DV(ドメスティック・バイオレンス)とは?弁護士が解説
DVとは、ドメスティック・バイオレンスの略称で、一般的には配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力のことをいいます。
DVは、力関係の不均衡を利用して相手を支配するものであるという点に特徴があります。
DVは、最悪の場合は被害者の命を奪うこともある重大な人権侵害です。
しかし、家庭等の閉鎖的環境で行われることなどから、表出化しづらく、深刻化しやすいという問題があります。
身体的な暴力のみならず、精神的・経済的・性的な暴力、あるいは恋人間での暴力(デートDV)、いずれの場合であっても、被害を受けている場合はできる限り早く対処をする必要があります。
ここでは、DVの意味や種類、特徴、対処法について解説していきます。
ぜひ参考になさってください。
DVとは?
DVはドメスティック・バイオレンスの略
DVとは、英語のdomestic violence(ドメスティック・バイオレンス)の略称です。
ドメスティックは「家庭内の」、バイオレンスは「暴力」という意味であり、ドメスティック・バイオレンスは直訳すると「家庭内暴力」という意味になります。
ドメスティック・バイオレンスの意味
「ドメスティック・バイオレンス」は、一般的には、配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力を意味する言葉として使われています。
暴力は男性から女性に対して振るわれることが多いですが、女性から男性に振るわれる場合や、同性のカップル間で振るわれる場合もあります。
また、親子の間で起こる暴力も広い意味ではDVに当たります。
暴力には殴る・蹴るなどの身体的な暴力のみならず、侮辱や嫌がらせなどの精神的暴力、性交渉を強要するなどの性的暴力も含まれます。
2001年に制定されたDV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)では、「配偶者からの暴力」(=DV)について、次のように定義されています。
「配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの)」又は「これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」(1条1項)。
「配偶者」は男性、女性を問わず、事実婚や元配偶者(離婚前に暴力を受け、離婚後も引き続き暴力を受ける場合)、生活の本拠と共にする(元)交際相手も含まれます。
また、「暴力」には身体的暴力のみならず、精神的・性的暴力も含まれます。
引用:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律|e-Gov
なぜDVは社会問題なのか?
DVは重大な人権侵害であり、最悪の場合、命にもかかわる深刻な問題です。
一方、DVは家庭内などの閉鎖的な環境で行われるものであり、潜在化しやすいという特徴があります。
DVを受けているということは、他人に打ち明けにくいものです。
また、被害者は、DV被害によって逃げ出す気力を奪われていたり、相手の行為がDVであると認識できない状態になっていることもあります。
そのため、外に助けを求めることができず、救済が遅れることも多いです。
さらに、多くの場合は被害者は女性です。
経済的な自立が難しく、DV加害者の男性と別れることができずにDVに耐え続けてしまう女性も多いです。
これには、男女で賃金その他の格差があるといった社会的な背景も関係しています。
先に触れたDV防止法も、このような問題意識のもとで制定されました。
同法の前文においては、次のことが指摘されています。
- DVが犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず、被害者の救済が十分に行われてこなかったこと
- DVの被害者は多くの場合女性であること
- 経済的自立が困難である女性に対するDVは個人の尊厳を害し、男女平等の妨げになっていること
DVの発生状況
令和4年度の配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数は122,211件で、そのうち118,946件(約97%)は女性からの相談とのことです。
同年度の警察へのDVの相談件数は、84,496件で、そのうち女性からの相談は約73%とのことです。
いずれも、相談件数は概ね年々増加している傾向にあり、近年は高い水準で推移しています。
また、女性が被害者のケースが圧倒的に多いですが、男性が被害者のケースも増加傾向にあるとのことです。
もっとも、先ほども述べたように、DVは潜在化しやすく、相談に至らないケースも多いと考えられます。
そのため、実際のDVの発生件数は、上記の相談件数よりも多いものと推察されます。
引用:内閣府男女共同参画局|配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数等(令和4年度分)
引用:警察庁|令和4年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について
DVの種類
DVには、身体的DV、精神的DV、性的DV、経済的DV、デートDVといった種類があります。
いずれも重大な人権侵害であり、犯罪が成立する場合もあります。
身体的DV(身体的虐待)
殴る・蹴るなど、身体に直接振るわれる暴力を身体的DVといいます。
被害者がケガをする・しないは関係ありません。
身体に直接接触しない場合でも、相手の身体や生命に危害を加えようとする行為は身体的DVに当たります。
- 殴る
- 蹴る
- 押し倒す
- 物を投げつける
- こぶしを振り上げる
- 刃物を突き付ける
- 髪の毛を引っ張る
- 拘束する
精神的DV(精神的虐待)
言葉や態度によって相手を傷つけたり、嫌がらせをしたりする行為は精神的DVに当たります。
精神的暴力はモラハラ(モラル・ハラスメント)と呼ばれていますが、精神的DVは「家庭内モラハラ」と同じ意味となります。
精神的DVは、暴言・侮辱といった乱暴な態様で行われるものが全てではありません。
不機嫌な態度をとって相手を困惑させたり、「君のためだよ」と言いつつ説教を繰り返したりして、相手をじわじわと疲弊させ、コントロールしていくような巧妙なやり方がとられることもあります。
精神的DVは、このようにわかりにくい方法で行われることもある上、被害者にできる傷は目には見えないものです。
そのため、周囲の人や、被害者自身もDV被害を受けていることを認識することができなかったり、「手は出されていないから」と軽く考えてしまうことも多いです。
しかし、精神的DVは、身体的DVと同等又はそれ以上に被害者の心身に多大な影響を及ぼす可能性があり、決して軽視できるものではありません。
- 無視する
- 大声で怒鳴る
- 馬鹿にする
- 「誰のおかげで生活できると思ってるんだ」などと言う
- 交友関係や行動を監視する
- 外出を制限する
性的DV(性的虐待)
相手に対し、性的に危害や苦痛を加える行為は、性的DVに該当します。
夫婦や恋人の間柄であっても、合意のない性行為等や性的に相手が嫌がることをしてはならないのは当然です。
そのような行為には、不同意性交等罪などの犯罪が成立し、刑罰が科される場合もあります。
しかし、非常にデリケートな問題であるため、表出化しにくく、対処が遅れるケースも多いです。
- 嫌がっているのに性行為を強要する
- 避妊に協力しない
- 子どもができないことを一方的に責める
- 中絶を強要する
- ポルノを無理やり見せる
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性的DVについて、詳しくはこちらをご覧ください
(WEB担当の方へ:新規作成予定のTW「性的DV」のリンクをお願いします)
経済的DV(経済的虐待)
お金によって相手を支配したり、相手からお金の自由を奪うことにより、相手に苦痛を与えることは経済的DVに当たります。
「必要な生活費を渡さない」という形で行われることが多いですが、お金に関する暴言や嫌がらせ、過度な浪費なども経済的DVとなります。
お金によって相手を精神的に追い詰めるものであり、モラハラの一種ともいえます。
- 収入があるのに生活費を渡さない
- 相手が外で働いて収入を得ることを妨げる
- 相手の貯金を勝手に使う
- 相手に借金を強要する
- 浪費を繰り返す
デートDV
交際中の恋人からの暴力のことをデートDVといいます。
若年のカップルに起こることが多く、被害者の将来に多大な影響を及ぼすこともあります。
また、SNSを利用した監視や行動制限、嫌がらせなどが行われることが多い傾向にあるという特徴もあります。
- LINE等のSNSで即レスがないと怒る
- SNSで監視する
- 別れたら自殺すると言う
- プレゼントを強要する
- アルバイトのお金を要求する
- 性行為を強要する
- 友達の前などで暴言を吐く
DVの特徴
DVが起こりやすい場面
家庭での夫からのDV
家庭での夫からのDVは、多くの場合、結婚後、又は妊娠・出産など、容易に別れることができなくなったタイミングから暴力が始まるということがほとんどです。
結婚して一緒に暮らし始めてから、家事や家計の管理について事細かに指示するようになったり、子どもができてから、教育に関して「俺の言う通りにしろ」と言うようになったりします。
そして、思い通りにいかないとイライラして、身体的な暴力が始まるケースもあります。
多くの場合、暴力のきっかけは帰宅時に食事の準備ができていなかったとか、掃除が行き届いていなかったなど、ささいなことです。
しかも、夫は、そのような家事の不行き届き自体に腹を立てているのではなく、妻を自分の思い通りに動かすために怒ったり、不機嫌な態度をとったりしているにすぎません。
そのため、妻にはいつ暴力が振るわれるかの予測がつかず、常にビクビクしながら生活しなければならない状態になっていきます。
そうして支配・従属関係が築かれると、DVはどんどんエスカレートしていってしまいます。
彼氏からのDV
彼氏からのDVは、交際直後から束縛という形で表れることが多いと思われます。
例えば、交際しているからいいでしょうと言って位置情報を共有させたり、LINEで行動を報告させるなど、スマホを利用した監視や行動制限が始まることがあります。
また、「交際した=彼女は自分のモノになった」と考え、髪型や服装などを自分好みに指示したり、他の男性と話すことを禁止したり、性交渉を強要したりすることもあります。
彼氏からのDVは、彼女が別れを切り出した後、又は別れた後に深刻化することも多いです。
彼氏が「別れたら自殺する」「(性的関係を持った際に撮っておいた)写真をばらまく」などと言って彼女を脅したり、彼女につきまといストーカー化するといったケースもあります。
妻からのDV
妻から夫に対する暴力は、子育てに対する不安、ホルモンバランスの変動など、外部的な要因が関係しているケースも多いと考えられます。
このような場合、妻の暴力は一時的なものであり、環境が変わるなどして妻の心情が安定すれば、暴力は落ち着くこともあります。
しかし、一度支配・従属関係が築かれてしまうことにより、外部的な要因が取り除かれた後も、暴力(精神的暴力が多い)が継続してしまうケースもあります。
親からのDV
親からの暴力も広い意味ではDVに当たり、18歳未満の子どもに対する暴力は「児童虐待」といいます。
両親間にDVがある家庭では、子どもに対するDVも起こりやすい傾向にあります。
加害者が子どもに対しても暴力を振るい、被害者がそれを傍観せざるを得ない(止めると自分が被害を受けるため)ケースや、被害者が精神的に追い詰められ、子どもを虐待してしまうというケースもあります。
また、子どもに対して直接の暴力がない場合であっても、両親間のDVを子どもに見せることは虐待に当たるとされています。
その他、子育てに対する不安、適切な支援が受けられないこと、あるいは貧困などの社会的な要因が背景となって虐待が起こることもあります。
DV加害者の特徴
支配・コントロールしようとする
DV加害者は、相手を支配下に置き、コントロールしようとします。
相手を対等な存在として尊重することはありません。
自分には相手を支配・コントロールする権利があるという考え方に基づいて、相手を思い通りに動かそうとします。
その手段として、身体的な暴力や脅迫などで直接的に相手に恐怖を与えることもあれば、言葉や態度によって相手の不安や罪悪感をあおるという巧妙な手法が用いられることもあります。
自分は正しいと思っている
DV加害者は、自分は正しく優れており、相手は間違っていて劣っていると考えていることが多いです。
相手の考え方、言動、大切にしているものを全否定したり、不都合なことがあると全て相手のせいにしたりすることがあります。
自分が行っている暴力についても、「相手が悪い」「相手を教育してやっただけ」というように、相手に責任を押し付け、自分の非を認めないことがほとんどです。
外面が良い
DV加害者は、配偶者や恋人など親密な関係にある人の前では暴力的・威圧的であっても、その他の人の前では大人しく常識的に振る舞っていることが多いです。
そのため、周囲の人からは高い評価を受けていることも少なくありません。
そうすると、被害者は周囲の人にDVを相談することを躊躇してしまいがちになります。
また、勇気を出して相談したとしても、「あの人がそんなことするはずがない」「あなたにも悪いところがあるのでは?」などと言われてしまい、解決にならないこともあります。
束縛する
DV加害者は、被害者が自分の支配下から逃げ出さないよう束縛することが多いです。
相手のスマホの中身を勝手にチェックしたり、外出を制限したり、頻繁に電話をかけて居場所を確認するなど、監視・行動規制をすることがあります。
また、特に夫から妻に対するDVのケースでは、夫が妻の自立を阻止しようとすることも多いです。
妻が外で働くことなどを禁止したり、妻の交友関係を制限したりして、妻を社会から孤立させ、夫に依存しなければ生きられないように仕向けるというケースもあります。
DV被害者の特徴
DV被害者の方は、素直、責任感が強い、献身的、罪悪感を抱きやすい(「自分が悪かったのではないか」と考えがち)といった特徴を持っていることが多いです。
また、自分に自信がなく、他人に屈しやすいという特徴を持つ方も、DV加害者からコントロールしやすいと思われてターゲットにされてしまうことがあります。
被害者の方は、上記のような特徴から、被害を受けていても「自分が悪いのではないか」と考えてしまい、被害を自覚できないということも多いです。
しかし、次のような状態になっている場合は、被害を受けている可能性が高いです。
当てはまるものがある場合は、一人で抱え込まず、専門機関や専門家に相談するようにしてください。
DVへの対処法
別居を検討する
DVの内容や被害者の状況にもよりますが、DV被害を受けている場合は、加害者と別居して物理的な距離を置くことが最重要と思われます。
殴る・蹴るなどの身体的な暴力を受けている場合は、最悪、命にかかわります。
精神的な暴力の場合であっても、被害を受け続けると精神が崩壊する可能性があります。
「手は出されていないから」などと軽く考えず、早期に別居することを検討した方がよいでしょう。
必ずしも離婚を前提に別居しなければいけないというわけではありません。
まずは別居をして、安全を確保してから、冷静な状態で離婚を考えるという方法もあります。
加害者から行動を制限されていたり、経済的な自由を奪われていたりすると、別居が非常に難しく感じられることもあると思います。
そのような場合でも、まずはDV問題に詳しい弁護士にご相談ください。
安全な別居方法、別居先、必要な持ち物、別居後の見通しなどについて助言を受けることで、具体的な対応策がわかるようになります。
離婚を検討する
加害者と夫婦関係を清算したいという場合は、離婚を検討することになります。
離婚をするためには、相手と合意ができない場合は「離婚原因」が必要になります。
「離婚原因」とは、離婚が認められる条件として法律に定められている事項のことです。
この点、DVは、離婚原因のうち、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)に該当する可能性があります。
引用:民法|e-Gov
しかし、DVの内容や被害の状況は事案によって異なるため、全てのDVが離婚原因になるとは限りません。
例えば、殴る・蹴るなどの身体的な暴力が繰り返され、被害者が入通院を伴う重傷を負ったような場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められる可能性があります。
一方、身体的な暴力がない場合や、身体に傷跡が残らない軽微な暴力の場合は、離婚原因があると認めてもらうことは容易ではありません。
また、加害者がDVを否定している場合は、被害者側でDVがあったことを証拠によって裏付ける必要がありますが、有力な証拠を押さえることが難しいケースもあります。
さらに、DV事案では、被害者の方の安全確保が最優先となることや、加害者がDVを認めずにスムーズに離婚協議が進まないケースが多いことなどから、DVのない事案とは異なる対策が必要になります。
そのため、DV加害者との離婚を検討する場合、まずはDV問題に詳しい弁護士に相談し、具体的なアドバイスをもらうことをおすすめいたします。
保護命令の申立てを検討する
保護命令とは、DV加害者からの暴力を防ぐために、被害者からの申立てにより、裁判所が加害者に対し、被害者に接近してはならないこと等を命ずる命令です。
相手からの暴力が悪質で、今後も継続する恐れがある場合は、保護命令の申立てを検討する必要があります。
保護命令には、被害者への接近禁止命令、自宅からの退去命令、電話等の禁止命令、被害者の子への接近禁止命令、被害者の親族等への接近禁止命令があります。
これらを事案に即して使い分けて、申立てることがポイントとなります。
申立ての要否の判断や、申立手続きは専門知識がないと難しいのが実情ですので、詳しくは専門の弁護士にご相談ください。
なお、保護命令は、今後の暴力等を防止するためのものであり、現に発生している緊急事態に対処するものではありません。
相手が現に暴力を振るってきた場合など、緊急事態の場合は、すぐに警察に通報して身の安全を確保するようにしてください。
慰謝料請求について
DVを理由に離婚する場合は、DVによって受けた精神的な苦痛を償うためのお金として慰謝料を請求することができます。
ただし、DVの内容や被害状況は事案によって様々であり、全てのケースで慰謝料が認められるとは限りません。
慰謝料が認められるかどうかは、DVの態様や被害の大きさなど具体的な事情に基づいて個別に判断されることになります。
身体的な暴力が繰り返されたようなケースでは慰謝料が認められやすいですが、身体的な暴力がない場合であっても内容等によっては慰謝料が認められることがあります。
また、慰謝料が認められる場合の金額は50万円〜300万円程度のことが多い傾向にありますが、これもDVの内容や被害の大きさ、結婚期間など様々な事情が考慮された上で決められます。
証拠を集める
慰謝料を請求するためには、DVの証拠が必要になります。
DVの証拠としては、次のようなものがあります。
暴力行為を受けている状況を録画・録音したものが証拠となります。
ポケットにICレコーダー等を忍ばせておいたり、スマホをうまく利用したりするとよいでしょう。
DVを受けた直後の傷の写真なども証拠となります。
自分の傷跡であることがわかるように、傷跡と顔が一枚におさまるように撮影するようにしましょう。
DVによるケガやメンタル不調についての診断書やカルテも証拠になります。
DVによりケガをした場合や、メンタル不調が生じた場合は、病院を受診し、医師にDVの内容等を伝えるようにしましょう。
加害者からメールやLINEで暴言等を送られてくる場合は、それ自体が言葉による暴力の証拠となります。
また、ご自身が家族や友人に、DVについてメールやLINEで相談をしている場合は、それらもDVの間接的な証拠となり得ます。
スクリーンショットなどで保存しておくようにしましょう。
日記や家計簿なども、継続的に記録されているものであれば、生活の様子を表すものとして証拠となり得ます。
録画や写真などの客観的な証拠と比べると証拠としての価値は劣りますが、他の証拠と組み合わせることによりDVを立証することもできる場合もあります。
出来事があった都度、できるだけ詳細に記録しておくことがポイントです。
証拠を押さえることは、裁判で離婚について争う際にも重要なポイントとなります。
必要な証拠や効率的な集め方は、事案により異なりますので、詳しくは専門の弁護士に相談されるとよいでしょう。
DVを相談できる窓口
配偶者暴力相談支援センター
DV被害に関する相談やカウンセリング、一時保護、自立支援などを行っている公的機関です。
都道府県が設置する婦人相談所の他、女性センター、福祉事務所などの公的施設が支援センターの役割を果たしている自治体もあります。
DV相談ナビダイヤル・DV相談+(プラス)
全国共通の電話番号・#8008に電話をかけると、最寄りの配偶者暴力相談支援センターに自動転送され、相談等をすることができます。
DV相談+では、電話・メール(24時間)の他、チャットでも相談等をすることができます。
引用:内閣府|DV相談+
DVに強い弁護士
どこに相談してよいかわからない場合や、離婚を考えているという場合は、DV問題に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
DV被害を受けていると、相手と関係を修復したいのか、別居ができればよいのか、離婚したいのかなど、ご自身でも何を望んでいるのかわからない状態になることもあります。
そのような場合でも、専門の弁護士に状況を整理してもらい、今後の見通しを示してもらうことで、具体的な対処法が見つかることもあるでしょう。
別居のサポート
弁護士に別居のサポートを依頼した場合は、別居と同時に加害者に対して弁護士から通知を送り、今後は弁護士が窓口になること、及び被害者への直接接触を禁止する旨申入れることができます。
それにより、別居後に加害者が接触してくることをある程度防止することができます。
また、その後は弁護士が窓口となるので、ご自身で直接加害者とやり取りする必要がなくなり、肉体的・精神的な負担を大幅に軽減することができます。
DV事案では、危険性が高い場合、相手に居場所を知られないように細心の注意を払う必要があります。
また、保護命令の申立てを検討するべきケースもあります。
DV問題に強い弁護士であれば、これらの安全確保のための対策についてもきめ細やかにサポートしてくれるでしょう。
なお、別居後は、相手よりも収入が少ない場合、相手に対して生活費(「婚姻費用」といいます。)を請求することができます。
この婚姻費用についても、早期に適正額を受け取れるようにすることがポイントとなりますので、弁護士に請求・交渉してもらうとよいでしょう。
離婚のサポート
DVの加害者と被害者が離婚に向けて冷静・対等に話し合うのは難しい場合が多いです。
また、加害者と被害者が直接やり取りをするのは、安全確保の観点からも避けるべきです。
そのため、離婚に向けて進めていく場合は、弁護士に間に入ってもらうようにするとよいでしょう。
DV事案では、加害者がDVを認めず、離婚協議がスムーズに進まないケースも多いです。
このような場合でも、弁護士が間に入って交渉をすることにより、裁判に至ることなく、話し合いで早期に解決できることがあります。
また、離婚の際には、離婚の可否の他にも、親権、養育費、財産分与、慰謝料などの離婚条件についても慎重な判断が必要になります。
適切な条件で離婚を成立させるためには、専門知識や交渉技術が不可欠となりますので、弁護士のサポートを受けることを強くおすすめいたします。
DVについてのQ&A
DVが起こる原因は何ですか?
DVの原因としては、加害者の相手に対する支配やコントロールの欲求があると考えられます。
そして、その根幹には、相手を自分のモノ(所有物)のように捉える考え方や、相手は自分に従うべき(自分には相手をコントロールする権利がある)といった価値観があると考えられます。
被害者の方は、「自分が悪いから暴力を振るわれる」「自分がもっとちゃんとすれば相手も変わってくれるはず」「暴力を受け入れている自分が悪い」など、自分に原因があると思ってしまうことも多いです。
しかし、DVは加害者の考え方に原因があるのであり、被害者の方に原因があるわけではありません。
また、DVをしてしまう理由として、加害者が育った家庭環境(両親間でDVがあった、虐待を受けていたなど)や、仕事など家庭外でのストレス等が挙げられることがありますが、必ずしもそうであると断定できるものではありません。
加害者が上記のような考え方を持った要因の一つに家庭環境が関係している可能性はありますが、人の価値観はそれ以外の様々なものが関係して形成されるものであるため、必ずしも家庭環境が唯一の原因とは言い切れないでしょう。
また、DVは、感情的・衝動的に行われているように見えることもありますが、ほとんどの場合、加害者は冷静で、自制が利かなくなっているわけではありません。
酷い暴力を振るいながらも、近所の人や警察が訪ねてきた途端に笑顔で穏やかに対応することができたり、家の中で暴れても、自分の物は絶対に壊さないように気を付けているという加害者も多いです。
そのため、被害者が加害者を怒らせないように注意したり、ストレスをケアしてあげたりしたとしても、DVがおさまることは基本的にはありません。
DVを止めるには、加害者自身が自らの考え方の問題を自覚し、改善に取り組むしかありませんが、それは非常に難しいことです。
保護命令は安全ですか?
保護命令に違反した場合は、刑罰(懲役又は罰金)が科されます(DV防止法29条)。
引用:配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律|e-Gov
すなわち、保護命令が発令されたにもかかわらず、加害者がそれに従わずに被害者に接近等をした場合は、犯罪になるということです。
通常の人であれば、刑罰という強い制裁が科されるようなことを敢えてしようとは考えませんので、保護命令には強い抑止効果があるといえます。
そのため、保護命令が発令されれば一定程度は身の安全を確保することができると考えられます。
しかしながら、他の犯罪と同様に、法律で禁止され刑罰が定められている行為であっても、その行為が絶対に起こらないという保障はありません。
相手が刑罰を受けても構わないと考え、保護命令に違反する行為をする可能性はゼロではないのです。
また、保護命令が発令されると、被害者の住所等を管轄する警察に連携され、安全確保のためのサポートを受けることができますが、これも加害者による接近等を完全に防ぐことを保障するものではありません。
そのため、保護命令が発令されれば絶対に安全とは言い切れません。
したがって、保護命令が発令されたとしても、引き続き、相手に居場所を知られないようにしたり、常に警戒を怠らないようにしたりするなど、注意を払うことが大切です。
まとめ
以上、DVについて、意味や種類、特徴、対処法などについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
身体的DVに限らず、精神的DV、経済的DV、性的なDV、あるいは恋人からのDVも、被害を受け続けると取り返しのつかない深刻な事態になりかねません。
被害を受けている場合は、できるだけ早く、加害者と物理的な距離を置いて安全を確保するなど、対処をする必要があります。
具体的な対処法は、DVの内容や被害者の方の置かれた環境により異なりますので、DV問題に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。
自分がDV被害を受けているのかどうかわからないという方や、経済的な理由などから加害者と別れることが難しいと感じている方も、お早めにご相談ください。
当事務所には、DV問題に注力する弁護士のみで構成される離婚事件チームがあり、DV事案を強力にサポートしています。
LINEなどによるオンライン相談も実施しており、全国対応が可能です。
DVについてお困りの方はお気軽にご相談ください。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?