認知させて養育費をもらうためにすべきこと【弁護士が解説】
シングルマザーとして子供を育てていくためには、子供の食費、教育費などのお金が必要となります。
したがって、父親から適切な額の養育費を受け取ることが重要となります。
また、父親が子供を認知していない場合は、前提として認知してもらうことが必要となります。
ここでは、相手に認知させて、養育費をもらうための必要な知識を解説しています。
ぜひ参考にされてください。
認知とは
認知とは、結婚していない男女間の子供について、親が自分の子供であると認めることをいいます。
認知の手続きは、通常は役場の窓口に、認知届を提出して行います。
なお、認知は遺言によって行うことも可能です。
第七百八十一条 認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。
2 認知は、遺言によっても、することができる。
参考条文:民法|電子政府の窓口
認知の3つのメリット
相手に認知してもらうことによって、次のメリットが考えられます。
①認知によって養育費の請求ができる
子供を育てていくには、食費だけではなく、教育費、医療費、被服費、娯楽費等、様々な費用が必要です。
また、現在は大学に進学する子供も多くいます。
大学進学費用はとても高額になることから、シングルマザー世帯は大学進学が難しい状況です。
相手方が認知すれば、父親として法的に扶養義務が発生します(民法877条1項)。
その結果、相手方に対して、養育費を請求することが可能です。
相手方から適切な額の養育費を受け取ることができれば、子供に十分な教育を受けさせることも可能となり、子供の将来の可能性が飛躍的に広がります。
したがって、母親は、子供のために相手方に養育費を受け取るべきです。
②認知によって相続権が発生する
相手方からは上述したように、養育費を受け取ることができます。
しかし、万一、相手方が死亡した場合、養育費の支払いは途絶えてしまいます。
このような場合でも、認知されていると、法的な親子関係が認められるため、子供は第一順位の相続権を取得できます(民法900条1号)。
したがって、父親に現預金、不動産、株式等の相続財産があれば、原則として子供は相続することが可能です。
なお、父親が他の女性と結婚してその女性との間に子供(「嫡出子」といいます。)がいる場合であっても、同様に相続できます。
未婚の子供だからといって、嫡出子と差別されることはありません(※)。
※従来は、嫡出でない子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1でしたが、最高裁から憲法違反と判断され、法改正があり、平成25年9月5日以後に開始した相続については、嫡出子と嫡出でない子の相続分が同等となりました。
③子供のためになる
「結婚せずに子供を生む」という状況は、複雑な事情があると思われます。
当事務所にお越しになる相談者の方の例では、以下のような事情があります。
「交際したが、結婚までは望んでいない」
「男性側、または自分に他に家族がいる」
「男性に出産を止めるように言われている」
このような状況では、「男性側に認知してもらわなくていい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、子供のためには、認知を請求し、父親を確定すべきです。
未婚で子供を出産し、男性に認知されないと、戸籍に父親の名前が記載されません。
仮に、相手方がどんな人物であるにせよ、自分の父親が誰かを確認できない子供はかわいそうです。
自分の父親の名前すら確認できないと、子供にはもやもや感が残り、歪んだ価値観を植えるつけるおそれがあります。
たとえ一緒に生活していなくても、いつか、子供が自分の父親を知りたいと思ったとき、名前を確認できるようにしてあげることは、子供の感情にとってよいことです。
相手が認知してくれない場合
相手が認知してくれない場合、認知調停を申し立てることも可能です。
しかし、調停は一般的に解決まで長期間を要する傾向です。
そのため、調停の前に、以下の方法を試してみるとよいでしょう。
①DNA鑑定を提案する
相手が認知に否定的な理由が、「自分の子供か確信できない」という場合、DNA鑑定を提案することで、認知してくれる可能性があります。
DNA鑑定では「父権肯定確率 99.999999999995%」といった記載がなされます。
つまり、ほぼ間違いなく相手の子供であることが証明できます。
したがって、認知に応じてくれる可能性が高くなるでしょう。
②弁護士に交渉を依頼する
相手方に直接連絡を取りたくない場合や、相手方が認知に応じていない場合、弁護士に依頼し、相手に認知に応じるように交渉(説得)してもらうと良いでしょう。
弁護士というと、裁判のイメージを持たれるかもしれませんが、家事事件を専門とする弁護士は、いきなり裁判所を利用することは通常の場合は行いません。
これは、裁判所の手続を踏むと、時間・労力がかかり、依頼者に負担がかかるからです。
まずは、迅速、かつ、平和的に解決できるように、相手と交渉を行います。
弁護士という法律の専門家が直接交渉することで、相手を説得できる可能性があります。
認知の調停手続きについて
交渉しても、相手が認知に応じない場合、家庭裁判所へ認知調停を申立てることを検討します。
弁護士に依頼される場合、申立書の作成から家庭裁判所への出席、主張立証等、すべてを弁護士がサポートします。
認知調停では、通常、鑑定が行われます。
鑑定業者は家庭裁判所が選任します。
鑑定の結果、父親であることが確実であれば、相手方が任意に認知に応じなくても審判へ移行し、家庭裁判所が強制的に認知します。
認知がされると、出生のときにさかのぼって法律上の親子関係が生じることになります。
養育費の請求について
認知した場合、養育費はいつから請求できる?
上述のとおり、認知されると、出生のときにさかのぼって法律上の親子関係が生じます。
しかし、養育費は、請求の意思を明確に表示しておかないと、さかのぼって支払ってもらうことが難しくなります。
家庭裁判所は、養育費の始期について、調停申立時など請求の意思が明確になったときとする傾向があります。
例えば、認知されたのが出生後1年後だったとします。
それから養育費を請求すると、出生後1年間の養育費はもらえなくなる可能性が高くなります。
もし、1ヶ月の養育費の額が10万円の場合、1年間分(10万円 × 12か月 = 120万円)の養育費を請求できなくなるのです。
したがって、認知と養育費の問題では、まず養育費を請求する意思を明確にすることが重要です。
なお、当事務所の弁護士は、出生後からの養育費を受け取れるようにするため、依頼を受けるとすぐに相手方に対して、弁護士名で内容証明郵便により養育費を請求します。
これにより、依頼者の請求の意思を明確にし、家庭裁判所において、請求時からの未払い養育費の支払いを可能となるようにしています。
認知後の養育費の公正証書について
養育費の額、支払い方法、期間等について、協議が整った場合、その合意内容を書面にすべきです。
書面にすることで、後日、養育費を支払わないなどのトラブルを防止できます。
また、養育費のように、長期間に渡って継続的に支払ってもらう債権については、公正証書を作成することをお勧めします。
公正証書は、債務名義といって強制執行ができる根拠となります。
そのため、相手が養育費を支払ってくれなくなった場合、給与などを差し押さえることができます。
認知と養育費の調停を同時に行う
相手方が交渉に応じない場合、又は、交渉には応じても適正額を支払わない場合、養育費の調停を申立てます。
また、認知もしていない場合は、認知と養育費の調停を同時に申し立てるとよいでしょう。
養育費は、認知されない限りは法的な支払い義務はありません。
しかし、認知調停を先に提起し、認知後に養育費調停も別途申し立てるとなると、解決まで長年月を要してしまいます。
そのため、当事務所では通常、2つの同時に申し立てて並行して進めていく手法をとっています。
養育費の相場について
養育費については、父母のそれぞれの収入、子供の数、年齢によって異なります。
当事務所では、養育費の目安を素早く知りたいという方のために、養育費の計算シミュレーターをホームページ上に搭載しています。
養育費の目安をすぐに知りたいという方は、ぜひ御覧ください。
認知と養育費についての弁護士費用
認知と養育費の問題については、協議によるのか、調停対応まで必要となるのかで弁護士費用は異なります。
調停対応の場合、弁護士の労力も増すため、追加費用が必要となるのが一般的です。
また、弁護士費用の基準は、各法律事務所によって金額が異なります。
そのため、具体的な費用については相談の際に確認されることをお勧めいたします。
明朗会計の法律事務所であれば、ご相談時にお願いされるとお見積りを出してくれるでしょう。
まとめ
以上、認知と養育費の問題について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
上記のとおり、認知には大きなメリットがあります。
その中でも、養育費は、子供を育てていくために重要なものです。
しかし、実際には相手が認知に応じない、認知に応じても適正な額の養育費を支払ってくれないという問題があります。
また、養育費は遡って支払ってもらうことが難しいため、まずは内容証明郵便を出すなどして請求の意思を明確にしておくことがポイントとなります。
そのため、認知と養育費の問題については、家事事件を専門とする弁護士への早い段階でのご相談をお勧めいたします。
この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?