数料は5500円です。

年金分割については、私文書の認証という形ではなく、公正証書の中に入れることも可能ですが、手数料が倍の1万1000円かかります。

また、年金分割は、合意書を年金事務所に提出しますが、その際、公正証書を出すと、財産分与、慰謝料等の余分な情報が含まれているためプライバシーの観点から通常専門家は私文書の認証を選択します。

なお、年金分割の合意書のサンプルは以下から閲覧・ダウンロードが可能です。

 

年金分割の私文書とは?

年金分割の私文書とは、年金分割の合意内容を当事者(通常は弁護士)が作成した文書のことをいいます。

公証人が作成した公正証書ではなく、当事者が作成し、公証人に認証してもらうものです。

 

ワンポイント:私文書の認証のメリット

年金分割の合意の方法としては、①公正証書に記載する方法と、②年金分割の私文書を作成する方法の2つがありますが、②の方法をお勧めします。

①の公正証書の場合、手数料が1万1000円となり、私文書の認証よりも高額となります。

また、年金分割は、合意書を年金事務所に提出しますが、その際、①の公正証書を出すと、財産分与、慰謝料、親権等の余分な情報が含まれているためプライバシーの観点から問題があります。

②の私文書の認証の方法だと、記載内容が年金分割の情報だけですので、プライバシーの保護もできます。

 

 

公証役場以外にかかる作成費用

公正証書を作成する費用としては、公証役場に支払う費用の他に、①市役所や法務局にかかる費用②弁護士に依頼する場合にかかる費用があります。

 

市役所や法務局にかかる費用

離婚の公正証書を作成する場合、戸籍謄本が必要となる場合があります。
※公証役場によって運用が異なりますので、作成予定の公証役場にご確認ください。

戸籍謄本の発行手数料は、450円です。コンビニでの発行は400円です。

また、不動産の財産分与を行う場合は、登記簿謄本(登記事項証明書)および固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書が必要となります。

登記簿謄本(登記事項証明書)の発行手数料は600円です。
オンラインで請求する場合は520円です。

 

弁護士に依頼する場合

弁護士に公正証書の作成をご依頼される場合、①離婚の交渉や調停などをご依頼されている場合と、②公正証書の作成のみをご依頼される場合とで、費用が異なるのが通常です。

①の場合は、交渉や調停などの費用に含まれるのが一般的です。つまり、公正証書にすることで別に弁護士費用は必要となりません。
※くわしくはご相談先の法律事務所にお問い合わせください。

②の場合、弁護士費用は公正証書の内容に応じて20万円〜30万円程度となると思われます。

 

 

公正証書の作成費用についての注意点

公正証書の作成費用について、注意していただきたい点をご紹介します。

送達の手数料

公正証書を作成するとき、権利者(養育費や慰謝料等を受け取る側)は、義務者(養育費や慰謝料等を支払う方)へ公正証書を送達する手続きを行うことをお勧めします。

送達の方法には、①交付送達(公証役場で手渡し)②特別送達(郵送)があります。

①の交付送達については、合計1650円(送達手数料1400円+送達証明書250円)がかかります(手数料令39条)。

②の特別送達については、上記に郵送料が加算されます(作成予定の公証役場にご確認ください。)。

なお、義務者本人が公証役場に来て公正証書を作成する場合、通常は①の交付送達となります。

義務者の代理人弁護士だけが公証役場に来る場合は、②の特別送達になる場合が多いです。

 

ワンポイント:なぜ送達した方が良いの?

公正証書で取り決めをした養育費等の支払いを義務者が怠ると、権利者は強制執行ができます。

強制執行するためには、公正証書の他に、送達証明書という書類が必要となります。

この送達証明書を入手するために、送達する必要があるのです。

送達証明書は後から(義務者が支払を怠った後)でも作成できますが、送達がスムーズにいかないことも予想されるので、公正証書作成時に入手されることをお勧めいたします。

なお、公証役場によっては、離婚が成立した後でなければ、送達をしないところもあります。

くわしくは、離婚専門の弁護士にご相談ください。

 

公正証書の枚数による手数料の加算

公正証書の枚数によって手数料が若干加算されることがあります。

法律行為に係る証書の作成についての手数料については、証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます。(手数料令25条)

 

支払いの方法は現金になる

公証役場での公証人に対する作成費用は現金となります。

あらかじめ、金額については連絡がありますが、クレジットカード決済などはできないので注意しましょう。

 

費用は夫婦どちらが負担するか取り決めておく

離婚公正証書では、その作成費用をどちらが負担するかも決めておきましょう。

通常は権利者側が負担しますが、絶対ではありません。

義務者側が離婚に積極的なケースでは、作成手数料を義務者が負担する場合もあります。

 

公正証書作成のキャンセル時も費用がかかる

離婚公正証書を作成する場合、事前に公証役場に連絡をします。

公証人はあらかじめ公正証書案を作成しており、当日はこれを読み聞かせて確認し、サインをするという流れです。

公証人に対して支払う費用は、公正証書にサインをするときに、公証役場で支払います。

公証人が公正証書の作成等に着手した後、一方的にキャンセルをすると、それまでの公証人の所要時間に従い、作成費用を請求される可能性があります(手数料令33条)。

したがって、安易な気持ちで作成を依頼し、キャンセルなどしないようにしましょう。

 

 

公正証書の費用のよくあるQ&A

公正証書は自分で作れる?費用はかかる?

公正証書は自分で作ることが可能です。

この場合、費用は公証役場に支払う数万円の費用と戸籍謄本等の発行手数料だけです。

しかし、公証役場は弁護士と異なり、合意内容についてのアドバイスはしてくれません。

離婚に強い弁護士にご依頼されると、離婚の様々な条件について、相手と交渉してくれます。

また、離婚弁護士は合意内容が適切となるように公正証書を作成してくれます。

自分で作成したいと考えていらっしゃる方も、弁護士に一度ご相談なさるとよいでしょう。

 

公正証書の費用は誰が払いますか?

通常は公正証書の作成を希望する側、すなわち、養育費や慰謝料等の権利者側が支払います。

もっとも、義務者側が積極的に離婚を希望しているような場合、交渉しだいで義務者に公正証書の費用を支払ってもらうことができる場合もあります。

 

 

まとめ

以上、離婚公正証書の費用について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

離婚公正証書の作成手数料は、公証役場に支払う費用として数万円程度です。

弁護士に作成をご依頼される場合は20万円程度〜30万円程度が必要となります。

デイライト法律事務所では、離婚公正証書の作成や手続きに関する豊富な経験を活かし、依頼者の状況に応じた最適なサポートを提供します。

安心して手続きを進めるために、ぜひ当事務所へご相談ください。

 

 

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