婚約者が既婚者だった場合、婚約破棄の慰謝料は請求できる?
彼氏に婚約破棄されたので慰謝料請求をしたいのですが、問題は彼氏が既婚者という点です。
婚約にあたり両親への紹介や婚約指輪の購入を行っています。
こういう場合でも私は彼に対して慰謝料請求できるのでしょうか。
非常に難しいですが、彼氏(既婚男性)の婚姻関係を保護すべき実質的理由が消滅している場合に限り、慰謝料請求が可能です。
例えば、彼氏(既婚男性)と奥さんの婚姻関係が実質的に破綻していることが立証されれば、慰謝料請求が可能になります。
この問題について、婚約破棄と慰謝料の問題に詳しい当事務所の弁護士が解説いたします。
婚約破棄とは
婚約とは、将来婚姻をするという当事者間の予約のことです。
婚約が認定されると、それは法的に保護され、正当な理由がない破棄(不当破棄)については慰謝料が認められるようになります。
婚約の認定は、当事者の将来の結婚の合意が認められることで足りますので、特に外形的な行為を要するわけではありません。
ただし、こじれた場合、婚約の認定そのものが争われます。
すなわち、仮に、当事者同士で結婚の合意を行っていたとしても、そんな合意はしていないと不当破棄した側が婚約を否定してくることが多いです。
その場合には、裁判所は以下のような外形的行為のもとに判断することになります。
- 結納等の慣習上の行為の有無
- 双方の両親や友人等に対する公示性の有無
- 交際期間の長さ
- 肉体関係の継続
- 結婚式の日取りや式場を決めているか
既婚者への婚約破棄の慰謝料請求について
では、この事例のように、既婚者との婚約の場合にも法的な保護は及ぶのでしょうか。
この点、既婚者から結婚を申し込まれ承諾したが、結局履行されなかったというケースにおいて、当該男性の婚姻関係を保護すべき実質的理由が消滅している場合に限り、婚約の法的な効力を認めることができるとした裁判例(東京地判平成29年10月18日)があるため、参考になります。
この事例は、既婚男性と知りながら12年にわたり交際を続けたというもので、交際中に当該男性から結婚を申し込まれ、それを承諾したという事案ですが、当該婚姻の合意が法的保護に値するほど確定的なものとはいえない状況の下でなされた合意であることから、婚約の成立を否定しました。
しかし、判断においては、男性の婚姻関係を保護すべき実質的理由が消滅しているケースでは、保護に値するとも読める判断を行いました。
したがって、男性の婚姻関係を保護すべき実質的理由が消滅しているかどうかが判断のポイントになると思われます。
例えば、男性の婚姻関係が実質的に破綻していることが立証されれば、それは保護すべき婚姻関係とはいえないため、婚約が認定される可能性はあると思われます。
なお、婚約の効力は否定されたとしても、肉体関係を結んだ動機等において、既婚者側の違法性が著しく大きいものと評価される場合においては、貞操権侵害による慰謝料請求が認められる可能性はあります(例えば、最高裁判例として、昭和44年9月26日参照)。
このように、既婚者との婚約の場合、それが法的に保護されるためには、「既婚者の婚姻関係を保護すべき実質的理由が消滅している」といえない限り、非常に難しいですが、それがいえれば、慰謝料が認められる可能性もあります。
より、詳しくは、婚約破棄の問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめいたします。
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