共有財産を勝手に処分するのを防ぐ方法【弁護士解説】
離婚成立前に、共有財産を勝手に処分するのを防ぐために、法が準備している方法として、処分禁止の仮処分と差押えがあります。
裁判所が認めた場合には、勝手に不動産や預貯金を処分することができなくなります。
事例
夫が勝手に不動産を処分しようとしていて困っています。
夫は、一方的に物事を決めてしまう性格です。
そんな夫が、突如として、私に離婚を求めてきました。
そして、結婚してから買った彼名義の不動産を処分するから1か月以内に退去しろと言ってきたのです。
私は、納得できませんでしたが、夫の性格からして、本当に売却しかねない気がします。
法律上、何かとれる対策はありませんでしょうか?
処分禁止の仮処分を行うことで、売却を阻止できます。
この問題について、離婚と財産分与の問題に詳しい当事者の弁護士が解説いたします。
共有財産を勝手に処分するのを防ぐ方法
離婚成立前に、共有財産を勝手に処分するのを防ぐために、法が準備している方法として、処分禁止の仮処分と差押えがあります。
処分禁止の仮処分とは、民事保全の一種です。
民事保全というのは、勝訴の見込みがあることを示し、勝訴判決の実効性を確保するために行うものです。
具体的に説明しましょう。
離婚に伴い、共有財産として、夫名義の時価1000万円の不動産と夫管理の1000万円の預貯金があるとします。
この場合、妻は離婚に伴い1000万円を財産分与として得ることができるという見通しが立ちます。
しかしながら、財産分与を争っている間に、夫が不動産を1000万円で売却し、さらに、それを浪費で失ってしまうかもしれません。
それを防ぐために、財産分与請求権を保全するために、法は2つの方法を用意しています。
一つは、夫名義の不動産について、処分禁止の仮処分です。
もう一つは、夫の預貯金に対する仮差押えです。
いずれも、裁判所が認めた場合には、夫は勝手に不動産や預貯金を処分することができなくなります。
処分禁止の仮処分や仮差押えを行う場合の注意点
処分禁止の仮処分や仮差押えを裁判所が認めた場合には、夫は勝手に不動産や預貯金を処分することができなくなりますが、いくつか注意点もあります。
まず、処分禁止の仮処分や仮差押えを行うには、裁判所に担保を立てる必要があります。
この点、財産分与請求権を被保全権利とする場合には、一般の民事保全よりも低額になる傾向です。
請求債権額の1割、仮処分対象不動産の評価額の1割から2割程度で認められることが多いようです。
上記の例であれば、100~200万円程度の担保を準備することが必要となる見込みです。
次に、仮処分が認められても、安心するのはまだ早いです。迅速に執行する必要があります。
具体的には、送達から2週間以内に執行に着手しなければなりません。
執行とは、例えば、処分禁止の仮処分であれば、その旨の登記ということになります。
また、仮差押えであれば、銀行に対し払い戻しを禁じる命令を裁判所が出すことになります。
このように、保全という方法は、担保が必要ですし、また、スピードが大切です。
財産分与請求権を保全するために、何か対策をとっておきたいという方は、この問題に詳しい弁護士が在籍している当事務所にご相談ください。
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