子供が発達障害の場合に離婚で考慮すべきこと【弁護士が解説】
子供が発達障害の場合の夫婦が離婚を検討される際、親権者や面会交流といった問題を考える上で、お子さまの発達障害という状況を考慮することがとても大切です。
以下、弁護士が詳しく解説してまいります。
発達障害とは
発達障害と一口に言っても症状は個人によって異なります。また、主な診断名としても、自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害などがあります。
発達障害の要因としては、かつては「親の愛情不足」などと言われていました。しかし、現在の研究では、遺伝子の要素が強く、先天的な原因であると考えられています。
子供が発達障害だった場合の夫婦の離婚率
調査によると、発達障害の子どもをもたない夫婦に比べ、発達障害の子どもをもつ夫婦の離婚率は高いといわれています。
考えられる理由は、社会的に未だ発達障害に対する理解が進んでいないため周囲のサポートが得られにくいことや、夫婦間の考え方にズレが生じる可能性が高いことなどが挙げられます。
つまり、その家族が置かれている状況や夫婦の考え方など、子どもをサポートしていくという視点がどちらか(又は双方)に欠けているために、離婚に踏み切るということが多いと思います。
そのため、発達障害の子どもをもつ夫婦の離婚を考える際には、発達障害の特性を十分に理解し協議をする必要があります。
子供が発達障害だった場合の離婚時のポイント
親権者をどうするか
裁判所が親権者をどちらにするかについて判断する場合、子どもの利益と福祉を基準として決定しています。その基準を一般的にいえば、父母側の事情、子ども側の事情などを比較考慮して総合的に判断するということになります。
親権者を判断する際の考慮要素としては、以下をご覧ください。
発達障害の子どもについては、環境の変化に特に敏感です。そのため、なるべく現在の生活環境や監護状況を継続するように配慮する必要があります。
仮に、親権者の決定によって、現在の住居等から転居する必要があるとしても、転居後の住居や環境に対応できるように、少しずつ馴れさせるような特別な配慮が必要となります。
このような場合には、相手方にも十分に理解してもらい、協力をしてもらう必要があります。
また、発達障害の子どもを監護するためには、発達障害に対する理解が不可欠です。
発達障害について十分に理解しているか、また、十分な監護能力があるかという視点も大切になります。
面会交流の実施
面会交流は子どもの健全な成長にとって非常に重要なことであると認識されており、そのため、子どもの利益(福祉)のために行わなければならないと考えられています。
そして、どのように面会交流を実施することが子どもにとって最善であるかを検討することが重要となります。
しかし、発達障害の子どもの場合には、面会交流をすることでかえって子どもに混乱を招いたり、症状が悪化するような事態も考えられます。
そのため、まずは、相手方や調停委員等、関わる方々に発達障害について十分に理解をしてもらい、その上で適切な面会交流の実施条件を定めるべきでしょう。
さらに、子どもが新たな環境に慣れるまでは面会交流の実施を待ったり、場合によっては、試行的面会交流の実施等により、子どもの心身の状況が安定しているか等を観察したりと子どもに負担がかからないよう注意する必要があります。
その上で、子どもにとって無理のない面会交流を個別具体的に決定すべきといえます。
養育費の算定
養育費を算定する際には、双方の収入を明らかにする必要があります。
発達障害の子どもの世話をするために、一方が専業主婦(主夫)になるというケースは多いです。そのため、この場合、現実的な収入は「0」となります。
しかしながら、現実に働いていない場合にも、潜在的稼働能力が考慮される場合もあります。
養育費の算定上、収入が「0」となる場合としては、権利者が無職で収入がなく、かつ、自身の健康状態や監護養育している子どもが幼かったり、病気等のため、仕事について収入を得ることができない場合とされています。
そこで、収入を「0」と主張するためには、発達障害の子どもを監護養育するために仕事すること困難であり、収入を得ることができないことを主張すべきでしょう。
また、発達障害の子どものために、特別に支出することが予想されるものについては、協議段階においてもこれを盛り込んだ形で養育費を算定したり、将来、特別な治療費等がかかった場合には別途協議するという条項を定めるべきでしょう。
まとめ
発達障害の子どもをもつ親が離婚する場合には、子どもの特性、心身の安定等について特に配慮する必要があります。
当事務所は、離婚後の生活についても充実したサポートを致します。離婚後の生活に不安がある方は、一度当事務所までご相談にいらしてください。
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