年金分割の対象となるのは何ですか?【弁護士解説】
年金分割の対象となるのは、婚姻期間の被用者年金の保険料納付実績です。
すなわち、厚生年金では保険料納付記録、共済年金では掛金払込記録です。
年金分割の問題点やコツについて弁護士が解説します。
年金分割の対象は婚姻期間の被用者年金の保険料納付実績
年金分割の対象は、結婚していた期間のうち、被用者年金の保険料納付実績です。
すなわち、厚生年金では保険料納付記録、共済年金では掛金払込記録です。
国民すべての基礎年金である国民年金(1階部分)や厚生年金基金や国民年金基金等の3階部分は分割の対象となりません。
年金分割の実務上の問題点
当事務所には、年金分割について、たくさんのご相談が寄せられています。
ここでは、現場の離婚弁護士が年金分割について実務上問題があると考えている点をご紹介いたします。
①制度が複雑なため理解しにくい
もともと、日本の年金制度は複雑です。
しかも、制度がコロコロと変わっており、社会保険労務士等の専門家ですら制度の理解が難しいという面があります。
何が対象となるのか、年金分割するとどのような影響を受けるのか、きちんとした説明ができる弁護士も決して多くはないと思われます。
②年金分割に相手方が応じてくれない場合がある
年金は老後のための大切な収入源です。
それが少なくなる、しかも、離婚する相手方から請求されている、このような事態を素直に受け入れるのは困難です。
また、相手方も年金について、「基礎年金ももっていかれる」「結婚前の全期間が対象となる」など誤解していることも多く、分割に対して応じてくれず、協議離婚が成立しないことが予想されます。
③合意に応じても手続が大変
相手方が年金分割に応じてくれたとしても、それで年金分割は解決しません。
年金分割を単独で申請するためには、公正証書(私文書の認証で可)や調停調書等が必要となります。
また、離婚後2年以内に年金事務所での手続が必要となります。具体的な手続について素人の方にはわかりにくいという問題があります。
年金分割のコツとは?
上記の問題点を踏まえて、年金分割のコツについて解説いたします。
年金事務所でシミュレーションを行う
年金分割がわかりにくい原因は、年金制度が複雑な上、時代とともに変化しているからです。
年金制度を理解しようとするよりも、仮に年金分割を行った場合、将来、受給できる額がいくらになるのか、という具体的な金額を把握したほうがわかりやすいですし、意味があると思います。
年金事務所では、年金分割を行った場合の受給額について、シミュレーションが可能です。
ただし、あくまで現行の制度のものであって予想にすぎませんが、ある程度の影響を押さえることができるので、有益だと考えられます。
協議において相手方の話をじっくりと聞く
相手方が年金分割に応じてくれない場合、その原因がなにかを把握することで、説得できる場合があります。
年金分割が公的な受給であることの意味を伝えるとともに、相手方が誤った認識を持っている場合、その誤解を解いてあげれば、協議によって年金分割が可能となることもあります。
公証役場での手続とは
調停ではなく、当事者の協議で年金分割を行う場合、年金分割の合意書を交わして、公証役場で「私文書の認証」という手続を行うことが一般的です。
公証役場の手続は、素人の方にはわかりにくいため、当事務所では、手続について解説しています。
また、年金分割の合意書のサンプルもホームページから無料でダウンロード可能です。
ぜひ参考にされてください。
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