LINE(ライン)やメールは不貞行為の証拠になりますか?
内容によっては不倫(不貞行為)の証拠になります。
不倫(不貞行為)とは?
不倫(不貞行為)とは、異性と性的な関係を結ぶことをいいます。
不倫(不貞行為)は、裁判で離婚が認められる原因となりますし、また、慰謝料請求の根拠ともなります。
そして、一方配偶者の不倫(不貞行為)を理由に離婚や慰謝料を請求するためには、基本的には一方配偶者と異性とが性交渉を行ったことを証明していく必要があります。
不倫(不貞行為)を立証するためには?
ただし、直接的に性交渉を証明するには、行為の様子を撮影した動画などがなければならず、そのようなものが証拠としてあるケースは非常にまれです。
それではどのようにして裁判などでは証明しているのでしょうか。
この証明をする際に定番なのは、調査会社、いわゆる探偵に依頼して撮った写真です。
この写真も、ただ単に二人が仲良く腕を組んでいる場面が写っているというだけでは足りません。
ラブホテルに入って出てくる写真や、一方の自宅に夜入り、宿泊して朝帰っていくようなシーンが写っている写真でなければなりません。
そうしなければ性交渉をしたことを認めることができないからです。
以上のことを前提とすると、LINEやメールのやりとりであっても、性交渉があった事実を証明することができる内容であれば、不倫(不貞行為)の証拠になりえます。
具体的に必要な証拠は?
具体的には、そのLINEやメールのやりとりから、ホテルに行ったことや、いずれかの家に宿泊したような経緯がわかり、その次の日に、たとえば「昨日は気持ち良かった。」などというやりとりがなされており、通常そのやりとりからすると性行為に及んでいるだろうと考えることができる場合です。
もっとも、LINEやメールのやりとりが証拠として弱いところは、表現が曖昧であることが多いため、相手からの言い逃れができてしまうことだといえます。
たとえば、「昨日は激しかったね。」などという発言があったとしても、何が激しかったのかが判然としません。
やりとり全体をみてその「激しかった」ことが性行為であったといえなければならないのです。
そうすると、LINEやメールのやりとりで不倫(不貞行為)を立証する為には、以上のような性行為を認めることができるようなやりとりがハッキリと出ていないといけませんから、証拠として用いることのハードルは決して低くはないのではないかと思います。
不貞行為の立証方法とは?
LINEやメールのやり取りから相手の不貞行為が発覚したとして、次に、それをどのようにして証拠とするかが問題となります。
すなわち、相手の不貞行為が明らかになったとしても、相手が不貞行為の事実を否定した場合、不貞行為を主張する側が立証しなければなりません。
もし、立証できなかった場合、裁判所は相手の不貞行為を認定してくれません。
そうすると、真実は闇に葬られ、悔しい思いをしなければなりません。
そのため、どのようにして立証するかはとても重要です。
したがって、ここでは、代表的な立証方法に関してメリットやデメリット等を解説いたします。
証言・陳述書
裁判等において、「不貞行為を裏付けるLINEやメールのやり取りを見た」という証言がなされることがあります。
証言とは、法廷において、裁判官の前で、何らかの事柄が事実であること(又は事実でないこと)を証明するため、自己が経験したこと等を述べることをいいます。
証言は、裁判所において、嘘をつかないという宣誓のもと行います。
また、当事者の証言の場合、虚偽の陳述を行うと過料(10万円以下)の制裁があります(民事訴訟法209条1項)。
当事者以外の第三者の証言の場合は、虚偽の陳述を行うと偽証罪(3月以上10年以下の懲役)に問われることとなります。
このようなペナルティがある中での証言は、信用性があり、証拠価値が高いようにも思えます。
しかし、執筆者の個人的な感想としては、裁判所は証言について、証拠としての重要な価値を認めていないのが実情です。
すなわち、このような制裁があるとしても、「証言には嘘が混じっている」との前提で判断しているものと考えられます。
したがって、他に客観的な証拠がない中で、証言のみで不貞行為を立証するのは難しいと言えるでしょう。
もっとも、証言が無意味というわけではありません。証言は、不貞行為の具体的な状況を詳しく説明できるため、客観証拠を補う役割があります。
そのため、裁判においては、訴訟の終盤ころになると尋問が行われるのが通常です。
尋問では、少しでも信用性を増加させるために、できるだけ具体的に陳述するというのがポイントです。
例えば、「不貞行為をうかがわせるやり取りがあった」という陳述よりも、「『この前行ったラブホテル最高だったね』というLINEのメッセージを夫が交際相手の女性に送っていました」の方が具体性があります。
また、尋問に先立ち、陳述書を裁判所に提出します。
陳述書は、当事者が尋問において陳述しようとしている内容やその他主張全般について記載します。
通常は、弁護士が依頼者から事実関係をヒアリングして、陳述書を作成し、依頼者本人が陳述書に署名押印して裁判所に証拠として提出します。
この陳述書も証言と同様、他の客観証拠を補充する役割があります。
相手のスマホ等の写真
LINEやメールで不貞行為を立証する場合、実務上、証拠としてよく提出されるのは相手のスマホの写真です。
すなわち、LINE等のやり取りをスマホの画面に表示し、それを被写体として、自分のカメラで撮影するという手法です。
カメラは、現在、自身のスマホで撮影される方が多いですが、これ以外にもデジカメ、フィルムカメラなどもあります。
このようなスマホ等の写真は、基本的には証拠価値が高いと思われます。
不貞行為の存在をうかがわせるLINE等の写真は、証言の場合と異なり、嘘や誤解が入り込む余地がありません。
したがって、写真に写っているメッセージのやり取りがなされていたことについては、証明可能と考えます。
もっとも、スマホ等の写真は、証言の場合と比べると証拠の取得が簡単ではありません。
すなわち、相手がいつもスマホをそばに置いている場合、相手に気づかれずにLINE等を表示することは容易ではありません。
また、相手がスマホにパスワードを設定している場合、LINEやメールを確認するのは不可能でしょう(パスワードを不正に入手してアクセスした場合、不正アクセス禁止法に抵触する可能性もあります。)。
不貞行為とは直接関係がないやり取りも、全体的な印象から不貞行為が認定される可能性があるため軽視はできません。
しかし、肝心の不貞行為をうかがわせるやり取りを撮影しないと立証困難となるので注意が必要です。
LINEやメールのやり取りの部分のみを拡大して撮影すると、裁判等において、相手から「自分のやり取りではない」などと反論される可能性があります。
そのため、できるだけ相手のスマホを写るようにして撮影すると良いでしょう。
LINEやメールでは、送受信の日付や時間も重要な情報です。
いつ、そのメッセージを送受信したかで、不貞行為の特定が可能となるからです。
LINE等でメッセージが長く、画面に収まりきれない場合、スクロールして前後関係がわかるように撮影した方がよいでしょう。
静止画の場合、メッセージの前後関係が不明となることがあり、不貞行為の立証ができなくなる可能性があります。
写真の画像データを削除してしまうと、いざというとき、証拠として提出できなくなります。
スマホの場合、うっかり削除してしまったり、破損するなどしてデータを見れなくなる可能性があります。
そのため、バックアップを取るなどしておいた方が安心できるでしょう。
画像データの場合、撮影日などの情報がデータに残っているので確認可能ですが、フイルムカメラの場合はデータに残すことができません。
そのため、写真の裏などに、撮影日時等の情報をメモしておくとよいでしょう。
スクリーンショット
スクリーンショットとは、相手のスマホやPCの機能を使って、相手のスマホ等の画面の全部又は一部を写した画像のことを言います。
基本的には、上記のスマホ等の写真で解説したことが当てはまりますが、この方法は、スクリーンショットのデータが相手のスマホ等に保存されるため、それを証拠と入手するためには、相手のアプリやメールを使って自分の端末に送信する必要があります。
そのため、スマホ等よりもさらに難易度が高いと思われます。
また、相手のスマホの画面のみしか移すことができないため、スマホの本体を被写体とすることができません。
そのため、スクリーンショットは、スマホ等の撮影する機器を持っていないときでなければ、行う意味が乏しいと思われます。
動画
相手のスマホ等にLINEやメールを表示させて、それを動画撮影するという方法です。
動画については、スマホの動画機能を使って撮影するのが典型例ですが、ビデオカメラなどでも可能です。
動画については、上述した写真の解説と基本的には共通しています。
動画の場合、写真とは異なり、メッセージが長い場合、スクロールさせていく様子を撮影することで、「メッセージの前後関係がわかりやすい」というメリットがあります。
もっとも、動画の場合、静止画と比べて撮影の画像が荒くなって視認性が悪くなる可能性があります。
裁判所に証拠として提出する際は、動画データの他に、動画の一部(不貞行為の決定的な部分)を静止画として提出することをお勧めしています。
このようにして提出すると、裁判官がいちいち動画を再生しなくても、記録を見てひと目で確認できるので、裁判官に理解してもらいやすいと思われます。
まとめ
上述したLINEやメールの立証方法をまとめると、下表のとおりとなります。
イメージですので、ケースによって異なります。
証言・陳述書 | スマホ等の写真 | スクリーンショット | 動画 | |
---|---|---|---|---|
証拠価値 | × | ◎ | ◯ | ◎ |
難易度 | 低い | やや高い | 高い | やや高い |
注意点 | 具体的に陳述する | 相手のスマホごと撮影するなど | - | 視認性が悪くならないよう気をつける |
不貞行為の証拠を押さえるメリットとは?
不貞行為を証明する価値を持つ証拠は、上記のとおり、簡単には手に入りません。
この記事をご覧の方は、「そんなに簡単には入手できない証拠をどうして押さえる必要があるのか?」と疑問に感じる方もいらっしゃると思います。
そこで、以下、不貞行為の証拠を抑えるメリットについて解説いたします。
慰謝料の請求が可能となる
配偶者が不貞行為を行った場合、当該配偶者とその不貞相手に対して、不貞行為に基づく慰謝料を請求することができます。
また、その不貞行為が原因となって離婚に至った場合、離婚に基づく慰謝料を請求することが可能です。
慰謝料請求とは、不貞行為など、加害者の不法行為によって精神的な苦痛(損害)を受けた方が加害者に対してその損害の賠償を求める権利をいいます。
財産的な損害(目に見える損害)と異なり、精神的な損害(目に見えない損害)ですので算定が難しく、裁判例においても、賠償額の範囲は数十万円から1000万円を超える事案もあるなど、ケース・バイ・ケースと言えます。
そのため慰謝料の額を正確に予測することは難しいのが現状ですが、執筆者の感覚として、通常のケースの離婚慰謝料は200万円から300万円程度が多いと思われます。
また、離婚まで至らず、夫婦関係を修復する場合の不貞慰謝料の場合、100万円から200万円程度が多いようです。
なお、慰謝料の額の相場や考慮される要素などについての詳しい解説はこちらをご覧ください。
不貞行為があった場合、慰謝料は配偶者に対してだけではなく、その相手に対しても請求可能です。
不貞行為は、配偶者だけで行うことは不可能であり、常に相手が必要です。
このような共同不法行為によって、損害が発生した場合、その損害賠償債務は「不真正連帯債務」と言われています。
この不真正連帯債務の特徴は、弁済以外の事由が他の共同不法行為者に影響を及ぼさないということです。
すなわち、不貞行為の被害者は、配偶者及び不貞相手のいずれに対しても、その損害の全額を請求することが可能です。
例えば、配偶者に対しては慰謝料を請求せず、不貞相手に対してだけ全額請求するということも可能です。
しかし、配偶者又は不貞相手のいずれかが慰謝料を全額支払った場合、その損害が回復されるので、それ以上の請求はできないこととなります。
不貞行為があった場合、正式な裁判を起こすよりも、示談交渉などの裁判外の交渉の方が慰謝料が高額化する傾向にあります。示談交渉による慰謝料の実際の事例についてはこちらをご覧ください。
裁判の場合、一般に解決まで長期間を要することや精神的・肉体的な負担が増加します。
そのため加害者側が示談交渉による早期解決を重視し、増額交渉に応じてくれやすいということが原因にあると考えられます。
離婚の請求が可能となる
日本では、相手が離婚に応じてくれれば協議離婚が成立し、わざわざ裁判にする必要がありません。
しかし、相手が離婚に応じてくれない場合は最終的には裁判となります。
裁判において、裁判所は「離婚原因」がないと離婚判決を出してくれません。
離婚原因とは、民法に規定されている次の5つの事由です(770条1項)。
- 相手の不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上生死不明
- 回復しがたい精神病
- 婚姻を継続し難い重大な事由
上記のうち、「婚姻を継続し難い重大な事由」には、モラハラ、性格の不一致、嫁姑問題など様々なケースが考えられますが、執筆者の感覚として実際に認められる可能性が高いのは長期間の別居があるくらいです。
その他のケースでも程度が酷い場合は離婚原因となり得ますが、現実には立証のハードルがあります。
また、生死不明、回復しがたい精神病、悪意の遺棄については、稀なケースであり事案としては多くありません。
このような実情から、現実に離婚判決が出る可能性が高いのは、不貞行為がある場合と長期間の別居があるケースと考えられます。
したがって、不貞行為がある事案において、別居期間が長期に及んでいないケースの場合、相手の不貞行為を立証できなければ離婚判決を出すのは基本的には難しいといえるでしょう。
そのため、このようなケースでは、離婚判決を出すために、不貞行為の証拠は極めて重要となります。
なお、離婚原因についての詳しい解説はこちらのページをご覧ください。
相手の離婚請求が棄却できる
相手が不貞行為を行っている事案で、もし、相手の方から離婚訴訟が提起されたら、どうなるでしょうか。
上記のとおり、別居の年数がある程度経っていれば、離婚判決は出るのが基本です。
しかし、裁判所は、自ら不貞行為を行った者(「有責配偶者」といいます。)からの離婚請求には消極的です。
裁判所は、不貞行為を行って夫婦関係を破綻させた事案において、その原因を作った配偶者の離婚請求は、信義誠実の原則に反すると考えています。
そして、このような有責配偶者からの離婚請求の事案では、次の3つの要件をクリアしないと離婚判決は出さないというスタンスです。
- 長期間の別居
- 未成熟子がない
- 離婚によって不貞された側の配偶者が過酷な状況に陥らないこと
上記のうち、1.の長期間の別居は基本的には10年程度必要だと考えられております。
これは、離婚原因の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する別居期間と比較して、かなりの長期間が必要となることを意味します。
また、長期間の別居の要件をクリアしても、未成熟子がいる場合、離婚判決は出ません。
このことから、有責配偶者からの離婚請求は決して容易ではないといえます。
したがって、離婚したくない場合も、相手の不貞行為の証拠を押さえることは大きなメリットがあるといえるでしょう。
なお、上記3要件についての詳しい解説はこちらのページをご覧ください。
離婚交渉を有利に進めることができる
上記のとおり、相手が不貞行為を行っている場合は慰謝料請求や離婚裁判を起こせます。
また、こちら側が離婚を望まない場合、相手の離婚請求を拒むことができます。
このような直接的な効果の他に、相手の不貞行為の証拠を押さえることで、交渉上の立場が上になるため、離婚条件の交渉を有利に進めることができる場合があります。
例えば、相手が有責配偶者の場合、上記のとおり、相手の離婚請求は容易には認められません。
すなわち、相手が離婚するためには、被害者側配偶者に協議離婚に応じてもらうよう努力するしか方法がない場合が多いのです。
被害者側配偶者は、このように交渉力が強いので、例えば、慰謝料、財産分与、養育費、面会交流などの諸条件において、有利な条件で解決できる可能性があります。
まとめ
以上のように、相手の不貞行為の証拠を押さえることは様々なメリットがあります。
結果的に、証拠を使わないという可能性もあるでしょう。
しかし、相手が不貞行為を否定してきたりした場合、証拠がないと真実を明らかにできないだけではなく、不当な結果に終わってしまう可能性があります。
したがって、不貞行為の証拠を集めておくことは、離婚問題における重要なポイントと言えるでしょう。
不倫(不貞行為)を匂わせるようなLINEやメールを発見してしまったら?
そのようなやりとりを発見してしまい、不倫(不貞行為)の証拠となるのかどうか迷われることもあると思います。
そのような場合にはまずは弁護士に相談されることをお勧めします。
証拠を法的にどのように使っていくかは、弁護士でなければなかなか判断できない部分も多いからです。
私たちデイライト法律事務所の弁護士は、不倫(不貞行為)を理由とする離婚請求や慰謝料請求について、圧倒的な解決実績を有しています。
手持ちの証拠から、今後どのようなアクションを起こすことができるか、私たちデイライト法律事務所の弁護士が親身になってお答えいたします。
離婚原因についてはこちらをごらんください。
不倫(不貞行為)と慰謝料についてはこちらをご覧ください。
なぜ離婚問題は弁護士に相談すべき?弁護士選びが重要な理由とは?